新カロス四天王兼ホテルZ料理長兼MZ団団長は生身最強 作:赤左田名
俺がポケモントレーナーとして何故四天王にまで上り詰める事が出来たのかというと、それは俺自身の実戦経験のおかげだ。
この世界のポケモンバトルはゲームのターン制だったバトルと違って、この世界のポケモンバトルはリアルタイムだからだ。
相手の出す技、挙動、特性も全てその場で判断して瞬時に自分のポケモンに指示を出す。
ゲームの時とは違って思考する時間はほぼ無い等しい実戦形式のポケモンバトルはアクションゲームに等しい物になっている。
下手に自分のポケモンの出す技に迷っていたら相手から連続で技を出されて攻撃される事なんて事もある。
俺には野生のポケモン達と戦い続けて鍛え上げた実戦経験がある。
そのおかげで相手のポケモンが何をしようとしているのか直感で分かる。
ポケモンの知識も歴代ポケモン作品は大体プレイしていたのでポケモンの相性と特性は大体は覚えてる。
そのおかげでバトルの腕が上達するのは早かった。だが、それでもやっぱりポケモンの世界は甘くはない。
何せこの世界はゲームではないのだ。
育成もゲームほど上手くいかない。つーか自分のポケモンのレベルもステータスも一切分からんのにどうやって育成すりゃいいんだ。
だから俺がやれるポケモン育成方法といえば、俺自身がポケモンと戦ってポケモンを鍛える事だった。
それに俺が相手のポケモンが何をするのか分かっても、俺が自分のポケモンに上手く指示出来なくちゃ意味がない。
チャンピオンや四天王クラスとなると俺の
多少先読みできる程度の俺がポケモンバトルで天下を取るのはまだまだ未熟だったという訳だ。
ジムリーダークラスなら結構勝ててはいたんだけど、四天王まで行くと苦戦の連続。
運良く四天王を抜けても、その先のチャンピオンに俺は手も足も出なかった。
ちょっと先読み出来るからって天狗になってたな…あの時の俺は。
今の俺のポケモントレーナーとしての実力は大体四天王の前座って所だろう。
あの時は運良く四天王を抜けられただけで、二回目をやろうとしたら絶対に何処かで躓くだろう。
ちなみに俺の持ってるポケモンは全員俺自身が戦って捕まえたポケモンとAZさんから譲り受けたポケモンしかいない。
「コータス、火を頼む」
「コー!」という鳴き声と共にコータスが火を吹く。
その火を使って鍋を振るう。
異様な光景にしか見えないが、このポケモンの世界では割とありふれた光景だ。
普通に家電の火も使えるが、ポケモンの技の方が多少は節約になるし、こっちの方が安上がりだ。
勿論、一歩間違えたら火事待った無しなので一般ではまずやらない。
火を扱うポケモンとそれを育成するトレーナーの両方の技量が高くて初めて扱える技だ。
この街のレストランとかでやってるの見た事あるから、この世界のコックの必須技能なのかもしれない。
鍋で炒めた大量の野菜をそれぞれの皿に盛り付けて料理が完成。
「ゴルーグ、皿持ってくの手伝ってくれ」
「ゴォッ!」という鳴き声?と共に大きな手を差し出すゴルーグ。
その掌に盛り付けたサラダを全員分置いて移動を開始。
そしてタウニー達がいる作戦会議室に向かう。
「おーい、料理できたぞー」
「はーい待ってましたーって野菜ばっかじゃん!」
作戦会議室ではタウニー・キョウヤ君・デウロちゃん・ピュール君がタウニーの作ったクロワッサンカレーを食べていた。
