ファイナルファンタジーVII ~とあるソルジャーの追憶~ 作:定泰麒
ネーヴェとの出会いから、早くも1週間が過ぎていた。ファブルは、いつものようにモンスター討伐やミッドガル近辺の警戒等の任務を受けていたのだが、上層部のほうからジュノンにて護衛任務という指令が出された。
しかも、その護衛相手はストラーヴァ製薬の社長であるティエルノ・ストラーヴァ。そうネーヴェの実の父親であった。
「へぇー、ストラーヴァの社長の護衛か……大変だな、お前も」
「まぁ、はい。カンセルさん、俺の代わりにやってくれません?」
「バーカ。俺も任務でちょっとウータイまでいかねぇといけねぇんだよ! 俺の方がお前と代わりたいわ!」
「げっ! そりゃ遠慮しときます」
「ふんっ、なら文句言ってんじゃねぇよ」
ウータイか、かなり遠いな。確かウータイと言えば戦争の舞台になったところだよな。14年前だったか、詳しくは知らないが神羅とウータイで戦争が起こった。結果は、神羅の勝利に終わり強国として知られていたウータイは、今ではただの観光地になっている。
話によると、ウータイとの戦争が終わる前後でザックス兄さんもこの戦争に参加していたらしい。
どんな気持ちで参加していたのだろうか、その時のレポートは今も存在しており、それを見てみたことがある。どうやら、ソルジャーになってすぐのことだったらしい。
きっと戦闘が楽しかったに違いない。英雄になろうとしていたに違いない。きっと俺でもそうであっただろう。
“戦争は英雄を生む”
こんな言葉を思い出す。名前も思い出せないが、昔の偉い人はこんなことを言っていた。確かにその通りだと思う。一方にとっては、大量殺人者でも自国の人にとっては、それこそ国を守ってくれている英雄なのだ。だからこそ戦争というモノは英雄を生む。だがその言葉には続きがある。
“だが、戦争は英雄を殺す”
戦争で生まれた英雄は、戦争によって殺される。殺すものから殺されるものになる。俺には、それが恐ろしい。ソルジャーと言っても無敵ではない。現に“英雄”は消息不明になっている。死んだとは思ってないが、死んだも同じだろう。
ザックス兄さん、アンジール、ジェネシスその全てが消えていった。
ミッドガルからジュノンまで、車で約半日というところだろうか。約2時間で行けるという抜け道があるらしいが、そこに行くには厄介な沼を通らなければならず、遠回りでも半日かけていった方が安全に行ける。
しかし、今回はジュノンまでヘリコプターで行くことになっている。しかもストラーヴァ製薬のヘリコプターで。なんというか、嫌な予感がする。
護衛だから、最初から最後まで警護しておけという理由から、そうなってしまったようだ。
「君が私の護衛役ですか?」
「ええ、2ndのファブル・ウェボラーです。ファブルと呼んでください」
「へぇ、君が噂の……まぁよろしくね。ファブル君」
「はっ! よろしくお願いします」
社長と聞いて、傲慢でプライドの高いクソ野郎と思っていたが違うようだ。これがネーヴェの父親か、似ている気がする。目元や口元なんかそっくりだ。嫌な予感がしていたが、意外と外れているかもしれないな。
「今回は、何の用でジュノンへ行くのですか?」
「うーんと、企業秘密なんだけどね。ちょっとだけ教えてあげよう。ある薬を運んでいるのさ」
「薬を運ぶ……わざわざ、社長が運ぶっていうことは、相当な代物なんですね」
「そうそう。だから、護衛のほう、しっかり頼んだよ」
「わかりました」
俺は、ティエルノ社長が右手に持っている黒い金属製のケースを見つめた。きっとこの中にその薬とやらが入っているのだろう。にしても、よほど大事なものなんだろう。でなければ、ソルジャーに護衛なんて仕事、回ってこない。
護衛の仕事は、結構こなしてきたが、そのどれもが神羅にとって非常に重要なものであった。今回も、そうなのだろう。気を引き締めていこう。
ヘリがジュノンのヘリポートへと降り立った。ここまで約1時間くらいであろう。車なんかよりもかなり早く着いた。巨大なヘリポートには、ヘリだけではなく、飛行船もおかれている。久しぶりにここに来たが相変わらず、いい景色だと思う。前方には壮大に広がる海。雲一つない空。その景色の中に無機質にたたずむ砲台。なんとも言えない感覚が俺の中に広がっていた。
「ファブル君、もういいかい? そろそろ、行こうか」
