ファイナルファンタジーVII ~とあるソルジャーの追憶~   作:定泰麒

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第3話 タークスという者達

 

 神羅には、タークスという神羅カンパニーの抱える部署の一つで諜報、調査、勧誘、誘拐、暗殺や要人護衛など会社の暗部を司る精鋭組織がある。その任務は、とても難しくソルジャーと違い魔晄の力を持っていないのにもかかわらずソルジャー並みの任務を受けなければならない。

 

 

 実際前の任務の工場の内情を調べてくれたのは、彼らだ。3年前、タークス内部でいろいろとごたごたがあったようだが、今はそれもなりを潜め着実に任務をこなしている。まぁまだ若干のわだかまりがあるが……

 

 

 今回は、そんなタークスと共同で任務にあたることになった。内容自体は、前回の任務とさほど変わらない。しかし、相手が違うのだ。そう今回の相手は、『アバランチ』。

 

 

 反神羅組織の最高峰であり、最も厄介な相手。タークスにとっては、因縁の相手と言っても過言ではない。もちろんソルジャーにとっても強敵だ。

 

 

 最近の『アバランチ』は、正直正気を疑う。以前は、星の命の存続を最優先事項と考え、魔晄エネルギーを吸い取る神羅カンパニーを『星の命を削る悪徳企業』とみなしてテロ活動を行ってきた。だが今は、ただ単に破壊活動を行っているとしか思えない。

 

 

 まぁ目的もなくただ任務をこなしているのは、現時点の俺も同じだが、少なくとも俺は戦闘に一般市民を巻き添えなどしない。奴らは違う、テロに容赦なく一般人を巻き添む。俺にはその意味が分からない。星の命について言いたいことはわかる。確かに魔晄の力は凄まじく、それがなければ神羅という企業はここまで発展できていなかっただろう。だったら神羅だけ狙うのならいい。だが奴らは、星を救う活動ならば、人の命などいくつ散ろうがどうでもよかった。俺には、それがどうしても許せなかった。

 

 

 そして、今回の任務場所は弐番街の魔晄炉だ。アバランチがテロを行うとの情報が入り、実際に調査したところ魔晄炉の破壊という作戦がたてられていたことが発覚した。もちろん調査したのは、タークスだ。そのこと直接調査したタークスの奴らがこの任務に参加するらしい。タークスの奴は、実力はあるが一癖も二癖もある奴が多い。さて今回は、誰が出てくることやら……

 

 

 アバランチの魔晄炉襲撃の日にそなえ、神羅兵だけでなくソルジャーも配備されることが決まった。このことからも分かるように、神羅もアバランチに対する策を立てているようだ。しかし、あまりに人を増やしすぎるとアバランチに作戦がばれているというのがばれかねないので、最低限度の戦力強化になりそうだ。もちろんアバランチが来た場合、すぐに神羅兵の増援が来るようにはなっている。

 

 

 俺はというと、万が一にも侵入された時のために内部の魔晄炉の中核を担う場所の配備に当たることになった。しかもきつかったのが、当日に急に配備されるとばれる可能性が高いということで2日前から神羅兵に変装し、魔晄炉内に居ることになったのが一番の苦痛だった。

 

 

 俺以外にも、カンセルさんや前の任務で一緒だった2人も配備されている。そのため話相手には困らなかった。魔晄炉内にも一応人が住めるほどの環境が整っていたし、暇つぶし用のアイテムもあったためいくらか苦痛も減った。

 

 

 カンセルさんに、兄貴に関する昔話を聞くことができたのが一番の収穫だった。俺以外のソルジャーと言ったが彼らは、珍しく双子でソルジャーとなっている。自分で言うのもあれなんだが、俺は2ndソルジャーの中でも頭2つ出るほど実力を持っている。つまり実力だけならば既に1st並みに達しており、他の2nd等相手にならない。その俺の次に強いとされているのが彼らだ。

 

 

 名前は、クーラとストー。クーラが兄で、使用する武器はソルジャーに通常配備されるロングソード。ストーは弟で、武器はハルバートだ。顔も瓜二つで、性格も瓜二つ。ただ違うのは、クーラは髪をおろしており、ストーはオールバックのようにしていることだ。決して悪い奴らではないが、戦闘狂だ。ちなみに性格や考えていることはほぼ一緒なのだが、兄は無口で弟がよくしゃべるという特徴もある。

 

 

 彼らとの関係は決して悪くないが、ことあるごとに決闘を申し込まれるのがあまり好きではない。毎回強引にこられ断れずにいる。まぁ彼らに負けたことなど一度もないが……

 

 

 そんな彼らも今回の任務では、相当暇を持て余しているらしく2日間で延べ8回ほど決闘をさせられた。俺もどちらかと言えば暇を持て余していたので相手をしてやった。結果は全て俺の勝ち。また負けたと死ぬほど悔しがっていた。

