もしかしてお前らちょっとメンドくさいな?   作:鴨凹

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文化祭なんて一回しか参加したことねえからわからねえよ
ハハッ★.........返して




最近かまちょなんでよかったら感想を書いてやってください。絶対返信するんで!
マジでお願いします!!!!!



楽しいことの裏には必ず誰かの努力があるんだぜ?

夏休みも終わり、俺たちは二学期に突入した

 

「まだ決まっていなかったのか?」

 

数日が立ったある日のホームルーム、平先がため息をつく

 

「他のクラスはもう決まって準備に取り掛かっているというのに君らときたら....」

 

俺たちは今文化祭のクラス委員を決めている。本来だったら2学期が始まった最初の学活で決めなければならなかったんだがそのときは決まらずなあなあになり今日に至る

 

「どうだ黒崎?去年に引き続き.....いやちょうどいい奴がお前の後ろにいるな」

「Zzz......マッカン......」

「八幡.......」

「お前度胸ありすぎ」

 

コイツ、ホームルームで爆睡こいてやがる

 

「このまま5秒数えて比企谷が起きなかったらそのまま実行委員にする」

「いやいや。いくら爆睡してるコイツが悪いからってそれは酷だって」

「おい!余計なこと言うな黒崎!」

「そうだ!このまま穏やかに終われると思ったのに!」

「大岡、大和お前らに人の心とかないの?.........だっさなきゃ負けだよ!さいしょはぐー、じゃんけん!」

「「な、お前...!」」

「んが!?」

 

ふ、この声量ださすがに八幡も起きただろ...これで平等!恨みっこなしだぜ!

 

「「「「「ポン!」」」」」

 

俺はパーを出した。ていうか奇跡なのかここにいる全員パーじゃん

 

「よっしゃ!」

「ありがとう神様!」

「ヒッキー.......」

「アハハ....」

 

え、なんでそんな反応してる?いま全員パー

 

「え、なに?いきなり....」

 

俺が後ろを振り返るとそこにはよだれを垂らしあくびをしながら右手でグーを作ってる馬鹿野郎がいた

 

「はい。とりあえず男子の実行委員は比企谷で決定だ。他の奴は放課後に決めるといい。それでは授業を始めるぞ」

「え、ちょ....!」

 

お前、運ねえな。おい、そんな助けを求めるような目でこっち見んな。授業始まってんぞ.........

 

「ぷっ.....」

「お前、いま笑ったろ!?」

「授業中だ馬鹿者!」

「すみません!」

 

そして放課後になり、女子の実行委員を決めようとしている。ちなみに司会はクラス委員の小林がやってくれている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡side

 

 

「女子の委員やりたい人、挙手」

「「「.............」」」

 

ま、誰もいないよな。当然だ、俺だってマジで嫌だ

 

「このまま決まらないなら男子同様じゃんけんに.....」

「「「はあ!?」」」

 

小林の提案に相模とその取り巻きが声をあげる。嫌なのはわかるけどそんな威圧した声あげんなよ。

 

「なに威圧してんのアンタら?小林、もし時間が経っても誰も手上げなかったらじゃんけんにしよ。それでいいっしょ?」

「う、うん」

 

三浦、お前すっかりいい姉御が板に着いたな

 

「小林君、その実行委員って大変なの?」

「そうだな。普通にやってればそんなに大変じゃないと思うけど......結果的に女子は大変になっちゃうかもしれない」

 

俺でごめんね、眼鏡君

 

「大丈夫だろ。むしろこの居眠り野郎は細かい作業とか得意だし意外と頼りになるぞ?」

「え、あ、そうなんだ」

 

海斗、いま俺を........ふん、今のは癪だが八幡的にポイント高かったぜ

 

「そうだな、結衣お前行けるか?」

「え、アタシ...?」

「去年一緒にやったときすげえ頼りになったの覚えてる。意見もいっぱい出してくれたしなにより結衣がいると場が和むんだよ。だから今年もって思ったんだが....ああ、これは俺の一意見な?もちろん断ってくれてもいいし」

「それは....海君が隣にいてくれたおかげなんだけどな.....それじゃあもしこのあと誰もやりたい人がいなかったらアタシ」

「へえ...結衣ちゃんやるんだあ~?」

 

由比ヶ浜の声を遮るように相模が声をあげる

 

「そういうのいいよね~。仲良い同士でイベントとか超盛り上がりそう」

 

コイツら.....

 

「ああ。結衣と八幡は仲いいぞ?お前ら3人笑ってるけどそれのどこがおかしいんだ?」

「「「.........ッ」」」

 

黒崎の声に相模達3人は固まる

 

「それのどこがおかしいか聞いてんだけど....?」

「え、いや、その~」

「同じ部活だし一緒に林間学校のボランティアにも行ったし仲良くもなるだろ、普通」

「た、確かにね~」

「..........?」

 

黒崎、お前は意図せずそういうことするから恐ろしい

 

「かーくん、そもそも結衣はあーしと一緒にお客さん呼び込む係だから無理。結衣もこの前一緒に決めたじゃん」

「あ、そういえば....!」

「そ、そうなんだ~、呼び込みも大事だもんね」

「そうそう。だから悪いんだけど他の人にお願いしたいな~」

 

由比ヶ浜が無理とわかり女子の沈黙が再び流れる。だがそれをある男が破る

 

「だったら相模さんなんかどうかな?」

 

葉山、お前正気か?

