魔法科高校のサーヴァント   作:綾辻真

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今回はかなり短めです。


後日談6『【偽物】と【魔術師】』

――某USNAのとある街の中にある高級ホテル。

 

そこは四葉家も多額の出資を行っているホテルなため、四葉にとって信用と安全面が他のUSNA内にあるいくつもの高級ホテルの中で比較的に高い場所であった。

そのホテルの屋上――落下防止のためのフェンスの()()()屋上の(ふち)に座り、夜の大都会の景色を眺めている者……いや一騎がいた。

 

夜の冷たく、それでいて心地の良い風を受けて夜景を眺めるその一騎――【偽物(フェイカー)】はつい先刻、客室に元造と九島、そして(マスター)である真夜を送り届けた後、その足でこの屋上へとやって来ていたのだ。

 

ただただ夜風に当たりながらのんびりと夜なのに日向ぼっこをするかの如く、夜の街並みを見下ろし堪能する【偽物(フェイカー)】。

しかし次の瞬間、ふと【偽物(フェイカー)】は何かに気づき、視線を虚空に向ける。

そこには何も無い。ただ屋上の、無機質で静かな空間があるだけだ。

しかし、【偽物(フェイカー)】には()()()()()()()()()()()()()()()()、その月と星に照らされた漆黒の空間に向けてフッと笑みを零した。

 

「……おや?夜の散歩でもしているのかい?【魔術師(キャスター)】」

『……真名で呼んでも構わないぞ。今更お前にクラス名で呼ばれても、意味はないだろうしな』

 

偽物(フェイカー)】が見つめる夜空……そこに何も、誰もいないにもかかわらず、はっきりと【魔術師(キャスター)】――『アスクレピオス』の声が響き渡った。

しかし、アスクレピオスは実体化をしない。未だ実体化できるだけの想子を得られていないのだ。

 

(マスター)の元から離れていて大丈夫なのかい?まだ回復しきれていないんだろう?」

『アイツには一言言って、出てきている。要らぬ世話だ』

「気を悪くしたなら、謝るよ。……それで、一体何しに来たんだい?()()()()()()()っていうのは何となく分かるけれど」

『……さっきお前が言った【夜の散歩】というのは、あながち間違いじゃない。『宝具』の使用でしばらくの間は実体化できずにこのザマだからな。歯がゆいものだ。……だがどうにも、話し相手が少し欲しくなってな。マスターが魔力不足で寝たきりな今、思いつく相手が同じ英霊であるお前ぐらいしかいなかった』

「それは光栄だね。……でも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

『…………』

 

偽物(フェイカー)】からのその指摘に少しの間、沈黙するアスクレピオスだったが、やがて口を開く。

 

『……お前はどう見る?()()()()()()()()()()

「どう……と言われても、少し困るね。それが一体何を指してなのかもっと具体的に言ってもらわないと。……ああ、科学技術の発展で何かと便利になってきてはいるみたいだね。近い内に家事の全てを任せられるほどの高性能なロボットが作られるって話だよ。もう人間が台所に立つ必要もなくなるんじゃないかって言われている」

『ほぅ、それはすごいな。――ってそうじゃない』

 

自身が話したかった話題から完全に脱線していたため、アスクレピオスは【偽物(フェイカー)】の言葉に待ったをかけると、一呼吸おいてから真剣な口調で『本題』を口にする。

 

『今のこの世界情勢についてだ。……今のこの世界は明らかに死者が多く出すぎている。ここに来るまでに少し情報収集を行ってきたが……寒冷化に伴うエネルギー資源争奪からなる世界大戦だと?馬鹿な』

「……?別に不思議な事でもないだろう?人類史において、こういった争いは今まで嫌と言うほどあったことじゃないか。……キミが『生きていた頃』だってそうだったろ?」

『ああ、そうだな。だが、今起こっている争いは神話の時代と比べても()()()()()()()()()()()()()。『国際魔法協会(こくさいまほうきょうかい)』とやらの設立で放射能を放つ兵器は禁止されたものの、それ以外の兵器……ミサイルや細菌兵器の(たぐい)は今も研究開発が進んでいると聞く。……それに輪をかけて気に入らんのは、有能な魔法師とやらを生み出すためと言って世界規模で遺伝子組み換えや()()()()()()を平気で行っているという点だ。……これはもう、生命(いのち)への冒涜と言っても過言じゃない』

「医神としてはどうにも見過ごせないと?」

『ああ、大いにな』

 

苛立ちを隠そうともせず、己が本心をその場に赤裸々にぶちまけたアスクレピオス。

しかし、すぐにため息と一緒に冷静さを取り戻すと、アスクレピオスは言葉を続ける。

 

()()が必要だ。現在(いま)の大戦をさっさと終わらせ、無意味な遺伝子組み換えや()()を廃止した……それこそ大戦前の落ち着いた生命の循環を取り戻さねばならない』

「なるほど」

 

相槌を打つ【偽物(フェイカー)】にアスクレピオスはチラリと視線を向ける。

 