それを見て俺はゴルーグの持っていた4人分のサラダを素早く配膳して、タウニーの頭に手加減した人間ようの軽い拳骨を落とす。
「痛ッ⁉︎」
「ったく、てめぇの創作料理を客に振る舞うなって何度言ったら分かるんだタウニー!後出すなら出すでちゃんとサラダも一緒に出せ!栄養が偏るだろうが!」
「いいじゃん!このホテルZの名物料理になるメニューだよ⁉︎3人にも食べてもらってその美味しさを宣伝してもらわないと!」
「圧倒的不評だろうがアホンダラ!」
今この作戦会議室で行われているのは新メンバーであるキョウヤ君の歓迎会だ。
先んじて振る舞われていたタウニーの創作料理であるクロワッサンカレー。
こんなカロリー爆弾みたいな料理を名物にしようだなんてどんな思考回路してんだコイツ。
元気の有り余ってる若い子にはもしかしたら好きな子もいるかもしれないが、俺みたいな大人からすればただのカロリーの暴力にしか見えない。
それはそれとして俺がタウニーに拳骨を落としたのはそんな理由ではない。
「だとしてもなんで殴るの⁉︎」
「お前このホテルZの宣伝動画撮ってたらしいな?俺もAZさんも聞いてねぇぞそんな話」
「…見てくれたんだ私の動画!再生数は⁉︎あれからどれくらいバズったの⁉︎」
「心配すんな、再生数は一桁だ」
「全く再生されてない⁉︎」
動画の内容は正直酷いもんだった。
「ホテルZ最高!」とか言ってるくせに内装とか特に紹介してなかったし、そら再生数も回んねぇよ。
それよりもだ。
「お前このホテルを宣伝するなら、俺かAZさんに一言言えよ。なんで勝手に動画なんて撮りやがった?」
「だって言ったら絶対止めてくるじゃん⁉︎宣伝なんて必要無いとか言ってさぁ⁉︎今までだって散々私がホテルを宣伝しようと色々しようとしてたけど、全部タチバナさんが却下して阻止してくるじゃん⁉︎」
そう、ホテルZの宣伝は俺が悉く握り潰している。
ホテルZはMZ団の拠点としての側面が強すぎて一般のホテルとして殆ど機能していないのが現状だ。
その現状がタウニーには気に入らなかったんだろう。
「いいんだよ。客なんか来ないくらいがちょうどいい。その方がMZ団としての活動に集中出来るってもんだ」
つーか仮にホテルZが大盛況になりにでもしたら俺が忙し過ぎて暴走メガシンカにも対応出来なくなる。そっちの方が大問題だ。
従業員なんてタウニーしかいないし人手も圧倒的に不足してるホテルZに繁盛してもホテル側も客も困るだけだ。
そんなになるくらいならこのまま客が来ないくらいが都合の良い。
四天王としてチャレンジャーの防衛戦もあんのにホテル業も忙しくなったら敵わねぇしな。
「でも…このままじゃいつかホテルZが潰れちゃう!」
なんだタウニーの奴、その事を心配してたのか。
「お前なぁ…いやせっかくだ。歓迎会も兼ねてどうしてこのMZ団が誕生したのかこれを機会に教えてやる。キョウヤ君、デウロちゃん、ピュール君もせっかくだし聞いてくれ。まだ教えてなかったしな」
「「はい」」と返事をするピュール君とデウロちゃんに対し、首を縦に頷くキョウヤ君。
無口だねキョウヤ君。
そして俺は作戦会議室に置いていたホワイトボードを使って説明を開始する。
「そもそもの始まりは、このミアレシティに野生のポケモンが何故か増え始めた事だ」
いつの頃かは分からないが、このミアレシティでは何故か野生のポケモンがどんどん増え始めてきた。
