では本編スタートです!
「覚悟は決めた...!」
休み時間中の2-Fの教室、俺は一人、覚悟を決めていた。なんの覚悟かって?
(昨日は本当にごめんな。名前間違えて覚えられてて不快にさせた、本当に申し訳なかった......よし、こんな感じでいこう)
比企....じゃなかったヒキタニに謝るんだよ。正直気心が知れた仲ならすぐに謝りに行けるんだが、相手は喋ったことのないクラスメイト、さすがに緊張する
「いや、こうしてくすぶっていても仕方ねえ...!」
俺は席を立ちヒキタニの席に近づく。だが
「..........ッ」
「ま、マジか...」
俺が近づこうとした瞬間、ヒキタニは席を立ちあがり教室を後にする
(ダメだ。会話すらしてくれねえ...まあ、そりゃそうか...もう進級して結構経つのに名前を間違えている俺が百パーセント悪しな)
彼が教室からいなくなった以上追いかけるのも気持ち悪し、俺は仕方なく席に戻り次の授業の準備をするのだった。次こそは絶対に...!
「ダメだぁ!」
あれから休み時間とか昼休みとかに話しかけようとしたがもう全然ダメ!ていうか昼休みに関してはマジでどこにいるかわからん!.............ということで謝れないまま放課後になってしまったというわけだ
「ここまで避けられるともう関わんない方がアイツのためになるのかもしれねえ...謝れなかったことは心苦しいがいつまでもしつこくするとな...」
最後の手段、帰りの瞬間に声を掛けようとするが残念ながら平先に連行されちまったからそれも失敗したし、もう諦めるか。とりあえず自販機でコーラでも買って情けない自分を慰めるとしよう。こうして俺は校内にある自販機へと向かうのだった
比企谷side
はあ、最近なんかツイてないな。昨日は俺の傑作の作文を駄作扱いされ、その罰で「奉仕部」とかいう部活に強制入部させられ、今は部長の雪ノ下雪乃にパシリにされている。中でも一番厄介なのはあの黒崎海斗という陽キャ中の陽キャに目をつけられていること。いや、わかるよ。昨日無視した俺が百パーセント悪いのは分かってる。だが俺みたいなボッチは急に話しかけられるとああなっちまうんだ
「はあ、今日もあからさまに無視しちまった。もしかして明日報復を受けたりして...」
『よくも俺のこと無視してくれやがったな!ぶん殴ってやる!いや、殺す!』
「ひっ....!」
イマジナリー黒崎が俺に襲い掛かる。.....イマジナリー黒崎ってなんだよ、アホか。飲み物も買ったことだしそろそろ戻るか...
「いた!」
「え....」
声のする方を振り向いてみるとそこにはすさまじい勢いで迫ってくる黒崎の姿があった。やばい、殺される........すまない、小町。俺はここまでのようだ
海斗side
「いた!」
よし、いたいた!運がいいぜ.....て、おい行かないでくれ!
「待ってくれ!」
「...ッ、な、なんのご用でしょうか?」
よし、なんとか引き留めることに成功したぞ
「その今日はしつこくして悪かった。どうしても謝んなきゃと思って必死になってた」
「謝る...?一体なんのことだ?」
「俺、お前の名前を今まで間違えて覚えてた!すまなかった!」
俺はヒキタニに頭を下げる
「許してくれとは言わない。ただお前の名前を間違えて呼んで不快にさせたことを謝らせてほしい!本当にすまなかった、ヒキタニ!」
「...............」
どうやら、どうしても許せなかったようだ反応がない。そりゃそうか、名前を間違えて覚えるなんざ世が世だったら万死に値するらしいからな。これ以上は迷惑だろう、大人しくヒキタニの前から消えよう
「その、なんだ...謝る必要なんてねえよ」
「え........」
「俺、ヒキタニじゃなくて比企谷なんだけど」
............................はへ?
