みみのこ・ファイト・クラブ スタースパーク   作:牡丹雪花

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「…………お見事!」

 酷く眩しく、瞬いている。
 明るい星のようだった。
 目を反らしたかった。

『やりやがっ──やがった! 賭けに負け──せよ!』

 なのに。
 できなかった。

 鮮烈で。
 爽快で。
 痛切で。

 鋭利だった。

『はーい、──さんが権利を行使するので負けた耳は──さん側へ集まれ!』

 強い光。
 瞼を閉じても消えてくれない。
 それは乱反射して、瞳をつんざく。

 どうしてそんなに明るいのか。
 どうしてそんなに笑えるのか。
 どうしてこんなに、前が見えないのか。

 どうしてあたしは、そこにいないのか。

 あたしは。
 どうして。

「撮り──……! はい──ズ!」

 星ではないのか。



第二話 『焔払い』

 

「『試製四型:(しせいよんがた)──」

 

 その二耳(ふたり)は、まるで宿命のライバルであるかのようだった。

 視線を通じて、闘志が通う。

 それは、いずれも燃えていた。

 

 メビウスの方は、静かに激しく。

 一方でヒエンは、熱く高らかに。

 

「──ッ」

 

 だからだろうか。

 

焔払(ほむらばら)』ッ!」

 

 燃えている。燃えているからこそ。

 

「払われた程度で──」

 

 その焔は

 

「消える炎じゃ、ないっての……ッ!」

 

 そう易々とは、払えやしない。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「負けた……」

 みみのこ・ファイト・クラブ銅バッジ戦、アフター。

 

 ミカは今日も、敗北を喫していた……!

 

「リベンジリベンジリベンジ」

 ぶつぶつとつぶやきながら、ずんずんと耳で風を切って歩いていく。

 その先には、赤メッシュの みみのこ が八重桜、そして本日のトーナメント勝者であるサンバイザーの みみのこ ……十六夜と談笑をしていた。

 

「また負けたあぁーー!! チクショ~~!!」

「みみのこバトルはメンタルスポーツ……その程度で取り乱すようではまだまだなんじゃないのかい? ん?? オルビスさん???」

 オルビスと呼ばれた赤メッシュの みみのこ は、余裕綽々で煽りまくっている十六夜に対し、地団駄を踏んでいる。

「クソ~~~~!!! 次は覚えていやがれ!!」

 

 やいのやいの。わちゃわちゃ。

 今日もFCは賑やかだなあ。

 ……なんて、言っている場合ではない みみのこ が、ここに。

 

「ええと……オルビスさん、再戦いいですか」

 

「お、ミカさん~! そういえば今日は初戦でビッシーと当たってましたね。ちょうど今日は観戦しに来てたので見てましたよ~見事にやられてましたが」

「なんですかやえさん、先にやりますか?」

「アッケッコウデスぅ……ここはどうかひとつコイツで……」

 弱々しい声でオルビスと呼ばれた みみのこ を前へ差し出す八重桜。青ざめた表情。

 

「ああ、さっきはどうも。──ミカさん、でしたよね。いいでしょうやりましょうか」

「……おねがいします」

 快く勝負を受けるオルビス。元より、これから近くにいた八重桜か十六夜に勝負を吹っ掛けようとしていたところであった。本日の勝敗的には、どちらかというと十六夜が標的だっただろう。

 

「お、じゃあレフェリーするとしますか」

 レフェリーに名乗りを上げたのは八重桜。

 それに合わせて。

「じゃワタシは実況でもするとしますか」

 流れるように、十六夜が実況席に着いた。

 ……実況席?

 

「さあ始まりました! 今宵も みみのこFC(ファイトクラブ)、実況はワタクシ十六夜、解説を八重桜さんでお送りいたします。どうぞ、よろしくお願いいたします~!」

 

「はいよろしくお願いします」

 そしていつの間にか八重桜は解説席に座っているのだった。

 

「さて今回のマッチアップですが、ミカ選手からオルビス選手へリベンジマッチの申し込みと聞き及んでおります。解説のやえさん、これは非常にアツいマッチなのではないでしょうか!」

「ええそうですねえ。ミカ選手と言えば最近改変したとの事ですが……先日もトーナメントでRed選手に敗退したその後、リベンジマッチを何度も申し込むという血気盛んぶり。近頃期待の()()とでも言いましょうか」

