逆らえば殺す。どれだけ執着したものであろうと、従わぬのなら殺す。それがこの英霊の本心、ギルガメッシュという男の真実と原作で語られており、これは少年時代や賢王時代であっても変わらないので、当然先生である今のギルガメッシュも変わらない。
加えて、人間そのものには価値がなく、人が作るものや成果には価値があるという考えを持っており、今作ではアビドスの復興、アリウスのベアトリーチェからの解放を行ったが、アビドスはユメやホシノが相応に復興に対して意欲的で成果も出していた。ユメもホシノも方向性は違うが気に入っている。シロコは気にかけている。ノノミは興味なし。
アリウスはベアトリーチェが気に入らなかったし逆らったから殺そうとし、黒服はそれなりに嫌いではなかったから生かして返した、生徒に関しては気まぐれという側面が大きいが、ギルガメッシュに対しても堂々と意見が言えるアツコの事が気に入ったから、タダ働きは王の沽券に関わるという理由から報酬として勉学などを教えている。次点でサオリも多少気に入っているらしい。
余談だが、ギルガメッシュが出現したタイミングが原作先生と同じタイミングだった場合、襲撃者としての初遭遇の便利屋・アリウススクワッド。先生を利用しようとしたナギサ。敵対者を手引きしたミカ。アビドスへ侵攻して来た上に先生を利用しようとしたゲヘナ風紀委員会もといアコ。同じく利用しようとしたカヤ。致命的に相性が悪いベアトリーチェ。更に相性の悪い地下生活者。初対面で反抗的だったラビット小隊などなど、敵対的だったり反抗的なものが次々と殺されていた。
今回誰も死んでいないのは、タイミングが良かったり、ギルガメッシュの気まぐれで出向いた場所の順番が良かったり、連邦生徒会長の聖杯への願いが正しく機能しているからである。
ギルガメッシュが行った改革により、アリウスには貧富の差が生まれた。
己に必要な努力が足りない者は貧しく、必要な値まで努力が出来た者がアリウスとしては裕福になった。
それでもアリウスの生徒は不満などあるはずもなかった。
ベアトリーチェという大人を知っている、。弱者は搾取されるしか出来ない、そんな事は分かっている。だからこそ、弱者が強者になる術を教え、その機会すらある今の状況はアリウスの生徒にとっては戦う意味がある戦場となっていた。
競い合う者、己を高める事にのみ執着する者、戦う理由進む。は千差万別、銃で撃ち合うだけが戦いではなく、学ぶ事で出来ることや知っている事が増える、自由度が上がると言う事に幸福感すら感じていた。
しかし、これはあくまでも一般教養と社会常識を知るためのモチベーション向上と、成果を出して報酬を得るというシステムへの理解の為のもので、これそのものはそこまで重要なものではなかった。
「ギルガメッシュ、これからどうするのだ?」
「貴様はいつまでいるつもりだ。マスターはどうした」
「マスターは自警団で忙しい。今日もキャスパリーグという子を追いかけ回していたよ」
「キャスパリーグ?ビーストIVか?」
「いや、そういうあだ名の子だよ。スケバン?らしい」
ギルガメッシュは顔を顰めて紛らわしいとティアマトを睨む。
「こら、私は悪くないだろ?」
「まあ良い」
ギルガメッシュはティアマトをおいて歩き出し、アリウス自治区の聖堂に設置したソファに腰掛ける。
そこはアリウスの生徒会長の部屋で、現在はアツコの部屋になっている。
アツコはソファに腰掛けたギルガメッシュの膝に頭を乗せ、ギルガメッシュの顔を見上げる。
「これより先はお前が決めよ」
「私が望めば、アリウスはちゃんとした学校として、地上の人達と同じように生きられる?」
「望むだけで得られるものなどない。だが、それを望み、目指し、アリウスを導くのは貴様の自由よ。我は我を喜ばせるために貴様等に学びを与えた。貴様はそれに応え、生徒会長となることを選んだ。これは我が貴様に与える褒美だ。貴様がそれを望むのなら、我が手を貸してやろう」
アツコは思いの外この膝枕という行動に対する反応が無かったので、隣に座り直して改めてギルガメッシュに願う、アリウス分校の学校としての確立、戦いや憎しみしか知らない子供ではなく、明るい日の下で暮らせるような未来を。
「良いだろう。当然貴様にはこれまで以上に働いてもらうぞ」
「大丈夫、マダムがいた頃よりもずっと楽」
