第1話砂塵に包まれた血の匂い blood in the desert
民兵「おら、きびきび歩きやがれアメリカ人ども」
民兵たちは*AK47自動小銃の銃口を背中に突きつけながら、強引に歩かせる。
*旧ソ連で開発されたアサルトライフル
2000年代、粉塵漂う地、イラクにおいて戦場カメラマンとして米軍部隊に同行していた男、カスパー・ハウザーは、同行していた米軍部隊と共に現地のゲリラ民兵の人質となってしまっていた。
そして、イラク中部の都市「ファルージャ」の郊外のとある建物内に部隊とともに監禁されていた。
建物は数階建てであり、その一階の部屋で所持品を取り上げられ、捕虜は全員、意気消沈した様子で壁に背を受けて座らされていた。
そんな中で十人弱の民兵たちがAK47自動小銃の銃口を時々、捕虜たちに向けながら、見張りを行っていた。
カスパー「...しまった。
またやってしまったな...後で始末書だったり、最悪の場合にはクビかもなあ...」
以前にもカスパーは無茶な取材、または出しゃばった行動をしており、度々取材を拒否されたり、彼が所属する会社の上司から叱責を受けていた。
カスパーはそんなことを心の中でぼやきながら、民兵たちに視線を移した。
きっとそれが民兵たちには睨んだように感じたのだろう。民兵たちがカスパーの方に近づいていた。
民兵1「おい、こいつ生意気だな?自分の現状を理解していないようだな。米軍に関する情報を吐かせるついでにちょっくら拷問して自白させるか」
民兵2「そうだな。こいつは交渉に有利な情報も引き出せるかもしれないしな。おい!こっちに来い!」
民兵たちは強引にカスパーの腕を掴み、どこかへ連れて行こうとする。
民兵たちはアラビア語で会話をしており、事情を知る由もないカスパーは突然の出来事に困惑し、抵抗したが、民兵はAK47の*ストックで彼の頭を強く打ち付け、無理やり連行する。
*銃を構えるときに肩に固定する部分
民兵2「おい、あんまり手荒に扱うなよ。ボスは捕虜はアメリカとの交渉に利用するから殺すなと言っていたぞ」
民兵1「わかっているさ。
相手を従順にするには恐怖を植え付けるのが手っ取り早いんだ。
その教育を身をもって施していただけだよ」
建物の地下室に連行され、そこでも軽く暴行を受けた後、床に強くカスパーを叩きつけ、民兵が訛った英語で語りかけてくる。
民兵1「おい、お前、おれたちが米軍に有利になるような情報を何か握っているだろう、吐いてもらおうか」
カスパー「.....僕は何も知らない。
それより、あんたらのリーダーと話をさせてくれ。僕は民間人だ、軍人じゃない」
民兵1「そいつは叶わねえ要望だな、ボスからは捕虜は誰一人解放するなとのお達しでね、なによりお前のその反抗的な態度がいけ好かねぇな」
そういうと民兵は腹部に強烈な蹴りをお見舞いした後、再びカスパーに暴行を加える。
しかし、カスパーはあまり堪えている様子はなく、反抗的な態度を改めなかったため暴行は次第にエスカレートしていた。
民兵2「こいつ...頑丈な野郎だ。
全然効いてる様子はねえな。
こいつ、これじゃ仮に何か知っていても口を割らないんじゃないか?」
民兵1「見たところ、記者だからなにか握っていると思ったが、勘がはずれたか...仕方ねえ、今度は部隊のリーダーをいたぶるとするか。
ったく!使えねえアメ公だぜ」
そう言うと、腹いせにもう一発お見舞いしようかという瞬間、民兵の携帯電話がけたたましく鳴り出した。
それをすぐさま取り、会話を始める。
民兵1「あぁ団長、お疲れ様です。それでどういったご要件で?捕虜たちの見張りに関しては万全で、抜かりはありません」
電話の主「ああ、ご苦労。それでそっちにアメリカ側の交渉相手があと20分ほどで到着するとの連絡を受けた。気を引き締めておけよ」
民兵1「承知しました。ところで、やつらはこちらの要求をのんだのですか?」
電話の主「ああ、インターネット上で公開した動画で交渉期間に時間制限を設けたのが功を奏したな。やつら、我々の同胞を解放しろとの要求をあっさりのんだぞ」
民兵1「そいつは良い知らせを聞けたものです。実に犠牲を嫌うアメリカらしい回答だ。
では交渉の方はおまかせを」
電話の主「ああ、よろしく頼む」
そういうと電話は切れた。
アラビア語での会話であったため、カスパーは内容は理解できなかったが、直感的にカスパーたち捕虜の扱いに関することであり、そして状況は不利な状況であると悟った。これから待ち受けるカスパーの数奇な運命とともに。