宛もなく相棒を走らせて、3日。
「ふぅ、出来た」
私は電動ドリルやビスなどの入ったケース等が所狭しと備えられている作業台を前にして
手芸技術は身体が変わっても頭が覚えてて思った通りの物を作れた。街を見ながら
机の上には2挺の
透かさず後腰のホルスターに収める。
「出来たかい?」
青色の作業服を着た狼頭の男が声をかけてくる。
彼はヤマトさん。この作業台を貸してくれたヤマト特殊部品製造店の唯一の従業員で社長さん。
「ヤマトさん。これ、頼まれてたモノです」
と、火器を作る前に作っておいた防弾ベストを渡す。
「ほほぅ。結構良い質感じゃないか、これなら市に降ろせるぞ。いいのか?オレが専属になっちまって」
彼にあったのはシャーレを出てすぐの話だった。
あの後、何となくゴミ箱を漁っていた。
「ふんふんふん。あっ、布切れだ。こっちは鋼鉄?」
なんであるの?――入手出来るモノの違いに感動を覚えながら、ふと、あることを思い出した。
「この世界、
作業台がなければ集めた素材も今持ってる知識も無駄になる。
私は焦り始めた、その時だった。
「嬢ちゃん、なにしてんだ?」
背後から声をかけられた。彼がヤマトさんだった。
「しっかし、ゴミからこんなもの作れんのか……馬鹿にならねぇな」
「ゴミじゃないです、宝物です」
かもしれねぇ……ヤマトは再度ベストに目線を移す。
話によると彼の工場は借金を抱えてて、追い打ちをかけるように半年前左腕を欠損してしまった。今はガソリンスタンドで給油工として働いているらしい。この工場も売り払う予定だったとか。
「まぁ、どうだっていい。嬢ちゃんがモノを作ってくれれば、俺が売ってやる。売上の6割は渡すぜ」
「私は自分の趣味のつもりだったんですけど」
恥ずかしそうに頭を搔く。
さて、この世界でも手芸は出来る。自分の武器も手に入れた。
後は……。
「どこ、学校から手をつけようかな?」
「?。嬢ちゃん、今なんて?アンタ、ミレニアムとかの生徒じゃないのか?」
あっ――まずい、なんて言い訳しよう。
先生との話を思い出す。
「私。留学してきたんですけど、キヴォトスに来たばかりで」
「あぁ、だから……見慣れない制服なのか、アンタ」
そうなの?先生の趣味じゃないの?――等と思う事はあったが、とりあえず、彼を納得させよう。
「先生とはお話をさせて貰って、留学先を今保留にさせてもらってるんです」
「へぇ、大変だな」
ヤマトさんはドリンクディスペンサーからコーヒーを注ぐと手渡してきた。
「じゃあ、住むところも無さそうだな。ここに住めよ、オレは気にしねぇ」
ありがとうございます――この街はいい人しかいないのか?私は今の所幸せだった。
次の日までは……
…………
シャッターを激しく叩く音と外で騒ぐ大人の声。
「ヤマトさん。ポンポコ銀行のシラトリです」
「シラトリさん」
ヤマトはその毛並みで見えないはずの顔から血の気が引いて青ざめる。
「今月の集金はまだのはずなんですが?」
シラトリはその表情の読めない顔を一つ変えずこう続ける。
「いえ、もう。その必要ないのです」
スーツの内ポケットから1つの封筒を取り出す。
何やら、きな臭い気がする。
ヤマトは封を開けて中を確認する。
「1週間後、この工場を明け渡してもらいます」
はぁ?――封筒の中身は契約における貸金の上限突破による担保の引渡しについて書かれていた。
「ど、どう言うことだ」
「つい今朝役員会議で決定されたんですが、金利の利率が変わりまして……次の用紙です」
そこには利率が約5倍上昇したことが記載されていた。
「冗談だろ?これは違法だ」
「それが行政から認可はもう受けてましてお支払いできなければ担保を頂くだけなので」
シラトリは邪悪な笑みを浮かべている。
悪魔とは身近にいるんだな。
「取り敢えず、1週間後。またお訪ねするので」
では――銀行員は工場を去った。
「どうすんだよ……」
ヤマトは頭を抱え、残り少ない日数でどうするか考えようとしたが不安と困惑でかき混ぜられた思考では何も思い浮かばなかった。
「ヤマトさん」
私は工場の奥の方で話を聞いてた。
「嬢ちゃん、わりぃ。約束守れそうにねぇ」
今できる、精一杯の苦笑いでハニカムがその目元からは苦しみが滲み出て雫になる。
「あれ?」
ヤマトは泣いていた。
それを見て私はやはり、受けた恩には報いなければ行けないと思った。だってこの人……なにも悪いことしてないじゃないか。
私は衝動のまま彼に告げた。
「ヤマトさん、一体幾らなんですか?」
彼から通達書を渡される。
そこには普通の工場が倒産する倍の額が提示されていた。
「……この額なら、いける」
「嬢ちゃん、今なんて?」
ヤマトはネアの言葉に耳を疑い思わず聞き返してしまった。
「ヤマトさん、キヴォトスの事。どれぐらい知ってますか?」
私は試すように彼に話す。
すると、ヤマトは自慢げに……
「笑わせるな、キヴォトスはオレの庭だ。元走り屋のオレに知らない場所はないぜ」
と、さっきとは打って変わって元のハツラツとした調子で話した。
「じゃあ、頼みたい事があるんです」
私は1つの提案を彼にした。
1週間後……
ポンポコ銀行 D.U本社。
「嘘でしょ」
シラトリは絶句した。
応接室に置かれている如何にも高級と思われる1本杉で出来ている卓上に山のように積まれた札束の数。
「どうやって、これを用意したんですか?」
まさか、強盗!――シラトリの頭にはそれくらいしかこの大金を短期間で準備する手段を思いつかなかった。
「そんな、事をする弾にオレが見えますか?」
今のヤマトには狼としての野生の凄みを感じる。
「分かりました。これで返済は終わりです」
シラトリは残念感を隠し通してこの人との繋がりを断とうとしていた。
そこにヤマトは追い打ちをする。
「あぁ、シラトリさん。客として頼みたいことがあるんだが?」
ウンザリしたようにシラトリは話す。
「アナタとの契約はこの返済金をもって解消されました。これ以上の話なんて……」
話の最中にヤマトは大きめのボストンバッグを投げ渡す。
「重っ!」
中を開けて確認する。
はぁ?!――そこにはぎっしりと詰まった追加の紙幣。
「確か、金利の利率は預金も適用されるんだよなぁ」
それ、預金するから――約1000万程の額を預けた。
今のポンポコ社の金利は約20%。
大体年間200万くらいの利子が付く事になる。
「シラトリ代理!」
そばに居た秘書のような人が気絶した彼を受け止める。
「じゃあ、そういうことで」
ヤマトはそのまま本社を出て入口で端末を弄ってた私と合流した。
「ありがとうな、嬢ちゃん。なんて言えばいいか」
「ヤマトさん、お礼はいいですよ。」
私がやりたくてやったんです――あの後、ヤマトにはキヴォトス中のゴミ箱漁りをやってもらって、その材料で私が多種多様な手芸をしてそこで得たモノを色んな組織に売っていくという荒業をふたりでやった。
「約束、守って貰えますか?」
私はわざとらしく、彼に伝えた。