 

「お、いいじゃんいいじゃん!相模さん、人望あるしいけるっしょ!」

「ああ。それに相模さんちゃんとやってくれそうだしな」

 

戸部、お前も乗るなよ。お前ら今のを見てもそう思うのかよ?ほら隣の三浦の顔見てみろよ、お前マジかって顔してんじゃん

 

「ええ、ウチ!?絶対無理無理~!」

 

はっ、見え見えの演技だな

 

「そこをなんとか....お願いできる?」

「...まあ、他にやる人いないならしょうがないと思うけど~でもウチかあ」

 

葉山のイケメンおねだりに陥落した相模は結局実行委員を引き受けたのだった。はあ、よりによってコイツとかよ...せめて由比ヶ浜だったらまだマシだったんだが

 

 

 

 

「生徒会長の城廻めぐりです。それじゃあさっそく実行委員長の選出に移りましょう!誰か立候補いますか~?」

 

数日後、俺たちは初めての文化祭実行委員会に参加するために会議室に来ていた。ほとんどが知らない奴のなか一人だけ知ってる奴がいた。そして沈黙のなか生徒会長はその人物に声をかける

 

「あの、雪ノ下さんだよね?」

「はい」

「やっぱり陽さんの妹さんなんだ~!陽さんも実行委員長でねあの文化祭は総武高の歴史に残るすごい文化祭だったんだよね!どうだろう?陽さんの妹さんなら..」

「実行委員として善処します」

 

生徒会長の言葉が気に障ったのかばっさりと断る。あたりに微妙な雰囲気が流れる中

 

「あの.....」

 

相模が声をあげる

 

「みんな....やりたがらないならウチ...やってもいいですけど」

「本当~!えっと...」

「2年F組の相模です。あんまり前に出るの得意じゃないんですけど....こういうの少し興味あったし...ウチもこの文化祭を通して成長したいっていうか」

「いいと思うよ~。大事だよね、ステップアップ!」

 

なんでお前の成長をこっちが手伝わなきゃいかんのじゃ

 

「他に立候補がないならこのまま相模さんでいいかな?」

 

城廻先輩の言葉に周りも拍手をして答える。委員長が決まったあとそのほかの係も決まり今日はそれで実行委員は解散となった

 

「ノリで実行委員になっちゃったよ~。どうしよ~」

 

はあ、不安でしかねえ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海斗side

 

「ようやく全員集合出来たな」

「うむ!」

「すまないな。教員としてやるべきことが多くてな」

「そんな...!むしろ一緒に出てくれるだけでもありがたいですよ!」

「それより早く練習しない?あたしクラスの衣装も作んなきゃいけなんだよね」

 

軽音部の部室に彩加、義輝、川崎、平先、そして俺が集まっていた。そうこの5人こそがバンドメンバーである

 

「それで君たちはどの曲をやるんだ?」

「”チョコレートボックス”という曲です」

「あの曲か....責任重大だな黒崎、材木座」

 

そうこの曲はラスサビにかなり長く激しいギターとドラムのパートがある。けどな

 

「だってよ義輝」

「ふん、我らにかかれば朝飯前よ、なあ、黒崎!」

(((この二人、いつの間に仲良くなったんだろう)))

「ほう、なら見せてもらおうか」

「ああ。彩加、頼む」

「うん」

 

彩加の合図に俺と義輝はギターとドラムを激しく鳴らしていく。約20秒ものドラムとギターのパフォーマンスを俺たちは完璧に演奏しきることができた

 

「どうよ?」

「おお、完璧じゃないか。この短期間でよくここまで」

「ふん、この程度の...」

「いや~、一緒に児童館で練習した甲斐があったな」

「黒崎!」

 

彩加たちと合わせたあとは二人で児童館に行ってずっと弾きっぱなしだった。最初のころ俺は指、義輝は腕をやっちまって帰りに食ってたラーメンを完食するのに30分以上かかってたっけか

 

「これは負けていられないな」

「これ、平塚先生の楽譜です」

「ありがとう。.....ああ、なるほどな。すまない、一回弾いてみてみいいか?」

 

平先は楽譜を見るなり一人でベースを弾いていく。するとコツというかもう曲の流れを掴んだのかたった10分ほどでマスターしてしまう

 

「マジかよ....」

「先生すごい...!」

「なに曲の流れとコツさえつかめばな。待たせてすまない今度こそ始めよう」

 

こうして俺たちは一度合わせてみることに。だがやはり最初はうまくいかずちょっとしたミスが連発する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「できちゃった......」」」」」

 

ことはなく練習を初めて30分後、俺たちは完璧に演奏できるようになってしまった。いやわかるぜ?物語的にもうちょい苦戦した方がいいんだろうけど、でもできちゃったんだよ。いや前から平先を除いた4人は練習してたぜ?でもこうまでスムーズに行くとは思わなかった

 

「完璧じゃん」

「ああ。まさか我が右腕を全解放することなくここまでできるとは」

「君たちもう少し苦戦しないか。こういうのはふつう誰か挫折するものだろう?」

「開始10分でマスターしたアンタに言われたくねえ」

「ここまで順調に行くなんて僕も思わなかった....驚いてるよ」

 

彩加の言う通り俺たちはマスターできた喜びよりもこんなに早くできてしまったことに対しての驚きの方が大きかった

 

「これは本来秘密事項なのだが...」

「うん?」

「今年のライブのトリは例年と違いパフォーマンスの優劣で決まるものではなくなった」

「というと?」

「一番早く完成されたもの有志統制の係に見せた団体のものになる」

 

それじゃあつまり

 

「ああ。今すぐに係の者を呼んで来ればトリとアンコールを獲得できるぞ」

「.......!」

「ふん、ならば」

「アタシはどっちでもいいよ」

「彩加、お前が決めろ」

「僕が.....」

「ああ。このバンドのリーダーはお前だ。だからお前が決めるんだ」

 

正直俺もどっちでもいい。ここにいる4人と楽しい思い出を作れれば。でも彩加、お前のその目はもう答えが決まってるんだろう?

 

「....やろう。トリもアンコールもどっちも大成功させて最高のライブにしよう!.....いいかな?」

「そうこなくてはな!」

「わかった」

「ふっ、腕がなる...!」

 

全員の気合もMAXだ。断言するぜこのメンバーなら絶対に成功させることができるってな!

