新カロス四天王兼ホテルZ料理長兼MZ団団長は生身最強 作:赤左田名
暴走したメガシンカポケモンが街のワイルドエリア1で暴れていた。
その暴れているメガシンカポケモンはエアームド。
そのメガエアームドがレベルの低いポケモン達を瞬く間に蹂躙していた。
横たわるポケモン達はホルビー・ビードル・メリープ・ヤヤコマ・ピチューといった弱いポケモンばかり。
その中にはオヤブンと言われるポケモンも混ざっていたが暴走したメガエアームドの前にはなす術も無く蹂躙されていた。
エアームドが行っているのは紛れもなく弱い者イジメ。
その現場に居合わせたトレーナーもいたが、暴走したメガエアームドの強さと迫力に呑まれて萎縮し逃亡してしまう始末。
絶望的な状況にそのエリアのポケモン達は瞳から光が消え目の前の暴力をただ受け入れるしかできなかった。
「カッコ悪い事してんなよ、ダサ過ぎるにも程があるぜ」
そう思われていたが、それは杞憂に終わる。
手持ちのカイリューに乗って颯爽と現れた男がメガエアームドに向けて言葉を投げかけた。
その男はトレンチコートを着た黒髪の青年だった。
メガエアームドは声のした方向へすぐに反応し、青年の言葉の意味など理解する事なくドリルライナーを繰り出した。
従来のエアームドは時速300㎞で飛ぶと言われている。
メガシンカしたエアームドは音速を超える飛行速度を叩き出す。
メガエアームドのドリルライナーは音速を超えた速度で青年へと一直線に向かっていく。
「うわっと危ねッ⁉︎」
それを青年はエアームドのクチバシを
それと同時にドリルライナーの勢いと衝撃を体幹のみで受け止める。
ドリルライナーの勢いで生まれた風が青年を通り過ぎる。
メガエアームドは続いて、はがねのつばさを繰り出そうとして体がうまく動かず失敗する。
それもその筈、青年がメガエアームドのクチバシをもの凄い握力で掴み続けていたからだ。
基本的に起きない出来事とはいえ、鳥ポケモンがクチバシを掴まれたら本来ならその時点で詰みである。
だが、それは本来ならばその鳥ポケモンが暴れて抵抗するだけで解ける程度の出来事でしかない。
「おっと、暴れんな暴れんな」
だが、目の前の人間はどうだ?
微動だにしない。クチバシを握る力が全く弱まらない。
弱まるどころかむしろ更に強く握り込んでメキメキという音までする始末だ。
クチバシから走る激痛に更に暴れて抵抗するメガエアームドを青年は片手の握力のみで抑えつけていた。
「面倒くせぇから、とっとと終わらすぞ」
と青年は言うとメガエアームドのクチバシを左手で掴みながら、右手に拳を作る。
殴られる
それがメガエアームドには分かった。
たかが人間のパンチなど本来ならなんて事は無い。全く効かないと言っていい。
だが、目の前には例外がいる。
目の前の青年はヤバい。
なんとしてもそれだけは回避しなくては!とメガエアームドは必死に暴れて抵抗するがクチバシを凄まじい握力で掴まれて動きを封じられたメガエアームドに防ぐ術も回避する術も無い。
「暴れ散らかした罰だ。
青年はそう言って、メガエアームドの頭に己の拳骨を叩き込んだ。
その一撃は、あなをほるを覚えないエアームドに穴を掘らせる感覚を味合わせた。
そしてその衝撃は地面に伝わり、亀裂を走らせ、クレーターが出来上がる。
メガエアームドは激痛を感じる間もなく瀕死になり、瀕死のまま地中に埋まってしまった。
暴走は鎮まりメガシンカは解けた。
暴走メガシンカは見事青年によって鎮圧されたのだ。
「やっべ、またやり過ぎちまった…」
暴走メガシンカとは本来ならばトレーナーと共に起こす現象であるメガシンカをなんらかの理由によって野生のポケモンがメガシンカし暴走する現象。
