新カロス四天王兼ホテルZ料理長兼MZ団団長は生身最強 作:赤左田名
タウニーとキョウヤ君がDランクまで上がった次の日の早朝の時の事だった。
「ミアレを守る会が?」
「そう、最近キナ臭い動きをしてるあの団体だよ。そろそろクェーサー社に直接乗り込んで来そうって話だ」
ミアレを守る会。
増え続けるワイルドゾーンに不満が溜まりに溜まった町の市民が集まって出来た団体。
正直言ってコイツらの存在は自然な事だし主張自体も真っ当だ。
なにせ住処を追われてる訳だからな。
いつ大規模なデモ活動が起こって、下手をしたら暴動だって起きかねない。
「じゃあ、警備デデンネと一緒にあたしもクェーサー社を護れば良いの?」
「いいや、お前が護衛するのは社長のジェットさんだ。もしかしたら会社じゃなくて社長に直接文句を言いに言ってくるかもしれねぇからな」
そもそもの話、ミアレシティの住人からのクェーサー社の好感度はあまり高くない。
何も知らない人からするとミアレの外から来た企業が町の再開発を担っていて、それを皮切りにワイルドゾーンが増えていってる現状を鑑みればミアレをポケモンで埋め尽くそうとするクェーサー社は悪の組織にしか見えないだろうからな。勿論、証拠は一切無いがな。
「タチバナさんも一緒に護衛するの?」
「いいや、俺もそう申し出たんだが四天王だから顔が割れてるし、ただでさえ色々疑われてるクェーサー社が今度は四天王まで買収したのか⁉︎とかまた騒がれかねないって事で断られた」
それに俺が下手に暴れてミアレを守る会を壊滅させたりしたらよりクェーサー社とポケモンリーグのイメージが悪くなるから止めとけってジェットさんとポケモンリーグのお偉いさんの両方から釘を刺されたしな。
「MZ団のパトロンだ。しっかり頼むぞ、タウニー」
「うん、任せて!」
元気の良い返事をしたタウニーをクェーサー社に送り出し、俺は他のMZ団メンバー達の朝食を作り、テレビを見たりスマホをいじりながらみんなが起きるのを受付に座って待つ。
数時間くらいして最初に出て来たのはデウロちゃんだった。
「おはようございます」
「おう、おはようさんデウロちゃん。朝食はもう出来てるぜ」
「はーい、いつもありがとうございます」
そう言ってデウロちゃんは作戦会議室で朝食を食べるのを眺めながら、朝のニュースに目を通す。
するとホテルの玄関からガチャリと扉の開く音が聞こえる。
入ってきたのは、如何にもガラの悪そうな男だった。
はっきり言ってチンピラだった。
「お邪魔しまーす」
「いらっしゃいませ」
受付として、ホテルZの従業員の1人として此処に来たお客様を接客する。
「お泊まりですか?」
「いえ、ワッチはあくまで使いの者でね。此処にお住まいのタウニーさんはどちらへ?」
「タウニーでしたら、少し前に用事で外へ出かけています。何か御用でしたらお伝えしますよ?」
俺がそう言うとチンピラ風の男は「そうですか…」と言って、懐から紙を取り出してそれを受付の机の上に置く。
「実はタウニーさんにはこの度我々から借金がありまして、その取り立てに参った次第でしてね」
「「……は?」」
借金という聞き捨てならないワードに思わず俺と朝食を食べていたデウロちゃんの声が重なる。
その紙を確認して見ると、そこには確かに借用書と書かれていた。
タウニーが自分で書いたであろう筆跡で、タウニーの名前があった。
「嘘でしょ…⁉︎」
「そちらさんの従業員の借金100万。いつ返して頂けるのかぜひお聞きしたくてですね、此処に参った次第です」
うっわマジかよアイツ……と思ったが、借用書をよく見ると小さい文字で利子がとんでもなく膨らむような仕組みが書かれている。
パッと見せられたらまずは見分けられないだろう。
人の悪意という物に疎いタウニーにこれを見抜くのは無理だろう。
「あー……つまりアンタは取立てに来たと?」
「そう解釈してもらっても構いません」
「はわわ……」と狼狽えるデウロちゃんを横目に俺は少し考える。
サビ組については正直言ってそこまで脅威じゃない。メガシンカを使えるトレーナーが一万人以上いる組織なら話は別だが、サビ組にそんな戦力は保有していないだろう。
この明らかな不当な利子を理由にサビ組と抗争になってもMZ団にとってはいつもの暴走メガシンカの対処と同じ程度の出来事でしかなくなる。
俺が懸念してるのはMZ団メンバーの成長だ。
果たしてこのままMZ団の子供達を巻き込んでいいのか?