「おお、星のモチーフを汲んだ衣装に絡めてまさに()()……素晴らしい、闘争心に満ちた若耳だ! 対するオルビス選手といえば本日も」

 

「おいいつまでもふざけてないでいいからさっさとやれって!!」

 

 一向に喋り続ける二耳(ふたり)に、しびれを切らしたオルビスが指を差してせっつく。

「おっとオルビス選手、実況席へ野次を飛ばしてきたぞ。これはイエローカードか?」

「やれって……!! こっちはもう準備できてるんだってッ」

 払い除けるようなジェスチャーで二耳(ふたり)を制止するオルビス。

 

 二耳(ふたり)が喋っている間にレギュレーションチェック、目線合わせ、周囲の安全確認までもう済ませていたようだ。

 対するミカも既に準備はできており、呆れたような視線を八重桜へ送っていた。

「アッやりまーす。さあ一戦目いくぞ! お互い見合って、礼!」

 

「よろしくお願いします」

「……おねがいします」

 一礼。長すぎる耳が交差する。

 

「構えて!!」

 

 ──集中、集中……。

 

 先程までの問答はどこへやら。

 構えの合図を受け取ったオルビスは、真剣な面持ちで腰を捻りながら沈み込んでいく。

 頭は真横に向かい、耳は地面と水平線。

 

 ──そう、これだ。今日あたしは、これに負けたんだ。

 

 おかしな構え。不思議な構え。狙いにくくて、厄介な構え。

 それでも。

 

 そこに、耳が生えているなら。

 

「はじめ!!」

 

 一直線。

 ミカは真っ先に耳をもぎに向かう。工夫も何もないただの居合。

 

 抜けた耳は一本。

 

「外した……!」

 同時。すれ違い様にミカの片耳がはらりと落ちる。

「ッ!」

 

 居合で勝負がつかない場合。当然、勝負は終わらない。

 振り向いて耳をもぐか、或いは回避のために動き続けるか。

 そのパターンは様々だが、初動を終えた後の動きは、みみのこ の間で一般にこう呼ばれている。

 

 ──二の矢にのや……!

 考えるより先にすぐさま振り向き、次の行動へ備えた。

 

 しかし。

 

 ──ッ!

 

 耳を捥ぐために伸ばそうとした手のひらは、もうそこに無かった。

 

「いつの間に……!? 初撃ではまだ残ってたはずなのに……!」

 

「お見事、オルビス選手! 流石は二の矢の素早さか!」

「いや、やっぱビッシーの二の矢やたら強いんだよな~何なんだ本当」

 

「二の矢で、もがれた……?」

 信じられなかった。

 だって。たとえおかしな構えであっても、初動でもぎに行く動きならば、振り向くタイミングというものは概ね同じはずだ。

 仮にもし、向こうが速かったとしても、顔すら見る間もなくもがれているなんてことは、通常なら有り得なかった。

 

「そんな、あたしが振り返るまでのほんの一瞬で……?」

 

「おっとミカ選手、動揺が見られるぞ〜大丈夫か! みみのこバトルはメンタルスポーツ、常に自分の勝利を信じているものが勝ち残る。それがみみのこバトル!」

「ええしかし、自信と慢心を履き違えては足元を掬われる……それがみみのこバトル! 今宵もまたアツい戦いが繰り広げられております!!」

 

「うっさい! やえさん次!」

「ア、ハイッ! では礼省略、お互い構えて!」

 

 ──集中。

 

 どう、負けたのだろう。

 負けた悔しさよりも、ただ疑問が先行していた。

 理不尽なことは、理不尽を理解するまで、理不尽であると憤慨することはできない。

 

 八重桜の居合は的確で、

 ヒエンの居合は堅実で、

 Redの居合は速く精密だった。

 

 一体何が、違うのだろう。

 

 ──居合。……二の矢。

 

 オルビスは、先程同様に腰を捻って横向きに沈み込む。

 まるで本当の()()のように腰の辺りで腕を溜める構え。

 

 考えてみても埒が明かない。

 

 ──なら。

 

 一歩、片足を()()()()()

 すると視界が広がって、その構えがよりはっきりと見えた。

 

