カスパー「.....確かにそうかもしれない。
だが、それがなんだっていうんだ?」
アイユーブ「私自身がそうだったという話さ。
昔の話をしよう。
私は少年期、裕福な家庭の生まれだったが、要領が悪くてね。
周囲が私を嘲笑った。
そして、それと同時にとある人物の伝記を読み、英雄という存在に憧れた。
君、サラディンという人物は知っているか?」
カスパー「....いや、知らない」
アイユーブ「西洋人は知らなくても無理はないか。
だが、彼はイスラム世界では彼の横に出るものはいないと言える程の英雄だ。
かつて、聖地エルサレムがキリスト教十字軍に奪われた時、彼はそれを奪い返したんだ」
カスパーは突如として強烈な頭痛を感じ、そして走馬灯のようなものを一瞬見た。
そして頭をおさえた。
アイユーブ「おい、大丈夫か?」
カスパー「いや、平気だ。
一瞬、何か強烈なものが....それより、続けてくれ」
アイユーブ「....そうか。
話を戻そう。
そして、私は英雄になれる千載一遇の機会に恵まれた。
ソビエト連邦がアフガニスタンに侵攻した時だ。
当時、私はイギリスへの留学から母国へ戻った直後であり、私はエリート街道を進むものと思われていた。
だが、私は英雄になるべく、アフガニスタンに向かうと言った。
当然、周囲は猛反対した。
だが、私は反対を押し切り、アフガニスタンへ向かい、ソビエト軍と戦った。
そこで、見事大きな戦果を挙げ、英雄と言えるような存在になることができた。
だが、結果はどうだ、私が少年期に憧れた英雄像とは周囲にもてはやされ、頼り甲斐があり、自分自身でなんでも決断できるものであり、私自身がなったものとは違ったんだ。
途方もない期待や責任が押しかかり、自己決定権はなく、私の意思や思想なんて灰となって消えてしまったも同然だった。
そして、私は英雄として、あるいは生贄として集団のために生き、そして死ぬことを決めた。
というよりも、決めざるを得なかった」
カスパー「...だから、あんたはテロ行為を繰り返したと?」
アイユーブ「ああ、私はイギリスに留学したことがあると言ったね。
だから、欧米への理解が周囲よりもある。
当初、私は実は欧米への攻撃は反対だったんだ。
だが、私を慕う周囲は攻撃支持派が多かった。
だから実行した。
そして、私は途中で殺害され、nightmareになった」
カスパー「...nightmareになってからもテロ行為を継続したと?」
アイユーブ「継続した。
周囲は私が生き返ったといい、英雄は不滅だともてはやし、ますます攻撃を熱望したからな。
私はnightmareになる前、と言うか死んだ瞬間と言うのか、夢のような空間で集団を最期まで導けとの命令を受けた。
そして、この体を手に入れたというわけだ。
あれは恐らく神による啓示だったのだろうな」
カスパー「...神?
.....そんな詭弁のようなものが通用すると...?
それに、テロ行為を行うのが、英雄だと?」
アイユーブ「当然の反応だな。
だが、我々のような...
そう、君たちの言う過激派からすれば、それは立派な行いとして捉えられるんだ。
だが、さっきもいった通り、私自身は無差別な攻撃は反対であった。
攻撃を実行した時点で弁明の余地は皆無だがな。
私についてはこんなところだ。
今度は君について聞かせてくれないか?
なぜ、nightmareと行動を共にしている?」
カスパー「nightmareと行動を共にするようになったのは、成り行きだった」
アイユーブ「成り行きか...」
カスパー「それ以前は戦場カメラマンとして活動していた。
動機は世界の不条理をカメラに映し、一人でも多くの人間の目に届け、人々を刺激し、少しでもそれらを解消させるためだ」
アイユーブ「ほう?不条理か...
具体的にどんな不条理だ?」
カスパー「不当な暴力、搾取、収奪、差別といった不条理だ。
無罪の人間が無差別に殺されたり、とある国が不当な理由で戦争を始め、人々が犠牲になったりといったものだ。
あんたらのテロだってそうさ」
アイユーブ「なるほど、もしかして君は若かりし頃の私と同じなんじゃないのか?
偉業を成し遂げ、周囲からもてはやされたい、必要とされたいという点でな」
カスパー「....一緒にしてほしくはないな」
アイユーブ「だが、本質は同じだろう。
君は本当に不条理な目に遭う人々のためにそれを達成したいのか?
自分のためではないのか?」
カスパー「..........」
アイユーブ「それが問題というわけではない。
自然なことだと私は思う。
なぜなら、私自身がそうだったのだからね」
そんな会話をしている時、外から銃声が聞こえ、そして、プロヴィデンスを発動させる。
すると、オーラをテント越しに複数、確認できた。
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ネロたちは見張りのゲリラたちを蹴散らしながら、座標の元に向かっていた。
ネロ「もうすぐだ」
ペルマラム「カスパー君、無事でいてくださいね」
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アイユーブ「誰か来たようだな。
恐らく、君の仲間だろう」
カスパーにとってこの男はどこか、落ち着いていて、どこか諦めにも近い表情をしていると感じた。
カスパー「....あんた、やけに落ち着いているが、何か対策を打っているのか?」
アイユーブ「そんなものはない。
来るなら来ればいい。
いや、むしろ待ち望んだ瞬間というべきか...
私のnightmareの部下たちもすでに死んでいるだろうからな」
アイユーブが立ち上がった。
銃声はすぐそこまで、迫っており、遂に外の見張りのゲリラも殺された。
そして、カスパーとアイユーブも外に出る。
すると、ネロがSPAS12を装備していた。
ネロ「よお、カスパー、無事だったか?」
アイユーブ「カスパーという名前なんだな」
ネロ「待ってろ。
このクソ野郎はすぐに沈めてやる。
てめえが、アイユーブ・サウザーンだな?」
アイユーブ「そうだ」
ネロ「離れていろ、カスパー」
カスパーは二人から離れ、雌雄が決するのを見守ることに決めた。
ラートリー「いやー無事で何よりだよ、カスパー君」
ペルマラム「ええ、本当に。
何か危害は加えられませんでしたか?」
カスパー「いや、何もされなかったよ。
助けに来てくれてありがとう。
それより、なぜ、僕の居場所がわかったんだ?」
誠士郎「君に発信機が付いていたんだ。
それを追って、ここに来たというわけだ」
会話をしている最中、二人は激戦を繰り広げていた。
ネロ「ちっ、すばしっこい野郎だな」
アイユーブ「それは君もだろう?」
ネロ「お前、あのnightmareの奴らはなんだ?
お前の差し金か?」
アイユーブ「協力はしていたが、私も詳しくは知らない」
ネロ「なら、用済みだな!!」
アイユーブの使用する*M16の銃弾がネロの肩をかすめる。
ネロ「痛えな。
お前、なぜ、カスパーをさらいやがった?」
アイユーブ「興味を持ったからだ」
そして、次の瞬間、ネロの使用するSPAS12の散弾がアイユーブの胸部に直撃し、アイユーブは地面に倒れ込んだ。
血を吐き、虫の息であった。
*アメリカで開発されたM16アサルトライフル
アイユーブ「ぐは!」
ネロ「さあ、終いだな」
アイユーブ「.....最後にカスパーと話をさせてくれないか?」
ネロ「.....なぜだ?」
アイユーブ「.....彼に伝えたいことがあるんだ]
ネロ「.....お前は殺せたはずのカスパーを殺さなかったからな。
それぐらいは許可してやる」
カスパーは再び、アイユーブと顔を合わせる。