 

「やってやろうぜ、彩加!」

「.....うん!」

 

俺と彩加は拳をぶつけ合う

 

「それじゃあ俺、さっそく係の奴呼んでくるわ!」

 

こうして俺は委員会活動している会議室まで走っていく

 

「有志って確か小野寺が担当だったよな.....?」

 

会議室前に着くと人だかりができていた

 

「悪い、ちょっと通るぞ。ていうかこれなんの集まりよ」

「あれ見ろよ、あれ」

 

隣の男子生徒が指を指した先にはめぐ姉と雪ノ下、そしてその姉である陽さんが話をしていた。どうやら有志団体が足りないみたいでその数合わせにめぐ姉が陽さんを呼んだらしい

 

「ねえ、いいでしょ雪乃ちゃん。可愛い妹のためにしてあげられることしてあげたいんだよ~」

「...好きにすればいいじゃない。私に決定権などないのだから」

「そうなの?てっきり委員長やってるものだと思ってたよ」

 

それは確かに意外。アイツ、人のことをまとめんのうまいし適任だと思うけどな........ちょっと厳しいこと言うときもあるけど

 

「じゃあ誰が委員長やってるの?」

 

確かに.....いや、いまはそれどころじゃないな

 

「お~い、小野寺」

「海ちゃん!」

「お、海斗君じゃん!やっはろ~」

「やっはろ~。悪いめぐ姉、陽さん、今日はちょっと急ぎだからまた今度な。小野寺」

「どうしたの黒崎君?」

「お前、有志担当してるよな?完成したから見に来てくれねえか?」

「もう完成したの!?うん、わかった今行く。それじゃあ雪ノ下さん、ちょっと行ってくるね。相模さんによろしく」

「ええ」

 

あ、委員長って相模なのね....意外だな、アイツ1年の頃実行委員ですらやりたがらなかったのに

 

「聞いて驚けよ、俺たちの圧巻のパフォーマンスを....よ、八幡。委員会頑張れよ~」

 

なんかアイツから小言が聞こえたような気がするけどまあ、気のせいだろ。そしてこの後俺たちは無事にライブのトリを任されることになる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡side

 

あの野郎、人が気配を消して立ち去ろうとしているときに.......

 

「あ、比企谷君だ。やっはろ~」

 

チッ、面倒な人に見つかっちまったじゃねえか

 

「ちょっと意外だな~比企谷君ってこういうのしない子だと思ってたよ」

「俺もそう思ってましたよ。でもそれを言うならおたくの妹さんもそうなんじゃないですか?」

「そう?私はやると思ってたよ。だって部活には居ずらくなってるだろうし姉の私が昔、実行委員をやってたんだもん。あの子がやる理由としては十分よ」

「そうすか...」

「みなさん!ちょっといいですか!?」

 

相模が机の真ん中に立ち声をあげる

 

「少し考えたんですけど実行委員も文化祭を楽しんでこそかなって。自分たちも楽しまないと他の人も楽しませられないっていうか~。予定も順調にクリアしてるのでクラスの方も大事だと思うので少し仕事のペースを落とすって言うのはどうですか?」

「相模さん、それは考え違いだわ」

 

雪ノ下の言う通りだ。予定も順調にクリアしてる?アホか、まだまだ全然だっつうの。だが

 

「私のときはクラスの方も楽しんでたけどな~」

「...........」

「雪ノ下さん、お姉さんと何があったかわからないけど委員会に私情を持ち込まないでよ、ほら先人の知恵を借りるっていうかさ」

「え、でも待って相模さん...まだ」

「いや~イイこと言うな~。ね?比企谷君たちもそう思うよね?」

 

めぐり先輩の言葉を遮りこの魔王は場を支配する。そしてこの日以降相模の言葉に感化されたのか実行委員は当初の3分の1まで数を減らしちまった。そしてある日の帰り際

 

「はあ......」

「そうそう、そんな感じ」

「こう?」

「オッケオッケー!」

 

委員会の作業も終わり下校しようとすると音楽室から戸塚と海斗の声が聞こえてくる

 

「黒崎、ここがちょっと難しいのだが....」

「ああ。そこ確かにムズイよな.....だったらこうイメージをつければ....」

「おお確かに!さすが我が盟友だ!」

 

材木座...!アイツ、本当に海斗たちとバンドするのかよ....

 

「ごめん、アタシそろそろ行く」

「了解。あ、そうだこの前スーパーで買い物したらくじ引きでお菓子の詰め合わせ当たったからよかったら持って帰ってくれ。確か京ちゃん、あのお菓子好きだったよな?」

「ありがと。今度お礼するよ」

「気にすんな。店の冷蔵庫の中入ってから気にせず持って行ってくれ」

 

川崎もいるのか.....傍から見てもそこにいる奴らは心の底から楽しんでいて少し羨ましいと思ってしまう

 

「こっちとは正反対だな」

 

あのギスギスの委員会と比べてこっちは本当に楽しそうだ。はあ、もしあの場にアイツがいればな.........いや

 

「何を言ってんだ俺は....」

 

頼りすぎだ。いくらなんでも林間学校の時もテニスの時も川崎のときも.....この前だって

 

『俺たちも友達だろ?』

「.....弱くなったな俺。」

 

今の俺は無意識にお前をどこか心のよりどころにしちまってるよ

 

 

 

 

そして後日、委員会に行くとさらに人数は減っていき、この場にいる一人一人の業務量が一個、また一個と増えていく。特に

 

「お願いします」

「..............」

 

雪ノ下の業務量はとてもじゃないが一人でやる量じゃない。だが俺もいや全員が全員、まだ大量の仕事を抱えている

 

「やっぱり相模さんの提案、ちゃんとダメって言えばよかったな......ごめんね、頼りない先輩で」

「いえ...」

 

めぐり先輩に落ち度がないとは言わないがこの人も十分に仕事をしてくれてる。そもそもこうなっているのは相模とあの馬鹿の提案に便乗した大馬鹿どもと魔王が原因だ

 

「........ごめん、私ちょっと出てくるね」

 

そう言って城廻先輩は会議室から出ていく

 

