ファイナルファンタジーVII ~とあるソルジャーの追憶~   作:定泰麒

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第7話 アンダージュノンでの出来事

 「ふぅ、ようやく終わったよ。ファブル君、すまないね」

 

 「いえ、任務なので」

 

 「そうか、でもごめん。僕は、ちょっと行かなきゃいけない所があるんだ。護衛してもらっていいかい?」

 

 「はい、行きますとも。ですが、どこへ行かれるのですか?」

 

 「この町の負の遺産……アンダージュノンさ」

 

 昨日に引き続き、宝条のラボでティエルノさんは実験をしなければならなかった。その実験に関しては、知っていることは、ここまで運んできた薬が関係するであろうことと、宝条、ティエルノさんという知っている人が聞けば、確実に実験に立ち会いたいと思わせるコンビで実験をしていたということだ。

 科学者にとっては、2人とも目指すべき存在なのだ。それぞれの道でトップを行く男達。宝条は人格にこそ、問題があるが、実力は一流と言っていい。

 そんな2人が行う実験に興味がないといえば嘘になるが、間違いなく知ってはいけないモノだろう。わざわざ知る必要がなかった。

 

 今日は、昨日と違って朝から実験が行われた。途中で休憩などないらしく、8時間ぶっ続けでしていた。その間、俺はもちろん部屋の前でずっと待っていた。

 ようやく、出てきたと思ったら今度はアンダージュノンへ。しかし、一度は行かなければならないと思っていた場所なのでちょうどいいのかもしれない。

 

 「僕はね、ジュノン生まれなのさ。それも、神羅によって分けられる前のね。何もない、田舎だったけど、景色が綺麗でね。特に透き通る海がね、僕は好きだった」

 

 「今でも、海は綺麗だと思うんですけど」

 

 「そうかい……、僕は嫌だな。この巨大な要塞によって汚染された海なんて」

 

 「汚染されてるんですね……。こんなに綺麗な海なのに、なんで神羅は自分の利益しか考えないんでしょうかね」

 

 「うん、そうだね、その通りだけど僕や君には、それを否定することはできない。僕たちが生きられて、人並みの生活以上ができるのは神羅のおかげなんだから」

 

 宝条の施設から、神羅の基地に戻ってきた俺たちは、アンダージュノンに行くためのエレベーターに乗っていた。

 悲しいけど、神羅によって生きることができているのは紛れもない事実で、ソルジャーという存在自体、神羅によって生み出されたモノで、そのことがどうしても俺の中で認めることができていなかった。

 

 「アンダージュノン、まるでミッドガルのスラム街のようだ。救いがあるとすれば、この綺麗な小川があることか」

 

 「ここ綺麗ですね、信じられないくらいに透き通ってる。ここだけは汚染されて欲しくないですね」

 

 そんな時、後ろから小さな小さな殺気を感じた。振り向くとどうやら小石が飛んできていた。しかも、その石は俺ではなくティエルノさんへ向かっている。

 レイピアを抜くと同時にその石を吹っ飛ばした。そして、石が飛んできた先を見ると1人の女の子がたたずんでいた。心なしか震えているように見える。

 

 「な、なんだ。どうかしたのかい?」

 

 「ええ、どうやらあの女の子が、あなたに石を投げてきたみたいです」

 

 「女の子? あの子かい、さぁてどうしたもんかな」

 

 「どうか、殺すという選択肢を俺に言わないでいただきたいです。言われたら殺さなければなりません」

 

 「そんなこという訳がないさ。でも、理由は聞おきたいね」

 

 「わかりました、俺が聞いてきます」

 

 俺は、女の子に近寄った。女の子は、逃げずにその場にたたずんでいる。

 

 「ねぇ、君。どうして石を投げつけたの?」

 

 「ひっ……」

 

 どうやら、この子は逃げなかったのではなくて、逃げられなかったようだ。無理に聞くのも気が引けたが、理由をさらに聞き出そうとした。

 

 「そんなに怖がらないで、俺は怒ってないから。あのおじさんも君のこと怒ってない。理由を聞かせて欲しいだけさ」

 

 「……ほんとに怒ってないの?」

 

 「ああ、当たり前じゃないか。石は当たってないからね」

 

 「……ごめんなさい、でも、あなた達は神羅なんでしょ、だから……」

 

 「そうか……確かに俺たちは神羅だよ。でも、知っていて欲しいな。神羅にも悪者だけじゃなく、いい人もいるんだって。後、神羅の人ってわかったからって石は投げちゃいけないよ。神羅の人だって人間だから、石が当たれば痛いさ」

 

 「ほんとにごめんなさい。神羅が川を汚してると思ったらなんか、無意識に石を投げてしまったの。ほんと、ごめんなさい」

 

 「うんうん、わかった。もういいよ。それに、俺たちは汚しに来たんじゃない。この綺麗な川を見に来たんだ」

 

 「そうなんだ……」

 