「え、ちょ、ちょっと待ってくれ....じゃあお前の名前は本当はヒキタニじゃなくて比企谷で合ってたってことか?」
「...ああ」
「...よかった~」
ああ、マジでよかった~。なんだよ比企谷で合ってたのかよ...失礼ぶちかまして比企谷のこと傷つけちまったかと思ったぜ
「それより俺はお前みたいなやつが俺の名前を覚えてくれていることに驚きだ」
「え、だって普通にわかんだろ?」
「...そうか」
じゃあなんでクラスメイトの奴らはコイツのことをヒキタニなんて呼んでるんだ?あだ名か?
「まあ今はいっか。ふぃ~、なんか安心したらのどかわいちまった...って、お前結構飲むんだな」
「ああ、これは他の奴らの分もあるから」
「へえ~、お、出たな千葉のソウルドリンク、マッカン。俺もよく買うよ」
「...!お前も好きなのか?」
「俺甘党だからな結構な頻度で飲むぜ。それにマッカンを使ったシフォンケーキとかも作ったことがある....ほら、これ」
「おお....!」
比企谷がかつてないほど目を輝かせてスマホの画面を見る。コイツ、さては相当なマッカン好きだな?店に来る子供たちと同じ目してやがる
「美味そうだろ?よかったらうちの店に来いよ。来てくれたらごちそうするぜ」
「...いいのか?」
「もちろんだ。ほら、この道のここが俺のバイト先だ....」
「この店知ってるぞ。よく妹が行ってみたいって言ってる」
「ぜひ来てくれよ。妹さんの分もごちそうっすから」
「...じゃあこんど行こうかな」
「お待ちしております」
よし、比企谷兄妹のために腕を磨いておこう...!
「悪いな、時間取らせて。その飲み物を所望しているお前の友達も待たせちまってるしな俺も一緒に行って謝るよ」
「そこまでしなくていい。...それにに友達じゃねえただの部長と依頼人だ」
「依頼人?なんだボランティア部にでも入ってるのか?」
「奉仕部だ」
「奉仕部?なんかいかがわしいな...」
「それは俺もそう思う。だが残念お前が思っているような活動はしてねえから」
「あたりまえだ」
そんなことやってみろこの高校潰れんぞ。ていうか奉仕部なんて部活、学生便覧に載ってたか?....なんか気になってきたな
「やっぱり俺も着いていっていいか?お前の部活仲間と依頼人への謝罪と俺の好奇心を満たすために」
「まあ、そこまで言うなら」
こうして俺は比企谷の後をついていくことにした。そんな中俺は比企谷と雑談をしていた、曰く課題の「高校生活を振り返って」を題材にした作文でかなりふざけた内容を書いてしまった罰で奉仕部に強制入部させられてしまったらしい
「いや、それはお前が悪いだろ。なんだよ、作文の最後に”砕け散れ”って今どきの小学生でもやんねえって」
「俺としてはちゃんとテーマに沿って書いたつもりなんだよ」
「まあ、だからといって強制入部とは平先も鬼だな」
そうこうしている内に奉仕部の部室に着いた
「ここだ」
「...失礼します」
返事がねえな。仕方なく俺たちは部室に入るとそこには一枚の書置きが残されていた。なになに、家庭科室に来なさい.......なんかコイツ怖いな
「もしかしてここの部長って意外と女王様タイプだったりするか?」
「ああ」
「お前も大変ね」
俺たちは部室から家庭科室の前まで来ていた。すると中から二人の女子の声が聞こえてくる。だがこの匂いは
「なんか焦げ臭くね?」
「確かに」
俺は恐る恐る扉をノックする
「どうぞ」
「あ、ヒッキー!遅いよ...って、海君!」
「結衣じゃねえの」
部屋に入るとそこにはピンク髪の溌溂とした元気な女子由比ヶ浜結衣と、黒髪で目が若干鋭い黒髪の美人、雪ノ下雪乃がいた
「海君、どうしてヒッキーと一緒にいるの?」
「ちょっと自販機のところで話してただけだよ。だからコイツが遅くなったのは俺のせいなんだ、責めるなら俺な」
「そうだったんだ」
なるほど、この感じ結衣が依頼人とやらで雪ノ下が部長ってわけか。このまま無言で立ち去るのもあれだしな、軽く挨拶をと
「悪いな、雪ノ下さん。部員の比企谷ちょっと借りてたぜ。俺の名前は...」
「2年F組、黒崎海斗君ね」
「俺のこと知っててくれたのか嬉しいぜ。よろしくな、雪ノ下さん」
「ええ...」
それにしてもコイツの顔どっかでみたことあるんだよな......