「そうか」
ギルガメッシュはソファから立ち上がり、アリウスの生徒達に今後の方針を伝える。
アリウス分校が目指すのは社会復帰。
もっと豪胆に、もっと図太く生きる事がアリウスの生徒に致命的に欠けているとして、こんな地下で暮らす事を余儀なくされたトリニティを恨むのではなく、良いものは良い、悪いものは悪いとして、受け止め、人生を楽しむ事が今後のアリウスの方針となった。
「具体的にはどうするのですか?」
アリウスでリーダー格の生徒の1人、スバルがギルガメッシュに問う。
「なに、貴様等は遊びというものが足りんのだ。ゆえに、これから遊びに行く」
「え?いや、遊びにって……」
「アビドスだ」
これは単なる思いつき、しかしアリウスの生徒に人生を楽しむ事の一つとして学びを得られる場所でもある。
「もう時期夏になる、アビドスに観光に行くには良い季節と言えよう」
「なぜ遊びに行く事がアリウスの成長に?」
「言ったであろうが、もっと豪胆に、もっと図太く生きるという事が致命的に欠けていると。明るい街の喧騒の中で、誰が地下で育った、戦いしか知らぬ、憎しみしか知らぬと思うものか。誰も貴様等の事など気にしてはいない。ならば、もっと大らかに構えよ。あの街、いやあの阿呆は貴様等のその陰鬱とした感情など消しと飛ばしてくれるだろうよ」
スバルや他のアリウス生徒はどういう事なのかと思いつつ、ギルガメッシュのお遊びに全力で乗っかったアツコによってアリウス分校の修学旅行と題して、アビドスリゾートへ遊びに行く事が決定した。
アリウスの生徒達はアツコを除き、訳もわからずアビドスリゾートに連れて来られ、ツアーガイドのユメと合流していた。
アレからユメは社長ではあるのだが、ポンコツ過ぎて社内では狭過ぎるという事で、野に放つという意味合いでツアーガイドに専念させられている。
「おかえり〜先生」
「まだ旅の途中だがな」
ホシノもアビドスの生徒会長として、ギルガメッシュに同行する事になり、ギルガメッシュの側にいるアツコと目が合う。
「君は?」
「秤アツコだよ、小鳥遊ホシノさん」
「私のこと知ってるんだね〜」
「王権の守護者『暁のホルス』」
「う〜ん……まあ良いか」
ホシノはその異名を少し恥ずかしく思っていたが、何となくギルガメッシュが付けたような気がして否定する気にはなれなかった。実際ギルガメッシュがつけたものである。
ギルガメッシュは辺りを見渡してシロコを見つけると、シロコの方に歩いて行き、シロコはギルガメッシュに気がつくと一瞬で臨戦体勢に入る。
ゲートの出現と同時に天の鎖がシロコに向かって射出され、シロコは飛び退いて鎖による拘束から逃れ、雨のように降り注ぐ天の鎖を避けて駆け回る。
「随分と避けられるようになったではないか。では、これならどうだ?」
ゲートの数が8つから20になり、鎖の数が増えるとシロコは呆気なく拘束された。
「それはズルいと思う」
「たわけ、こんなもの我の本気からは程遠いわ」
アリウスの生徒はギルガメッシュの天の鎖を初めて見たが、アレだけの数と速度を30秒間とはいえ避け続けたシロコを凄いと感心する。
現在シロコはサイクリングにハマっており、いつかギルガメッシュの拘束からも逃げられるように脚力や耐久力を鍛えている。勿論反射神経も鍛えているので、以前よりも避けられるようになっていた。
「児戯もこの程度にしておこう。ユメ、ホシノよガイド任せたぞ」
「他校の生徒を遭難させたら問題だからね」
「ちゃんと方位磁針に水筒に地図に星図も用意したよ!?」
「貴様、自分の故郷であるということを忘れていないか?」
ユメとホシノはアリウスの生徒を案内してアビドスリゾートの観光に向かっていった。
ギルガメッシュは予めホシノには伝えていた。この修学旅行はアリウスから一時的に離れるための口実。
本当の目的はギルガメッシュを覗き見ていた者への接触。
「我を見ていた視線は3つ。一つはトリニティの小娘、一つはゲマトリアなる痴れ者、そして貴様だ山の翁」
ギルガメッシュの前に青い炎の火柱が上がり、その中から2mを超える髑髏の面をつけた黒い鎧の剣士が現れる。
「汝が人理の守り手か否か、それを見極めていた。どうやらその在り方は魔獣戦線の時より変わらぬらしい。否、少し寛容になった」
