ギルガメッシュは成り行きでアリウス分校の生徒の面倒を見る事になり、英霊探しは一時中断せざるをえなくなった。
無視して帰っても良かったのだが、状況的にはアビドスと似ていた為、アビドスは復興したのにアリウスは無視するというのはギルガメッシュのプライドが許さなかった。
元々ベアトリーチェが良い歳して生徒会長としてアリウスを統治し、洗脳教育を施していた為、まずはその洗脳を解く所から始める事にした。
トリニティ、そしてゲヘナに対する憎しみを植え付ける洗脳を施されていたが、それも長い期間ともなれば影響は大きい。
しかし、ギルガメッシュはベアトリーチェよりもかなり上位の存在であり、真逆とも言える持論を持つギルガメッシュがベアトリーチェに勝利したという事は、ギルガメッシュの方が正しかったのだと思うものも多かった。
「Vanitas vanitatum et omnia vanitas.……ふん、くだらん。全ては虚しい。どこまで行こうとも全ては虚しいものだなどと、虚しいと言って諦めているから虚しさが募るのだ。己を人間だと思うのならば、常に自己の限界に挑み続けてこそ、人は人たり得る」
何事も斜に構えて諦めて行動するなど、人として生きる価値など無い、ギルガメッシュが無駄なものと定義するものの1つである。
その為、ギルガメッシュはアリウスの生徒に己がやりたい事、成し遂げたい事を見つけ、そこに向かってひたすらに努力を続ける事こそ美徳だと教えた。
しかし、アリウスの生徒はやりたい事も成し遂げたいことを見つけられるほどの教養が無い。
そこで、ギルガメッシュはアリウスの生徒を集めて先生らしく一般教養や社会常識の授業をする事にした。ユメが社会科の先生だと言っていた事を思い出し、少し不快になるがそこまでめくじらたてる程のことでもないので、そっと心にしまっておいた。
「王様!人は前に進み続けるもの、なら憎み続けるのも人なんですか?」
「過去の行動を憎む者はいれど、未来の行動を恨むものなどいない。恨みや怒りは常に過去にしか無いのだ。恨み続けている限り、一生前には進めん」
アリウスの生徒への考え方の授業を続け、アリウスの生徒達は少しずつなんで恨んでいたのかを考えていった。
トリニティからの迫害を受けたのはここ数年のことでは無い。直接何をされた訳でもなく、大昔にトリニティに迫害されていたからといってトリニティを恨み続ける事はまともな人間にはまず不可能なこと。
過酷な環境を作っていたのもベアトリーチェであるため、恨むならばもっと適任な存在がいた。
アリウスの思考がベアトリーチェに一瞬向いたが、ギルガメッシュはベアトリーチェの事など蛆虫程度にしか思っておらず、王様が脅威でもなんでもなく、ただの虫だと思っているならば実際は大した事なかったのではないか?と思い、次第にベアトリーチェの事は思考の片隅に追いやられていった。
「お母さん参上」
「どこから湧いた貴様」
ギルガメッシュがアリウスに教育を施していると、ティアマトがアリウス自治区に現れる。
「そもそも貴様、単独顕現を使ったと言ってもアレは条件が整えばというスキルであろう」
「条件は整っていた」
ティアマトはギルガメッシュを指差す。
連邦生徒会長はギルガメッシュを唯一無二、絶対の存在としてこの世に留めようとした。その結果、偶然ではあるがグランドクラスに到達していた。
グランドクラスの召喚は本来ビースト案件であり、ビーストが現れる予兆でも無ければ召喚する事はできない。
「貴様、アルターエゴではないな」
「う、睨まないで」
ほぼグランドクラスのギルガメッシュの前にビーストとして現れれば間違いなくその場で戦闘になる。それを避ける為にティアマトは嘘をついた。
現在のティアマトのクラスはビーストである。
しかし、以前のビーストIIのように理性を失っていない。その理由は連邦生徒会長にある。
ギルガメッシュを魔改造してグランドクラスレベルまで強化した結果、召喚不可になってしまったが、理を犯し、無理矢理召喚しようとした。
それによりグランドの召喚にはビーストが不可欠という事で、ギルガメッシュに引き寄せられる形で最も縁のあるビーストとしてティアマトが選ばれた。
しかしティアマトはすでにビーストクラスを失っており、本来は選ばれる事無い。
本来ならばグランドアーチャーであるところ、今のギルガメッシュはルーラークラス、つまりはグランドルーラーであり本来あり得ないグランドクラスとなっている。
あり得ない現象にはあり得ない法則が働くもので、ギルガメッシュに引き寄せられたティアマトにもビーストクラスが復活していた。
