死という概念が無い為、物理的に破壊しなければならないが、地上のいかなる物質より硬く、柔らかで、温度耐性があり、鋭い、というトンデモない外皮に覆われている。地球で戦う限り弱点はない。
「侵食固有結界」と表現される特殊能力、「水晶渓谷」を持つ。おぞましくも美しい、異星風景の侵略。地球を異星に塗り替える侵略者。
そこに居るだけで物理法則を改竄し、もともとORTの住んでいた環境に変化させる。
捕食した生物を一部擬態する能力はあり、有り体に言えば負けると能力をコピーされる。
こんな化け物を国民全員の命を犠牲にして休眠状態まで弱らせた王がいる。
仮にオルト・シバルバーが最大の敵になるとして、今はその可能性がある程度で召喚はされておらず打つ手が無いので、ギルガメッシュはオルトと戦う為の準備だけを進めて行く。
その間、アリウスの生徒はユメのガイドに従って修学旅行をしていた。
地下世界には無い初めて見る綺麗な建物、電車、娯楽の為の施設、何もかもがアリウスの自治区とは違っており、生徒達は存分にその環境を楽しんでいた。
「そう言えば、先生からアリウスの生徒の修学旅行をするから準備をしろって言われたけど、アリウスってそもそも聞いた事がないんだけど」
「大昔にトリニティを追放されて地下に押し込まれてたからね、知らなくて当然だと思うよ」
「そうなんだ、なんかごめんね?」
「いいよ、今は恨む事自体が不毛だと思ってるんだ。何事も悲観してると、性格と暗くなっちゃうって。まあ、かなり意訳してるけど」
「ははは、先生かな、それ言ったの」
「うん、王様だよ」
ホシノとアツコは適当に話しながら集団の1番後ろをついて行く。
「王様、ここに来てから少し機嫌が良い」
「そうなの?」
「アリウスではいつも少し不機嫌だから」
「……そうなんだ」
ホシノはギルガメッシュのことを良く知らない。一年間ほとんど一緒にいたが、その考えはずっと分からずにいた。
アビドスにいる頃は不機嫌どころか、どこか楽しそうですらあった。それがアリウスでは何故不機嫌なのか。想像が付かなかった。
「でも、私の前だと少し雰囲気が柔らかくなってるかな」
「先生に気に入られてるんじゃないかな?」
「ホシノさんって王様にちょっと似てるね」
アツコはホシノがギルガメッシュの事を好きなのかも知れないと思い、どんな反応をするのかと揺さぶりかけてみたが、ギルガメッシュ同様に全く反応が無く、肩透かし感があった。
「アツコちゃんは案外おちゃめって先生言ってたからだよ。あと私と先生は似てないよ」
「おちゃめって思われてたんだ。意外と可愛い表現の仕方するんだね、王様」
「勿論意訳してるけどね。そのまま言うと、先生の言葉って基本的に暴言だから」
「ふふ、そうだね」
2人の会話は和やかの様に見えるが、その実お互いにギルガメッシュのお気に入りの自覚はあった。
ギルガメッシュの性格は難解だが、分かりやすいところもある。それは好き嫌いである。
気に入ってる者には多少の無礼も笑って許してくれたりする。しかし、気に入らない者や明確に敵対した相手には容赦が無い。ホシノのやり方に倣って半殺しで済ませていたが、仮にギルガメッシュ1人ならば、不良生徒達は皆殺しにされていただろう。
「善人か悪人かで言えば、間違いなく悪人なんだけど、助けられた恩があるし、実際かなり凄い人だからね。突拍子も無い事も言うけど理屈は理解出来るし、冷酷だけどその行動には大体基準がある。根底が悪人でも、その行動によって王の在り方を示した。民を導く、なら臣下である私達は王の意向に従う。まあ、納得出来ない事はちゃんと言わないといけないけどね。言えば割と理解してくれるしね。臆せば死ぬぞってやつだね」
ホシノはアツコの考えを聞く。
ギルガメッシュは正義の味方でもなければ生徒の味方でもない。結果的に生徒が救われるだけで、その行動指針は常にギルガメッシュにある。
先生なら何とかしてくれる、そんな盲信は先生を失った時に全て崩れ去ってしまう。故に王は常に己で考え、道を切り開く力を求めた。
ホシノは全てを救済した王への恩返しとして、王の為に働く、それは一件盲信のようで違う。自らもアビドスという学園の王として、ギルガメッシュという手本から王の在り方を学ぶ為にある。
「君は、どんな王様になりたい?私はアビドスを守れる人。アビドスって広いし色んなものが埋まってるから、色んな大人に狙われやすいんだよね」
アツコまだ中学生で、生徒会長というのもつい最近なったばかりで今後の明確なビジョンは無かった。今はただ、アリウスの生徒が学園として成り立つように1から作り上げる事だけを考えていた。それ以外を考える余裕など無かった。