これからアンジュの暴走が始まるとして、ちゃんと対処できるのか?
俺にはそれが不安でならない。
何せつい最近まで彼女達は普通の生活を送っている普通の子供達なんだから。
そんな急に明らかにヤバそうな兵器と戦う覚悟ができるとは考えにくい。
暴走したアンジュが最終兵器並みの兵器だとするとその脅威はサビ組の比じゃない。
土壇場で怖気付くかもしれない。
恐怖でいつも通りにポケモンへ指示を飛ばす事が出来ないかもしれない。
だから俺はMZ団の度胸を試す事にした。
「分かった。ちょいと表出て話をしようぜ。ここじゃあの子が怖がってて話しにくい」
「分かりました」
そう言ってチンピラ風の男はホテルを出る。
俺もそれに続こうと受付から席を立つ。
「あの…タチバナさん…」
「気にすんな。デウロちゃん達は今まで通りにしてればいい」
心配そうにするデウロちゃんに俺は当たり障りの無い事を言ってホテルを出る。
ホテルを出た俺とチンピラ風の男は向き合う。
まるでこれからポケモン勝負でも始めそうな雰囲気だ。
「して、払って頂けるんですか?払えないののらば此方も相応の態度を取るつもりです」
「心配しなさんな。金を用意するには銀行から金を下ろす必要がある。ちょっと待っててくれるか?」
俺のあっさり支払おうとする態度にチンピラ風の男は驚いた顔をする。
「……その言い分からすると、あなたが代わりに払うと?」
「一応アイツの保護者だからな」
「そうですか、では念のため連絡先を控えさせてもらえますか?」
きた。
此処で俺は適当な紙にスマホロトムの番号を書く。自分の番号の他にキョウヤ君の番号も添えて。
「この番号は?」
「MZ団のメンバーの1人の番号だ。そっちの方がアンタも都合の良いだろう?」
何から何まで協力的な俺の態度にチンピラ風の男は怪訝な表情で紙を受け取る。
サビ組からすれば俺はわざわざ人質を差し出したクズ野郎にしか見えないだろう。
MZ団でキョウヤ君の番号を教えたのは彼が主人公だからだ。
俺は結局レジェンズZAをプレイしてないが、大体のシナリオの流れと彼が主人公のポジションにいる事は分かる。
それに元の世界で見たゲーム最新情報では、サビ組はSNSでバズってたあのカラスバとかいうトレーナーがいる。
今回を考えればおそらくゲーム本編ではこの借金の騒動で主人公がカラスバと相対する展開だろう。
そしてなんやかんやあってカラスバとバトルしたりして主人公が気に入られる流れと見た。
「そんじゃ、ちょっとミアレ銀行行って来るわ」
俺はそう言ってミアレ銀行に向かう。
その道中、チンピラ風の男は監視のつもりなのか尾行してくる。
甘いな、周囲を観察してみたが、彼以外のサビ組のメンバーはいないみたいだ。
この程度の尾行はちょっと音速で動けば簡単に撒ける。
明らかに舐められてる。
今に見てろ。こっちもこっちでタウニーを騙した事をムカついてんだ。
そしてミアレ銀行に着いた俺は100万円を下ろす。俺の貯金…だいぶ減ったな…
まぁいいさ、代償は高いがこれでサビ組にMZ団へ2度と手を出させないように釘を刺してやる。
ミアレ銀行を出ると同時に出来るだけ音を立てないようにミアレ銀行の壁を伝って屋上まで音速を超えた超高速で駆け上がる。
下を見ると俺を見失ったチンピラ風の男が焦っているのが見える。
これでしばらくしたら俺が教えておいたキョウヤ君の番号にかける事だろう。
さて、これからはサビ組に来たキョウヤ君にもしもの事が無いようにサビ組に潜入だ。
もしサビ組がキョウヤ君やMZ団のメンバーに危害を加えるようなら、サビ組にはこのミアレから出ていってもらおう。
ん?ミアレ?