そのついでに不死性も復活しており、殺し切ることは事実上不可能となっている。ただし、神話上でティアマトを殺しているマルドゥークの大弓であれば、殺し切る事は出来なくともその体をバラバラに引き裂き、封印する事は出来る。
「受肉してしまっている以上、今から貴様をバラバラにしてもこの世界が消えるわけでない。貴様の役割は我を召喚する為の触媒、一度召喚して受肉させてしまえば用済みというわけか」
「酷い子だ。でも、そんな酷い子でもお母さんは愛します」
「ならば、あれらの幼童に愛を教えるのは貴様が適任であろう」
ギルガメッシュはティアマトをアリウスの生徒達のところに投げ込み、すぐにティアマトは囲まれる。
ベアトリーチェの事もあり、ギルガメッシュは割とすぐに殺そうとする、それはつまり殺しても何の問題もないという事だと認識し、ギルガメッシュが殺そうとしない者は殺してはならない理由がある、つまりは必要な人だとしてすぐにティアマトを受け入れた。
「貴方は何者なんだ」
薄紫色の髪の少女アツコを守る為にギルガメッシュの前に立った長い黒髪の少女、サオリはベアトリーチェとは次元の違う圧倒的なカリスマを有し、何でも出来る様に見える正に神の様な存在であるギルガメッシュが、一体何のためにアリウス自治区で先生をしているのか疑問に思った。
「我は唯一にして絶対の王だ。王とは民を導く者、アリウスに限った話ではない。だが、疑問に思うことは良い事だ、励めよ」
「なら私達が学び、自分で道を選べるようになったらどうする」
「その時は我も先に進む、それだけのこと。あのチンチクリンビーストの事もあるしな」
ティアマトがビーストである以上、ギルガメッシュを見ていた者はグランドクラスのサーヴァントである可能性が高くなり、敵対する理由が無くなったものの、何を持って敵とするかは個人の裁量であり、警戒を解く理由にはならない。むしろ、敵対した場合の脅威度は跳ね上がった。
仮に、イシュタルがグランドアーチャーとして召喚されていた場合、ギルガメッシュと敵対するのは目に見えている。
「これまで学んできた事は、全て無駄だったのか」
「異な事を言う。我があの蛆を気に入らんのはその思想に過ぎん。軍事訓練やここで学んだ事を無駄だと言った覚えはない」
ギルガメッシュは突然現れた王に対し、疑問を持てるサオリは賢いと思いつつ、どうしてあの過酷な環境にいたユメがあそこまで警戒心も無ければ危機管理能力も無いのか不思議で仕方なかった。
「質問は終わりか?」
「……王は、姫をどうするつもりだ」
「ロイヤルブラッドと呼ばれ、特殊な神秘があるからと言って実験に使ったあの蛆と一緒にしてくれるなよ。我はただ導くだけよ。我にとってお前達は単なる幼童に過ぎん。お前があの小娘をアリウスの生徒会長としたいならばそれを目指せば良い。家族を守りたいのならばそれも良かろう。我はお前達に道を指し示しこそすれ、お前達の在り方や道を定めることはせん」
先生としてキヴォトスを救う可能性の世界だからではない、唯一無二の王として、国の宝たる子供を育てる。それが民を導く者としての責務である。
とはいえ、賢王ではなく暴君と賢王のハイブリッドなので賢王ギルガメッシュと比較すると良き王としては少し落ちる。
サオリと話していると、またどこかからの視線を感じる。
「かなり近いな」
「近い?」
「遠く離れた場所から我を覗き見る不逞の輩がいたのでは」
ギルガメッシュは突然振り返る。
「そこだな。我に近い目を持っている様だが、その力は決して万能ではないぞ」
ギルガメッシュの千里眼な確かにあらゆる未来を見通すが、神やそれに準ずる者であればその視線に気が付き、怒りを買いやすい。それを見たことで本来は何事も無かったはずの未来が破滅に繋がることだってある。
現にかなり上位の神性を持つギルガメッシュにはこうして気取られ、位置もバレてしまっている。
「サオリよ、ついて来い」
「?」
ギルガメッシュはサオリを連れ、アリウス自治区を見て回る。
ボロボロの家、地下ゆえの寒さに耐えるには心許ない寝具、食事すらままならない過酷な環境がそこにあった。
「欲とは人の歩みを進めるエネルギー源になる。これより我がアリウスにいる間、試験での点数をそのままお前達のポイントとして記録し、そのポイントを使って何か褒美をくれてやろう」
「ポイント?」
ギルガメッシュが作る試験の点数をポイントとして所持し、そのポイントで色々なものが買えるというシステムの構築。
頑張れば頑張るほど自分が裕福になり、それを分け与えるのも自分の自由となる。勉強が面倒だからと楽をすれば、それ相応のものしか買えない、自由が減る。
「値段設定は我が独断でつけ、何が買えるのかは追って表を作っておく。今は何でも買えるように学びを深めると良い」