「まあ、これを今聞くのはズルいかな。私もちゃんと生徒会長の事を考え始めたのって、先生が旅に出てからの事だしね」
「それって、ほんの数日前だよね」
「1週間前かな?。それまでの一年もあるから、厳密にはもっと長いんだけどさ」
ホシノはそう笑いながら歩いて行き、アツコは生徒会長としてやりたい事は今のうちにしっかりと決めておかなければならないと心に決めた。ギルガメッシュはずっといる者ではないのだから。
修学旅行により、アリウスの生徒達はギルガメッシュの言う通り、他の観光客はアリウスの生徒など知らないし、誰も見ていないし気にしないと実感した。
人は思いの外、人を見ていない。相手の考える事など分からないし、すれ違った程度の相手の事など記憶の片隅にも留めておかない。
実際、アリウスの生徒達も観光客の事は遊ぶ事に集中していてよく覚えていなかった。
実際に体験して、王の言っていた事を理解した。必要以上に気にした所で意味は無く、与えられた自由を自ら縛る必要も無い。恨み続ける事は確かに虚しい、だが恨み続けるのにはそれ相応にエネルギーを使う。
そのエネルギーを別のところに向けたほうが、いろいろな事を知れるし、楽しめる。
「王様」
「何だ雑種」
アリウスの1年生、長い銀髪の少女、白州アズサはサオリをリーダーとする小隊アリウススクワッドのメンバーで、修学旅行の夜、ギルガメッシュの部屋にやって来た。
「もっと、沢山知るにはどうしたら良い」
「今のアリウスは孤立無援、アリウスの今後の為、己の為にトリニティへの編入をすると良い。だが、今ではない」
「いつ?」
「来年だ。我が編入の為の準備をしておいてやろう」
ギルガメッシュは元々トリニティに用もあったので、アズサの要望もついでに叶える事した。
早速修学旅行が終わってから、ギルガメッシュはトリニティに向かう。
夜、月明かりがとある部屋を照らす。部屋の主は壁に背を当ててへたり込んでいた。
「貴様であろう我を覗き見していた愚か者は。百合園セイア」
「……」
赤く光る冷たい瞳がセイアの背筋を凍らせる。
セイアはギルガメッシュの性格は理解している。その冷酷さも。それ故に殺しに来たのだと思った。
ギルガメッシュと山の翁はセイアが見ている事に気が付いていた。そして、2人の話の中に出てきたオルト・シバルバーもそうなのだろう。
そして、オルト・シバルバーをギルガメッシュが警戒しているとなれば、オルト・シバルバーを呼びかねないセイアを殺しに来るのは自然な事。
多少の覚悟はしていたが、いざ明確に殺せる存在が現れた時、想像以上にセイアの心を恐怖が支配した。
「貴様の返答次第では貴様の想像通りの結果になる。来年、生徒会長になれ」
「はい?」
「なれなければ殺す」
「……」
「まあ貴様であればなるだけならば問題は無かろう。生徒会長、トリニティならばホストだったな。そうなった貴様にしてもらいたい事がある」
「……」
ギルガメッシュはゲートを展開し、武器を装填する。
「してもらいたい事って」
「アリウスの生徒の編入手続きだ。断れば当然殺す」
「……引き受けるよ」
「ではな」
要件だけ伝えてギルガメッシュは帰る。セイアは胸を撫で下ろす。
ギルガメッシュは本気で殺す気でいた。セイアがオルトを見た場合、オルトが召喚される可能性が高まる。
すぐに召喚されてしまうと、何の準備も出来ていない上に、準備が出来ていたとしてもキヴォトスの大部分が蹂躙される事が確定している。
殺さなかったのはアズサの為で、アズサから直近で相談が無ければ殺していた。それが最も確率の高い対抗策だったから。
ギルガメッシュは生徒の味方ではない、人の裁定者であり、唯一無二の王、相手がビーストであるならばそれは人の力で乗り越えるべき障害となるが、地球外からの侵略者ならば人類の存在の為に最小限の犠牲で突破する為に戦う。セイアはその最小限に真っ先に割り振られる人材である。
セイアを殺さなかった事でオルト・シバルバーの召喚の可能性が上がり、最悪の場合、オルト・シバルバーと既にキヴォトスの外、南米で休眠状態のORTがオルト・シバルバーに反応して目を覚まして同時に相手しなければいけなくなったが、オリジナルのORTの方は下手な事をしなければ目覚めないので、オルト・シバルバーが召喚されなければ問題無い。
(笑えん冗談だ。未来予知が出来るだけの雑種があの蜘蛛2匹を出現させる鍵になっているとはな)
ギルガメッシュはグランドルーラーではあるが、霊基としてはグランドアーチャーともカウント出来るため、セイバー・アーチャー・アサシンが召喚されている現状で残り4基のグランドを召喚する事でオルト・シバルバーの枠を無くす為にミレニアムに来ていた。