「……あれ?これってもしかして良い機会じゃねぇか?」
ふと、俺に妙案が思いついた。
サビ組と協力体制を敷いて万が一にアンジュが暴走した時に対処してもらうってのはどうだ?
街を守る為っていう大義名分があれば少なくとも悪い顔をしない筈だ。
サビ組だけじゃない、それ以外の組織にも協力を仰いで万が一に備えた体制を敷いておけば、アンジュが暴走した時に少なくとも被害は最小限に済む筈だ。
でも、俺にそんな上手い交渉とか出来るかな…。口が上手い方じゃないから絶対相手に怒らせちまうかも…。だって相手ほぼ反社だし…。
それにタウニーを騙した借りも返さないと気がすまねぇし…
駄目だ…俺自身がサビ組にムカついてちゃ上手い交渉とか絶対出来なさそうだ…
もう面倒だから交渉が上手くいかなかったら最終手段としてテキトーにボコすって事にしよう。
別に無理にサビ組の手を借りたいワケじゃねぇし、協力できないならできないで諦めりゃいいだけだ。
そんで報復でMZ団やホテルZの誰かが傷つくような事があったら、
そん時は…
side カラスバ
別にオレは自分が正義だとは思うてへん。
人様に言えん仕事をやっとるオレらサビ組はいずれ報いを受けるやろう。
別にそれでええねん。汚れ仕事は誰かがやらなあかん。
いずれ来る報いが来るまで、薄汚れた手でオレはこのミアレを護り続ける。
そう思って、今日までオレはサビ組のリーダーとして生きてきた。
そんで今になって思い知らされた。
"報い“というのはいつだって唐突にやってくる事を。
「じゃっ…俺の勝ちでこれからサビ組はMZ団の傘下って事でよろしくな。表向きはあくまでもMZ団と協力体制を敷いたって事で部下の皆さんにはそう言っとけ、その方が部下の人達も納得するんだろうしな」
オレの目に映るあの“化け物"はオレの相棒のペンドラーも、ジプソのエアームドも、仮に他のサビ組の者達のポケモン達を総動員したとしてもこの男には決して敵わなへん。
「俺は別にアンタ等と事を荒立てるつもりはなかったんだぜ?キョウヤ君とデウロちゃんにも手を出さなかったし、ちゃんと百万も持ってきて一見落着って事にしたかったんだぜ?」
ペンドラーがメガシンカしてもこの男には擦り傷一つ付けられない。
事前情報で怪物染みた戦闘能力を持ってるとは知ってはいたが、いくらなんでも強すぎる。
「おい、カラスバさん。スマホロトムにランクアップ戦の知らせが来てんぞ?」
自惚れていた…!
自分は実力は高い方やと自負していたが、この実力差は無いやろ…⁉︎
「お、次の相手はキョウヤ君か。しっかり相手してくれ、脅しとかは無しで頼むぜ?」
あの男はそう言って立ち去った。
「クソッタレッ!!……クソッ…」
悔しさに体を震わせて、無力を噛み締める事しか出来ない。
手を出すべきではなかった…あの男の身内に…!