 ──あ、これ。

 

「はじめっ!!」

 

 

「わかんないやつだ!!!」

 

 

 瞬間、溜めていた力を一気に開放するように上半身を起こし、ミカの耳へ両腕を伸ばすオルビス。

 先程よりもやや遠い間合い。

 しかし。遠くても、踏み込んで、届かせる。

 

「げ──っ」

 咄嗟に回避をしようと身をよじり耳を逸らすミカだったが、そのうちの一本が落ちた。

 

「ミカ選手、何やら開始と同時に叫んでいたが、回避は片耳が間に合わず残り一本だ!!」

「無理に張り合わず、距離を空けて相手の動きを見てみる──この判断は非常に素晴らしかったがしかし! あーー!! 返す刀でもう一本ももがれてしまったか!!」

 

 抵抗虚しく、耳無しで大の字になるミカ。

 もげない方の小さな耳には、二耳(ふたり)の実況解説が次々入ってきた。

 

「やはりオルビス選手、強い! あの独特の構えからなる特殊な居合……やえさん、アレには何か技名などはあるのでしょうか」

「『逆波(さかなみ)』……逆さの波と書いて、『逆波』と名付けられた技ですね。オルビス選手の技の中でも、特に対処の難しい技となっております」

 

 ──ん?

 

「おお、『逆波』……!クぅ~~~カックイ~~~~!!! してやえさん、そちらの技……いったいどのような技なのでしょう?」

「ふふ……よくぞ聞いてくれました! この『逆波』という技……『逆波』という、技は……ふふ、折角ですのでオルビス選手本人へ聞いてみるとしましょうか!」

「あんましよくわかってないだけだろアンタ」

 

「あの」

 

 それは、明白な疑問符だった。

 

「さっきから、その。()()()()……? っていうのは、何ですか……?」

 

 ──『逆波(さかなみ)』。

 

 先程から八重桜や十六夜が口にしている単語。それは、初めて聞く単語だった。

 みみのこFC(ファイトクラブ)では時折、みみのこ達の間でのみ通じる固有の名称が生み出されがちだ。

 やれ『居合』だの『瞬歩』だの、それらは共通言語として、ことFCでは一般名詞であるかのように用いられることが多い。

 これもその類いだろうか、とミカは思っていた。

 

「お、これですか!」

 八重桜がよくぞ聞いてくれたとばかりに答えた。

「これは、()()の名前ですよ!」

 

 ──()()

 

「ワザ……? それは、『居合』とかとは違うんですか」

「ウウン……まあ解釈は(ひと)によって異なるし一概には言えない……ですが、わたしからは”違う”と答えさせていただきましょう」

 

 曰く、『居合』『回避』『不動』は()であり、()()はそこからさらに細分化された固有の動きであるという。

 

「では()とは何なのか……は、長くなりそうなので一旦置いておくとして。

 例えば……さっきの、ビッシー──オルビスさんの動きだと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()動き、あったと思います。あれは『逆波』と本耳(ほんにん)が名付けている()()です」

 

 ミカはトーナメントと先程の試合を思い起こし、八重桜の説明と照らし合わせる。

 確かにそれは、自分が負けたときの動きそのもので、()()()があった。

 

「そんな風に動きに名前を付けて、ワザとして使用している みみのこ は一定数いるんです。もちろん、わたしもその一耳(ひとり)。わたしの場合、()()()()()には全てに名前を付けるようにしています」

「全てに、名前を……?」

「ああ、なんというか。得意な動きとか、やりたい動きとか、ついやってる動きとか。そういうのを一度見つめ直して、名前を付けることで整頓しているんです」

 

 ふと。基本的な事を忘れていたとばかりに、あっ、と八重桜が声を漏らした。

 

「ミカさんは、『瞬歩』はご存知ですか」

 

「それなら、知っています」

 ビンゴとばかりに、八重桜の声が浮き立った。

「それ! 実は元々イジャヨの()()なんですよ。見様見真似で様々な解釈が広まった結果、今の『瞬歩』の共通項は”遠間からの居合”のようなものになっていて、より低い姿勢やより遠い姿勢、或いは横向きになってみたりと、多種多様な動きが開拓され──」