「今の我は幼き日の我、暴君としての我、王たる我、冠位の我、全ての我を併せ持つ。在り方は変わらん。だが、幼き日の我の影響で無礼な輩にも多少寛容にとなろうよ。貴様も変わらんな。何かキッカケがなければ姿を現さん律儀さは」
山の翁、ハサン・サッバーハ。アサシンの語源となった暗殺教団の初代首領にして全てのハサンを殺すハサン。それはまさに死神。生きているとも言えず、死んでいるとも言えない。死という概念そのもの。
死が無い存在であるティアマトに死の概念を付与し、ビーストIIとなったティアマトを殺し切る最大の功労者と言える。
「召喚されたビーストがティアマト神であるならば、貴様が召喚されるのも必然であったな」
「汝はあのティアマト神をどう見る」
「完全にビーストとして覚醒する前に殺しておくのが最適、だがアレはアルターエゴが変容したモノでありオリジナルの原初の母ではない。アレが自分の意思でビーストIIに回帰しようとしない限りは問題無かろう。それに、アレが覚醒したところで今は我がいる。アレを殺す神殺しの宝具もあるのだからな。そんな事より貴様と同じ冠位は今何人来ている」
「我の知る限りでは冠位の剣士が1人、空位・宮本武蔵」
二天一流と名高い宮本武蔵、ではあるが宮本武蔵が女性として生まれたパラレルワールドから迷い込んだ放浪者。
その存在が冠位に届いた姿、本来の冠位ではないが、それはギルガメッシュも同じ事。
現在は百鬼夜行連合学院を彷徨っている。
「我を含めて3騎『も』召喚されているか。あの半端なビーストIIではない、本物、もしくは幼体がまだいるな。あの小娘め、召喚式に何を組み込んだ」
「汝のその目でも見通せぬか」
「たわけ、我の千里眼は奴らに気取られる、迂闊に使えるものか。今のティアマト程度の幼体がもう一体いる程度ならば何とかなろう。だが、ビーストIやビーストVIIのようなものが居たならば現状では対処し切れん。まあ、ビーストIは既に獣ではなく人の王となり、ビーストVIIがいるならば既にこの世界は消え去っている。だからこそ解せん」
一年、この世界ではビーストによる影響が全く無い。ビーストIV『キャスパリーグ』のように人類悪ではあるが、成長して本格化する、すぐには動かないタイプである事は明白。
しかし、その理由がビーストIVのように成長するためか、ビーストIのように準備を進めているためか、理由次第では既に手遅れといえる。
「最悪の可能性は、我がグランドルーラーとしたらここにいるという事から、ここが『イレギュラー』の塊がゆえに、グランドフォーリナーが召喚される可能性があるという事だ。奴はどうあれ人類を滅ぼす存在、ビーストなんぞとは比べようも無い災害よ」
グランドフォーリナーとは即ち、オルト・シバルバーである。
ORT【オルト】とは、「最強の攻性生物」「物理最強」「外宇宙最強生物」という、ギルガメッシュの世界における最強の存在。
そこに議論の余地は無く、あらゆる原生生物を鏖殺して突き進む究極の一。
それはかつて、その亜種が最後の人類によって撃ち倒された。しかし、召喚式を学習し自身を英霊の座に登録し、自分を召喚するという無法により復活した。
その時のクラスがグランドフォーリナー。
グランドルーラーというエクストラクラスの冠位が召喚されている以上、それが召喚される可能性も捨てきれないのだ。
現在キヴォトスにいるビースト・冠位英霊
ビースト 『ティアマト』
冠位剣士 『空位・宮本武蔵』
冠位弓兵 『ギルガメッシュ・ネイキッド』(兼任)
冠位暗殺者 『山の翁』
冠位裁定者 『ギルガメッシュ・ルーラー』(兼任)
『空位・宮本武蔵』
ビーストの出現に引き寄せられて流れ着いただけの人。
お祭り運営委員会が経営している喫茶店に入り浸っている暇人。
『山の翁』
いわゆるキングハサン。
ギルガメッシュを冠位にした結果引き寄せられたティアマト、そのティアマトに引き寄せられてティアマトを殺し切れる暗殺者として現界。
『ギルガメッシュ』
ルーラーとアーチャーの兼任ではあるが、これはギルガメッシュの現界、受肉の仕方の問題でこうなっている。
まず、生前に限りなく近いギルガメッシュ(冠位弓兵)を作ろうとする、その後聖杯によって先生(冠位裁定者)にする。
つまるところ、学園聖杯戦争の時点でティアマトはキヴォトスにいた。