「す、すいません。久しぶりにここに来たもので……行きましょうか」
ヘリポートから、下に行くためにエレベーターに乗った。俺以外にも護衛役が付くことになっていたようで、エレベーターの前に4人の神羅兵が待機しており、俺たちに合流した。
「我々が、ご案内いたします。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いしますね」
俺たちの目的地は、どうやらストラーヴァ製薬に関わる会社ではなく、神羅カンパニーのジュノン支部みたいだ。
車に乗って、ジュノンの中を移動する。その道中には左には海が見え、右には、様々な建物や民家が並び立つというなんとも歪であるが、どこか均等が取れている景色だった。
「ここです。では、参りましょうか」
「ええ、行きましょう」
たどり着いた先は、ジュノン支部のなかでも、宝条が管轄している施設であった。ここに来たということは、間違いなく薬というのは重要度の高い物であろう。
だが、わざわざこれだけのために俺は護衛することになったのだろうか。難易度は低く感じる。ミッドガルでの護衛任務の方が、まだ難易度が高い。どうやら、俺の感じていた不安がなんとなくその現実味を帯びてきていた。
外装は、なんといえばいいだろうか。以下にも研究所といったところだ。金属製の製造物がやたら乱立している。それらで囲むように中央にも、一際大きい建物が建っていた。俺から言わせてもらえば、何とも悪趣味で、まさに宝条のイメージ通りの建物だった。
今回は、その真ん中の建物に用があるようだった。神羅兵の4人は入り口で待機し、中へは、俺とティエルノさんだけで入ることになった。
中は、ちょっとした広場兼受付のようだった。そこで、受付で目的を伝えた。俺の悪い予感は的中していた。
普段は、ミッドガルで研究に明け暮れているはずの宝条がここにいるというのだ。しかも、俺たちの目的地は、どうもそこらしい。
嫌になるな。
「よくきてくれたな、ティエルノ……。クックック、どうだいファブルは、良いソルジャーだろ」
「久しぶりだな、宝条博士。そうだな、彼は良い青年だな。……それで、これが例のやつだ」
やはり、どうやら俺は宝条に気に入られているようだ。しかし、この会話、なんか引っかかった。ティエルノさんの雰囲気が若干変わったことと、もう一つは……これは、どうでもいいことか……。
ティエルノさんは、金属製の箱を宝条に差し出した。
「これが、あの薬か。クックック……。これで……ようやく……」
宝条が独り言を言っている。
「すまない、ファブル君。これから、ちょっと実験を行うから、このラボの外で待機してほしい。それなりに時間がかかると思う。ほんとにすまないね」
「そうですか、わかりました。もし、なんかあったら呼んでください。すぐ駆けつけます」
「ああ、頼んだよ」
ティエルノさんから外に出るように言われ、俺は外に出た。外と言っても部屋の外というだけだから、何かあったらすぐに駆けつけれるだろう。
ほんとのところ、俺が呼ばれないのが一番なんだが、宝条が関わってるというのが、心配の元だ。
何があっても、ティエルノさんは守らないといけないな。良い人だし、それにネーヴェのお父さんだから、死なせて彼女に恨まれるのはごめんだ。
部屋の外に出て、3,4時間経った。ラボでは今だに実験が行われているようだ。時々何かのうめき声なんかが聞こえてくるが、呼ばれないので大丈夫だろう。
気になる点は、なんのうめき声かだが、十中八九モンスターだろうと思う。ここにも、ミッドガルにある、モンスターを運べるエレベーターがあったし、使用用途さえわからない器具が、たくさん置かれていた。モンスターが少しかわいそうに思えなくもない。
しかし、そんなことを考えていた時。異変は起こった。
「うおっ、何やってるんだ宝条! ファブル君、来てくれ!」
ティエルノからの要請だった。宝条が何かしでかしたらしい。すぐに部屋の中へと入った。
そこで見たものは、数匹のモンスターが拘束器具の上で縛られながらも暴れまくっている様子であった。
「これは、一体!? 俺はどうしたらいいですか?」
ティエルノに尋ねた。
「宝条がな、しでかしたんだ。……はぁ~、とりあえずこのモンスター達を殺してくれ。こんな暴れられたらさすがに手出しできない」
「了解です」