「失礼します。有志の申込書類提出に来たんだけど....」

「申し込みは左奥へ」

 

その入れ替わりで葉山がさわやかな笑顔で入ってくる。おい、なんでこっちに近づいてくる

 

「人手足りてるのか?」

「全体のことは俺にもわからん。下っ端は担当部署だけで手いっぱいだ」

「担当部署って?」

「俺は記録雑務だ」

「ああ....似合うな」

 

喧嘩売ってんのかてめえ

 

「でも見る限りじゃほとんど雪ノ下さんがやっているように見えるけどな」

「......その方が効率がいいからよ」

「でもそろそろ破綻する。そうなる前にもっと人を頼った方がいい」

 

葉山の言うことは間違っていない。だがお前のその感動的な言葉は刃だ。その刃が雪ノ下を少しずつだが抉ろうとする。だが

 

「失礼しま....うわお本当に少ねえ」

 

その刃は太陽によって消えていく

 

「海斗」

「黒崎君....」

「よ、だいぶお疲れだな。ほらそんな俺たちの文化祭のために身を粉にしてくれている君たちに俺からおにぎりの差し入れだぞ~」

 

海斗は机に大量のおにぎりを広げる。しかも味のラインナップも塩、みそ焼き、これは....

 

「ああ、それツナをしょうゆで炒めたやつが中に入ってる。まあ、俺オリジナルってとこだな」

「んん!これすごい美味しいよ!」

「だろ?白米と最高にマッチしてマジでうまいんだよな、ほら八幡も食ってみろよ」

「ああ」

 

俺はそのオリジナルのおにぎりを口に運ぶ。これは.....

 

「美味い.....」

「へへっ、いっぱい作ってきたからこれで活力を取り戻してくれ。な?」

「うん。ありがとう海ちゃん」

「こんぐらい気にすんなよ。めぐ姉もほら食えよ」

 

なるほど。めぐり先輩は海斗を呼びに行ってたのか。だがそれは海斗に頼りすぎなんじゃねえか?アイツは実行委員ですら

 

「ていうか人足りてねえなら最初から呼べよ俺のことさ~」

「いだいいだい!鼻つままないでよ~!だって...海ちゃん、今年は実行委員じゃないし去年も頼りっぱなしだったし.....」

「そんなこと気にしてたのかよ.....俺とめぐ姉って結構長い付き合いだよな?なにいまさら遠慮なんてしてんだよ」

「でもなんでもかんでも海ちゃんに頼って悪いと....」

「はあ、馬鹿姉貴」

「いたい....」

 

海斗はめぐり先輩にデコピンする

 

「だったら今度たい焼きおごってくれ。それでチャラな。つうことなんで俺も手伝わせてもらうぜ~」

 

海斗は雪ノ下のとなりに移動する

 

「ほら、その書類半分こっちにくれよ。その量を一人でやんのはさすがにしんどいだろ?」

「黒崎のいうとおりだよ。俺も手伝う」

「別に結構よ。このぐらい一人で捌けるし一人の方が効率がいいもの」

「雪ノ下さん.....」

 

そうだ。これまでなんでも一人でそつなくこなせてきた奴にとって海斗、葉山お前たちの存在は毒でしかない

 

「確かにな~雪ノ下はすげえ優秀だし基本そつなくこなせちまうからな....かえって俺は邪魔か」

「.....ッ、そうよ。差し入れは感謝はしてるけどはっきり言うわよ。これ以上足手まといに構ってる暇はないの!」

「.....................」

 

雪ノ下は声を荒げるという場面に一同驚いた表情をあげる。無理もない、雪ノ下も連日の激務で精神的に参っていたのだろう....だがその言葉はさすがに海斗も怒りを感じたのか会議室から出て行ってしまう。ついでに葉山も

 

「はあ....はあ.......」

「雪ノ下さん.......」

「....ごめんなさい、声を荒げてしまって。委員会を再開しましょう。葉山君も用が済んだのなら教室に戻って」

「う、うん」

 

微妙な空気のなか葉山は部屋を出ていく

 

「ねえ、今のはさすがに」

「そうだな。せっかく助っ人がきたと思ったのに」

「雪ノ下さん、一体なにを考えているんだ?」

「みんな!作業を再開しよ、じゃないと間に合わないよ。ほら私いま余裕あるからその書類こっちに渡してくれる?」

 

めぐり先輩のおかげでなんとか場はもったが....やっぱりだめださっきよりも雰囲気が最悪だ。雪ノ下自身もどこかさきほどよりも疲労が顔に出てる気がするし

 

「失礼します!」

「.....何度来ても同じよ。それともさきほどの発言の仕返しに」

「いやお前の言うとおりだよ。俺は細かい作業とか苦手だしパソコンもそんなにうまくねえしまとめんのもダメ....そう、俺はお前にとって足手まといというわけだ!」

「ぷっ....」

 

いきなり会議室に来てコイツはなにを堂々と宣言してやがる.....アホだなやっぱり

 

「....その自覚があるのなら早く戻って」

「俺たちだったらどうだ?おーい来てくれ!」

 

海斗が声をあげると会議室の前に15人以上の生徒が集まってきた

 

「暇なやつら集めてきた」

「誰が暇人だっつうの。お前が文実やべえっていうから来てやったんだろうが」

「でも~黒崎の言う通り確かにやばいね~。人、少なすぎっしょ」

「それな。うわっ一人一人の書類の量やばっ。あ、お~い小野寺っち生きてるか~?」

「城廻....君はまた厄介ごとに巻き込まれたな」

「ありゃりゃ~。このままだと文化祭開催に関わってくるね。あ、亀山、確かお前って広報担当だよね?ポスター掲載ってどのくらい進んでんの?」

「やあやあ!八幡よ!お前が苦戦してるというから来てやったぞ!」

 

材木座.....!