「人の顔をじろじろ見てどうしたのかしら?もしかして貴方もあの男のみたいに変態なのかしら」
「おい...」
「ああ、悪いな不躾に。ただアンタの顔をどこかで見たことある気がして」
「それは新手の口説き?私は貴方の顔は遠目でしか見たことないしこうやって面と向かって話すのは初めてよ」
「そうだよな...悪い悪い、女性の顔をじろじろと。ちなみに別に口説きじゃねえから安心してくれ」
俺が悪いのは認めるけどさすがに言葉が鋭すぎないか?さすがにちょっと傷つくんだが...
「じゃあ俺はこれで。比企谷、今日はありがとうな楽しかったよ。またな」
「...おう」
こうして俺は家庭科室を出て、帰宅するのだった
翌日、4限も終わり昼休み。俺は彩加と昼飯を食っていた
「この天気じゃ今日の練習は無理そうだね」
「そうだな。今日は大人しく中で過ごすか」
本来だったら俺たちは爆速で昼飯を食い、そのままテニスコートに移動しテニス練習をするはずだったのだが今日はあいにくの雨。そのため今日は練習はせず教室で大人しく雑談することにした
「ほら、彩加。ちょっと食べてみてくれよ」
「これってエッグサンド?いいの?」
「ああ。遠慮せずぱくっとな」
「それじゃあいただきます。......うん!すごい美味しいよ!」
「しゃあ!」
これでエッグサンドもマスターだな。卵にちょっとだけマヨネーズとマスタード入れてみたのがやっぱり正解だった。あとでじじいに新メニューに加えてみねえか聞いてみよ
「すごい美味しいよ。どうやって作ったの?」
「悪いがそれは企業秘密だ」
「え~」
「そんなに美味かったんなら明日もまた作ってきてやるよ」
「やった!海斗、ありがと!」
コイツ、本当にうまそうに食うから何個でも作ってやりたくなるな
「なあ彩加、お前...」
「ねえ、あれ大丈夫かな?」
「ん?」
「なんか結衣最近付き合い悪くない?」
「それはその色々あるというかなんというか...」
戸塚の視線の先を見てみるとそこには所謂クラスの人気者が集まった葉山グループがいた。どうやらそのグループに所属している三浦優美子という金髪ギャルと結衣の間でなにかトラブルがあったようだ
「それじゃあわかんないからちゃんと言ってよ。あーしら友達じゃん」
「ごめん...」
「だから、ごめんじゃなくてなんか言いたいことあんでしょ?」
おいおい、優美子。それはちょっとまずくねえか?結衣、委縮してんじゃねえか
「確かにアイツ等にせいでこの部屋の空気が重くなってんのも事実か。周りもちょっと怯えてるし」
「うん...」
「しゃあない」
これ以上は周りにも影響が出るな。正直俺が出しゃばる幕じゃねえけど...そう思いながら俺は席を立とうとした瞬間、比企谷が立ち上がる
「比企谷...」
「おい、そのへんで...」
「うっさい!」
「飲み物でも買ってこようかな...やっぱやめとこうかな...」
比企谷、アイツ結衣を助けようとしたのか。.....よし
「あんさ、結衣のために言うけどさそういうはっきりしない態度って結構イラってくんだよね」
「...ごめん」
「またそれ?さっきから...」
「優美子、少し落ち着け」
「海斗...!」
優美子は俺をにらみつける
「なに、アンタに関係なくない?」
「関係あるわ。お前のその態度のせいで周りの空気が悪くなってんのがわかんねえのか?それに少し結衣へのあたりが強すぎる。そんなんじゃ言いたいことも言えないだろ」
「そうなの、結衣?」
「えっと...」
コイツ、結衣に的をしぼりやがった...!
