ファイナルファンタジーVII ~とあるソルジャーの追憶~   作:定泰麒

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第9話 昇進と手紙

 

 辺りに風を裂くような轟音が響き渡る。その音も、時間が経つにつれて小さくなっていった。

 

 「ファブル君、1週間ご苦労だったね。君のおかげで充実した1週間を送ることができたよ」

 

 「そういっていただけてありがたいです。またお会いしていただけますか?」

 

 「当たり前じゃないか! でも、僕も残念ながらいつも暇という訳じゃない。だから事前に連絡してくれ」

 

 「はい、それじゃあ今度連絡させてもらいます」

 

 「ああ、いつでもかけてきてくれ……はぁ、じゃあ、僕はこれで。ネーヴェすぐにくるんだよ」

 

 「はい、お父さん!」

 

 1週間という期間の護衛任務を終えて、俺はミッドガルへと戻ってきていた。当然そこには護衛対象であったティエルノさんとその娘であるネーヴェもいた。

 ティエルノさんは、先にあいさつをすると迎えの車に乗った。どうやら空気を呼んでくれたらしい。

 

 「ネーヴェ、……なんて言ったらいいんだろうか。こういう時にどういう言葉をかけていいかわからない。ごめんね」

 

 「謝らないでください。……私もなんて言ったらいいかわからないので」

 

 「そうか、……またすぐに会いに行くから、それまでのお別れだ」

 

 「そうですね。みずのマテリアちゃんと見せに来てくださいよ。待ってますから」

 

 「もちろんだ。それじゃあ、またね」

 

 「ええ、また」

 

 そういうと彼女は後ろを振り向き、ティエルノが待つ車へと歩いて行った。そのさなか、名残り惜しそうにこちらを振り向いてきた。俺はそれを見つつ、2人が乗る車が見えなくなるまでそこに居続けた。

 

 「さーて、本社に帰りますかね……あー、なんかだるいな」

 

 

 

 

 

 列車に乗り、本社ビルのある零番街へと赴く、1週間前と風景は何も変わらず、特に目移りもしないなか、ようやくソルジャールームへと帰りついた。

 そこには、3rdや2ndのソルジャー達がいたが、これといった知り合いもおらず報告をしに上司であるハイデッカーとソルジャーをつなぐ、いわば管理職的な立場の人たちに告げに行く。

 護衛任務や長期的な任務なんかの時は、事前に情報を記録するアイテムを渡されており、それを渡して報告完了といった感じだ。

 

 「お疲れ、ファブル。どうだった、ストラーヴァ社長の護衛は?」

 

 「良い人だったよ。それに結構楽しめたから、任務というよりちょっとした休暇みたいな感じだった」

 

 「へー、そりゃよかったな。とりあえず、お疲れさん。……ちょい待ち、なんかハイデッカーから出頭命令出てんぞ、なんかしでかしたか?」

 

 「はっ、ウソだろ! 参ったなー、何かしたかな俺?」

 

 「しらねぇよ、さっさと行くんだな!」

 

 「はいはい、了解です」

 

 ハイデッカー直々に俺への出頭命令か、ほんとに何かしでかしたかな。もしかしたら、任務中BARで飲んだことばれたのか。いや、でもそれくらいじゃ呼ばれないよな。

 理由も思いつかない中、エレベータに乗り上の階にあるハイデッカーの部屋までなるべく遅く歩いた。

 

 「ガハハ、よく来たな! 今回、なんで呼ばれたかわかってるか?」

 

 「わかりません」

 

 「そうかそうか、まぁ座れ座れ!」

 

 ハイデッカーの部屋の中は、正面の奥の方に高級そうな机があり、その向こう側にハイデッカーが威張って椅子に座っていた。

 ハイデッカーが座れと言って指さしたのは、その高級そうな机の前にある足が短い机と向かい合ったソファーの右側にある方だった。

 とりあえず、失礼しますとだけ言って指示されたとこに座った。その間にハイデッカーは、いた場所から俺の向かいのソファーへ移動してきた。

 