 

「神戸君、実はまだポスター、ネットの掲載しかできてなくて」

「うわお!?そりゃまずいね...じゃあポスターの掲載は僕がやってくるよ。でも一人じゃさすがに厳しいかな~」

「俺行くわ」

「助かる~。じゃあ僕はこっち方面行くからそっちよろしく」

「了解」

「二人とも...ありがとう。すごい助かるよ!」

「「気にしないで/気にすんな」」

 

そう言って二人の男子生徒は教室から出ていく

 

「八幡、お前は一体なにをやっているのだ?」

「記録事務」

「...まさか手書きでやっているのか?」

「悪いか?」

「ああ。効率が悪い!」

 

そう材木座は机の上にPCを出す

 

「この時代に手書きなど呆れを通り越して笑えてくるわ!ほら、さっさとその書類を寄こせ、我が記録する。八幡はその書類を簡単で構わんからカテゴリごとに分けてくれ!」

「お、おお」

 

材木座はものすごい速さで文字を打ち込んでいく。すげえ...あっというまにもう一枚書き終わってる

 

「ふん、この程度我にかかれば造作もないわ!」

「小野寺っち~」

「そっち大丈夫そ?」

「黒枝さん、川野さん...」

「なるほどアンタは有志を管理してるのね」

「うん。でも有志団体まだ足りなくて...これでも増えた方なんだけど。それにまだ確実なスケジュールも組めていなくて」

「なる。確かにウチの高校って地域とのつながり大事にしてるっぽいからね、まだ郊外の団体が一個ていうのがまずいわけか。だったらまずは仮定で決めちゃったらいいじゃん。じゃないとスケジュールも組むに組めないって」

「だったらさ~。ねえ黒崎~アンタの店に来る常連さんに郁恵ばあちゃんいるっしょあの人に頼れん?あの人よく児童館で子どもたちに箏の演奏してるよね?」

「もう連絡してオッケーもらってる。たぶん、今日明日には書類作って持ってくるって言ったな。小野寺、あと郊外の有志ってどんぐらい必要なんだ?」

「えっとね.......」

 

有志の方も黒枝と川野というギャル二人が加わりどんどん作業を進めていく

 

「文化祭の支出書類はどうなってる?」

「ごめん、まだまとめきれてなくて...」

「だろうな。手伝おう」

「ありがとう、木戸君」

「気にするな。.....なんだこれは明らかに記述不足だ。これも..あとこれも.....これに至っては領収書すらついていない...!チッ」

「き、木戸君、怖いよ......」

「木戸先輩、それウチのクラス何で俺行ってきますよ」

「あ、これアタシのクラスじゃん!行ってくる」

「ああ、任せた。今度同じようなミスをしたらただじゃおかんとも伝えておいてくれ。.....はあ、こういうくだらんミスが委員会の作業を止めると言うのがなぜわからない」

 

木戸と呼ばれる先輩が眼鏡を光らせながら作業にとりかかる。木戸って確か...3年連続期末テスト一位の超天才じゃねえか

 

「木戸先輩、そうやって顔に皴つくってっと老けんぞ」

「黙れ。俺たちを呼び出した本人が高みの見物とはいい身分だな」

「わかってるよ」

 

海斗は雪ノ下のとなりに座る。ていうかお前その箱、何持ってんだ?

 

「何度言っても答えは同じよ」

「そう言うと思ったよ。でもお前どう見ても疲れてんだろ?」

「この程度どうということもないわ」

「ふ~ん......なあ、雪ノ下」

「なに....?」

 

海斗は箱を開けるとそこにはマカロンやクッキー、マシュマロやプチシューといった数多くのお茶菓子がティースタンドの上に乗っていた

 

「...!」

「はい、あーん」

「は....?」

「ほら俺特製のマカロンだぞ。めちゃくちゃうめえぞ」

「け、けっこうよ」

「まあまあいいから。ほれほれほれ」

「.....け、けっこうと」

「..................」

 

海斗はわざとらしくマカロンを雪ノ下に近づけたり離したりする

 

「...................」

「...................」

「...................」

「...................ッ」

 

雪ノ下、陥落。マカロンを口に入れた瞬間、アイツの目がすごい光ったのを俺は見逃さなかった

 

「どうだ、うまいだろ?」

「..........ええ」

「そりゃお前が頑張りすぎた証拠だな。ほら遠慮せずこのプチシューも」

 

海斗は雪ノ下にプチシューを運ぶ。アイツ....いま口元緩まなかったか?

 

「ほら次は」

「いただくわ」

 

雪ノ下は口を開けるがその瞬間、海斗の目がギラっと光る

 

「いっただっきまーす!」

「......え」

「うめえ!さすが俺!ん?どうしたそんなもの欲しそうな顔して?俺はやるなんて言ってねえぞ。これは俺の今日のおやつだ!」

 

海斗の鬼畜の所業に俺たちはドン引きする。雪ノ下は甘党しかもかなりの。それはこの間の林間学校での男子だけのお茶会事件で実証済みだ。そんなアイツが中途半端な施しを受けて耐えられるわけがない。その証拠にアイツ、右手がプルプルと震えてるし

 

「いやうめえうめえ!さいっこうだ!」

「黒崎君....貴方....!」

「そんなに怒ったってあげねえぞ。あ、でも~その書類を渡してちょっと休憩してくれたら渡しちゃうかもな~」

 

うわ、アイツきたな

 

「..........ッ」

「うわっ、海斗さいってー」

「信じらんない!乙女の敵だ~!」

「先輩、見損ないました!」

「見下げはてたぞ黒崎!」

「ふん、外道が」

 

海斗が連れてきた助っ人もアイツに非難の声をあびせる。ん?アイツ、俺に手を振って.....ええ、俺も?

 

「そうだな。あんな下衆野郎、放っておいたら何をしでかすかわからねえからな。ここは場を鎮めるためにも従っとけ雪ノ下」

「比企谷君...」

「下衆野郎.....」

「彼、へこんでるけど」

「え.....」

 

いや自分から誘ってきたじゃねえか。そこでメンタル弱くなんなよ

 

「グスン....もういい!あと3秒経ったらこれ全部ぶちまけてやる!」

「お、おい馬鹿!」

「海ちゃん!?」

 

アイツ、本気でやるつもりか!?