「まずい! やえさんが無限に話すフェーズに入ってしまった! こうなったらいつまでも喋り続けるぞ!」

 暴走し始めた八重桜を、慌てて十六夜が軌道修正に入る。危ないところだった。

「危ないところでした……飲み込まれるところだった。

 ええと、つまり! 何が言いたいかというと、見様見真似の動きは、たとえ真似でもオリジナルの動きだよって事です!!」

 

 つまるところ。

 

 ここは、道場や教室ではない。

 実際にどう身体を動かすのか。それを知る術は、言葉と図による説明のみ。

 重心は。膝の曲げ具合は。つま先の角度は。肩の脱力具合は。

 触れることのできないこの世界で、口頭だけの説明にはどうやったって限界が存在する。

 ここで知ることができるのは、ワザの()()のみ。

 どういう目的で、どういう動きをしているのか。

 

 それを知った上で、どう動くのか。取り入れるのか。

 それは最早オリジナルの手を離れ、使用者の解釈に委ねられる。

 

 今の みみのこFC(ファイトクラブ)に、多様な『瞬歩』があるように。

 

 だからこそ。

 

「ミカさんも、もし自分の動きがあったら名前を付けてみてくださいよ! 楽しくなりますよ!」

 この みみのこ は、吞気にこう言うのである。

 

「あたしの得意……やりたい、動き……」

 

 ──自分の、動き。

 ミカは訝しむ。()()()()()とは、何だろうかと。

 居合は居合で、回避は回避だ。そこにオリジナリティがあるわけでも、これと決めているやり方があるわけでもない。

 けれどもし、それがあるのだとしたなら。

 

 ──ちょっと、いいな。

 

 と、そう思う。

 

「まああくまでわたしはそうしている、というだけですのでね。そこの赤メッシュは違うみたいだし」

 言って、オルビスの方へ視線を移す八重桜。

「何だよ、別にいいでしょうが」

 

「あたしには、わからないかもしれません……あたしはまだ、何となくで戦っています」

「完全な感覚派……ってことなのかな」

 口元に手を当てて、何やら感心するような八重桜。そういうのもあるか……などとぶつくさ言っている。

 そこに。

「フゥン、完全感覚Dreamerってコトね……」

 いつの間にかショッキングピンクの みみのこ が立っていて、八重桜の肩に肘をついていた。

 

「では歌います。『完全感覚Dreamer』」

 

 

 

「So now my time is up

 Your game starts, my heart moving?

 Past time has no meaning for us, it's not enough!

 Will we make it better or just stand here longer

 Say it "we can't end here till we can get it enough!!"

 

 絶対的根拠はウソだらけ

 いつだってあるのは僕の

 自信や不安をかき混ぜた

 弱いようで強い僕!!

 

 This is my own judgment!! Got nothing to say!!

 もしも他に何か思いつきゃ速攻言うさ!!

 「完全感覚Dreamer」がボクの名さ

 Well, say it ? well, say it!!

 あればあるで聞くが今は Hold on!

 

 Yeah when I'm caught in fire

 When I rise up higher

 Do you see me out there waiting for the next chance we get

 Will we make it, IT'S NOT ENOUGH or just stand here longer

 Say it "we can't end here till we can get it enough!!"

 

 確信犯? 知能犯? NO NO NO!!

 いつだってその場しのぎの

 持論や理論を織り交ぜた

 自由さユニークさもなく

 

 This is my own judgment!! Got nothing to say!!

 もしも他に何か思いつきゃ速攻言うさ!!

 「完全感覚Dreamer」がボクの名さ

 Well, say it ? well, say it!!

 You know I've got to be NUMBER ONE!!

 

 どうだい? 予想外?

 面食らって,はばかれて

 後退? して撤退?

 ってYeah

 

 完全感覚Dreamer的空想!!

 誰が何を言おうが言わまいが無関係!!

 どうやったっていつも変わらない

 カべをヤミをこれからぶっ壊していくさ!!