俺は、レイピアを取り出し1匹ずつとどめをさしていった。ティエルノも若干の放心状態でため息を吐いた。宝条は、何を考えているかわからない。ただ、不気味な笑みを浮かべていた。
「クックック……、ティエルノ……私たちは、また一つ大事なデータを手に入れたぞ。今日は、失敗したが明日は、成功するだろう。私は、このデータをまとめる。今日は、ここまでだな。……ファブル、ティエルノを宿まで連れていけ。ちゃんと守ってくれたまえよ」
「言われなくても守りますよ、それが俺の任務だ。では、行きましょうか。ティエルノさん」
「……あぁ、行こうか」
俺は、ティエルノさんとともに研究所の外へ出て行った。その間、宝条は、俺が嫌いな暗い笑みを浮かべていた。
入り口には、この研究所まで連れてきてくれた神羅兵たちが待機しており、彼らにホテルまで連れていってもらえることになった。
「ティエルノさん、宝条博士となにかあったんですか?」
「うーん、なんて言ったらいいか……。あいつとは、腐れ縁なんだ。それも学生時代からのね。でも、なんでそんな質問するんだい?」
「なんとなく、2人の間に何かを感じたんです。特に宝条博士があなたに対しての対応がなにか、こう……特別というか、なんというか」
「そうか、そこまで感じ取っていたか。今日の夜、少し僕と話そうか、ファブル君」
「いいのですか、せっかくの休眠時間を俺のために割いてしまって?」
「いいんだ。それに、君に話さないといけないこともあるしね」
「それなら、夜うかがわせていただきます」
来た道を戻りながら、隣に座っているティエルノさんと俺は話していた。俺が、宝条に関していたのは、ティエルノさんに対するどこか特別な対応。
あの、人間を道具としか思っていないような男が、まるで友のように対応した。そこにものすごい違和感を覚えた。
今夜、泊まる宿は、神羅基地内にある第一等睡眠室とのことだ。安全性と心が休まるような部屋ということで地下に造られている。窓からは、海中を見ることができ、海水魚なんかが泳いでいる。その窓も、金属のような硬さでガラスというかなりの強度をもつもので作られていて、窓からモンスターが入ってくるなんてことはない。
さすがは、ストラーヴァ社長だな。あのプレシデント神羅が幹部ぐらいにしか泊まらせない所に泊めさせるとは、それだけ、ストラーヴァのことを買っているのだろう。
俺はといえば、第二等睡眠室だそうだ。ソルジャーや神羅ご用達の科学者、神羅兵の上級兵士達などが泊まれるところだ。
夕食は、適当に売店でパンと缶詰を買って食べた。ティエルノさんは、部屋に夕食を持ってきてもらえるらしい。しかも、豪華な料理を。これぞ、上の人達の特権だな。特別羨ましいとは思わないが。
俺に与えられている任務であるティエルノさんの護衛であるが、主に移動中を守るという任務だ。それ以外でティエルノさんに危害が及ぶ可能性は、ほぼ皆無と言っていい。
たとえば、彼が泊まっている部屋までに何重ものガードを通らなければならない。しかも、そこを24時間体制で神羅兵が守っており、異変が起こればすぐに警報がなるシステムだ。
「私の部屋に、9時くらいに来なさい」
「わかりました」
約束の9時まで、残り5分ほどになっていた。俺の泊まっている部屋から一等睡眠室まで、ガードを3つほど通らないといけない。面倒くさいことだ。
ガードを通るたびに、身分証の提示を求められる。毎回、目的も話さなければならない。本当に煩わしかった。
「すいません、ちょっと遅れてしまいました。あまりにもガードの人達がしつこいもので」
「いいさ、ガードも固い方が僕としても嬉しいしね」
俺がティエルノさんの部屋にたどりついたのは、約束の時間から10分ほど過ぎてからの事だった。
「さぁて、何から話したものかな。君の聞きたいことを聞いてくれて構わないよ」
「そうですか、なら、宝条との関係を詳しく聞いてみたいですね。あの宝条のことをもっと知りたいです」
「うん、了解。帰ってくるときも話したと思うけど、僕と奴は学生時代からの同級生だったんだ。奴は、その当時から凄まじく頭が良かった。僕もそれなりに頭が良かったんだ。僕の娘のネーヴェと同じように、飛び級して15歳で神羅科学大学の前身であるミッドガル科学・工業大学に入れたんだ。その当時、それは今よりも凄いことだった。だけど、それは、僕だけじゃなかった。宝条、奴も僕と同じように飛び級して大学まで入ってきたんだ」