 俺は、心を締め付けられる思いで女の子と話した。神羅だから、石を投げられた。これこそが格差ゆえに生まれた考え、事実、神羅というのが生まれてしまったから、このアンダージュノンが生まれてしまった。

 ミッドガルにもスラム街が数多く存在している。神羅に従わない者は生きる価値はない。プレシデント神羅は、そういう思考の持ち主だ。だから、貧富の格差なんてどうでもいい。自分さえよければ、貧しき民たちなどどうでもいいのだ。

 だからこそ、神羅は嫌われる。富める民には、なくてはならない企業。しかし、貧しき民には、いらない存在、いやなくなってほしい企業なのだ。

 それがこんな小さい女の子にも、思われてるなんて、いかに神羅が嫌われているかを思い知った。

 

 「そうか、神羅だからか……僕たちが背負っている業は、思っているよりも深いのかもしれないね」

 

 「ええ、同感です」

 

 女の子は、別れを告げ去って行った。俺はティエルノさんのもとに戻り理由を説明した。

 

業か……たくさんの人間を殺してきた俺にとってその言葉は深くのしかかっている。

 

 俺が今まで殺してきた人間には、それぞれの人生があって、その結果、神羅に仇なすテロリストとなって、俺に殺されて。彼らには、家族だっていただろう。親もいただろうし、恋人なんかもいたのかもしれない。

 故に、俺がしてきた行為は業が深い。でも、それこそが俺の仕事であって、俺の憧れた職業なのだ。

 

 「さぁ、そろそろ戻ろうか」

 

 「そうですね、帰りましょうか。でも、他にもティエルノさんってこっちでやることがあるんですか?」

 

 「まぁね、これでも社長やってるから」

 

 「そういえば、社長さんでしたね」

 

 「そういえばってなんだよ、そういえばって。君こそ、ソルジャーとしての実力はどうなものかな、まだ見せてもらってないけど」

 

 「それは、見ないことのほうがよろ……いえ、今からお見せすることになりそうです! さがっていてください」

 

 「えっ……」

 

 さっきとは、全然違うほどの膨大な殺気を放つ何かが俺を襲っていた。今度は小川の方からだった。間違いなくモンスターだろう、それも結構強いやつが。

 

 “ギャオオォォォォオオオォオォオ!”

 

 その殺気の正体が明らかになった。ボトムスウェルというここら辺には、棲息しているはずのない水棲生物。それも1匹じゃない、2匹もいる。1度だけ、戦ったことがある。弱点は……どくが効くはずだ。いずれにしろ、戦闘が始まった。

 

 「うおっと!」

 

 ボトムスウェル達は、俺に攻撃を与える隙なく攻撃を仕掛けてくる。俺も負けじと反撃方法を考えるが、思い浮かばない。

 

 レイピアに現在、つけているマテリアの中にどくはない。なんとか付け替えようとするが、その隙さえも与えてくれない。

 

 “ギャオ――――”

 

 おいおい、どうやったらそんな特大津波を起こせるんだよ、その波が俺を襲う。何とか波をジャンプすることによって避けれたが、どうしたらいい!

 

 尻尾で俺を叩きつけようと、攻撃が迫る。その尻尾の振り方が大振りで、それを見逃すことはできなかった。

 

 “ガキーン”

 

 鱗とレイピアがぶつかる甲高い音が辺りに響き渡る。さらにその勢いで俺を圧殺しようと押しにかかっている。なんて固い鱗だ、厄介だな。その間に俺とつばぜりあっていない方が、攻撃を仕掛けてくる。

 

 正直、結構なピンチであった。

 

 「バイオガ!」

 

 その声は、俺の少し後ろから聞こえてきた。振り返るまでもなく、その声で誰かがわかった。

 

 「大丈夫かい、ファブル君?」

 

 「大丈夫ですよ、もちろんでも、ちょっとピンチでした。ありがとうございます!」

 

 「どうやら、敵にどくが効いているようだ。僕は逃げるけど、いいかい?」

 

 「もちろんです。これで状況を打開できるでしょう。ありがとうございました」

 

 「じゃあ、またあとでな。僕は神羅兵を呼んでくるよ」

 

 まさか、護衛対象に助けられるとは思ってもみなかった。しかし、そのおかげで敵の動きが鈍くなる。それに伴って攻撃なんかも弱く感じる。

 

 俺を押しつぶそうとしていた敵を逆に押切り、尻尾から頭へと駆け上った。鱗が固いなら、攻撃する場所は、体内だと俺は考えたのだ。

 

 俺に上られまいと激しく体を揺さぶるが、それに耐える。なんとか頭までたどり着き、レイピアで両目を突き刺した。

 

 “ギャーーーーーーーーーーーー”

 

 まるで雄叫びのようだ。痛さゆえの咆哮といったところか。さらに激しく体を揺らすが、何とか耐え抜く、そして敵の口の前まで躍り出て、口の中にレイピアを脳天にめがけ突き上げた。頭上からレイピアの切っ先が出てきており、ゆっくりと敵は動かなくなった。

 