 

 完全感覚Dreamer

 

 When I'm caught in fire

 When I rise up higher

 Do you see me out there

 I can't get enough! Can't get enough!!」

 

 

 

「あじゃあ自分はこれで」

 

「え、今の何だったんですか……?」

「申し訳ないが我々にもわかりません。えっと? 何がなんだったっけ?? くっそ、アイツ荒らすだけ荒らしていきやがった」

 オルビスは頭を抱えながら、もう遠くにいるショッキングピンクの みみのこ を一瞥する。

 その みみのこ は、キッスを投げていた。

 

 そこへ。

「お、ワザの話をしてるのかい?」

 やってきたのは、黒い軍服風ジャケットの みみのこ。

「何で今の流れで分かるんだよ」

「?」

「いや来てくれて助かった本当にありがとう」

「メビウスさん! いや~そうそう、メビウスさんも技名つけてますよね~!」

 

 メビウス。その名前と見た目に、ミカは心当たりがあった。

 先日のヒエンキルバッジ戦。自分の後に、挑戦していた みみのこ だ。

 そして、そのワザの名前も、憶えている。

 

「……『焔払い』、ですよね。先日見ました」

 

 ──『焔払(ほむらばら)』。

 

「ああ、おれの前にヒエンに挑んでた(かた)か。そう、『試製四型:焔払(しせいよんがた ほむらばら)』」

「ウワーーーーーーー!!!!!」

「カッ……カッケェ〜〜〜〜〜!!!」

 八重桜と十六夜が歓声を上げる。

「へえ~! それはどんなワザなんです?」

「アイツの対策で試しに考えてみたワザなんだけど、ううん、なんていうか。動きって言うよりは心構えみたいな感じかな。アイツの動きに合わせるというか。先を読むというか」

「ってことは『不動』にあたるんでしょうか! ワー! いいなーー!」

「そこのヲタク、静かに」

 ぴしゃり、と。宥められる八重桜。

 

「まあ結局、勝てなかったんだけどね。もう少し工夫が必要かな……。

 払われた程度じゃ消えない──か。アイツめ、カッコイイこと言いやがる」

 

 その手は、燃える翼へ未だ届かずにいた。

 対策を練って尚、あのヒエンという みみのこ は、()()だかで対抗してくる。

 

 ──対策。

 そういえば、自分はいつも行き当たりばったりだったな。と、ミカは思い耽る。

 ある程度戦うことさえできないようなら、対策も何もない。何をすることもできずに、それ以前の部分でただ負ける。それが勝負の世界だった。

 本気の猛者を相手にする場合、素耳(しろうと)では手も足も出ずに、ただ見上げる他にない。

 

 ミカは今までずっと、それ以前の部分で負けていた。

 だから。

 悔しくて、強くなりたくて、練習した。

 それでも、まだまだ足りなかった。届かなかった。及ばなかった。

 少しは届いたかと耳の先が触れそうになっても、その先で、まだまだ先が見えてくる。

 

 そしてそれは、ずうっと遠い。

 熱い炎には近づけないし、眩しい太陽は直視できないし、流れ星には追いつけない。

 

「対策、かあ……」

 

 ミカは空を見上げる。

 と言っても、鈍色の天井がずうんとそこにあるだけだ。

 

 ───「ミカさんも、もし自分の動きがあったら名前を付けてみてくださいよ! 楽しくなりますよ!」───

 

 それでも、その重さが心地よくて。

 

「あたしの動き……」

 

 なんだか、火の粉くらいなら払えそうな気がした。

 

 

 

 

 

 次回へ続くッ!!

 

 

 

 

<次回予告>

 

 十六夜です。

 や~今日はバッジ戦も勝ったし、悔しがるオルビスさんも見れて気分がいいね。

 ク~~~!! たーのし~~っ!!!

 ワザの名前についてはよくやえさんやヒエンさんと話して、内なるを厨二病をバクハツさせて楽しんでいるよ。

 『兎月閃(とげつせん)』。『月の苦悩(ムーンスティング)』。『尽詠(つくよみ)』……。

 

 ええと、次回は……え!? 来週はミカさんが大暴れ!?

 オマエが金バッジ泣きわめき女なら、オレは金バッジビキニ男だ。覚えておけ。

 

 次回みみのこ・ファイト・クラブ スタースパーク

 

 第三話

 マズルフラッシュ

 

 来週も、構えて……はじめッ!!!

 

 




 みみのこユーザーの『pascal682』さんに、赤メッシュの みみのこ の名前を付けていただきました。
 オルビスさん/ちゃん/くん です。
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