 

 

 そんなこともあり2日過ぎて、任務の日になった。朝から双子はどことなくせわしない。カンセルさんは、余裕の表情だ。俺はといえば別に普段と変わりなく過ごしていた。

 

 

 それから夕方になるとタークスの二人組がやってきた。制服を着崩したような服装をした赤髪の男と巨漢でスキンヘッドにサングラスの男。俺は以前からこいつらと何度か一緒に仕事をしたことがある。赤髪の方は、レノ。巨漢の方はルード。タークスの中でもやり手の2人だ。

 

 

 「今日はよろしく頼むぞ、と」 「……」

 

 

 どうやら相変わらずのようだ。2人はそれだけいうとまた後で来ると言ってどこかへか行ってしまった。

 

 

 「あいつらは、相変わらずだな」

 

 「そうですね」

 

 

 どうやら、カンセルさんも同じことを思っていたらしい。

 

 

 それからさらに時間が立ち、深夜過ぎぐらいになったときのことだった。突然、外から銃の轟音が鳴り響き始めた。ついに始まったかと思い、ふと双子を見ると二人とも嬉しそうな顔をしている。

 

 

 それから数分後、アバランチが攻めあぐねているのか中々内部へと現れない。

 

 

 「ちっ……おせぇな、アバランチ共。速く戦いてぇ」

 

 「うん……」

 

 「そうだ兄貴。俺たちも外に敵を倒しに行かないか?」

 

 「うん……」

 

 「よしっなら……「待て、ここに居ろと俺たちは、言われただろ! おとなしくしてるんだ!」

 

 

 双子があまりにも暇で、戦いがしたいために外へ行こうとしたがカンセルさんがそれを止めた。だが……

 

 

 「カンセルさん……サーセン! 行ってきます。行こうぜ兄貴」

 

 「うん……」

 

 

 彼らは、それだけ言うとカンセルさんを振り切り外へ飛び出して行った。カンセルさんは、ため息を吐いている。そして俺の方を見て、俺たちだけでもここに残ろうと言って床に座った。

 

 

 それからさらに数分後。先ほどまで銃声や叫び声なんかが聞こえていたが、それが聞こえなくなった。どうやら俺たちが何もすることなく任務を終えることができそうだと思った瞬間。

 

 

 ド―――――――――――ン。

 

 

 まるで、耳のそばで何か爆発したようなその音を聞いた俺は、とっさに耳を塞いで音の聞こえた方を見る。そこにはあり得ないくらい大きな穴が開いた壁と今にもそこから飛び出てきそうなアバランチ達の姿だった。

 

 

 俺は、なんでこんなとこにいきなり出現するんだ!と思うと同時に腰に刺している武器を手に取り構えた。敵の人数は、ざっと見積もって60人ほど。このことからもアバランチがいかに大きい組織かがわかる。俺とカンセルさんはアイコンタクトをとり、俺からそのアバランチの大群の中に突っ込んでいった。

 

 

 奴らも右から左から必死で攻撃してくる。その姿から見て、アバランチの中でも精鋭部隊のレイブンだと思われた。レイブンとは、とある特殊な装置を使って身体能力を上げられたアバランチ兵で一体一体がソルジャーに匹敵するほどだ。だがソルジャーといっても3rdクラス程度なので俺に言わされば相手にもならないが、数が数なので厄介だった。

 

 

 彼らの武器は、基本ソードの物が多かった。そのおかげでいくらか対処方法が楽だった。

 

 

 右や左から迫りくる剣戟を飛んで避け、落下するスピードそのままに俺に向かって攻撃してきたやつらの顔に剣を突き刺す。それを引き抜かずに持ち上げ回転し振り回す。ある程度敵をそれに巻きこんだと思った所で回転をやめ、剣に突き刺さっている2人を右へ左へ投げ飛ばす。多少のよどみが起こったがそれでも敵の攻撃は止むことがない。

 

 

 「ファブル。やっぱりこいつら質が悪いな、何度も生き返ってきやがる」

 

 「レイブンとは、中々に厄介ですね。どうします? 魔法で吹き飛ばしますか?」

 

 「そうだな……お前確か、ぜんたいかのマテリアを持ってただろ! それとなんか組み合わせて全体攻撃してくれ!」

 

 「ふふっ、またずいぶん丁寧な言い方ですね。普通にぶっ放せでいいんですよぉ!!」

 

 

 俺とカンセルさんは、敵の激しい猛攻を避けつつ隙をついて攻撃しつつ喋るのであった。ひとまずカンセルさんに敵を引き付けてもらい魔法を敵にくらわすために後退する。

 

 

 「カンセルさん、魔法を撃ちます。とりあえず一旦引いてください」

 

 「わかった。後3秒後に引くから、タイミングよく頼むぞ」

 

 「はい! 1……2……3、行きます!!」

 

 