「いい加減にしろ。そうやって圧をかければかけるほど結衣との仲は悪くなってく一方だぞ。そんなことわかってるはずだろうが」
「...ッ」
「わかった風でおこがましいのを認めたうえで言うぞ。優美子、お前が結衣のことを大切な友人だと思ってることはわかる。すごい伝わってくるよ。でも今の状況を見てみろよ、結衣に圧をかけ委縮させてる...これがお前の求めてたことなのか?お前はただ結衣と」
「うっさい!エラそうに説教垂れんな!」
優美子の声が響く
「遅いわよ、由比ヶ浜さん」
「え、雪ノ下...」
その瞬間、雪ノ下の声が聞こえてきた
「由比ヶ浜さん。貴方自分から誘っておきながら来ないのは人としてどうかと思うのだけれど...遅れるのなら連絡の一本ぐらい入れるのが筋だと思うのだけれど」
「ご、ごめんね。でも私ゆきのんの連絡先知らないし」
「...確かに。それだと一概に貴方が悪いとはいえないわね」
ゆきのん...結衣、あれから雪ノ下と仲良くなれたようだな。それに心なしか雪ノ下の方も表情がやわらかくなってる気がするし。そして雪ノ下は結衣と共に教室に出ていこうとする
「ちょっと、あーしらまだ話終わってないんだけど!」
「話す?貴方、あれが会話のつもりだったの?一方的に意見を押し付けているようにしか見えなかったのだけれど」
「は!?」
まて、雲行きが怪しくなってきたぞ。まさか......
「気づかなくてごめんなさいね。貴方達の生態系に詳しくないものだから...つい類人猿...」
「あああああああ!!!!!雪ノ下、口開けろ!」
「え...」
俺は急いでポケットの中にあったチョコマシュマロを雪ノ下の口にぶん投げる。冗談じゃない、雪ノ下と優美子が口喧嘩なんてしてみろこの教室が吹っ飛ぶわ!
「....おいしい」
「雪ノ下先に行って待ってくれ!あと五分もかからねえから!」
「ちょ...!」
俺はそのまま勢いよくドアを閉める
「はあ、はあ、疲れた...」
「海斗、アンタ....!」
「結衣、言いたいことがあるなら言ってやれ...アイツ案外寂しがりやだから...」
「え...」
「ちょ、アンタ何言って...!」
優美子は....いや、ゆーちゃんは昔からさびしんぼうだ
「お前は昔からそうだ、ゆーちゃん。帰り道一人で帰るとさびしいからずっと校門の前で暗くなるまで学童の俺を待ってておばさんに怒られたのはどこのどいつだったか」
「ゆーちゃん言うな////////!あーしは別に寂しがり屋なんかじゃない!それにあの時はかーくんが........ッ///////////」
「ぷっ、かーくん」
「こんの...!」
懐かしいな。そう、皆はもう察していると思うが俺、黒崎海斗と三浦優美子は幼馴染だ。つっても中学で別れてそれっきりだったがな。そして去年、この高校で再会した。あまりの変わりように最初は気づかなかったけど昔は.....まあ今はいっか
「彩加悪い、俺このままだとアイツに殺されるから逃げるわ」
「え、う、うん」
「そんじゃあな。.......優美子、ちゃんと聞いてやれ。結衣、ありのまま全部思ってること言ってやれ」
「.....ふん!」
「うん!」
こうして俺は教室を出て残りの昼休みを一人、雨音を聞きながら過ごすのだった。そしてこれは比企谷から聞いた話なのだが結局結衣たちは無事仲直りをしたらしい...めでたし、めでたし
読んでくださりありがとうございました!
なんと海斗と優美子は幼馴染でした!海斗は小学校卒業の時に引っ越しており優美子の家の近くから離れてしまいました。そのとき優美子はギャン泣きしずっと海斗にしがみついて離れなかったようです。
高校生になり優美子は葉山隼人君に恋心を抱きました。しかしどうしても海斗と過ごした時間が忘れられないみたいです
「あーしは隼人が好き。この気持ちにウソはない。でも........」