「只今戻りました、先生」
マルクトは先生に招集され全速力で戻ってきていた。しかしその額には汗一つない。
それどころか一瞬で戻ってきたことを先生に褒めてもらいたそうな顔をしている。
相対して先生はマルクトとは対極であった。苦虫を噛み潰したような、苦悶の表情を浮かべていた。
汗もダラダラと流れ真っ青である。
「マルクト...あの投稿は...どういうことなのかな...私とマルクトが付き合ってる...!?」
「何を驚かれているのですか先生。我と先生が恋人なのは自明の理ですよ」
「うん、何でぇ!?!?」
某桃太郎のような声を上げながら先生は驚愕する。もちろん身に覚えが全くと行っていいほどないからである。付き合った覚えなんてものは勿論ないしマルクトがさも当然かのように恋人宣言をしたことにも驚愕である。
「...?この前先生は我に『これからもずっとよろしく』って言ったじゃないですか。つまり、そういうこと...ですよね」
「いや違うよ!?!?仕事をともにしていくパートナーとしてよろしくっていっただけで...」
「そうだったのですか...」
マルクトは水に濡れた子犬のようにしぼんでしまっていた。露骨にしょんぼりしている様子のマルクトに先生はどうしたものがと考えあぐねる。
「えっと...そんな反応されるとちょっと困っちゃうんだけど...あれは『教師として』一緒にやっていこうねって意味で人生をともにしようねってわけじゃ...」
「なるほど...我の勘違いだったようですね」
一層マルクトの表情が泣きそうになる。目の端には光るものがあった。
「うっ!?!?そんな顔をしないでくれよおおおお」
先生は、女の涙にめっぽう弱かった。耐性がなさすぎた。そんなんでよくシャーレの先生やってこれたなまじで。
「ほら、また一緒にデートしよ!?ね?だから泣かないで〜!!!!」
「うぅ...」
先生は幼稚園児を相手にするかのごとくマルクトをあやし始めた。しかしこうかはいまひとつだ。
「ほら、何なら今からデートする?また遊びに行こ?」
「うぅ」
先生はなりふり構わなくなってきていた。今二人でデートをしたらまたいらぬ誤解を招くことすらわからくなってしまっている。あまりにも耐性がなさすぎた。
「先生の...ばか」
「んええぇ!?なんでそうなるの!?」
先生は困惑しきっている。マルクトがいきなり泣きそうになるし、罵倒されるし、もうどうしたら良いかわからなくなってしまった。そのせいで今もキヴォトスでは誤解が広まり続けている。
バーン!!!!!!!
とシャーレのオフィスのドアが開く。
「先生!?彼女ができたって本当なんですか!?!?」
「ユウカ!?どうしてここに!?」
「どうしたもこうしたもないですよ!?今日は私の当番だってこと忘れてしまったんですか?」
「ああ、そうっだたね...ちょっと今日の朝だけで色々あったもんで...」
「それは大変でしたね...じゃなくて!!!この投稿!!!先生の彼女だってやつ!!!これはどういうことなのか説明してもらっても?」
とんでもない剣幕で先生を見つめるユウカ。先生はタジタジになりながらも一生懸命説明を試みる。
「えっと...実はかくかくしかじかで...」
「かくかくしかじかじゃわかんないですよ先生!!!ちゃんと説明してください」
先生は今度こそ真面目に説明をした。
「なるほど...そんな経緯があったんですね。勘違いしてしまったマルクト?さんにも落ち度があるとは思いますが...」
「やはり我の早とちりがいけなかったのですね...」
「ああ泣かないで〜」
「ごほんっ。ええ、でも先生にも責任はあります」
「なぜ!?」
「それは、先生の紛らわしい発言のせいでもあるからです。なのでここは先生が責任を持ってこの事態を収めてくださいね。もうすぐ先生を取られたとおもって激昂した生徒たちがここ、シャーレに向かってくる頃合いですので」
「ええっ!?!?どっどうしよう...」
「そこは先生がなんとかするんですよ」
「先生、我も手伝います。元はといえば私が蒔いた種ですので」
「ありがとう、マルクト。君が居てくれたら心強いよ」
「はぁ、先生...そういうところですよ(全く...この天性の女たらしにはいつかお灸を据えないといけないですね)」
「ん?なんか言った?」
「いえ、なんでもないです。じゃあ、頑張ってくださいね。先生が対応している間私がシャーレの業務は進めておきますから」
「ありがとうユウカ!!本当にいつも助かるよ!!」
「...(いつかじゃだめですね...今お灸を据えないといけないと...そうしないとキヴォトスの生徒全員が先生に手籠めにされてしまいます...)」
そうしてマルクトと先生はもうすぐ来るであろう『シャーレの先生奪還隊〜先生に彼女なんてできるわけがない〜』に対応するために下へ向かった。
「全く、大変なことになっちゃったなあ」
「すみません先生...我の勘違いと思い上がりのせいでこのようなことになってしまって」
「いいよ、ユウカにも言われたとおり私にも落ち度はあったしね」
「このようなときも...自分にも非があるとおっしゃるのですね...」
「ふふっ、それが先生ってものだからね。誰かが困っているなら助け、責任を負うものさ」
「我も、そのような先生になれるでしょうか...」
自信なさげにマルクトは言う。先生と同じ立場になることができて少し覚悟ができていなかった。ココロの中では何処か浮ついていたのかもしれない。そのせいで今、この現状を招いていしまっている。その事実に肩を落としていたが、先生が一緒に背負ってくれると言ってくれて、肩の荷が少し降りたような気分になる。
「先生、我も絶対に先生みたいな立派な先生になります。そして妹たちが起きたら、自慢しようと思います」
「うん、なれるよ、マルクトなら。期待してるからね」
「はい、先生!」
マルクトは今なら何でもできる気がした。先生とならなんだってできそうな、全能感で溢れていた。
『先生』は不可能を可能だと希望を持たせてくれるもの──────
そう、マルクトは再認識した。
本当に、本当にお待たせいたしました。おまたせしすぎたかもしれません。もう忘れられちゃったかなあ。小説の書き方忘れちゃったっ