ボンゴレ10代目の孫、雄英ヒーロー科に入る 作:息抜き型のんびり屋三太郎
雄英高校ヒーロー科。一般入試で入るには高すぎる壁、そう倍率が高すぎるのだ。
受験者数に対し、ヒーロー科の定員は40人。推薦枠の4人を加えての計44人しか雄英高校のヒーロー科は受け入れていない。
なんとも難易度の高い……。
「実技試験……! どういうものが来るかは分からないけど、なんか行けそうな気がする」
「あたしは筆記の方が不安よぉ……
姉ちゃんは隣を歩いている、セミショートくらいの黒髪を後頭部位でまとめた女の子、
「……私は大丈夫。ボスがいっぱい勉強見てくれたから」
「えっ!? なにそれ聞いてない!! あたし、ツグの山勘以外なにもしらないんだけど!?」
「……ボスの山勘が外れることってないんじゃ?」
「外れても外れなくても勉強はちゃんとしようね。姉ちゃん、僕に出そうなところしか聞いてこなかったし」
「だってそっちの方が効率いいし……」
「……普通に勉強した方が最終的に効率はいいよ?」
「汐やツグみたいに要領いい訳じゃないのー! それにもう筆記は終わってるんだし! 実技よ実技!!」
形勢が悪くなるとみて、話を切り替えようとする姉ちゃん……全く、ちゃんと勉強すればいいのに……
「ランダはどう?」
僕の右隣を陣取っている、銀髪を肩に当たらないくらいに伸ばし、メガネをかけている男の子。
「言ってくれたら勉強みたのに……」
「そういう訳にはいきません!! 11代目に迷惑をかけられませんから!!」
「いいんだけどなぁ……迷惑でもないし」
「いえいえ! 11代目の右腕に相応しく、勉強は自分の力で何とかします!!」
意気込むランダだけど、うん。まあ、筆記は姉ちゃんの言う通り終わってるから、何とかなれーって感じだし、これから実技試験のことを考えると、今気にかける必要は無いのかもしれない。
「うーん、とはいえ、なんか締まりが悪いよねぇ」
「ここは、『アレ』やっておきます?」
「あー、あれね。いいんじゃないかしら。汐は?」
「……私も気合い入れておきたい」
「よし! それじゃあ、今回は4人バージョンだ!」
僕ら4人はその場で円を組み、互いの肩に腕を回す。そう、円陣を組んだ。
じいちゃんの中学時代から続く気合を入れるための儀式。きっかけは、じいちゃんの時のリング争奪戦らしいのだが、僕らも2年前、それに習い取り入れるようにした。
実際やる気も上がるしね
「それじゃあ、みんな合格目指して! ボンゴレー!! ファイ!!」
「「「おー!!」」」
──―
場所は移り、講堂。実技試験の概要についてオリエンテーションが行われる。
定刻になり、壇上の金髪のオールバック……オールバックでいいんだよね? もしかしてモヒカンとかの方が正しいのかな? の人が試験の概要をプレゼンし始めた。
一応、配布されたプリントにも目を通してながら聞こう……。
えぇっと、試験会場はAからGまでで、僕は……Dか。姉ちゃんがEでランダがF、汐がGか。同じ中学同士での連携を避けさせるためかな?
まあ、そうか。個人の能力を見たいのに、勝手知ったる同級生と連携なんてしてたら、見れないなんてことも有り得るわけだし。
で、仮想敵として会場に5種類のロボットを配置してて、Aが1ポイント、Bが2ポイント、Cが3ポイントで……うわ、Dで5ポイントか……結構、強めに作られている可能性が高い……で、Eが0ポイント……
壇上の先生の『仮想敵を4種多数配置している』という言葉とプリントの差異が気になったのか、メガネの真面目くんが手を挙げその事を質問していた。
先生いわく、「おじゃま虫」とのこと。……まあ、ギミックなら無視するのが懸命だと思うけど……そもそもが『仮想敵』だ。つまり、意志を持って破壊活動を行う可能性のある存在を、実力不足だからという理由で避けるというのは……僕としてはあまり好きじゃない。
並盛町大好きなあの人が、倒せそうにないので時間稼ぎもせず逃げますなんて行動取ると思えないし、風紀委員の誰かが逃げ出したりなんてしたら……うん、たぶん、噛み殺されそうだ。
そう考えると、このギミックというより0ポイントは倒せないかもしれないけれど、みんなと協力して倒してね。みたいな敵を想定しているのかもしれない。
即席のチームでこのギミックをどう突破するのか、また、点数の奪い合いをしながら、折り合いをつけ協力することができるのか、そういう所を見られる試験……って考えるのが正解か……
「以上が実技試験の概要だ! 各自、試験会場に向かうように!」
その指示に従い、僕らは各々の試験会場に向かった。
──―
試験会場に着き、周囲を見渡す。
みんな表情が硬い。どう見ても0ポイントロボ一緒に倒そうなんて言える雰囲気ではない。
