シャーレオフィスの一階、自動ドアの前にはとんでもない人だかりができていた。連邦生徒会の生徒がバリケードを作り、なんとか突入を防いでいる状況であるがそれがいつまで持つかはわからない。
「先生、もしかして...結構危ないのでは」
「そうだね...どうやら僕たちは甘く見ていたようだ...てかなんだよ!!!あのデモ隊の横断幕!!!『シャーレの先生奪還隊〜先生に彼女なんてできるわけがない〜』って!!!!別に彼女ができるかも知んないだろ!!!!」
「先生、それってつまり我を彼女として認めてくださると?」
「ちがっ!!違うから!!」
「やはり私では駄目なのですね...」
「ぐあああ!!!そうでもなくて!!!そうなんだけどそうじゃなくてぇ!」
そんなアホみたいなやり取りを繰り返しているうちにもどんどんとデモ隊が迫ってくる。
『先生に彼女なんてできなーい!!』
『先生を解放しろー!』
『先生をたぶらかす不届き者!!!』
『変態の先生に騙されちゃだめです!!!!』
『ん、先生を襲う。』
『先生は私の王子様じゃんね☆』
とまあなんというかひどい有様である。先生を心配する声もあればマルクトが先生に誑かされていると勘違いするものや先生を襲おうとするものまで現れる始末...
「先生、大変なことになってしまいました。どうにかして場を収めなければ...」
「大丈夫、後は私に任せて」
そう先生は言い、マルクトの背をぽんと叩き戦場へ向かう。
「ふふ、やはり先生は誑しですね」
と、呟く声はきっと届いていないだろう。届いていたら全力で否定していたことだろう。
バリケードを作る連邦生徒会の生徒の隙間を縫ってデモ隊の真正面に立つ。何処から持ってきたか分からないお立ち台と拡声器を添えて。
「しずまれええええええええ!!!(爆音)(人災)(近所迷惑)」
きぃぃぃぃんと耳鳴りがするほどの大きな声で叫ぶ。実際音割れしていた。だが効果は覿面でさきほどまであれだけ騒いでいたデモ隊も静まり返っている。急に大人が本気で叫んだらビビってしまうのも無理はない。
「私は!!別に!!彼女がいるわけでも!!できないわけでもない!!なぜならー!!」
『『『なぜならーーー???』』』
某未成年の主張みたいになっているが気にしない。
「彼女を、
一瞬静まり返ったが、すぐまたざわつき始める。
『うそだー!』
『先生の強がり!!!』
『禁断症状が出てしまって彼女を作らないだけなどと嘯く始末...』
逆効果だった。先生の声は全く信用されていなかった。いつもは誰かの助けになり心を動かす声だが...今この瞬間だけはなんの効力も持たなかった。
「先生...ですが今ここで我が出ていっても迷惑になるだけ...いや、我も
そして生徒たちから全く信用を得られ得ず落ち込む先生の横に立ち、マルクトは言う。
「我が、新しくシャーレに就任したマルクト。そして先生の彼女第一候補...!故に先生は誰にも渡しません。」
「えっ?ちょっと!?それはまずいって!」
案の定、事態は更に混沌へと堕ちていった。主に先生のガチ恋勢たちがちょっぴりキレちゃった笑
『先生は私のものだ!!!!』
『生徒の共有財産を独占使用などと何たる横暴か!』
『それが新任教師のやることかー!』
『そんな冗談、まかり通りませんわ♡』
「先生...どうしたら...」
今にも泣き出しそうな赤子のような表情でこちらを見つめてくる。すごく...可愛いです。庇護欲を掻き立てられちゃうよ。本当に表情が豊かになったよなあ...(にっこり)
マルクトのせいでもっと騒ぎが大きくなってしまったのは確かだが...まあ可愛かったので良しとしよう!
「そういうことなんで!!詳しくはまた後日説明するから!!それじゃ!!」
そう強引に結論付けてその場を収めることに成功(?)したのだった。何も解決していないし何ならさらにひどくなったのだが...
