ファイナルファンタジーVII ~とあるソルジャーの追憶~ 作:定泰麒
神羅カンパニー。それは、現在のこの世界を支配していると言っても過言ではない超巨大企業だ。神羅が決めたこと即ち、それは世界の目指していく方針となる。
今でこそ、まさにそれほどまでの権力を持つ神羅カンパニーだが、元々は神羅製作所という一介の兵器会社であった。かつては宇宙へ行くためのロケットの開発も行っていたが、魔晄エネルギーの実用化に成功したのをきっかけにこの星全体に影響を持つような大企業へと成長していったのだった。
その神羅カンパニーは、およそ4つの部門の統括者とその上の社長の5人の手によって権力が握られている。過去には、もう1つ部門があったのだが、とある原因によってなくなってしまっていた。治安維持部門、兵器開発部門、都市開発部門、科学部門、宇宙開発部門。そして今は、なくなってしまったソルジャー部門だ。
治安維持部門とは、反乱分子弾圧やモンスターの駆逐のためのソルジャー派遣などを行っている。俺は、ここに一応所属しているという訳だ。ちなみに特殊工作部隊であるタークスもここに所属しているが、事実上独立部隊として活動している。そして、現在の統括はハイデッカーだ。上司として、まったく尊敬できない男。だが、俺はいたく気に入られてしまっている。理由は、簡単で俺が優秀かつただ何も言わずに任務をこなしていくからだと思っている。
兵器開発部門は、その名の通り武器の開発を行う。現在の統括はスカーレットという女だ。能力はかなり高いが、性格は残酷。そして最もこいつの嫌いな所は、その甲高い笑い声だ。ハイデッカーもかなり特徴的な笑い声をしており、ソルジャーや森羅の社員から“ガハハ・キャハハコンビ”等と呼ばれている。まぁ彼らは、そのことを知ってはいないだろうが。
都市開発部門は、ミッドガルやジュノンといった森羅が中心となった都市の整備と魔晄炉の建設を担当している。現在の統括の名は、リーブ・トゥエスティ。現在の統括者たちの中において唯一尊敬できる者と言っていいだろう。彼の性格はまじめで過去に2度ほどミッションで護衛したことがあるのだが、本当にいい人だった。神羅だけではなく、この世界のことを心配しており、その姿こそ上の人間があるべき姿なのではないかと思う。優秀なエンジニアでもある彼には、なにか秘密があると噂になっているが、その秘密を俺は知らない。
科学部門は、簡単に言ってしまえば生物の研究を行っている。現在の統括は宝条。奇人、変人ぞろいの統括者の中で最も変人だ。それに非合法の研究をしているという話を聞いたこともある。それも1度、2度どころではない。数えきれないくらいだという話だ。かくいうこの宝条という男にも気に入られている俺は、不運でしかないと思う。しかし、宝条は、研究者としては超1流であるのは間違いなく、こいつのおかげで俺の武器は、かなりアップグレードされることになった。
宇宙開発部門は、ロケットや航空機の開発などを行っている。以前は神羅が宇宙開発に力を入れていたこともあり、最も統括者の権力が強かった。しかし、魔晄エネルギーに徐々に力が注がれていったことで以前ほどの力はない。現在の統括はパルマー。 彼を一言で表すならただのデブだ。能力も低く、その言動もまるで子供のようだ。
最後にもうなくなってしまったソルジャー部門だ。今から4年前に存在していた部署である。以前はソルジャーが所属していた。つまり今でも残っていれば、俺もここに在籍していたということだろう。なくなってしまった原因は当時の統括だったラザードが殉職してしまったからとのことらしいが、なぜラザートが殉職してしまったのかはやぶさかではない。そして、この部門がなくなってしまった事で治安維持部門と合併することになった。
それらすべてを統括する男、プレジデント神羅。表向きには福祉などにも理解を示す穏健な指導者という面を見せており、一般市民や富裕層からの人気は高い。しかし、実際は利益のためには手段を選ばず、邪魔者は無関係の人間を巻き添えにしてでも排除するという冷酷非道な性格をしている。その性格は、俺が最も嫌いな性格だ。自分以外の人間をどう思っているのだろうか。統治者は、自分のためではなく人民のためにあるべきだと思う。それに世界をわが物にしておきながら、これ以上何をしようというのか。俺には甚だ疑問だ。プレシデント神羅が冷酷だということを神羅社員で上の層で働いている者達は、そのことを知っていて、その者達からの支持はほとんど得られていない。しかし、それを知られると下手したら殺されてしまうために言えないだけである。
そういった者達に、命令をされている俺は何をしているのか?