突然メガシンカして自分でも暴走を止める事が出来ず、暴れるしかなかった。
その挙げ句の果てに突然現れたカイリキーよりも怪力な人間にワンパンで叩きのめされた。
エアームドにとっては完全なとばっちりである。
「しゃあねぇ…またポケモンセンターに連れて行くか」
そう言って、青年はエアームドを引っ張って掘り起こし、背に担ぎ、ワイルドゾーンを後にした。
それを見ていたポケモン達は青年を畏怖した。
自分達が手も足も出ない暴走したメガシンカポケモンを一撃で鎮める青年の存在を恐れた。
それに一連の出来事を見ていたのはポケモン達だけではなかった。
「ば…化け物だ…」
それはたまたまワイルドゾーンでポケモンを捕まえようとしていた一般トレーナーの少年。
「初めて生で見た…あれが……」
少年は先程メガエアームドを素手で瞬殺した青年の事を知っていた。
少年が青年を知ったのはSNSの記事からだった。
曰く「生身でポケモンと戦って、ポケモンを圧倒する規格外の人間」
曰く「手持ちのポケモンより強いトレーナー」
曰く「人間最終兵器」
などと好き放題書かれたゴシップ記事。
ただのゴシップ記事だと思っていた
あまりにも荒唐無稽でデタラメな記事だと最初は本気にせず馬鹿にした。
動画配信サイトで彼の戦う様子をおそらく本人の許可無く撮影された動画が複数投稿されていたが、それは本人の許可の下で撮影された演出だと思っていた。
だが、少年の予想は完全に外れ、本来なら誇張して書かれている筈のネットのゴシップ記事が真実だと確信した。
「凄い!…あの噂通り…本当に“最強"のトレーナーなんだ!」
少年があの規格外の青年へ向ける視線は恐怖からやがて羨望に変わる。
恐怖という感情は圧倒的な強さの前に塗り潰される。
誰だって男という生き物に生まれたからにはいつだって“最強"という物に憧れる物だ。
それが少年ならば尚の事。
青年はこのカロス地方でも“最強"のトレーナーとして有名だった。
ポケモントレーナーとしては四天王を勝ち上がりチャンピオンに敗北しながらも、その実力から四天王へと抜擢された彼の名をカロス地方では知らない者はいない。
「カロス四天王…タチバナ」
カロス地方はおろか他地方でも彼の勇名は轟き、彼を知る皆は口を揃えて彼をこう呼ぶ。
“生身"最強のポケモントレーナーと…
我ながら俺は不幸体質だと思う。
ある日、働いていたバイト先を人件費削減の為に首となり、トボトボ帰ってポケモン最新作のレジェンズZ-Aを遊ぼうと思っていたら何故か開きっぱなしだった道端のマンホールに落ちて気づいたらこの世界にいた。
最初は実物のポケモンを見て興奮はしたが、レジェンズアルセウスをプレイ済みだった俺はすぐにこの言葉を思い出した。
「ポケモンは怖い生き物」と
まさか転移直後に出会うポケモン全てに攻撃されるとは思わなかったよ。
逃げて、逃げて、逃げて
何度も何度も生死の境を彷徨ってなんとか生き残ってきた。
弱肉強食。それはポケモンの世界でも例外じゃなかった。
ゲームやアニメではあまり描写されてなかったが、その野生の世界では厳しい世界があった。
ポケモンというのは怖い生き物。本当に身に染みたよ。
怖い。怖い。怖い。
ポケモンが怖い。
そんなドン底の状況な俺にポケモンに対抗する手段は残ってない。
一度はもう諦めるしかないと思ったけど、やっぱり俺はこのままおめおめと死ぬのはゴメンだった。
だから少しでもこの地獄のような環境に抗ってやろうと俺の無駄な足掻きは始まった。
「やってやる!やってやる!」
ポケモンは怖い。けどだからって蹲っていては何も始まらない。
「筋トレだ!」
怖くても、それでも恐怖を克服したいと思うのは普通の事だ。