ギルガメッシュはアリウスに時間割を作り、より学園としてのアリウスを構築して行く。
そして、他の自治区に比べて圧倒的に遅れている為、より意欲の向上と格差を作るためのシステムを構築する。
格差と聞けば悪いイメージを持つが、格差なくして文明は発展しない。どれだけ努力を重ねようと、努力しない者と待遇が変わらないのなら努力する者が居なくなる。
貧富の差を生まれの幸不幸ではなく、努力の差へと変えるシステムの構築こそ、良き王の最低条件である。
努力を怠る無能が富を得られ、努力を重ねる者が搾取される社会など、ギルガメッシュに合わせれば無駄そのもの。そんなものは一度全て破壊して作り直す。それこそが人類の発展に繋がるのだ。足を引っ張るしか能がない者は人間とは見做さず、その場で殺してしまうのが世の為だと考えているからこそ、ギルガメッシュが作る国には無駄が無い、民こそが宝と言える国に育つのである。
学園聖杯戦争の召喚システム
連邦生徒会長は触媒を用意してはいたが、それは召喚を確定させるためであり、本来は触媒の必要は無い。何故ならば学園聖杯戦争の召喚システムは通常の聖杯戦争とは大きく異なるからだ。
連邦生徒会長が作り出した英霊召喚システムには、聖杯戦争の召喚システムに、連邦生徒会長が1人で完成させ発展させたデカグラマトンの神を解析し再現するという研究成果を組み込んでいる。
それにより、儀式の中核としてデカグラマトンを利用し、儀式を安定させたのと同時に連邦生徒会長の目的にはビーストの存在が必要不可欠という事もあり、人理消滅の危機という状況を作り出し、キヴォトスという数多の神秘に溢れた土地を触媒とし、召喚システムを改変する事で隙を増やし曖昧にする事で本来ならば例外・不可能・極低確率とされるサーヴァントの召喚も可能となっている。
そのため、触媒を使えば召喚を確定させられるが、触媒など無くてもあらゆる英霊が召喚出来てしまう。
そして、これはカルデア式英霊召喚とは異なり、人理を破壊することを願望とするような英霊であっても召喚することが出来、それもこの召喚システムを確立させる為の条件となっている。
とはいえ、完全にランダムな英霊が出るという訳ではなく、召喚者と相性の良い英霊であったり、召喚者そのものが触媒の役割を果たしていたりで召喚される英霊に偏りが生まれている。
つまるところ連邦生徒会長とは、マリスビリーと沙条愛歌を足して+αした存在。誰よりも早くデカグラマトンに辿り着き、あの自販機神を改造して英霊召喚のパーツにしたギルガメッシュ狂い。
リチャード1世はナツの精神性により、ほんの少し出やすくなっており、他の英霊と比較すると優先度がその分上がっていた。当然確定では無かったし、ほんの数%出やすくなっていた程度だったが召喚された。
クー・フーリンもナツ同様に本人の精神性が触媒としての機能を果たしており、それはナツのものよりも触媒として強かった為、そこそこ引き寄せやすい状態にあった。
ギルガメッシュは言うまでも無い、これでもかと確定でギルガメッシュが来るレベルまで触媒を用意したから。実はギルガメッシュ99.8%エルキドゥ0.2%くらいの割合だったので、ギルガメッシュが来ない可能性もあった。
オジマンディアスは単なる偶然、ピラミッドの模型など触媒足り得ないのだが、ヒカリが遊びで先端同士を合わせていた事、ヒカリとオジマンディアスの妻のネフェリタリの声が似ていた、そんな触媒足り得ない2つの要素によって、ナツの時よりも低い優先度で召喚されやすい状態になっていた事で、0.8%程の確率を1発で引き当てた。
オジマンディアスピックアップを呼符単発当てしたヒカリだった。
刑部姫は完全にウイに引っ張れての召喚だった。本好き、引きこもり、陰気、色々な要素が刑部姫を引き寄せる要因となっていた。これも確定という訳ではなく、エレシュキガルが召喚される可能性もあった。
ニトクリスはシロコの神秘、アヌビスが触媒になっており、召喚した場所もアビドスという砂漠地帯、今回の聖杯戦争でギルガメッシュの次に確定に近い確率での召喚だった。
仮にこれがギルガメッシュが先生をする可能性の世界だった場合、呼ばれていたのはキャスターではなくアヴェンジャーの方だった。
ネビル・シュートは言うまでも無い、自爆をロマンとしているウタハの性格と、パンジャンドラムを触媒にしたらどうなるのかという知的好奇心によって、パンジャンドラムの生みの親が召喚されたという単純なもの。開幕自爆特攻も半ば趣味である。
ティアマトは召喚された訳ではないが、グランドクラスのギルガメッシュが召喚されたことで逆説的にティアマトが引き寄せられ、キヴォトス式英霊召喚システムの影響でビーストクラスが復活している。