それをクェーサー社がホロ装置を使って野生ポケモン達の住む区画をワイルドゾーンとして分断し、今のミアレシティが誕生した。
「その野生ポケモン達はどういう訳か今も現在進行形で増え続けてる。分断するワイルドゾーンもちょっとずつだが増え続けてる」
表向きにはポケモンとの共生を謳う街としているが、実際に住んでる人達からすれば堪ったもんじゃない。
なんせ自分の住んでる場所がいつワイルドゾーンに変わってしまうかもしれない可能性を孕んでいる訳だからな。
一度ワイルドゾーンになったら、そこに住む事も通る事も難しくなる。
なんせ野生のポケモンは人間を躊躇なく襲う。
野生ポケモン側からしても自分のナワバリに侵入されてるようなものだから当然の対応だ。
「そんでそんな中、半年前にトレーナーも無しにメガシンカをするポケモンが街中に現れるようになんたっだ。これも原因は不明。クェーサー社も調べてはいるが進展は無いみたいだ」
「この街ってそんなに危険な状態だったんですね」
「そうだ、キョウヤ君。つっても市長の野郎はこのワイルドゾーンを観光名所にしよう!とか宣ってるけどな」
実際の所、クェーサー社の宣伝のお陰かミアレシティはポケモンと共生する街として外部からは認識されてる。
それで観光客も来てるから宣伝効果はあるみたいだが、この現状を見てガッカリする観光客もいる。
外面は良くても実際は…って感じのガッカリ観光地になってるのが現在のミアレシティだ。
ていうかキョウヤ君も観光客だったな。一体何を求めてこの街に来たんだ?
「そんでクェーサー社からその暴走したメガシンカポケモンをなんとかしてくれ!って事で雇われたのが俺って訳」
「今まで僕達はとある会社から依頼を受けているとしか教えてもらえていませんでしたが、クェーサー社だったんですね。つまりクェーサー社はMZ団のスポンサーという訳ですか」
「そう言う事だ。ピュール君」
ちなみにこのホテルZの維持費もこのクェーサー社から出てる。
流石に食費とかは別なので、殆ど俺のポケットマネーから出てるがな。
「質問あります」
「なんだいデウロちゃん」
「街の治安維持が目的なのに、なんで四天王のオウマさんが抜擢されたんですか?そういうのってジムリーダーのお仕事じゃないんですか?」
「いい質問だデウロちゃん」
確かに街でポケモンの異変が起きた時、それに駆り出される事もあるのがその街のジムリーダーの仕事だ。
「でも知っての通り、この街の再開発でこの街のポケモンジムだったプリズムタワーが工事で実質ミアレジムは機能しなくなった。そのジムリーダーのシトロン君がどうなったか、デウロちゃんは知ってるか?」
「えっと…風の噂でどこかで発明王になったって聞きましたけど…」
そう、前の世界でもネットで「ミアレが大変な事になってるのにシトロンは何をしてるんだ?」とか言われていた。
俺もその噂を知った時はなんだそりゃと思ったが
「実際はポケモンリーグがシトロン君を四天王にスカウトしたのが真相だ」
「ええっ⁉︎そうなんですか⁉︎」
普通に考えたらポケモンリーグとしても街の事情でジムリーダーを辞める事になったシトロン君を哀れに思っての措置なんだろうけど、実際はいつの間にか行方不明になってた元四天王パキラの抜けた穴を埋める為にスカウトしたんだろうがな。
俺もチャレンジャーとして四天王に挑んだ時は驚いた。まさかシトロン君が四天王になってるとはな。四天王になってるだけあって普通に強かった。