このまま恐怖に震えて過ごすよりも、少しでも自分を鍛えて恐怖を克服していこう。
筋トレのメニューは腕立て伏せ100回、上体起こし100回、スクワット100回、ランニング10kmを毎日。
それが俺自身に課した筋トレメニュー。
元の世界の漫画で見た筋トレメニューだが、元々碌に筋トレとかやってこなかったので他に知識が無い俺にはこれが精一杯だった。
そうして俺は一念発起してトレーニング始めた。
自分を変える為に、強くなる為に、生き残る為に。
「…そんで、大体三年くらいかな?俺が逃げた先で筋トレしながら暮らしてた所がポケモンの村って言う場所だったらしくて、そこに通りかかってたウルップさんに保護されて、なんやかんやで四天王になって今に至る訳よ」
「いやいやいやいや⁉︎信じられないし肝心な所何も話してないじゃないですか⁉︎」
俺の身の上話にツッコミを入れてくるタウニーに軽く笑ってしまう。良い反応をしやがる。
ちなみに俺が異世界から来た事は伝えているが、元の世界ではポケモンがゲームだったとかの情報は伏せて伝えている。
こんな事を話しても混乱を招くだけだし、言った所で精神異常者だと言われるのがオチだ。
「なんだよ、お前が俺の身の上話を聞きたいって言うから話してんじゃねぇか。嘘はあんまり言ってねぇぞ」
「“あんまり"って嘘ついたんですね⁉︎どこからどこまで嘘だったんですか⁉︎」
「三年後にウルップさんに保護されたって辺り」
「つまりほぼ真実ってコト⁉︎」
実を言えば筋トレ生活を初めて一年目で既にウルップさんに会っている。
あの時「あれだよ、武者修行って奴か?」って話しかけられた時はビックリしたなぁ…。
その時にはもう保護してくれそうだったけど、俺を酷い目に遭わせたポケモン達にリベンジする為に躍起になってたから保護を断ったんだったな…。
それ以来三年間、ウルップさんとは度々交流がして、三年目になって諸々のポケモン達へのリベンジを終えて保護を受け入れたのが真相だ。
ちなみに今もウルップさんとは連絡をやり取りするくらいには関係が続いてる。
保護してくれた上に俺がポケモントレーナーになるキッカケをくれたウルップさんは俺にとって大恩人だ。
「別の世界から来たとか云々は置いておいて!だからって三年修行しただけでそこまで強くなるんですか⁉︎明らかに人間辞めてますよ⁉︎」
「人聞きの悪い事を言うな。村の周辺の野生ポケモンと時々喧嘩しながら筋トレして暮らしてたら、いつの間にかこんな感じになってたんだよ」
「何それ、ウソくさー…」
まだ信じられないという顔のタウニー。
でもそうとしか言いようがない。
コツは腕立て伏せ100回・上体起こし100回・スクワット100回・ランニング10kmというトレーニングメニューを本当に毎日やる事だ。
腕が折れようが、脚が折れようが、死にかけようが諦めずに毎日日課を熟す事。
それが今の俺の強さに繋がったのは紛れもない事実だ。
それにポケモンの村には基本的に穏やかなポケモンしかいないので安心した環境で筋トレできたのは運が良かった。
たまに村に来るミュウツーと定期的に喧嘩する事もあったけど。
「ちなみにタチバナさんのその元いた世界ってどんなのだったの?どんなポケモンがいた?」
「あーそうだな……基本的にこの世界と変わらなかった気がするが」
そう聞かれると返答に困る。
だからって元の世界ではポケモンは架空の存在だったなんて言える訳がない。
そこでポケモン歴約30年の俺に電流が走る。
「あれだ、デッカい隕石が落ちてきた」
「絶対ウソだぁ⁉︎」
咄嗟にORASのシナリオの内容を思い出して隕石が降ってるイベントの事を話したら速攻でウソだと見破られた。流石に露骨過ぎたか?