 

「はい、さ~ん!に~!いち~!」

「待ちなさい」

 

海斗が腕を振り降ろそうとした瞬間、雪ノ下が止める

 

「はあ....こんなことで部屋を汚されても困るわ。それに人手が増えてもまだまだ仕事が残ってるの......だから」

「だから?」

「.......ます」

「ん?」

「貴方がここで作業することを許可します...そう言ったの」

 

雪ノ下はため息をつき海斗に書類を渡す

 

「へへっ!そんじゃ約束通りこれは全部お前のもんだな。サービスでこれ自販機で買ったレモンティーとオレンジとレモンのはちみつ漬けもあげようではないか!」

「貴方どこまで」

 

用意周到すぎないか?いくらなんでも

 

「そんじゃあ副委員長様の許可もおりたことだし........お前ら!ここまで文化祭の為に頑張ってくれてあんがとな!ちょっと疲れたろ?ここからは俺たちも力貸すぜ!!!」

「「「「..........ッ」」」」

 

さすがは人タラシ....アイツはいま人が一番欲しい言葉を平然と言い放ってくる。......お前のそういうところに俺は何度も救われてる

 

「ありがとうな」

「よし!俺もさっそく始める.......」

 

ん?アイツ、動きを固めてどうした?

 

「めぐ姉、ヘルプ。これ全然わからない」

「「「「「..............」」」」」

「もう....」

「やっぱり帰ってくれないかしら?」

 

し、しまらねえ

 

「遅れてごめんなさい~!」

 

最悪なタイミングで相模がへらへらした様子で入ってくる。ああ、もちろん

 

「..............」

「..............」

「へえ~.........」

 

相模のとってな

 

「あれ....皆さんどうしたの?それに委員の人たち以外もこんなに」

「お、やっと来やがったなお前」

「く、黒崎君」

 

ここにいる全員が白い眼を相模に向ける中、海斗だけが普通に相模に話しかける

 

「おせえよ。今までどこ行ってたんだよ?」

「え、いやその...クラスの方を見て回ってたんだよ!」

「....?いやいや委員長なんだからさすがに委員会優先しろって」

「こ、この間仕事のペース落とそうって話になったんだ。ほら自分たちも楽しまないと他の人も楽しませられないっていうか」

「確かにな」

「でしょ~。やっぱり黒崎君ならわかってくれると思って」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあこいつらは?」

「え..........」

 

海斗の低い声が響く

 

「確かにな。いやお前の言う通りだよ。委員も文化祭はたのしむべきだ。でもじゃあなんでこいつらだけいまこんなに疲れてんだよ?とても楽しめてるようには見えねえな」

「.............ッ」

「自分たちだけが楽しむだけだったらこいつらを蔑ろにしていいと思ってんのか?」

「ちが....」

「じゃあなんで来ない?もちろん、これはお前にだけ言えた話じゃねえけどな。でもお前は委員長だよな?だったら率先して委員会に参加すべきなんじゃねえの?」

「それは....」

 

正論だ。ぐうの音すら出せないほどの

 

「自分で立候補したんだから最後まで責任持てよ。ほらこれ承認印。今からでも遅くねえ、ここで挽回しようぜ?委員長」

「......」

「じゃねえと去年と変わらな....」

「....うるさい!」

 

相模は海斗の手を払う。その拍子に承認印は音を立てて雪ノ下の元まで転がっていく

 

「去年と同じ...?どの口が言ってるの?アタシが去年あんな惨めな思いをしたのは一体誰のせいだと!」

「あ?」

「相模さん!」

 

相模が海斗に手を出そうとするがそれをめぐり先輩が止める

 

「今日はもう帰って。その代わり明日は絶対来て。わかった?」

「.........ッ」

 

相模は逃げるようにその場から去っていく

 

「.............」

「海斗、お前に落ち度はない」

「............ああ」

 

木戸先輩は海斗の肩に手を置いたあと作業に戻る。海斗自身も頬を叩きめぐり先輩と共に作業を再開していく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう~」

 

あたりがすっかりオレンジに染まったころ俺は帰路につく。海斗たち助っ人のおかげで作業もだいぶ進んだ影響かいつもより足取りが軽い。さっそくチャリに乗ろうとすると

 

「ヒッキー!」

「由比ヶ浜」

 

由比ヶ浜が教室から走ってきた

 

「途中まで一緒に帰らない?」

「.....ああ」

 

こうして俺たちは横に並び一緒に歩いていく。そうだ、そういえば

 

「なあ、」

「ん?」

「由比ヶ浜って去年文実だったんだよな?」

「そうだよ。それがどうかした?」

「いや.....」

 

俺は今日の海斗と相模のことを話した。すると由比ヶ浜は悲しそうな表情を浮かべ俯いてしまう

 

「それでちょっと気になってな」

「そっか...さがみん、そんなこと言ってたんだ」

「別に無理して話さなくていいけどな」

 

そんな表情をさせたかったわけじゃないんだが。だが由比ヶ浜は首を横に振り話始める

 

「実は私、途中から文実になったの」

「途中から?」

「うん。さがみんの代わりにね」

 

由比ヶ浜曰く元々は相模が文実だったらしい。だが委員会の回数を重ねるごとに相模はめんどくさくなったのか文実を由比ヶ浜にだんだんと押し付けるようになっていったらしい。なるほどな、由比ヶ浜の性格上断れないだろうな

 

「それでねさがみんの代わりに来たあたしは右も左もわからない。それにね周りにいる人全員すごい仕事ができてあたしずっとあの人たちの足手まといだったの。そこでわかっちゃったんだ。ああ、さがみんはこの空気から逃げるためにあたしを使ったんだって」

「.........」

「でもねそんな中、声をかけてくれたのが海君だったの」

 