自分でも、全くもってわかっていなかった。せめてソルジャーとしての心構えときちんと教えてくれる人さえいれば、よかったのかもしれない。もちろんカンセルさんがだめだとは言っていない。彼は、どちらかというと俺よりの思考の持ち主で、仕事だからやるという信念で動いているのだそうだ。それは、それで凄いことだと思う。今のこのご時世、やりたい仕事をしている人のほうが少ないだろう。田舎からその身一つで出てきて、スラムで何とか生活している人だって、相当数いるはずだ。
そういう意味で言えば、俺は恵まれていたのかもしれない。ソルジャーになるという夢を持ってミッドガルまで出てきて、実際夢を叶えてソルジャーになっている。問題は、ソルジャーになった後であって、それまでの過程はよかったと言えるのだ。だからこそ、ソルジャーとしてどうしていくべきなのかを教えてくれる人が欲しかった。
カンセルさん曰く、もしアンジールさんさえ生きていてくれたらお前にそのことを教えてくれていたのかもしれないのにな……とのことだった。
アンジールとは、“英雄”セフィロスと同時期に在籍していた1stソルジャーであり、正義感にあふれ、人間ができているといっても申し分のない人物だったらしい。それに俺が兄貴と慕っていたザックス兄さんの師匠のような人であったらしく、アンジールさんにザックス兄さんは、ソルジャーとしての全てを教わったのだそうだ。
正直、羨ましかった。
その時代に、アンジールさんに、ザックス兄さんに、どれもこれも羨ましかった。今では、時すでに遅くその時代に生きていた1st達と会うこともできないし、もちろん喋ることもできない。彼らの生きた証に触れることは、可能だったが……それも資料やカメラ等に写ったもので、なんか素っ気のないものだった。
俺が、アンジールさんとザックス兄さんについて聞いていくと、あることをカンセルさんは話しだした。アンジールさんとザックス兄さんの間でどうも、ある物が伝承されていたという。それは、身の丈以上になる大剣で一般の森羅兵なら確実に持つことさえできない武器だったとのことだ。
その名をバスターソード。
元々は、アンジールさんが持ってはいたものの使わないといった武器で、扱えなかった訳ではなくもったいないからというなんとも面白味のある理由で使わなかったようだ。そしてアンジールさんが殉職した際にザックス兄さんが受け継いだらしい。しかし、それも行方不明になった。それもザックス兄さんの死亡という最悪の形でだ。俺はそれに触れてみたかった。ほしいという訳ではなく、尊敬すべき人たちの本当の意味での生きた証に触ってみたかったのだ。しかし、2ndソルジャーの中で最強といってもそこまで権力を持っていなかった俺は、探すことさえ不可能だった。
1stソルジャーなら探せるかといったら、そうでもない。基本休みというものがソルジャーには与えられておらず、ほんとに月に1度休みがあったらいいというところなのだ。そんなソルジャーにもはや旅をするという時間は与えられていない。それに逆に休みだと、何をしていいかわからずに困ってしまうのだ。そして、俺のスラム街のモンスター退治に繋がるという訳だ。
一度、ハイデッカーや宝条という上の連中に頼んでみようとも思ったがやめておいた。こんなことで借りを奴らに作っておきたくなかったからだ。そうして俺は、バスターソード探索をあきらめた。いずれ、機会があればそれに触れることができるだろうと思いながら。
他に、カンセルさんになにか生きた証のようなものはないかと尋ねたら、トレーニングルームがそうなのではないかと言われた。5年前には、様々な場所で戦闘するというのが考えられており、列車の上や、かつて戦争相手であったウータイなどといったところでの戦闘ができるシステムが作られていた。現在は、機能やシステムはその頃に比べるとかなりアップグレードしており、そのシチュエーション内容は、過去のソルジャーたちの戦闘を元に作られていて、その中には、ザックス兄さんやアンジールさん、さらにジェネシスや“英雄”セフィロスなどの経験した戦闘を体験できるといったものだった。
確かにその通りだった。2ndになりたての時は、よくトレーニングルームで戦闘を繰り返していた。先輩ソルジャーたちの経験してきたことを体感するのは、本当に楽しかった。
そして、今日はたまの休みの日なのだが、することもなく久しぶりにトレーニングルームに行こうと思っている。いつぶりかなと考えているが、覚えていないくらい前だということしか言えない。
「おやっ、ファブル! 今日はどうしたんだ。お前休みだったろ?」