 それを見て、もう1匹のボトムスウェルは逃げ去った。

 

 ちょうど、俺が倒し終えたころに神羅兵がやってきた。兵士たちに片付けを任せて、俺は、ティエルノさんの下へと向かった。

 

 「今回は、危なかったね」

 

 「はい、面目極まりないです。ほんとに助かりました」

 

 「いいんだよ、あの敵は少々厄介な奴だったんだろ。確か、ボトムスウェルだったかな」

 

 「ええ、かつてあれの大群が、ノースコレル近海で出まして、それによって1stクラスが1人、2ndクラスが3人ほどやられました。3rdクラスにも膨大な被害が出ました」

 

 「そんな厄介なモンスターがなんでこんなところにいるのだろうね? きっと迷い込んできたのだろうが」

 

 「迷い込む……2匹もですか? それに、なんでこんなところに?」

 

 「そんなこと言われても、僕にはわからないけど、偶然じゃないなら……きっと関わらない方がいい。その方が利口だ」

 

 「……はい」

 

 アンダージュノンから、ジュノンへ上る。さっき使ったエレベーターでだ。いっきに疲れた気がする。待つことの方がまだ気楽でよかった。

 女の子に石を投げられ、いるはずもないモンスターに襲われ、下手したら死ぬところだった。

 

 残り、5日間か……

 

 少しだけ気が遠くなった。

 

 

 

 

 

 「もしもし、お父さん? どう、ジュノンは楽しい?」

 

 「仕事だから、楽しいとは思わないけど……それなりに満喫はしてるかな」

 

 「へぇ~、それはよかったですね。私もそっちに行けばよかった」

 

 「それは無理だろ。お前は、学生だし」

 

 「なんか私特別扱いされてるから、休んでも、研究のためって言えば許可くれるんです」

 

 「はっはっは。完全に特別扱いだな、それは。来たければ来るといいさ。明日にでもね」

 

 「ほんとに? 行きます、明日、朝からそっちに行きます!」

 

 「来なさい。私の方で手配しておこう」

 

 「ありがとう、お父さん。大好きよ」

 

 「私もだよ、ネーヴェ」

 

 そこは、地下に存在する超高級な第一等睡眠室と呼ばれる場所。ティエルノは、ワインを飲んでいた。彼の護衛をしている青年はそこにはいない。

 

 「結婚はまだ認めないけど、手伝いぐらいはしてやらんとね……愛する娘のためならば」

 

 ティエルノは、つぶやいた。

 

 

 

 

 

 俺のPHSがなっている。どうやら相手は、ティエルノさんからのようだ。

 

 「もしもし、なんでしょうか?」

 

 電話に出つつ、部屋にかけられている時計を見る、護衛任務開始まで、まだあと1時間は眠ることができる時間であった。

 

 「あーもしもし、ごめんね、まだ朝も早いというのに」

 

 「いえ、いいですよ。それで、なにかご用ですか?」

 

 「今日の朝、後30分後にね、私にとって非常に重要な人物が到着するんだ。だからそれを出迎えて欲しい。ほんとに大事な人だから、できるだけ丁寧にお願いしたい」

 

 「き、緊張しますね。そんな大事な人なんですか?」

 

 「それはもうな、私が生きていられるのもその人のおかげと言っても過言ではない」

 

 「そこまでですか……わ、わかりました。でも、ティエルノさんは出迎えなくていいんですか?」

 

 「出迎えたいのは、やまやまなんだが、いかんせん急に連絡がきたものでな。ちょっと出迎える準備がしたいんだよ。私自身が」

 

 「なるほど、わかりました。謹んで受けさせていただきます」

 

 「頼んだよ!」

 

 そんな一幕があり、俺はヘリポートで待機していた。予定は30分後と言われたが、ちょうどに来て既に来られていたら、たまったもんじゃないからだ。

 

 10分経った。どうやら早く来ておいて正解だったようだ。身だしなみはどうか自分なりにもう一度チェックしておく、といってもソルジャーの制服なので、清潔感はないが。それでも最低限はしておいて損はないだろう。

 

 「つきましたね。ジュノンは久しぶりです……さて、お父さんは迎えを寄越すと言っていたのですけど……」

 

 そのヘリから降りてきたのは、ネーヴェであった。ティエルノさん……そういうことですか、俺を嵌めたんですね。しかし、迎えさせていただきますよ。

 

 「ネーヴェ、こっちだ」

 

 「えっ……どうして、こんなところにあなたが!?」

 

 「俺が君のお父さんの護衛をしていてね。君を迎えに行くように頼まれたのさ。さぁティエルノさんのところまで送るよ」

 

 「は、はい。お願いします」

 

 彼女が笑顔で返事をした。気を取り直して、彼女をティエルノさんのとこに送り届けるか。これも任務だ。

 にしても、嫌な予感……当たりすぎて怖いな。でも、このことに関しては、悪いことなのか。どちらかと言えばいいことだと思ったのは、内緒だ。

 

 さぁ、今日も任務がんばりますか……。

 

 

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