海斗...この言葉を出した瞬間、由比ヶ浜の顔に笑顔が戻る

 

『由比ヶ浜、お前これめちゃくちゃいい考えじゃねえか!ほらこっち来てくれよ!めぐ姉、ここにすごい奴がいるぞ!』

『ほら後ろ乗れよ!今日中にポスター全部張り終わっちまおうぜ!』

『結衣、助けてくれ~。.......マジか!サンキュー!!!』

「海君はあたしの手を引いてくれた。あのときの手の暖かさはいまでも覚えてる。海君のおかげであたしは文実にだんだん馴染むことができたんだ」

「相模的にはそれが面白くなかったんだな」

「.....多分」

 

それで準備が終わった瞬間に相模は再び文実に返り咲いたわけだ

 

「それである日、他の委員会の人たちの話を偶然聞いちゃったんだ」

「”由比ヶ浜じゃないのか”だろ?」

「.....さすがだね」

「ほめてるのか?それ」」

 

なるほど。去年のその一件をアイツは海斗が作り出したって逆恨みしてあんな......なにが海斗のせいだ、お前の自業自得じゃねえか。俺は確かな怒りを相模に抱く

 

「ヒッキー、もし助けが必要なら絶対呼んでね」

「わかった」

「絶対だよ~!」

 

そういって由比ヶ浜は走り去っていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海斗side

 

委員会も終わり全員が下校してる中俺はいま家庭科室で皿やティースタンド、タッパーの洗い物をしていた。いやあまさか全部食ってくれるとは作った甲斐があったってもんだ。それにしても

 

「食器洗い手伝ってくれてありがとうな、雪ノ下」

「気にしないで」

 

ありがたいことに雪ノ下が手伝いにわざわざ来てくれた

 

「私、他人に借りを作るのが嫌いなの」

「借り?いやいや今日のは俺たちの善意の押し付けだから気にしなくていいって。特にお前は俺に脅迫された立場なんだから」

「それでも私たちが助かったのは事実。その瞬間に癪だけど私は貴方に借りを作ってしまったのよ」

「....さいですか」

 

責任感があるというか真面目というか、めんどくせえというか.....難儀な性格してんなコイツ

 

「それに私が触れた食器類を貴方がどうこうするかもわからないしね」

「どうこうって...ただ洗うだけだぞ。そのままにするのもばっちいし」

「いやそういう意味ではなくて....いいえ、なんでもないわ」

 

雪ノ下は息をはきながら水を止める

 

「ねえ黒崎君」

「なんだ?」

「....なぜ今日は助けてくれたの?」

 

雪ノ下は俺の方をまっすぐ見る

 

「さっき私、いくら余裕がなかったといえ貴方にあんなことを言ったのよ?普通だったら私に文句の一つや二つぐらい言うでしょう。でも貴方はそれをせずむしろ私たちを助けるために大勢の人を集めてくれた。一体なぜ?」

「友達だから」

「え.......」

 

話がなげえ....そんなの簡単なことじゃんか

 

「目の前に困ってる友人がいる。だったら絶対助けたいし支えたいだろ?」

「それだけ...?」

「それだけつうかそれが全て?」

 

まあ、友達じゃなくても目の前に困ってる人がいたら助けてえだろ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪乃side

 

「目の前に困ってる友人がいる。だったら絶対助けたいし支えたいだろ?」

 

ああ、やっぱり私は彼が苦手だ。思えばあの時もあれは去年......戸塚君を狙ったストーカーが学校に侵入した時

 

『戸塚、戸塚戸塚戸塚あ.....好きだ。好きなんだ!なんで、なんで僕を拒絶する....!』

『あれは....なに....?』

 

私はその現場に居合わせていた。震える彼にあきらかに様子がおかしい他校の男子生徒が執拗に迫っていてその手にはカッターが握られていた。その時までの私は自分は強いと思っていた。どんなことがあっても対処できる、こなせる優秀な人間だって。姉さんと同じくらい。でも実際どう?

 

『.............ッ』

 

動けなかった。助けようと思った。人を呼ぼうと思った。でも私は目の前で起きている現実を目の当たりにして...本物の危機に直面して私の体は固まってしまい一歩も動くことができなくなってしまっていた。でもそんな私の横を

 

『彩加!』

『........あ』

 

突風が駆け抜ける。それが彼、黒崎君だった。彼は戸塚君をそのストーカーから助けた。でもその代償に黒崎君は救急車で運ばれた。それを見てやっと私の体は動き始めたの。

 

『なんで....なんで今になって......!』

 

なんで?そんなことわかりきっていた。私は彼が運ばれるのを見てほっとしてしまった。ああ、自分がこうならなくてよかったって。

 

”あれは仕方ない”

”誰でも動けなくなる。当然のこと”

”彼が特別なだけ”

 

遠くなる救急車を見てこの言葉が私の中で響き渡る。まるで自分に言い聞かせるように。動けなかった弱い自分を肯定するようにそして今日もまた私は自分の弱さを棚にあげ彼にあたったでも.....

 

『友達だから』

『目の前に困ってる友人がいる。だったら絶対助けたいし支えたいだろ?』

 

彼は私の弱さを肯定するようにそう言った。だから苦手、だから遠ざけようとして暴言を吐いた。だってこれ以上彼といたら...........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう二度と強い自分に戻れないって思ってしまったから

 

 

 

けれど

 

 

 

そんな自分を私は受け入れ始めてしまっていることをひどく自覚してしまっている。だから.......だから.....私はいま

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼に大人しく抱きかかえられている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海斗side

 

「.....!」

 

ついた....!

 

「平先!」

「.............」

「黒崎。悪いがいまは」

「雪ノ下が倒れた!」

「なんだと.....!」

 

食器も洗い終わり皿を片付けていると俺の背後からなにかが割れる音がした。後ろを振り返ってみるとそこには床にい倒れ伏している雪ノ下がいた。俺は急いで彼女を抱きかかえ平先の元に向かった。そして現在に至る

 

「すげえ熱で本当は保健室に連れていこうと思ったんだが星野先生、もう帰っちまってるしだから....」

「わかった。すぐに病院に連れていこう。すみません、今日の所は」

「ええ、構いませんよミス平塚。今は彼女を優先してあげてください」

 

この声、どっかで....いや今はどうでもいい!