それもそうだ。試験内容的に、他者より多くポイントを得なくちゃいけない。つまり、ポイントの奪い合いになるわけだ。
そして、5ポイントの仮想敵は各会場に7体配置されているらしい。
数も絞っていることから、明確に『強敵』として配置しているのはわかる。
少なくとも0ポイントの『おじゃま虫』よりは重要度が高い。
うーん、仮想敵がどこに……
『はいスタート!!』
「ふぁ!?」
『実戦じゃカウントダウンなんてねぇんだよ! 走れ走れぇ!』
油断してたなぁ……こういうことするんだ。
周囲を見るとほとんどの人が走り出していた。
会場内は物の見事に色んな個性で溢れかえっている。少し遅れて会場に入ると1ポイントの敵が現れる。
『標的捕捉! ブッ殺ス!!』
来てくれる仕様か。ありがたい。
「とりあえず」
姿勢を低くし、接敵。
「1点」
ボクシングのストレートの要領で右拳を仮想敵に叩き込む。バゴンと装甲板が凹む音のあと、1ポイント仮想敵は行動不能になった。
思ったより弱かったな。
そんなことを思っていると他の仮想敵もわらわらと僕を捕捉していく。それを、ひとつずつチマチマ倒し、とりあえず18点くらいにはなった。
「接敵してくる仮想敵は1、2点のものばかり。3、5点の仮想敵は別の動きをしてるってことかな」
だとすると、ちょっと探さないとな。5ポイントの仮想敵を探しながら、周囲を見渡す。
怪我をおっている人もいなくは無いが、軽傷程度で済んでいそうだ。
現状、5ポイントの仮想敵とは出会ってない。ただ、配られたプリントにあったシルエット的におそらく……
「モスカ……だよね」
「モスカ……?」
……ッ!? やばい。聞かれた……?
「あ、ごめん。聞く気はなかったんだけどさ。たまたま聞こえちゃって」
「い、いや気にしなくていいよ。僕の不注意だし」
聞かれたことに驚いて振り返ると、耳たぶがイヤホンジャックのようになっている女の子がいた。
「それで、モスカってなんなの?」
「あぁ、いや。その。プリントに配られた仮想敵に知ってるロボットがあったなって。それより、ポイント稼がなくて大丈夫そう?」
「それ、あんたにも言えるんじゃない?」
「確かに……あ、そうだ。君、索敵とかってできる?」
「索敵……?」
「うん。ちょっと、協力して欲しいなって」
「協力? あんた分かってんの? これ入試だよ?」
「だからだよ。入試で協力して上手くやれば効率よくポイントを稼げると思わない?」
「上手くやればでしょ? こうやって話してるのも正直勿体ないんですけど」
少し怒気の混ざった反論に、悠長にしすぎたと反省する。
まあ、でも、
「今から5ポイント敵7種こっちに連れてくるから、それでチャラってことにしてくれない?」
「え? そんなこと出来るの?」
「できるよ。まあ、僕の予想通りの性能ならって但し書きはつくけどね」
「んじゃ、ちょっと、それに乗ってみる。あ、でも、ダメだったら、あんたのとる予定のポイントあたしに譲ってよね」
「わかったよ」
僕は首にチェーンからかけていた『5つのリング』を外し、右手の指に全てつけ、中指に付けた『大空のボンゴレリング』に炎を灯す。
「周囲の音聞いて」
「オッケー。ウチの『個性』言ってたっけ……?」
「何となくできるんじゃないかなって思ったんだけど、あってたみたいだね」
「は? え……うそ……こっちに向かって7機。空飛んでるかも。足音って感じじゃない」
「そっか……じゃあ」
僕はジャージのポケットから持ち手に宝石の着いた音叉を取り出し、左から来ていた藍色の5ポイント敵……いや、藍色のモスカの背後を取る。
「え……?」
そのつぶやきが聞こえた時、僕はモスカの頭部に音叉を当て、薬指につけていたリングに赤色の炎を灯す。
次の瞬間に、藍色のモスカは炎を纏い燃えていた。
「はい次。行くよ」
「えっ……? ちょっ。まって」
ごめん、聞けない。
僕は一瞬で耳たぶイヤホンジャックさんの元に戻り、左腕で抱き上げ、正面から来ていた青色のモスカと黄色のモスカに近づく。
「2体石にするから、壊して」
「あーもう! 了解」
2体のモスカの間で音叉を鳴らす。耳たぶイヤホンジャックさんは足元から徐々に石になっていく光景に驚きながらも、耳たぶのイヤホンジャックをモスカに刺し破壊した。
「これであと4体。二人で山分けね」
「右の方。3体! ちゃんとあたしの分も残してよ」
橙、緑、赤のモスカ。距離200って所かな。他にも受験生がいるけど。
「ちょっと飛ばすよ」
「ん」
グッと僕に掴まる力が強くなるのを感じ、一息で横並びになっている三体のモスカの元に飛ぶ。
モスカは両手の銃口を僕に向け、炎を射出する体制に入る。
「ちょ、やばいんじゃ……」
「大丈夫」
僕は人差し指と薬指のリングに炎を灯し前面に展開する。