「あー、そうなんだが、することがなくてな。それで今日はトレーニングルームを久しぶりに使ってみようかなと思ってきたんだ」
「ほーさすがは、2nd最強の男だな。鍛錬は怠らないか。ふんっ!」
「そんなんじゃないさ、ストー。なんだったらお前も付き合うか? お前だって今日休みだったはずだろ」
「そんなことお前に関係ないだろ。だが、それに付きやってもいいぞ!」
「そうか。なら付き合ってくれ」
「ああ!」
俺が、ソルジャーフロアの更衣室で戦闘服に着替えているとどこから現れたのか、俺とともに休みを言い渡されていた双子の片割れであるストーが現れた。
彼も暇を持てやました結果。ソルジャールームにくるという結論に至ったようだった。まぁ練習相手にはちょうどいい相手ではあったので、手伝ってもらうことにした。ストーは、まるで子供のようなので扱いが楽だ。それに比べクーラの方は相槌しかせず、何を考えているかわからない。唯一理解できるのが、ストーだけであり、さすが双子だと思っている。
今回のトレーニングは、カンセルさんが聞いたとある特殊な場所で行うことにした。なんでも、そこではよく“英雄”やアンジールさん、それにジェネシスという時代を彩った人達が戦っていたのだという。
その場所とは、ジュノンでその代名詞といっても過言ではない大砲の上という特殊な場所だ。こんなところでよく、英雄たちはしのぎを削っていたらしい。
「ストー、さぁかかって来い!」
「言われなくても、すぐいってやらあぁぁ!」
お互いの得物と得物が激しくぶつかり合い、火花を散らす。何度もストーと戦ってきてわかっていることがある。
「おりゃあぁぁあぁぁ!」
お互いに1歩下がり、ストーがその両手で持っているハルバートを上段に振り上げ、まるで瞬間移動のような速さで俺に迫ってくる。
ストーは、その身に余るほどの力がストーの長所だ。実際奴の一撃は重く、一撃でも食らってしまえば意識を持って行かれるだろう。だが、その力が奴の弱点なのだ。
「ふっ! 遅い!」
上段から振り下ろされたハルバートは、移動してきた速度やストーの力によって、恐ろしいぐらいのスピードだった。しかし、そんなこと俺には関係ない。奴が振り下ろしてきたときには、少しだけ奴のタイミングをずらし、その側面へと移動していた。
そう力があるゆえに、その力をコントロールすることが難しいのだ。それによってストーは、一撃の後、ほんとにわずかだが隙ができる。それを俺が見逃すわけがなかったのだ。
「ぐふっ! まだだ、まだ一撃もらっただけだぁぁぁ!」
側面に移動していた俺は、遠慮することなくその腹にレイピアの側面を叩きつける。レイピアの基本として突くことが主体となっている武器なのだが、ここで決着をつけるのが面白くなかったために、あえて側面で叩くということをしたのだ。それでも、相当のダメージには違いないが。
再び、奴が迫ってくる。その時だった。アナウンスで、トレーニング終了というアナウンスが流れたと思ったら、景色がもとに大砲の上から、元のトレーニングルームの部屋に戻った。
「な、なんだ? どうなってんだ!」
「きっと誰かが、終わらせたんだろ」
俺がストーからの質問に答えたときだった。トレーニングルームのドアが開いたと思ったら、そこからストーの片割れであるクーラが完全武装をしてやってきた。
「あ、兄貴。なんで?」
「……」
ストーがクーラに対し、問いかけるが言葉が返ってこない。だがストーには、クーラの言いたいことが伝わったらしかった。
「そ、そうか。確かに兄貴を誘わなくてすまなかった! 今度は、二人でファブルと戦おう!」
どうやら、クーラも俺と戦いたかったようだ。いつも戦っている癖にとは思うものの、トレーニングルームで戦ったことはなかったと思い返した。ここでは、そとで戦うよりもあまり制限なく戦うことができる。それは、神羅という企業の技術の賜物だったが、別にそこはどうだっていい。
俺としては、早く続きをしたかった。まだ始まったばかりで全然動いてないし、それにクーラも加わればもっと楽しくやれるかなとどこか期待をしていた。
「そうだな。今度は2人でかかって来い。おい、システム。さっきのとこでもう一度だ」
システムのアナウンスの音が聞こえ、再びあの場所が再現されていく。その空は、昼から夜に変わる夕暮れ時で綺麗なオレンジ色。太陽が吸い込まれるように海に消えていこうとしていた。
そして目の前にいる男どもの影は長く伸び、逆光によって顔があまり見えなくなっている。
対戦相手が、ストー1人からクーラが増え2対1になった。
「さぁさっきの続きだ。お前らから来いよ!」
「言われなくても! いくぜえぇぇぇ!」 「……行く」