 

「俺、コイツの荷物全部持ってくる」

「ああ、頼んだ。......失礼します」

 

 

 

 

 

 

 

「はあ....あの目」

『ジェラード、大丈夫?』

「麗奈先生にそっくりだね、海斗君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「過労による一時的な体調不良ですね。今日明日しっかり休めば回復すると思われます」

「そうですか....よかった」

「はあ~」

 

俺と平先はすぐに近くの病院に雪ノ下を連れて行った。結果としては過労による体調不良で重度の病気などではなかった。とりあえずこれで一安心だ

 

「とりあえず陽乃を呼ぼう」

「そうだな。あの人だったらすぐに駆けつけてくれんだろ」

「でしたらご家族の方がご到着するまでこちらのベッドをお使いください」

「すみません、助かります」

 

俺たちは先生に頭を下げ雪ノ下をベッドに運びそのまま寝かせる

 

「待って...くだ..さい」

「...雪ノ下」

 

平先が電話を掛けようとした瞬間、雪ノ下は待ったをかける

 

「あの人は呼ばないでください....」

「ダメだ。さすがに今のお前を一人にするわけにはいかない」

 

平先の言う通りだ。今の雪ノ下を一人にするのは危険すぎる。委員会の相模の行動に陽さんが関わっているのはめぐ姉から聞いた。だからそのことで顔を見たくねえって思ってるのかもしれねえが今は緊急事態だ

 

「このぐらい...なんともありませんから」

「そんなこと言ってる場合か。平先、頼む」

「黒崎君.......」

「...........ッ」

 

雪ノ下は俺の胸に頭をつける

 

「今はこのぐらいしか頭を下げれない。でも後日お礼も謝罪もする.....だから、お願い」

「........わかった」

「黒崎」

「病人にここまで頭を下げられて”無理です”なんて言えねえだろ」

「........だが陽乃を呼ばないにしても今の雪ノ下を一人にするのは危険だ」

 

そうなんだよな~。どうする?平先は立場上絶対無理だし、俺は言うまでもなくダメだ。それにコイツ一応病人だから誰か知人の家に泊めさせるのもまずいしな......

 

「貴方ならいい」

「「え?」」

「黒崎君、貴方なら....」

 

コイツ、いまなんて言った?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ.......海斗がめぐりに呼び出されるちょっと前の出来事

 

海斗side

 

「バオバブだって大きくなる前は小さいんだよ...」

「でもどうして羊にバオバブを食べてほしいんだ?」

「そんなのわかるでしょ?」

「ちっがう~!」

 

今日俺たちはライブ練習を休み、クラスの出し物である劇の練習をしていた。そんでなんか知らんけどいつの間にか俺と彩加が主役になっていた。いやなんで?

 

「バオバブってなんの比喩かわかるよね?.......わかるでしょ?王子役はもっと上目遣いで恥じらいを持って!黒崎君はセリフが棒読み!感情がこもってない!!!」

「........../////////」

「わかるか」

 

この劇の脚本、海老名さんが考えてくれたらしいんだがセリフがマジで意味わからん。どゆことバオバブだのなんだの.....

 

「なあ、このバオバブってなんなんだよ教えてくれ。そうすれば多分演技ももうちょいマシになると思うんだが」

「..............」

「..............」

 

この質問をすると海老名さんは黙るしそれ以外の奴らは聞こえてんのか聞こえてねえのか知らねえけどシカトするし

 

「なあ、川崎バオバブって...」

「いま集中してるから。それとその質問を次にアタシにしたらアンタの腕をちぎる」

「怖すぎなんですけど....」

 

裁ちばさみチョキチョキすんな、あぶねえだろ

 

「ほら黒崎君、あのコミケを思い出して!」

「コミケ......ああ、了解。あんな感じでやればいいのか」

「はいいくよー!3,2,1........」

 

海老名さん自作のカチンコが鳴る

 

「バオバブだって大きくなる前は小さいんだよ....?」

「それじゃあよ....」

 

俺は彩加の頬に手を添える

 

「か、海.......!///////////」

「どうして羊にバオバブを食べてほしんだ?」

 

そして頬に添えた手を今度は顎に添えゆっくりとあげる

 

「言ってみろよ」

「そ...そ....そんあ.....きゅ~」

「キ、キマシタヴぁあああ!」

「え、お、おい!彩加!海老名さん!」

 

彩加は顔から湯気を出し膝から崩れ落ち、海老名さんは鼻血を出してその場で倒れる

 

「海斗君、やっぱべえわ....」

「それな」

「ああ、アイツはマジでやばい」

「海君、やりすぎだよ」

「はあ....まったく」

「え、俺が悪いのこれ?」

 

なぜ俺はお前らに避難の目を浴びないかんのじゃ

 

「これさ黒崎の役、誰かに変わった方がよくない?戸塚と海老名がもたない」

「「「賛成!」」」

 

こうして俺は主役から降ろされ教室から放られてしまった。いや本当に何で?

 

 

 

 

僕役......黒崎海斗から葉山隼人に変更。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでくださりありがとうございました。
まさかまさかの海斗、雪乃宅へ。

ここでマル秘エピソード①
作中に出てきた黒枝さん、川野さんは雪乃と同じクラスです。
また神戸、そして彼に着いていった赤川は海斗のツーリング仲間です。

マル秘エピソード②
結衣が一番好きなのはもちろん八幡ですが一番信用しているのは海斗です。

マル秘エピソード③
海斗は29歳で死亡します。








確か見滝原っていうところで変死体で見つかったって。.....ん?そんな事実ない?え、だってこの原稿に.......あれ?



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