ちなみにズミさんが武者修行として唐突にどっかに行ったのはその後の事だ。
抜けた穴を埋めたと思ったら速攻で空きができたカロスのポケモンリーグにはちょっと同情する。
その穴を埋める為にチャンピオンに敗北しトボトボと帰ってた俺が急遽抜擢され四天王になった訳だ。
「まぁ俺が四天王になった経緯はどうでもいいとして、半年前にその最初の暴走したメガシンカポケモンを対応したのが俺とタウニーだ」
「あの時は必死だったなぁ…」
タウニーが懐かしそうにその時の事を回想している。
最初はAZさんが対応していたが、身体が衰えていたAZさんに暴走メガシンカの相手は難しくピンチに陥ってた所を駆けつけたタウニーに助けられていた。
暴走メガシンカは普通にトレーナーを襲ってくるから迫り来るメガシンカポケモンの攻撃を避けながら戦う必要がある。
身体が日に日に衰えていくAZさんには荷が重かったのは仕方ないだろう。
ちなみにその時の暴走メガシンカはピジョット。
そん時はタウニーとAZさんのフラエッテと協力して必死対応していた所を遅れて駆けつけた俺がそのメガピジョットをワンパンでぶっ倒して事なきを得たって訳だ。
「そんで最初の暴走メガシンカを鎮める事を成功したタウニーにクェーサー社は暴走メガシンカの対応を俺とタウニーに依頼して、MZ団が誕生したって訳だ」
とまぁ、ここまでがMZ団の誕生の流れ。
「ここまでで何か質問あるか?」
「では、はい」
「はい、なんですかピュール君」
「MZ団がクェーサー社の傘下の組織というのは分かりました。ではこのホテルZの維持費とかはクェーサー社から出ているという訳ですか?」
「そうだ。その辺りはクェーサー社が支援金として出してくれてる。流石に食費とかは別だがな」
その食費は殆ど俺のポケットマネーだかな。どうやって稼いでいるのかは、基本的に四天王としてたまに来るテレビ出演とかポケモンスクールの講師とかポケモン研究所の調査の協力とか色々だ。
四天王って意外と仕事あるんだよな。
「だったら尚更ホテルZの宣伝とかした方がいいじゃん!」
「なんだタウニー?またその話か?」
「"また“じゃないよ!大事な話でしょ⁉︎つまりMZ団として活動している内はクェーサー社の援助で今は余裕があるって事でしょ⁉︎なら余裕のある内に色々宣伝とかしとかないとじゃん⁉︎この暴走メガシンカ騒ぎもいつかは終わるんだからさ⁉︎」
意外だな。まさかタウニーがこの暴走メガシンカ騒動が終わった後の事まで考えてるとは。
確かにこの暴走メガシンカ騒動が終わればMZ団の役目は終わり、クェーサー社からの支援も終わる。
終われば以前の殆ど客の来ないホテルZに逆戻りだ。
「また私が拾われた時みたいに客が1人もいない状態に戻ったら、ホテルZが本当に危ないじゃない⁉︎」
「何度も言ってんだろ?お前がそんな事気にする必要はねぇんだよ。お前はまずMZ団の活動に専念しとけ」
そもそもホテルZは俺とAZさんで始めた物だ。
ホテルZの存在意義は残りの寿命を悟ったAZさんの最期を看取る事にある。
俺とAZさんとの出会いは今はどうでもいいから割愛するが、俺はAZさんから全部聞いてる。
プリズムタワーの異変の真相も、AZさんの残りの寿命が少ない事も聞いている。
俺はAZさんに穏やかな最期を迎えてほしいと思ってる。