「カラスバ様…私はまだ…!」
そんな申し訳そうな顔をしながら踏ん張んなやジプソ。調子狂うやろ。
「もうやめろやジプソ。今回は相手が悪かったんや…」
「ですがっ!このままじゃサビ組がっ⁉︎」
声を荒げるジプソを宥めようとするが、ジプソ本人は納得いっとらん。
無理もない…それも当然やろう。
「私は認めませんよ⁉︎サビ組がMZ団の傘下になるなんて⁉︎」
ほんと…どうしてこんな事になったんやろなぁ…
そもそもの始まりはタウニーとかいう嬢ちゃんがウチの組に借金をした事が始まりやった。
正確には借金をするように仕向けたんやが、そこは仕事上仕方ないやろ。
最初は多少の金を貸して利子で10倍まで膨らまして金を返してもらう。
こんなんはオレらみたいな組織がよくやる手口や。
それにあの嬢ちゃんは引っかかっただけ。
返せないようならオレらが出す仕事をやってもらう。
オレらサビ組にとってはいつもの事や。
そろそろあの嬢ちゃんにただ働きしてもらおうかと思ってタウニーのいるホテルZにウチの者を送ったんやが、あろうことがそこにいた嬢ちゃんの保護者の奴が「金を払う」言うて金下ろして逃げたと報告があった。それもタウニーの所属するMZ団とやらの団体のメンバーの連絡先まで寄越して。
保護者が聞いて飽きられるわ…。
こういった仕事をしているとこういうクズはよく見かける。
今回はそういう一件やっただけやと思って、その連絡先に電話してそのMZ団のキョウヤとかいう奴に嬢ちゃんの借金の事と伝えた。
そしたらそのキョウヤとかいう坊主はあろう事かこのサビ組に直接乗り込んで直談判しに来よった。
「利子がおかしいです」や言うて、サビ組の本拠地で一切の怯える事も無く。
中々肝の据わった奴やで…気に入ったわ。
相方のデウロとかいう嬢ちゃんは終始怯えとったがな。
そしてキョウヤ達との話し合いが終わってキョウヤがサビ組を去った後の事やった。
「悪い、邪魔するぜ」
キョウヤ達がオレの部屋を出た後にすぐ天井から一人の男が降って来た。
「誰や⁉︎」
「何者です⁉︎」
不審者の侵入にオレはとっさに一番の相棒であるペンドラーを出す。
控えにいたジブソもエアームドを繰り出した。
「落ち着いてくれよ、サビ組のリーダーとそのNo.2が情けねぇ。上層部ってのはもっと冷静に構えとくもんだぜ?俺は別に争う為に此処に来た訳じゃないんだ。交渉に来たんだ」
「不法侵入者がよう言うやないけ…」
サビ組の本拠地にいるっていうのにこの男は余裕を崩さない。
この裏の世界では舐められたら負けや。実力が無くとも面が厚ければ逆境を乗り越える事もある。
おそらくやが、この男もその部類やろう…。
「俺はタチバナ。タウニーの保護者だ。一応MZ団の団長もやってる」
「なんや、わざわざ四天王の一人がサビ組に何の用や?」
「なんだ知ってんのかよ…めんどくせぇな…」と男は呟く。
こっちもこっちでそれなりに調べはついとる。
タウニーの宿泊先のホテルZに出入りしておる奴は大体調べはついとる。
ただそこのオーナーのAZとかいう爺さんとこのタチバナとかいう男の素性はよく分からんままやった。
タチバナについて分かっているのは二つ。
一つはある日突然四天王になったトレーナーである事、もう一つはポケモンすら倒す腕っぷしをしているという事。
腕っぷしの方は情報源が配信サイトの動画やから信憑性が低いがポケモントレーナーとしての腕は未知数や。
四天王なだけあって高い実力はあるようやが、一部では四天王最弱との噂もある。
警戒は怠らん方が良さそうや。
「タウニーの借金100万円。払いに来たぜ」
タチバナはそう言って「そらよ」とカバンをオレの机の上に投げ渡した。
「ジプソ」
「はい」とジプソがカバンの中を検める。
その中には金が入っていた。
パッと見ただけやがおそらくちゃんと100万あるんやろう。
「100万有りました」とジプソの返事が返ってきたので、タチバナに質問をする。
「なんのつもりや?金払う気やったらわざわざ姿消さんでもええやろ。ましてやウチに不法侵入までして何がしたいんやおどれは?」
オレの質問にタチバナは面倒くさそうな表情を浮かべて答えた。
「確かめたかったんだよ。アイツらがアンタ等みてぇな物騒な連中と立ち向かえるのかをな」
「確かめる?」
オレのその反応にタチバナは「俺がこれから言う事はオフレコで頼むぜ?」と続けて
「俺達MZ団はクェーサー社の下部組織でね。この街で発生している野生で暴走しているメガシンカポケモン…通称暴走メガシンカの対処が主な目的なんだ」