そこでチーンっというエレベーターが降りてきた音が聞こえた。
そのエレベーターから1人の高校生くらいの少年が出てきた。
俺にはその少年に見覚えがある。
この世界に来る前に、ポケモンレジェンズZAの最新情報で見たポケモンの主人公だ。
「よう、初めましてだな。たしか…キョウヤ君だったか?」
俺の声に少年ことキョウヤ君が振り返る。
「貴方は?」
おっと、ポケモン主人公が喋ってる所を見るとなんだか新鮮だな。
「タウニー、お前MZ団の新メンバーに俺の事伝えてねぇのかよ?」
「後でいいかなぁと思って後回しにしてたら伝え忘れちゃった…」
はぁぁ…と無意識にため息が出てしまう。コイツのこのいい加減な所は一体いつになったら治るんだ…
「ちょうどいい、この新人に俺の事を改めて教えとけ」
俺がタウニーにそう指示するとタウニーは「あいよ」と軽く返事をしてキョウヤ君に俺を紹介する。
「キョウヤ、この人はタチバナさん。私達MZ団の団長でこのホテルZで料理長もやってる人で私の保護者みたいな人なんだ」
「よろしくな」
そう、俺は今このホテルZの料理長とMZ団の団長をやっている。
ゲーム最新情報じゃたしかにMZ団のリーダーの情報とか無かったけどまさか俺がそのリーダーになるとは思わなかったな…
「MZ団の活動の事は知ってるよな?」
「いえ特に何も…」
「え、知らねぇの?」
タウニーの奴、MZ団の活動の事すら碌に説明せずにMZ団に勧誘したのか…。ていうかロクに活動も知らない団体によく所属しようと思ったなこの新人君。
「タウニー…お前後で
「ごめんってば!後で言えばいいと思って言い忘れたの⁉︎」
「なるほど、今欲しいならそう言っとけ」
そして俺はタウニーの頭に拳骨を落とす。
勿論、本気で殴ってはいない。人間用に手加減したいい感じの拳骨だ。
「痛たた…パワハラだ…」
「へいへいパワハラ上司ですよ俺は。恨むなら新人に組織の内容を説明せずにいた職務怠慢な自分を恨め」
頭を抑えるタウニーをよそに俺はキョウヤ君に向き直る。
「MZ団ってのは、このミアレシティの治安維持を目的とした団体。まぁ自警団みてぇなもんだ」
「治安維持って言っても普段からパトロールとかしてる訳じゃねぇ。とある会社から依頼が来るからその依頼をこなせば良い。それ以外は好きにしてて構わねぇ。その依頼さえやってくれればこのホテルZの家賃もチャラだ」
「ただその依頼も相応に危険な物だ。もしかしたら怪我じゃ済まない事だってあるかもしれない。それだけは事前に伝えておきたくてな」
そもそもMZ団の始まりは、このカロス地方の四天王になった俺がクェーサー社にこのミアレシティの治安維持を頼まれたのがキッカケだ。
「どうだ、MZ団…やるか?」
俺の問いにキョウヤ君は少し考えて答えた。
「やります」
その答えを待っていた。
ポケモン作品の主人公ならこの問いに乗らない訳がない。
なんというか…ちょっと興奮してきたな。
俺はこの時、物語の始まりを感じずにはいられなかった。
まさしく物語の中に入ったような気分だ。
「ようこそ、MZ団へ」
とりあえず今はMZ団の団長としてこの新人を歓迎しよう。
それはそれとして俺は結局レジェンズZAをプレイ出来ていない訳で別にZA本編とか知らない訳だが、もしかして俺…原作改変とかしてないよな?