3000年も放浪してずっと苦しんできたあの人に最期くらいは静かに穏やかな時間を過ごしてほしい。
俺がホテルZの繁盛を望んでいないのはそれが理由だ。
そんな簡単な事ではないとはいえ、万が一宣伝がバズってホテルZが繁盛でもしたらAZさんから静かで穏やかな時間を奪う事に繋がるかもしれない。そんな事は俺が許さん。
ホテルZは今の状態が一番良いんだ。
「またそう言って!AZさんもタチバナさんもそんな風にやる気がないから私が色々宣伝とかやってるんじゃないですか⁉︎本当にホテル経営やる気あるんですか⁉︎」
タウニーがこんなにホテルの宣伝に必死なのはそういった事情を知らないからだ。
何度も言おうとしたが、いかんせんAZさんの終活に付き合えとか言いにくい。
というか何度かAZさんが「このホテルZは私の終の棲家」とそれとなく伝えてるが本気にしてない。
3000年生きてる話も信じてねぇしでどう伝えたもんか困るくらいだ。
いや普通は信じられなくて当然の話だけどさ。
「うっせぇな…今はホテル経営以前にミアレシティそのものが危ういんだ。ただでさえ今は増え続けるワイルドエリアで街の人が徐々に減ってる始末なんだ。ホテル云々はそれを解決した後でいいだろうが」
「それはそうだけどさ…」
俺の反論に黙り込むタウニー。
タウニーが俺達を思って行動してるのは分かってる。それは嬉しいが今はミアレシティの問題を解決する方が重要だ。
「まぁまぁ、そこまでにしてはどうかね。彼女も悪気があって言ってる訳ではない。このホテルを思ってやった事だ、勘弁してやってくれ」
そこに老人のような声が聞こえてくる。
振り向くと作戦会議室の入り口にゴルーグと一緒にAZさんが立っていた。
「AZさん、甘やかしてもタウニーは反省しねぇぜ。たまにはこうして説教してやんねぇと何度でも同じ過ちを繰り返すぜ」
「だからと言って先ほどの暴力はいけないぞ。躾や説教と言って振るわれる暴力に正当性など有りはしない」
そう言われると弱い…実際俺がやってるのはただのパワハラだし。
あり得ないだろうがもしタウニーに訴えられたりしたら負けるのは間違いなく俺だ。
「やーい、怒られてやんのー」
「うっせぇ」
と俺はタウニーの額にデコピン入れて黙らせて、次の料理を運ぶべく調理場に戻るのであった。
「……あれ、タウニー?」
「…気絶してますね。デコピン一発で人の意識を刈り取るとは…」
side タウニー
「あーッ…まだ痛いッ」
あれから意識を取り戻して歓迎会が終わって数時間経ったのに未だにデコピンされた所が痛む。多分、普段からしてる手加減をし忘れたんだろう。
「タウニー大丈夫?」
あたしの自室まで付いて来てくれたデウロが心配してくれてる。
そんな心配しなくても大丈夫なのに。
「大丈夫大丈夫。それよりタチバナさんだよ!
なんであの人はいつもああなんだか⁉︎」
タチバナさんはあたしのやろうとする事を「心配するな」と言っていっつも否定してくる。
あたしはただ恩返しをしたいだけなのに。
「宣伝動画の件は許可取らなかったタウニーが悪いよ…」
確かにあたしにも悪い所があるかもしれないけどちょっと納得いかない…
「ずっと思ってたんだけど、なんでそんなに恩返しに必死なの?ホテルに拾ってもらった恩なら普通に働いて返せば良いのに」
そういえばデウロにはAZさんとタチバナさんに恩があるって伝えてるけど、具体的にどんな恩があるのかは言ってなかったっけ?