計6本の炎のレーザーは僕の展開した炎に阻まれ、僕たちに届くことはなかった。
そのままイヤホンジャックさんは橙のモスカにイヤホンジャックをさし、僕は親指のリングに緑色の電気のような炎を灯し、音叉で地面を叩く。
橙のモスカは僕の電気のような炎をくらい一瞬硬直したあと、イヤホンジャックさんの攻撃で破壊された。
「よし」
イヤホンジャックさんは僕の腕の中でガッツポーズをとる。
それを微笑ましく思いながら、僕は人差し指のリングに炎ともし、もう1回音叉で地面を叩く。
「純度100パーセントの雨の炎だ。あとは自壊するだけだよ」
僕は誰に説明するわけでもなく。ただのカッコつけでつぶやく。
「雨の炎って何?」
「聞かないで……ちょっと恥ずかしいから」
「へぇー……って、後ろ!! あと一体!!」
僕はイヤホンジャックさんを下ろし、そのまま両手に橙の炎を灯し、紫のモスカの上部へ飛ぶ。
モスカは僕を追うように両手の指を向け、炎を一瞬だけ溜め放ってくる。
計10本の紫のレーザーは分裂し、僕を襲う
「変な人!」
そのまま背後を取る訳ではなく、直撃した僕にイヤホンジャックさんが叫ぶ。その声に反応するかのように、ほかの受験生が僕を見る。
その呼び方はやめて欲しいなぁ。
「死ぬ気の
この技使う時、つい口ずさんでしまうんだよね……。
宝石で紫色のレーザーを受け止めたからダメージはゼロだよ。
そして、
「死ぬ気の零地点突破・
モスカの近くに着地し、コツンと宝石を当てる。結果、全身が氷漬けになった。
「よし、これで、20点ゲット」
これで38点。そんなことを思っていたら、追加で10機近い1ポイント敵と、5機近くの2ポイント敵に囲まれる。
あ、これやばいかも。
そんなことを思ったのもつかの間。
5ポイント7体を僕とイヤホンジャックさんで全取りしたからか、慌ててほかの受験者が僕の周りの仮想敵を破壊していく。
……もう少し時間があれば零地点状態から戻って音叉で残りも全取りするつもりだったのに……
「ちょっ、大丈夫? メチャクチャ直撃してたけど」
イヤホンジャックさんは僕に近づいてきて、そう尋ねてくる。
「平気だよ。ダメージもなし」
「ならよかった。急に飛んでったから心配したじゃん」
「ごめんね? それより、時間大丈夫そう?」
「あんたのおかげで40点まで盛れたから」
わぁ……僕より稼いでたァ……。
い、いや、あのモスカのあとの方位の何体かを狩っただけだ。そうだと思いたい。
「よし、それじゃあ、試験の続き行こうか。可能な限り3ポイント探していこう」
「協力関係まだ続いてたんだ……まあ、いいけど」
協力し合うのだってヒーローには大事でしょ? そんなことを思いながら、イヤホンジャックさんの方を向く。
「やばいのがくる。多分0ポイントのやつだ。めっちゃでかい!!」
地面にイヤホンジャックをさしながらそんなことを伝えてくれる。
その報告を聞いていたほかの受験者はその場から逃げるように走っていく。
「そっか。じゃあ、いかないとね」
「はぁ!? 逆でしょ、逃げないとやばいの! さっきの紫のヤツの攻撃食らって余計に頭おかしくなった!?」
「違うよ。なんで、メリットのないゼロ点の仮想敵が入試にいるのかって考えたんだ」
「はぁ……それで?」
「誰が足止めをするか、逃げる受験者を安全に誘導できるか、相手にならないと判断して撤退できるか。たぶん、実戦を想定されたおじゃま虫なんだろうって」
「…………」
「一応、ほかの受験者の様子もモスカを狩ってるときに見てたけど、ほとんどが僕たちの突拍子もない行動に対応ができてなかった」
「あぁ、うんわかった。わかったけど、もうそろそろ来るよ!!」
「だから、ここは僕たちでやるしかないんだよ。咄嗟に行動に移れるって証明しちゃったから」
「もうすぐ目の前!! あたし、これ以上付き合ってられないから!! じゃあ、怪我しないようにね!」
大丈夫だよ。これくらいなんでもない。
建物を超える巨大なロボット。みんな逃げて僕の前にはもう誰もいない。
おそらく最初にターゲットを取るなら僕にするだろう。そういう確信もある。
小指のリングに炎を灯し腰を落とす。
「細胞伝達率100%」
巨大な機械の手が僕に狙いを定め襲いかかってくる。もう眼前という距離まで振り下ろされた手に向かい、
「
そう叫び僕は拳を振るう。黄色い光の柱が0ポイント敵を包み込む。
時間にして1秒
その光が止む頃には、0ポイント敵の姿はあとかたもなく消えていた。
『しゅーりょー!!』
クソでかい声が会場を包む。
僕に大量の視線が向けられる。
「……あいつの個性なんなんだよ……」
そんな呟きが耳に入った。
僕の個性? そんなのひとつしかない。
『無個性』だよ。
僕がその一言を口にすることはなかった。
さて、ほかの会場はどうなったかな。