「す、すごいですね。ネーヴェの才能は確実にあなたから受け継がれているのですね」
ティエルノ・ストラーヴァ。その才能は、わずか15歳の時から光っていたようだ。そして、確実にネーヴェもその才能を受け付けているのだろう。
「まぁ、その当時、僕自身も俺は凄いやつだと勘違いしてた。今になっては、なんとも恥ずかしい限りだね。大学に入った時、その時点では、まだ宝条の存在を知らなかった。学科も違ったしね、知らなくて当然だったんだ。だけど、すぐに僕らは出会ったんだ。僕の恩師であるガスト博士によってね」
「ガスト……あのガスト・ファレミス博士ですか?」
「そう、そのガスト博士だよ」
前に聞いたことがある、宝条はガスト博士の助手だったという話を。宝条は、ガスト博士と学生の時に会っていたのか。
ガスト・ファレストか……宝条の前の化学部門統括だったはずだ。正に稀代の天才と評されていた。宝条さえ嫉妬させたという話を聞いたことがある。
しかし、彼についてあまり俺は知らない。急に神羅から消えたのだ。理由は、女と駆け落ちしたという噂が当時流れたようだが、実際は不明らしい。
俺の憶測だが、これにも間違いなく陰謀が隠されているだろう。ただの勘だが、当たっている自信がある。神羅というのは、陰謀に策略に彩られている会社だからだ。
「入学して、日も浅い内だったと思う。急にその当時の学長から呼び出された。なんでも、僕に会いたいと言っている人物がいるとね。そして、行ってみるとそこにガスト博士がいた。その横に宝条もいたんだ。それが僕と宝条の初めての出会いだった。そこからだった宝条と仲良くなったのは……。宝条と仲良くなったのは必然だった。人よりも優れた才能を持っている人間というのは、少ない。僕たちはお互いに孤独を感じていた。特に僕の方がね」
「えっ、ティエルノさんの方がですか? 宝条博士じゃなくて?」
その言葉を聞いて、ティエルノさんは苦笑いをした。まずいことを言ってしまったようだ。
「そうなんだ。僕は、さっきも言ったけど、少し調子に乗った部分があった。プライドも高くてね。ほとんど友達もいなかったよ。だが、宝条は違った、奴は、昔は明るいやつだったんだ。友達もいて、人当たりもよかった。今ではあんなだがね」
「あの、宝条博士がですか!?」
「そう、あの宝条がだよ」
宝条が明るいだなんて、全然想像もつかない。今ではただのマッドサイエンティストである彼に一体何があったのか、俺は気になった。
「でも、なんでその宝条博士が今みたいな感じになっているんですか? 何か特別なことがないとあんな風にならないでしょう」
「……奴がああなってしまったのは、尊敬し、信頼していたガスト博士のせいなんだ」
「どういうことですか……?」
「学生の時は良かったんだ。そう学生の時は。宝条は天才で、アイディアも豊富で、様々な成果を学生の時から挙げていった。困った時は、友人や僕、ガスト博士に頼りながらね。だけど、問題は卒業してから、ガスト博士の助手になってからだったんだ。最初のころは、大学の時と同じように、ちょっとづつ、ちょっとづつだが、成果を挙げていった。だが……奴は気づいてしまったんだ。自分の才能の限界とガスト博士を永遠に超えることはできないということをね。それから奴は、変わった。嫉妬心が奴の心を支配していった。それに伴って、今まで考えもしなかった自分のコンプレックスを気にしだした」
宝条にそこまで思わせるガスト・ファレストという男は相当な科学者であったのだろう。そこに関しては、少々同情を禁じ得ない。俺は、直接見たことはないが“英雄”という存在に決して追いつけはしないだろう。きっと宝条にとってガスト博士は、俺にとっての“英雄”と同じなのだ。
「だが、それは僕も同じだったんだ。まぁ僕の場合は、宝条には敵わないと学生の時に気づいて、異常なほどに嫉妬していたこともあるけど、元々違う分野でやっていたから、宝条に負けてもいいかと思ったらなんか嫉妬心なんてものも消えて行ってね。それに、僕の分野は、あまりいい博士がいなくて、僕がそう意味で言えば一番成果を挙げることができたのさ。でも、宝条は違う。奴は、いつまでもガスト博士に対して、劣等感を感じているのだろう可哀想にな」
今までただのクソみたいな研究者としか思っていなかった。でも、そんな過去を聞いてしまうと心が揺らいでしまう。