「私ね、ちょっと前にお母さんが死んだの」
「え」
デウロがなんか固まった。
「お母さんはね、お母さんのお母さん…つまりあたしのお祖母ちゃんと喧嘩別れしてたみたいで、仕事をしながら1人であたしを育ててくれたんだけど、それで体を壊しちゃってさ。それで遠い地方で療養しながら静かに過ごしてたの」
その時の時間は正直辛かった。
日に日に弱っていくお母さんを見るのが辛くて、あたしにはどうする事もできなくて、凄く歯痒かった。
「お母さんは最期にお祖母ちゃんに会いたがってた。喧嘩別れしたのを悔やんでた。お母さんは最期にお祖母ちゃんへの遺言を遺したの。だからあたしはお祖母ちゃんを探す為にミアレシティに来たの」
「……それでタウニーはお祖母ちゃんと会えたの?」
デウロが凄く神妙そうに聞く。そんな心配しなくてもいいのに。
「まだ会えてない。喧嘩別れしてから連絡も取り合ってなかったから何処に住んでるのか分からなかったの。だからお母さんがミアレで縁のあった人を探してたんだけど、全然見つからなくてさ」
「……そうなんだ」
今もマチエールさんに協力してもらいながら色んな人に尋ねてはいるけど、お祖母ちゃんの情報は全然掴めない。
「ずっとミアレで人探ししてたらお金無くなっちゃってさ。食べ物も買えない状況だったから仕方なくワイルドゾーンまで行ってポケモン達の食べてるきのみとか食べようと思ったんだ」
「ええ……」
デウロが引いてる。まぁ普通ワイルドゾーンに食糧求めていく人はいないよね…
「そこでさ、明らかに普通よりデカくて目がギンラリしたバンギラスに襲われてさ」
「ええっ⁉︎それオヤブン個体って奴だよね⁉︎何したのタウニー⁉︎」
もちろんそんな大した事はしてない。
きのみを食べようと思って登った木がたまたまそのオヤブンバンギラスのナワバリだった。
食糧を奪われたと思ったバンギラスはあたしを追い出そうと襲ってきたわけ。
「いやーあの時はかいこうせんをぶっ込まれた時は死ぬかと思ったね」
そのはかいこうせんはなんとか避ける事は出来たけど、その後にすかさずヘビーボンバーを放ってきたから避けきれずに喰らっちゃったけど。
そしてバンギラスはあたしにトドメを刺そうとギガインパクトを放ってきたんだけど。
「その時にさ、タチバナさんに助けてもらったの。颯爽と現れてバンギラスのギガインパクトを片手で受け止めてさ」
「片手で⁉︎オヤブン個体のギガインパクトを⁉︎」
あの時のタチバナさんは多分、買い物の途中だったのかな?ビニール袋もう片方の手に持ってたし。
「その後、バンギラスをワンパンで倒して怪我をしてたあたしをホテルZまで運んで手当てしてくれたの」
「こともなげにトンデモないこと言うじゃん。普通はオヤブン個体のポケモンって相当な実力差がないとワンパンできないからね?」
それがタチバナさんという人なんだからしょうがないじゃん。
「お腹空いてるのも察してくれて、料理までご馳走してくれさ。なんでワイルドゾーンにいたのかも聞かれたからその時に私の事情も話したら私を従業員って事でホテルZに置いてくれたの」
「へぇ…それがタウニーがこのホテルまでの経緯か」
その後にマチエールさんに紹介してもらって、お祖母ちゃん探しを依頼して、しばらくしてからピュールやデウロと出会って、暴走メガシンカに遭遇して、最近だとキョウヤにも出会えた。
色々あったけど、あたし今がすごく幸せ
「でもね、あたし分かるんだ」
「分かるって何が?」
殆どあたしの所感で、別に確信は無いけれど
「多分、AZさんは…近いうちにいなくなりそうに見えるんだよね」
「……は?」
デウロがものすごく何言ってるんだコイツ?って目で見てるけど、あたしには分かる。
「どんどん死期が近づいて弱っていくお母さんを見ていたから分かる。AZさんの…なんて言うのかな…雰囲気が死にかけだったお母さんに似てるんだ」
似てるとかそんなんじゃなくて、AZの身に纏うその雰囲気が段々お母さんに近くなっていくんだ。
「終活ってやつ?もう自分は死ぬって諦めてるのがあたしにはなんとなく分かるんだ。似たような雰囲気をしたお母さんを間近で見てきたから」
タチバナさんは多分AZさんの事情を知ってるからホテルZの宣伝に反対してるんだと思う。
AZさんに静かに過ごしてほしいと思っているから。
「あたしは、あんな体験もう嫌だ。もしホテルZが繁盛したらお客さんの笑顔とか見てAZさんも生きる気力が湧いてくれるかもしれない。生きようとする気さえ湧いてくれれば、きっと…」
お母さんの時のようにはならないと思うんだ