今度は、二人同時に相手をする。こいつらのコンビネーションは間違いなく最高だ。1stでも何人かだったらやられてしまうだろう。先ほどまでだったら、ストーの隙をついて攻撃ということができたが、もうこれは不可能となった。
それは、クーラがいるからだ。別に特段特徴があるわけでもないロングソードを使っているのに、苦戦を強いられる。特徴がない武器ほど、利点は少ないがその分不利益がないことも確かだった。それに、クーラの腕前は相当なものだ。
そんな、こいつら兄弟が強くないわけがなかった。
だが、彼らにも俺は一度も負けたことがないのもまた事実だった。
「ふっ、まだまだだな。グラビガ!!!」
「なっ、なに!」 「くっ……!」
そう毎回こうなのだ。彼らは、兄弟そろって猪突猛進型だった。ちょっと挑発するだけですぐに攻撃を仕掛けてきた。もし一介の兵士が同じことをしたなら、すぐに首と胴体が離れることは間違いない。それだけのスピードと火力を持っていた。
彼らの俺と戦う時の誤算は、どこかで俺より自分たちの方が強いと思っているところだ。それさえなければ彼らは、俺に勝てるのかもしれない。
彼らが絶対に俺に向かって動いてくると予想していたので、トレーニングルームがジュノンに変わる前からチャージをしておいた。グラビガなどの高度な魔法は、チャージに若干の時間を要するためだ。
そして、彼らはそのことに気づくことなく突進してきて、黒い暗黒の球体に押しつぶされるという状況に陥っていた。
「くそっ、卑怯じゃねえか!」 「……ぐっ!」
「卑怯なことじゃないさ。毎度毎度ただひたすらに突っ込んでくるお前らが悪い。さっさとそれを直せ。そうすれば俺に勝てるかもしれないぞ」
グラビガにより、一気に4分の3のHPを削られた彼らは、立てないほど辛そうだった。じっくりじっくり食らったダメージより、一気に食らうダメージの方が痛い。それは俺も経験したことがあった。
「まぁ、あれだな。始まって早々だが、今日はこれまでだな」
「ふっまだだ、俺は、俺たちはまだやれる」 「うん……」
「いや、やめておこう。なんか、もう飽きた。お前らもうちょっと強くなれ。お前らの頭は何のためについている? 考えるためだろ。ふぅー、システム解除だ。」
そういって、足早に元のシュミレーションルームに変わりつつあるところから出て行った。
そろそろ奴らにも気づいて欲しい。力だけじゃだめだということに、人間頭も大事だって言うことに……
そんなことを考えながらも動き足りないと考えた俺は、そのままの格好で参番街のスラムへと向かった。その目的は、モンスターを駆除するためだ。
プレートの上層には、滅多にモンスターは出現しないが、下層にあるスラムには、もうどこから湧いてくるんだといわんばかりに出現する。それによる死者の数も毎年数えきれないくらいだ。
1体目、2体目………20体目と次々にモンスターを屠っていく。20体目以降はもはや数えていない。HPは一切消費してないが、体力的に限界を迎えそうなぐらいでいつも終えている。今日もその予定だったのだが、それは叶わなかった。
「キャー!!!」
甲高い、まるで空をも裂くような悲鳴が聞こえたかと思ったら、その声の主である女の子が俺に向け突撃してくる。その後ろには、10体をこすモンスターの群れだ。
一体何をしたら、こんなにもモンスターに追いかけられるのだろうか。
若干面倒だとも思いながらも、彼女を避けモンスターの群れの中に飛び込んだ。飛び込んだ先にいたモンスターに両手に持っているレイピアで頭を貫く。
魔法をチャージする余裕も時間もなかったために、どうやら肉弾戦になりそうだった。ちなみに俺の武器の攻撃力は、1本80といったところだろうか。中々に高い、それにそれぞれに属性がついており、炎と雷が一本ずつ付属している。もちろん相手に合わせてその属性を変えて攻撃をしている。
今回の敵は、ホウルイーター。弱点は特にない。スラムではよく見かけるモンスターだ。これと言って強力なモンスターではない。彼らの長所を強いてあげるなら、そのスピードだろうか。しかし、それもソルジャーの足元に及ばない。
楽々とその全てを倒し終わったのだった。
「すいません。ありがとうございます」
後ろから、声をかけられた。さっき俺が助けた女の子だ。年は、俺とあまり変わらないくらいだろうか。さっきはよく見れなかったが、結構可愛い。長髪で眼鏡をかけていているにも関わらず、可愛いというのがわかった。それが彼女との出会いだった。
たったそれだけ、たったそれだけの出会いで俺の人生が変わるなんて考えもしなかった。まさかこの女の子が俺の人生を変えるなんて、本当に思ってもいなかったんだ。