ミレニアムには廃墟と呼ばれる場所があり、そこで残り4基をまとめて召喚しようとしていた。
(今の我でもグランド4基となればこの肉体を死ぬ気で酷使しなければならんか)
ギルガメッシュは原初の神話礼装に換装し召喚式を起動する。
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖こそはこの我、英雄王ギルガメッシュ。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。
本来であればグランドを人の身で召喚する事は不可能。しかし、この土地の召喚システムを使えばそれが出来る。その第一号がそもグランドだったのだから。
召喚されたのはグランドランサー『ロムルス=クィリヌス』、グランドライダー『ノア』、グランドバーサーカー『テスカトリポカ』、そしてグランドキャスター『ソロモン』。
「……これはどういう事だい?」
「それは我が聞きたいくらいだ医師。いや、ソロモンよ」
魔術王ソロモンは本来英霊の座から抹消されたが故に、召喚出来ない。それは並行世界を跨いでも同一のはずだった。
「あの小娘、召喚式に何を組み込んだ。英霊の座そのものを自身で構築したとでも言うつもりか」
「えっと、取り敢えずここにいるのってギルガメッシュ王も含めて全員冠位英霊だよね?どういう事だい?」
ギルガメッシュは今キヴォトスが直面している問題をソロモンを含めた冠位英霊4騎に伝える。
「ビーストにORT……異聞帯とか特異点なんてレベルじゃないじゃないか!?」
「貴様、ずっとそのノリでいくつもりか?」
「長年これだったから、染み付いちゃってね」
「まあ良い、目的は枠を埋める方であってビーストの打倒ではない。勿論その時になれば戦ってもらうが、それまでは各々好きにしているといい」
冠位英霊は各々が自由にその場から去り、ギルガメッシュとソロモンだけがその場に残る。
ソロモンは白衣の医者姿になる。
「その姿もなんか懐かしい気がするよ」
「……貴様。……なるほどそういうことか」
「流石の千里眼だね。説明は彼に任せようかな」
そう話していると、人格が切り替わる。
その人格とはかつて魔神を統括して人理焼却を成し遂げたビーストI、ゲーティアだった、
「丸投げか……まあいい。ソロモンは座から消え去りロマニ・アーキマンというカルデアの者が藤丸立香、マシュ・キリエライトの記憶に残り、私という英霊とするには弱すぎる幻霊、それに加えてフラウロスがロマニ・アーキマンの姿を取った事で、モリアーティのような幻霊の集合体として完成したソロモンもどき、それが今の私、そしてソロモンだ」
「随分と面倒臭い召喚のされ方をしたものだ」
ゲーティアもギルガメッシュ、そしてロマニもそんな面倒な方法で完成した英霊が何故冠位になってるのか意味が分からないという顔をして首を傾げる。
BAD ENDルート【無限にして究極の一】
セイアの予知夢に反応してオルト・シバルバーが召喚、それに反応する形で南米で休眠状態だったORTが起動。キヴォトス内でオルト・シバルバーに手一杯になっている間にキヴォトスの外でORTが原生生物を絶滅・吸収する事で超絶強化されたオリジナルのORTがキヴォトスに上陸。
オルト・シバルバーとORTを同時に相手しなければいけなくなり、オルト・シバルバーを撃破出来たとしても、オルト・シバルバーはORTを触媒に再召喚するので何度でも復活する。
現在のギルガメッシュでも100%不可能だが、仮にORTを倒したとしても、一騎でもその過程でサーヴァントが吸収されると召喚式を学習してオルト・シバルバーとして復活。
オルト・シバルバーを2体同時に倒さない限り、無限に復活し続ける最強の地球外生物2体と戦わなければいけなくなる。
ORTはビーストではないので、グランドサーヴァントが召喚されず、通常のサーヴァントと今を生きる人間で相手しなければならない。
更に問題となるのは、ティアマトとそれ以外のビーストがORTに吸収されると、ORTは単独顕現やネガ・ジェネシスなどのビーストクラスのスキルを使うようになる。
ティアマトのネガ・ジェネシスが旧来の生命を否定し、新たな命を生み出そうとする空間である為、グランドサーヴァントであろうと入った瞬間に消滅し、入れるのは生者のみ。キヴォトスの生徒だけでオルト・シバルバー2体同時撃破を達成しなければいけなくなってしまう。
今のティアマトがビーストIIに回帰したとしても、2体のオルトには勝てないのでこの未来がほぼ確定する。
その地獄をセイアの予知夢一つでお手軽に作れてしまうが故に、ギルガメッシュは真っ先に殺そうとした。
見方を変えれば、セイアがどういう考えであれ人類の敵となる。