 「ストラーヴァの護衛任務ご苦労だったな」

 

 「いえいえ、任務ですから」

 

 「ガハハ、そうか。早速呼んだ理由を説明するぞ」

 

 「はい、なんでしょうか?」

 

 「ファブル、お前は今日から1stソルジャーの仲間入りだ。これからもわしの手となり足となり頑張ってくれ。期待してるぞ。ガハハハハハ」

 

 「……はい」

 

 「要件はそれだけだ!」

 

 「はい、失礼しました」

 

 どうしたものか、突然のことで整理しきれていないがどうやら俺は、1stソルジャーになったらしい。喜んでいいのか。いや、間違いなく喜んでいいことなのだろうが、どこか心の中でそれを拒絶したい思いがあったのは事実だ。

 

 「なんだったんだ、一体?」

 

 「昇進したらしい。俺」

 

 「昇進……お前、1stになったのか!?」

 

 「そういうこと」

 

 「凄いじゃないか! よかったな!」

 

 「ありがと」

 

 「なんだ? 妙に反応が薄いじゃないか。どうかしたのか?」

 

 「なんでもない。今日は、もう帰るな」

 

 「そうか……、お疲れさん」

 

 1stになったことを報告した。祝福してくれたが、やはりどこか虚しく感じてしまう。嬉しいはずだ。こうなることを望んでたはずだ。だが、なんでこんなにも心が満たされないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 拝啓 

 

 お元気にしておられますか? と言っても何か私がこの言葉を書くのは、ちょっとおかしいかなと自分でも思ってしまいます。

 かつて、私は勝手に家を黙って飛び出し心配をかけたことと思います。本当に申し訳ございませんでした。

 今、私は夢を叶えることができソルジャーとして頑張っています。しかも先ほど1stソルジャーに任命されました。本当にありがたいことです。

 

 今になって、なんで手紙を送ってきたのかと思いになるのでしょうか。しかし、わたしにも理由はわかりません。

 なんとなく手紙を書きたくなったからといったら怒られるでしょうか。ですが、それこそが理由という理由なので許してください

 書きたいことがたくさんあったはずなのになぜか、いざ書くとなるとそれがまったく出てきません。

 少なくとも、今言えること。私は元気だということです。また、いつか故郷に帰ってみようかなと考えています。その時にあなた達に会えることを信じています。

 

敬具

 

馬鹿で愚かなあなた達の息子より

 

 

 こんな感じでよかったのだろうか。手紙にも書いたが、いざ書こうとなると何を書いていいのかわからなくなる。

 それでも、最低限のことを書いたつもりだ。この手紙が、無事に両親の元に届いてくれるといい。

 

 こんな馬鹿で、夢だけ見て田舎から出てきた男。親を見捨てた男。夢を叶えたのに満足しない男。愚かで、ダメで、挙げればきりがないほどの欠点を持つ男。

 こんな男のことを親は憶えていてくれるだろうか。どうか憶えていて欲しい、もし、忘れられていたら……そんなことを考えてしまう。

 

 この世界なんてなくなってしまえと思う。俺なんかこの世界に必要ない、死んでしまいたいと思う。全て生まれた時からやり直せたらと思う。

 

 だけど、実際にそんなことは起こらない。世界ではなくとも、俺を必要としてくれる人もいる。こんな俺でも愛してくれる人がいて、愛していると心から思える人がいて、今があるから、その人とも出会えた。

 だからこの世界は、絶対に守らないといけない。その人のためにも死んではいけない、死にたくもない。人生もやり直したくない。

 

 なんとなく、整理することができたと思う。過去からの脱出? 過去を乗り越える? なんて言ったらいいんだろう。わからないけど、言えることがあるとするならば俺は今、少しだけ幸せを感じてます。

 

 

 

 





今回は少なめです。
次回から時間が飛びます。
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