 俺のカウントに合わせ、カンセルさんは敵に攻撃の手を止めてその場から後退する。そしてそのタイミングを見計らいファイガを放つ、通常一体にしか効かないようになっているが、ぜんたいかというマテリアを使うことによって敵全てに当てることが可能になったそれは、次々とレイブン達を燃やしていく。

 

 

 その焼き後に残ったのは、全てのレイブンの死体だった。

 

 

 「ふぅ、終わったな……それにしても、お前ファイガまでマテリアを強化したのか」

 

 「ええまぁ一応。ちなみにサンダガとブリザガも持ってます」

 

 「何っ! そうか。頑張ったな。それにしても、その武器いいな。お前の武器だと何種類でもマテリアを組み合わせられてうらやましいな。俺も似たようなの作ってもらおうかな」

 

 「作ってもらえますかね……ちなみにこれ宝条博士が改良した特別製ですよ。カンセルさんが作ってもらえるかはなはだ疑問ですね」

 

 「なにっ、宝条が関わってるのか? なら俺はいい、こっちから願い下げだ。お前もわかっているだろうが、宝条には気を付けろよ。何されるかわかったもんじゃねえぞ!!」

 

 「先輩に言われなくても分かってますよ。宝条に関わるとろくなことがないですからね。にしても俺若干気にいられてるのかもしれないです。ほかのソルジャーと比べると特別扱いしてもらってる気がするんですよね……」

 

 「確かに、その武器にしろ扱いをみるとお前は特別扱いされてる気がするな……原因はなんなんだろうか? それに以前と比べると神羅自体が変わってきた気がするな。特にソルジャーの数なんか昔に比べるとあり得ないくらいに増えている。1stなんて”英雄”セフィロス。ジェネシス。アンジール。そしてザックスの4人しかいなかったのに今では、俺を含めて15人はいるぞ……一体どうなっているんだ」

 

 

 確かにカンセルさんの言うとおりだ。昔といっても4年前くらいからの話だが、”英雄”が死んだとされる時期から突如としていろいろなものが変わった気がする。1stソルジャーだけでなく全体としてのソルジャーの数の増加、タークスの異変、色々ときな臭いことが多すぎる。もしかして俺が知らないだけで、何らかの異変が起きているのかもしれない。

 

 

 「これは……さすがとしかいいようがないぞ、と」 「……」

 

 

 俺とカンセルさんが会話しているとアバランチが開けた大きい穴から、タークスのレノとルードが入ってきた。そして俺の魔法によって倒れているレイブンをみて若干ながらも驚いているようだ。

 

 

 「タークスにそういってもらえると嬉しいな。そういえば、双子を知らないか? ここを勝手に出てってどこかに行ったんだ」

 

 「奴らなら下にいたぞ、と」 「敵をかなりの数、倒していた……」

 

 「そうか、あいつらもさすがだな。一応任務はこれで終了でいいのか?」

 

 「そうだな。どうやらここにいる奴らが一応作戦の中心の奴だったようだぞ、と」 「ああ……」

 

 「てことは帰っていいんだな? よし、カンセルさん帰りましょうか!」

 

 「ああ、そうだな……本部に戻って、報告書を書きに行こう。その前に双子を探して、説教を喰らわせないといかんがな。そうだ! 今日久しぶりに飲みに行かないか、ファブル?」

 

 「飲みですか……ちょっときょ「おいおい、たまには付き合ってくれたっていいだろ!」……わかりました」

 

 「よし! じゃあ帰るか」

 

 「はい」

 

 

 そうして俺たちは、本部へと戻っていった。途中で双子を探しだし説教したのは、言うまでもない。その後本部に戻り、報告し終わり俺とカンセルさんで久しぶりに飲みに行った。だがそこに飲みに来ているのは俺たちだけではなかった。

 

 「にしてもやっぱりファブルは、2ndの中じゃ飛びぬけてるな。きっと奴なら1stの中でもかなり上の実力に値するだろうな、と」   

 

 「ああ……そうだな……」

 

 

 そう先ほど一緒にというか、同じ任務に就いていたレノとルードだった。彼らもタークスの仕事が終われば一般人と同じただの人間。こうやって飲みに来ることもあるのだろう。その意味で言えばソルジャーである俺たちも決して他人事ではなかった。

 

 

 ソルジャーとタークス。同じ神羅カンパニーに所属し、お互いに危険な任務を遂行し各地を飛び回る。そして時には、迷い、悩み、苦しみながらも任務を遂行していく様は、まったくもって変わらない。しかし、ソルジャーとタークスは全く持って別の存在でもある。ソルジャーが”英雄”などを生み出す表のモノだとしたら彼らは、その逆で裏のモノなのだ。まさに光と影。

 

 

 俺が思うのは、いつか彼ら裏のモノにも光が当たる日がくればいいのにということだった。

 

  

 


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