「先生すみません、我のせいでこのようなことになってしまいました...」
「いや。いいよいいよ、可愛かったから」
「えっ」
先生が不可解なことを独りごちり、なんか色々有耶無耶なままその日は幕を閉じたのだった。
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「先生。」
「なんだい!マルクト」
「...思っていたのと違うのですが」
『シャーレの先生奪還隊〜先生に彼女なんてできるわけがない〜』を鎮圧し数日がたった。そして先生としての仕事を改めて開始したマルクトがそう愚痴をこぼす。でもまあ仕方がないだろう。なぜなら今私達はとんでもない量の書類の山と対面していたからである。
「我は...もっと生徒に寄り添ったり勇気づけるものとばかり思っていました」
「わっはっは、事務作業だって立派な先生の仕事さ。書類一つ一つに意味があるんだよマルクト君」
「でも先生、このミレニアムからの『小魚の骨をきれいに取る機械』を作るための予算申請とか必要とは思えません。それにレッドウィンターからの『プリン週5計画予算申請』はもはや何なんですか」
ブルジョワじゃないですか!などとマルクトは言っている。まあこんな地味な作業をしたってつまらないだろう。マルクトに見せてきた今までの私の姿はもっと輝いていただろう。
だから今目にクマを作りながらパソコンや書類とにらめっこをする仕事に困惑するのも無理はない。私だって最初は同じ反応をしたものだ。
「先生の業務というものは...苦しいものなのですね。それも...あの子達が居ないからでしょうか」
「...」
何となく気まずい空気が流れる。未だに三人とも眠った状態のままなのだ。
「大丈夫だよ。いつかは目を覚ますはずさ。それに、私もいるから二人で頑張っていこうぜ」
と、かっこつけて見た視界の先には書類に埋もれヘイローだけ浮かぶマルクトの姿があった。
笑いをこらえきれなかった私は爆笑しながら書類をかき分ける。真っ白な書類に同化した肌は美しく、儚げであった。
「ほら、がんばろ。二人でガチればすぐだよ」
「先生。ナデナデしてください」
「え、何で?」
「わかりません。ただ、ナデナデしてほしいと思っただけです。」
「しょうがないなあ、撫でたら頑張れるよね」
「もちろんです」
そう言うとマルクトは目を閉じる。私はまじまじとその顔を見つめた。真っ白な髪、透き通った肌。長いまつげに整った顔立ち。本当に美人だなまじで。マルクトの口から息が漏れる。
「せんせい、早くしてください。折角心の準備をしたのに、ドキドキが戻ってきてしまいそうです。」
「ふふ、焦らしてごめん」
そっと優しく頭に触れる。サラサラの髪を撫でる。マルクトは子犬のように甘えた顔をしている。思わず私はずっと撫でていた。5分くらいだろうか。
「先生、あの...そろそろ...」
「えっ!!!ああごめん!!思わず...」
「いえ、大丈夫です。我もとてもやる気に満ち溢れました。」
「それはよかったよ」
「それじゃあ先生、業務をこなしていきましょう」
そして二人は業務に取り掛かる。内容が理解不能な書類も多々あったが恙無く処理していく。
ふとマルクトは、何かが気になったのか先生に問いかける。
「先生、この書類なのですが」
「ん、なになに」
「『先生といっしょに語り合おう!オールナイトキヴォトス〜お悩み相談編〜』をやってほしいです!!!何卒お願いします!!!!だそうです。」
「いやいや!!却下却下!!」
「どうしてですか?日曜夜、先生が配信して生徒たちのお悩み相談をするだけですよ。対して動かせてないシャーレ公式チャンネルを動かせる機会にもなりますし、リアルタイムな生徒の悩みをその場で解決できるので良いことばかりだと思いますが。」
「うーん、そう言われると即却下ってわけにもいかないんだよなあ...ん?待てよ。先生と語り合うってことはマルクトも出演するってことだけど」
「我もですか?」
「そうだよ?マルクトだって先生になったじゃん。そうやって連邦生徒会から発表したし。立派な先生だよ。」
「確かに、そうかもしれないですね。」
「じゃあ決まりかな。今週末一度試しにやってみようか」
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「何、これ...ナニ、コレ?」
とんでもない大バズリを見た先生は語彙力が消滅してしまったとさ。
マルクトってこんな口調だったっけ...もう一回鋼鉄大陸読み直さないと...