ところで――先生は更衣室の扉に背を向けて話す。
「これから、どうするんだい?」
私は入室前にセナから手渡された黒のブラセットと格闘していた。
『女の子になったのだから着けないといけないけど自分の中の元の性別が拒否反応を起こしてるぅ』
「あのネア?」
悪気はなく急かす先生。
「先生、女性の着替えを急かすものではありません」
「ごめん、セナ。そうだね」
部屋の外の空気が可笑しい……だが、そんな事は気にして居られない。
「えぃ、ままよ」
私は腹を据える覚悟を決めた。
…………
(数分後)
「おぉ」
先生は感嘆な声を漏らす。
端に紅のラインのある紺のブレザーとスカート。
白いワイシャツには紅のネクタイが揺れる。
脚には黒いタイツを履いた彼女がそこにいた。
『なんか心物ない』
スカートなんて、初めて履いた。さすがにネクタイはした事あったけど。
心許ない足元にソワソワしながらも変なところが無いか姿見等を使って見渡す。
「いいねぇ。それで、ふたつめ……なんだけど、君のバイク。ちょっと、壊れてたからエンジニア部の子に修理してもらってる。表の駐輪場でやってると思うから後で取りに行くといい」
ほぅ、私の801がメンテ中とな……多分ボロボロだったんだろうなぁ。
私はとか前のことを考えながら、この後何をするか思案を頭の片隅でし始めた。
「で、最後なんだけど。」
先生はポケットから小さい端末を手渡す。
「これは?」
私は不思議そうに聞き返すと先生が、
「私の
「留学生?」
これも聞きなれない単語だなぁ。
「君には私の代理人としての肩書きがあるから固定の学園には所属させれない。だが、留学生なら話は別だと私は思ってる。」
一時的にその学園に入学し、自分のタイミングで他の学園に身を移す。そして、先生の指示を仰ぎ、時に行政権を行使する。
なかなか、無理やりな制度だけど大丈夫なんだろうか?
「心配しないで、とっくに連邦生徒会の承認は降りてる。書類仕事は得意なんだ私」
得意げに話す先生。
気が付くとセナの姿は見えなくなっていた。
先生曰く、急患がゲヘナの方で出たらしい。
「あぁ、後これは私からの個人的な選別だけど、講師権を行使する時に使って」
小さなアタッシュケースを手渡される。
「なにから、何まですみません。先生」
ケースを膝に置いて、頭を下げ軽く会釈をする。
「なに、同僚……強いては君も一応生徒なんだ。力になるよ」
その言葉はこれから全てを始める私に熱をくれた。
「助かります」
私は天に届きそうな綺麗なビルから外に出ると、すぐの所の駐輪場で車両を整備し終えているつなぎを着た一般生徒を見かける。
「あぁ、貴方がネアさんか。ウチはエンジニア部のものだけど一応メンテは終わったよ。いやぁ、大変だったよ。所々部品にガタが来てて、まぁ部品は作ったけど」
「ありがとうございます」
彼女たちにも会釈をし、ケースを801のシートの後ろにベルトで縛る。
ヘルメットホルダーに掛かってる黒のフルフェイスを徐ろに被り、バイクに跨る。
なんだか、懐かしい。取り敢えずこの世界を回って見ようか――キーを回しエンジンに息を灯す。
801は黒煙を吐くと最速335キロを叩き出せる心臓が私に心地いい音を届けてくれた。
こいつとならどこへでも行ける――そう、思い直した。
「行ってきます」
そして、私はシャーレを後にした。