『それを手っ取り早く解決できるとすれば『聖杯』ぐらいなものだが……流石に、たった二騎だけで聖杯戦争というわけにもいくまい』

「そうだね。……それに、実を言うと聖杯の事はまだ世間一般的には公表していないんだ。流石にそれまで現時点で公表してしまえば、()()()()()を辿るのは目に見えているからね」

『……だな。自分で言うのもなんだが、英霊という存在だけでもこの世界(時代)にとっては劇物だというのに、聖杯まで知ってしまった日には……正直、考えたくもない』

「『欲望』があるのが人間だからね。……いっそのこと、僕が聖杯となってそれらを解決できればいいんだけど……」

『……何?』

「おっと、期待させておいてなんだけど、それは現時点では不可能なんだ。正直に言うと確かに僕には聖杯としての機能を有してはいる。その機能と『大聖杯』を使って今回、キミを意図的に召喚したわけでもあるしね。……でも残念なことに、僕の聖杯としての機能は本物のそれと比べてもポンコツがいい所でね。……キミの望むような効果は発揮できないよ。もちろん今回みたいに『大聖杯』を補助に使っても、だね」

『……そうか。……だが、英霊の存在が世間に(おおやけ)となったことで、他の国々からも英霊を求める声が多くなるだろう。加えて、大戦の早期終結と僕がさっき提示した改革の件を踏まえたとしても――』

「――やはり、聖杯は必要、か……」

 

夜空を仰ぎ見ながら【偽物(フェイカー)】は小さくそう呟く。

その後、二騎の間に重苦しい沈黙が下りるも、やがてアスクレピオスはため息とともに口を開いた。

 

『今夜はこれ以上、この話題は進みそうにないな。……とりあえず、僕はマスターの所に戻る。マスターの妻を治すという目的は果たせたが、僕はしばらく()()()()()()()()()()()()()()()。世界大戦の方もそうだが、この時代の最先端の医療技術にも大いに興味がある。……ま。『宝具』を使った手前、しばらく()()()()()()が続くのは目に見えてはいるが、幸いなことに英霊は睡眠要らずの疲れ知らずだ。僕は僕の出来る事に力を入れていくことにしよう。……そうだな、一応新たな目標を立てるとすれば、『世界人口を大戦前の人数に戻す』と言ったところか。今は三分の一近くにまで減少しているらしいが、戦前はおよそ90億人はいたらしいしな』

「そうか。キミがそうと決めたのなら、僕が何かを言う必要はないね。頑張るとい『――【偽物(フェイカー)】、聞こえる?』……あ、少し待ってくれ。真夜(マスター)からの念話だ」

 

アスクレピオスとの会話を終了しようとしたその瞬間、【偽物(フェイカー)】の脳内に真夜の声が唐突に響き、反射的に【偽物(フェイカー)】は帰ろうとしていたアスクレピオスに待ったをかけていた。

そして、そのままの状態で【偽物(フェイカー)】は真夜と念話で会話をし始める。

 

『もしもし、どうしたんだい真夜(マスター)?』

『今、何処にいるの?』

『ホテルの屋上だよ。夜風に当たってたんだ』

『もうこっち戻ってきたら?今の時期、夜はまだ寒いと思うし』

『僕の事はそこまで気にする必要はないよ真夜(マスター)。……それに、今までアスクレピオスと話し込んでいたから退屈でもなかったしね』

『――え?キャス……アスクレピオスがそこにいるの?』

『うん。まあ、もう帰るところだけど……』

『…………』

真夜(マスター)?』

『【偽物(フェイカー)】ちょっといい?まだ、そこにアスクレピオスがいるのよね?なら――』

 

 

 

 

 

 

 

『――私からも一つ、神様(アスクレピオス)に相談したいことがあるんだけれど……良い?』

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

魔術師(キャスター)】――アスクレピオスの召喚から、およそ一週間後。

日本に帰国した真夜は、とある屋敷へと訪れていた。

 

――そこで彼女は、()()()()()()との邂逅を果たす事となる。

 

 

 

 

 

「――初めまして、四葉真夜と申します。突然の来訪に驚かれたかもしれませんが、受け入れていただきありがとうございます」

 

「――もう、大方の事情を聞かされているとは思いますが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。……あの人は命を賭けて私を守ってくださりました。あの人がいなければ、今ここに私はいなかったでしょう。このご恩は一生忘れることは致しません。四葉家令嬢として、そしてあの人に救っていただいた一人の少女として心よりお礼と感謝を申し上げます」

 

「――それで、その恩返しとまではいかないかもしれませんが、一つお願いがあるのです――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――貴女が不慮の事故で一生治らないと医師から宣告されたというその障害……ぜひ私どもの方で治療させてもらえないでしょうか……?」




感想欄や下調べの際に見ていた資料などを見返したりしていて、やはり今まで書いていた話の中に勘違いなどで本作との設定の食い違いが多々あるのが発見されました。

やっぱり『にわか』レベルの知識ではそうなってしまっても不思議ではないのかもしれません。

したがって少しの間、今まで投稿したエピソードを見直して、修正を加えていこうと思います。
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