デカグラマトンとの最終決戦から数日後────────
「アロナ、四人の様子を教えてくれる?」
突然訪れたキヴォトスの危機、それを退けた私達だがまだ問題が残っていた。
消滅するはずだったマルクト、アイン、ソフ、オウルを助けるために私は大人のカードを使用したのだ。
放っておけば消失してしまうか弱い存在であったがカードの奇跡の力を使いなんとか命を繋とめる事ができた。しかし四人はまだ目覚めていない...今はシャーレの医務室で安静にしている。
「はい!マルクトさんたちはいまだぐっすりと眠っています!機械でいうとスリープ状態にあたりますね!現在マルクトさんたちの存在は安定しているのでご安心を!」
「それはよかったよ、教えてくれてありがとう」
「先生のためならどうってことないですよ!それより先生、1つ教えてくれませんか?どうして先生は大人のカードを使ってでもマルクトさんたちを助けようとしたんですか?」
大人のカードは奇跡を起こすが万能ではない。それは大いなる代償を伴う
重いものなら最悪死んでしまうこともあるだろう。しかしそんな代償を恐れて尻込んでいる場合ではなかった。
「それは簡単だよ、私は先生だ。助けを呼ぶ生徒の願いを叶えたいと思っただけさ。かつて敵対していたとしてもね」
『お姉様をよろしくお願いします』────────それはアインたちが残した言葉
薄れる意識の中で託された願い。それを聞き流すことなど先生である私に出来はしない。
マルクトを一番に愛するように設定されていたとしても、作られた存在であるとしても、
あのときの思いは本物だと私は思った。
助けを呼ぶ声があるのならできるだけ助けてあげたい、だから私は先生になったのだ。そうだろう?
「なるほど〜先生らしい理由です!」
アロナは納得して笑顔になった。四人を救えたのはアロナのおかげでもあるので頭を撫でる。アロナは少し驚いたような表情をしたが直ぐにまた笑顔に戻った。
「そういえばアロナ、アインたちにヘイローをつけてほしいと頼んだ件はどうなったかな?」
「聞いちゃいますか?えへへ〜なんとですね〜!このスーパーOSであるアロナちゃんはアインさんたちにヘイローをつけることに成功しました!ちょっと難しかったですけどプラナちゃんの力も借りてつけることができました!」
「肯定。先生、私も頑張りました」
「本当かい!二人ともありがとう!」
「「えへへ」」
可愛い。私はまた頭を撫でた。わしゃわしゃわしゃ...
私がヘイローをつけてほしいと頼んだのはアインたちが自分たちにヘイローがないことを気にしていた様子だったからだ。
「先生...?」
突然澄んだ声が先生を呼んだ。あまりシャーレでは聞き馴染みのない声で私は少し身構える。
後ろに立っていたのはマルクトであった。彼女の印象的な大きな帽子は今は外していて何処か困惑したような表情を浮かべている。
「やあ、マルクト。おはよう」
結構びっくりした...さっき寝ているとアロナに言われていたのでいきなり声をかけられたらそりゃあ心臓バクバクするよね。この心臓のバクバクを悟られないようにかっこよくキメながら挨拶をした。
「...?我は...?これは一体どういうことですか...?」
あれ...あんまり刺さってないな...私のキメ顔はキヴォトスの生徒なら卒倒するほどの威力なのに...まあそんな冗談はおいておいて...
「無事に目覚めてよかったよ。体調はどうだい?」
「...別になんともないですが...我は何故生きているのですか?そしてここは...?」
「体調も良さそうでとても安心したよ。まだ目が覚めたばかりで混乱していると思うから一つづつ説明するね。マルクトたち四人は私が助けたんだよ。本来消滅するはずだった君たちの存在をこの世に繋ぎ止めたんだ。そしてここはシャーレ。私の
「理解できません...本来我とあなた達は敵対していたはずです。それなのに何故...?」
「簡単なことさ、君に幸せになってほしいからだよ。もちろん
マルクトはひどく困惑した。この大人は相変わらず理解できない。神に立ち向かったり、敵対していた私、それにあの三人まで助けてくれた。本来ならば私達はあのまま死ぬはずであった。
そして誰の記憶に残ることもなく、消えていくはずだったのに...そうはならなかった。
今ここに、力強く存在することができている。まさに奇跡というものだった。
「理解はできました。しかし納得はできません。あの三人はわかりますが何故我にも幸せになってほしいと思うのですか?」
これだ。これが一番理解できなかった。先生は生徒を第一に考えている。これは鋼鉄大陸での出来事から見ても明らかであった。しかし私は生徒ではない。(あの三人たちも厳密には生徒ではないが...)