「トレーナーがいないのに勝手メガシンカする野生のポケモン。随分前にそんなんがこの街に発生したニュースがあったな」
「あっ…そっか俺が発生してすぐ片付けるからそんなに知れ渡ってねぇんだった…」と呟いているがよく聞き取れなかったので気にせん事にする。
「最近まで俺がやってたんだが、色々と忙しくなってきたんで、その対処をMZ団のガキ共に任せようかと思ったんだ。その暴走したメガシンカポケモンの対処にはどうしても危険が伴う。それにこれからはもっと強いメガシンカポケモンが出てくるのがクェーサー社の調べで分かってる。だからアイツ等にその度胸があるか確認したかったんだ」
簡潔に説明してくれたが、どうにも納得出来ない事がある。
「なんでその確認の為にオレらサビ組を利用したんや?」
それは確認の為に利用された事や。
別に確認の為に脅すんは大した事はない。だがそれは事前に打ち合わせしていればの話。
何も知らんオレらを利用するのはどうも気に入らん。
「いい時期にタウニーの借金の事知ったんでちょうどいいと思っただけさ。アンタら物騒だしテストにはもってこいだろ?利用したのは悪かったよ」
それに何よりもこの男はオレらの事を舐めくさっとる。
サビ組を舐めとる。
「いい加減にせぇよ兄ちゃん。サビ組舐めんのも大概にせぇや…」
この世界では舐められたら終いなんや。
面子が保っとらんと仕事も組織も成り立たん。
このサビ組を続ける為にはコイツには礼儀を叩き込まなあかん。
「ペンドラー、メガシンカ」
オレのネクタイにあるキーストーンがペンドラーのメガストーンが共鳴してペンドラーがメガシンカする。
「エアームド、メガシンカ」
オレの意図を察したジプソもエアームドをメガシンカさせる。
オレらサビ組の二代戦力や。四天王といえど只では済まさへん。
「覚悟しぃや…アンタの次はホテルZでポケモン大会させてもらうわ。塵一つ残さんで…!」
オレの脅しにタチバナはまだ面倒くさそうな表情を変えんかった。
「へぇ…じゃあアンタら返り討ちにしたら、アンタらの組織、MZ団の傘下になってもらうぜ?」
この男…正気か?
「アホか?この状況でそないな条件呑める訳ないやろ?」
「アホはそっちだ。今俺が負けたらこっちは住まいにMZ団のアイツらまで失う可能性があるんだぜ?こっちがそんなリスク負ってんのにそっちが何のリスクも無いのはフェアじゃねぇだろ?」
厚顔に不遜にこの男はそう告げた。
どこまで人をコケにしよる…
「そんな条件を飲む気は無い。でも、一度吐いた唾は飲めへんで…」
コイツにはもう体の隅から隅までサビ組の恐ろしさを叩き込まなあかん…
「オレらサビ組舐めたからには覚悟せぇや…これからやるんは、お行儀のいいポケモンバトルやない」
この男は四天王、おそらくポケモンバトルの腕前はオレよりも上かもしれん。
だが、何でも有りの勝負なら話は違う。
手持ちのポケモンを総動員させて目の前のクズを処理する。
何でもありの勝負はルールなんぞ無い。
「ジプソ!」
「はいっ!」
オレの合図にジプソは自分の手持ちのポケモンを全て繰り出す。
オレもそれに合わせて手持ち全てのポケモンを繰り出す。
オレとジプソの手持ちポケモン合わせて8体。
対するはタチバナ1人。手持ちポケモンはどれだけおるか知らんがあまり脅威じゃないやろ。
オレの知識、オレのポケモン、そしてサビ組の全てを使ってこの男に恐怖という物を叩き込む。
「サビ組の恐ろしさ…その身に刻みこんだるわっ!ポケモン出す暇も与えんでぇ!!」
ポケモン達に指示を飛ばそうとしたその時、一陣の風が吹いた。
ドッゴォォォンッッ!!という轟音と共に。
「は?」
オレとジプソのポケモン達の姿が消えた。
どういう事や?あの男の動きには目を離さんかった筈や。
なのになんでオレの体は動かんのや…
まるで敗北を悟ったかのように
「後ろ、見てみ」
男がオレの背後を指差す。
振り返るとそこには部屋の壁にめり込んだポケモン達がおった。
「ほい、まず1人」
あの男の声のした方向に急いで顔を向けると、あの男がジプソの額にデコピンしとった。
ズドンッッ!!というデコピンからはまず発する音ではない音がした。
デコピンを喰らったジプソはポケモン達と同様に部屋の壁まで吹っ飛んで壁に打ちつけられた。
「頑丈そうだから普通にデコピンしたけど命に別状はねぇ筈だぜ。多分だけど」
理解が追いつかん。
目の前の男はなんや?