「それでも、奴は俺のことは友人と認めてくれているようだ。なぜかは……わからんでもないがね。とまぁ宝条に関してはこんなとこだろうか。それでも、私は奴を元の友人のように思うことはできないのだが」
そこまで言うと、またもティエルノさんは苦笑いを浮かべた。きっと、何か二人の間に何かあったに違いない。
「なるほど……」
俺は何も言うことができなかった。なんと言葉をかけていいかわからなかったし、俺の中のもやもやも消えていたからだ。
「ちょっとしんみりしてしまったね。でも、僕にとってこれが本題ではないんだな、これが」
「えっ?」
「言ったじゃないか。僕は君に話したいことがあると」
「そういえば、そんなこと言っておられましたね。この話の事ではなかったんですか?」
「当たり前だろ。なんで好き好んで宝条の話をしないといけないんだ!」
「確かに、そうですね」
さっきまでのしんみりした雰囲気が嘘のように俺たちは笑った。でも、宝条の話でないとすれば、ティエルノさんは、俺に何を話したいのだろうか。
「さぁ、本題だ。ファブル君。君は、みずのマテリアを持っていないか?」
「持ってますけど」
「やはりか……。それは、内の娘にもらったんだろ」
「ええ、そうですけど……どうかしました?」
「そ、そうか。はぁ~、複雑だなぁ。いいかよく聞いてくれよ」
ティエルノさんは、今までになく真剣な顔のなった。このみずのマテリアに何かあるのだろうか。妙な緊張感が俺に沸いていた。
「はい!」
「よし! 言うぞ! どうもうちの娘、ネーヴェは君のことが好きらしい……」
「わかりました! って、えっ!」
「どこから説明したらいいか……。実はな、みずのマテリアは、極秘中の極秘なんだが後々実用化できるようになった時、神羅カンパニーに納品する予定だったんだ。それで、毎回マテリアの実験は、森羅カンパニーから派遣されたソルジャーにやってもらっているんだ。しかも、1stソルジャーがその任務を受けるんだが。どうもな、みずのマテリアが完成した時期にな、ある相談をネーヴェにされてな。その相談っていうのは、どうやったら好きな人と話すことができますか。っていうものだったんだが」
「なんとも、彼女らしいことですね」
「そうだね、私は親として悲しいと思ったと同時に、ついにこの時期が、我が娘にも来てしまったかとも思ったよ。そこで、恥ずかしながらも動揺してしまってね。私がどうやって妻を落としたかという話をしてしまったのだよ。後々、自分の犯したミスに気付いた時、全ては遅かった。みずのマテリアが消えたのさ。その時、すぐにネーヴェの仕業だと思った。そして、問い詰めたところ、君に渡したというじゃないか」
「このマテリアにそんな事情があったなんて、返還したほうがよろしいですか?」
「いや、いい。君に持ってもらっていてもデータは取れるだろう。だけど、この話には続きがあるんだ」
ほんとに宝条の時の雰囲気はなんだったのであろうか、このティエルノという男は、親バカにしか見えなかった。でも、嫌いじゃない。
「ファブル・ウェボラー。現在の2ndソルジャー、トップの実力を持つ。という情報しか僕は知らなかった。だから、娘が好きになった相手のことを知りたいと思ってね。今回僕の護衛を君にしてもらえるように無理やり上層部にねじこんだのさ」
「そ、そうだったんですか」
「うん、自分でもわかってるさ、親バカだろ」
「それでいいんだと思います、親バカなくらいで、ネーヴェのことを愛しすぎることは決してわるいことではありません」
「君は、やはりいい子だね。調べたが、ネーヴェと同じ年齢らしいじゃないか。ぜひ息子に欲しいくらいだよ」
「あなたにもらってくれるなら、光栄ですよ」
「はっはっは。でもね、一つ言っておくよ。僕の目の黒い内は、絶対にネーヴェをあげないからね!」
「は、は、は……」
今度は、俺が苦笑いする番だった。最後の言葉に力が込められていると感じた。これが親なんだと思った瞬間でもあった。
親か……俺は、捨ててしまった。
元気にしているだろうか、病気にかかっていないだろうか、死んではいないだろうか、俺のことを覚えていてくれるだろうか……
久しぶりに、親に会いたいと思った。ミッドガルに帰ったら、手紙を書いてみるか……
その後、俺はその部屋を後にし、明日の任務に向けて休眠をとることにした。
久しぶりの更新です。
宝条は、私は嫌いですね。まさに諸悪の根源です。