自分は生徒と呼ぶには相応しくないのではないか?
「それはね、あの三人が貴女を大切にしていたからだよ。先生という生き物は生徒が大切にしている者や人も大切にしたいものなんだよ。だから貴女も大切な存在だし幸せになってほしい。よかったら今日から貴女も
そういえば先生はこういう人だったと再認識させられた。自分のことよりも他人のことを第一に考え尊重してくれる。そんな先生の言葉は説得力があるし、そんな先生だからこそ、その提案はどこか心地よかった。
「しかし...我は生徒と言うには些か年齢が相応しくないように思いますが...」
マルクトには年齢もへったくれもあったもんじゃないと思うが見た目的に生徒と言うには相応しくないだろう。
「ふふふ...マルクト、何も生徒になるだけが道じゃないよ。私と一緒に先生をやってみないかい?」
「!?」
マルクトは非常に戸惑った。今日一番の困惑である。この
「先生...貴方は疲れているのではないですか...?それか我の聞き間違い...?今貴方は我に先生になれと言ったのですか?」
「そうだよ。私は疲れていないし(諸説あり)聞き間違いでもないよ。私は貴女に生徒を導く先生として私と一緒に先生として働いてほしいんだ。貴女ならできると思う。」
「そうですか...」
否定してほしかった...まさか本当に私に先生になってほしいと思っているなんて...
しかし少しだけワクワクしている自分もいる。そんな自分にまた困惑している。
「どうだいマルクト、『先生』やってみないかい?」
「...しかし...人間ではない私が先生をすることができるのですか?」
「...ふふっ」
「...?」
「そういえばマルクトは知らなかったね。ここ学園都市キヴォトスは人間の先生のほうが珍しいんだよ。珍しいどころじゃない...人間の先生は私だけだ。だから、気にする必要はないよ」
「そう...なんですね...少し考えさせてください...」
マルクトは逡巡する。そして大きな窓ガラスの外からキヴォトスを見渡した。
とても青く、澄んだ空に聳え立つサンクトゥムタワー、荘厳に立ち並ぶ巨大なビル群、威厳のある巨大な校舎、そして響き渡る生徒たちの笑い声や銃声や爆発音...途中変なのも混じったがとても平和で自分が以前生活していたところとはまるで異なっていた。
その景色はとても魅力的で────────
「そうだ先生、あの三人はどうなるのですか?」
マルクトは先生に問うた。今の唯一の気がかりはあの三人のことだった。私を慕って、尽くして、愛してくれた三人はどうなるのか。それだけが心配であった。
「心配しなくていいよアインたちには生徒として学園生活を送ってもらおうと考えているよ。」
その言葉を聞いてマルクトは安心し笑顔を浮かべた。そして力強く答える。もう迷いはない。
「先生、我は先生をやってみようと思う。」
「本当かい!!!じゃあ今から手続き書類とか準備してくるからちょっと待ってて!!!!」
先生は今日一番の笑顔を浮かべて全速力で何処かへ駆けていった。どこかその姿は愛らしく子犬のようで可愛かった。
「アイン、ソフ、オウル、私は貴女たちの誇れる姉としているために、私達を助けてくれた先生に恩を返せるように、精一杯先生として頑張ってみます」
誰にも聞こえないような小さな声で、どこか満足気に呟いた。
人生初執筆なので温かい目で見守ってくれる幸いです...
学生なので更新頻度は不安定です
解釈違いなどがあったらすみません...