「さっきからそっちも腹が立ってるようだが、俺もそれなりにムカついてんだわ」
本当に人間か?
「なんでアンタらに親切したウチのタウニーが100万なんて大金背負う羽目になるんだ?」
オレらは一体…
「アンタ達がそういう仕事だし?そういうのを見抜けねぇタウニーも悪いのも認めてやる」
何の化け物を敵に回してもうたんや…?
「でもだからって騙したアンタ達がどう考えても100悪いだろ。人の善意につけ込んで金を毟り取るのは駄目だろ普通」
いつの間にかオレの目の前にいた男はオレの顔を右手で掴んで言った。
「俺がキョウヤ君の連絡先をテメェらに教えたのは別に売ったんじゃない。テメェら程度ならいつでも潰せると踏んで渡したんだ」
自分の命を文字通り鷲掴みにされてる。
この男がその気ならオレの命なんて軽く消し飛ぶ。
「ちょっと聞きたいんだけどよ、サビ組にはあと何人くらいいるんだ?メガシンカを使えるトレーナーわよ?」
そこはトレーナーの数やないんかい。
なんでメガシンカを使えるトレーナーを聞くんや?
「あと10万ちょっとくらいのメガシンカポケモンなら、潰すのに時間はかかるが結構余裕で対処はできるぜ?面倒くせぇから全員でかかって来いよ。移動する手間が無い分その方がこっちも楽だ」
正真正銘の化け物や…コイツ…
「……その様子じゃ大した戦力も無さそうだな。ミアレで幅を利かせるサビ組がその程度かよ?戦力を期待して損したぜ」
オレの生殺与奪の件もサビ組という組織そのものの命も全てこの男に支配されてしもうた。
「まぁいいや、使える手足は多いに越した事はない。ついでに忠告しとくがよ」
「もう一回ウチのモンにちょっとでもちょっかい出してみろ」
例え死んででも一矢報いようにも絶望的な事に光明が一切見えへん。
サビ組の皆とは共に命を散らす覚悟やったが、この男相手には無駄死にしかできへん。
「次はサビ組そのものを滅ぼすぞ?」
オレ達は…この化け物に従うしかなかった。
そしてタチバナの命令であのキョウヤに街の困り事を手伝いをさせるだけで借金はチャラという事で話は終わった。
MZ団の傘下にされたとはいえ、結果的に100万という金を手に入れた。
だが、オレらが失った物に比べれば100万なんぞ端金や。
このまま100万貰ったままは癪なんで一回ホテルZに泊まってチップという形でタウニーに返した。
これはタチバナに対する当てつけや。
「お前なんぞに借りは作らん」というな。
今は従ってやるわ、ミアレを守る為に協力すんのは何も不満も無い。
ミアレを護る為に今は協力したる。だが、タチバナ…お前だけはいずれ絶対復讐したる…!
覚えとれ…タチバナ…!
後日、ジェットの護衛を終えてホテルZに戻ってきたタウニーは
「なに借金してんだこのアホンダラぁぁぁ!!!」
という開口一番にタチバナの怒号と共に放たれた人間用に手加減された強烈な鉄拳制裁により、タウニーは数時間は目を覚まさなかったという。
傍目から見ればどう見ても手加減無しで殴ってるようにしか見えないので
「本当にいい加減にしたまえ…!」
「きゅるる……!」
「…ほんと…マジですいませんでした…!」
やり過ぎたタチバナの鉄拳制裁にAZとフラエッテをマジギレさせてしまい、AZの長時間の説教とフラエッテの破滅の光の連打をAZの説教が終わるまでタウニーが目覚めるまで浴び続ける事となり二度と鉄拳制裁はしないと心に決めたタチバナであった。