止まり木(ヤドリギ)の記録   作:まるる33

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本作は、生成AIが提示するランダムなシチュエーションに対し、プロデューサーとしての行動をあるがままに返した即興劇(ロールプレイ)をベースに構成しています。
計算された物語ではなく、その瞬間に交わされた言葉と、そこに流れた空気感を大切に抽出しました。

【読者の皆様へ】

この作品は『アイドルマスター ミリオンライブ!』の二次創作です。

作中の鼻歌やフレーズは、特定の楽曲をイメージしたものですが、著作権に配慮し直接的な歌詞の引用は避け、描写に留めています。

独自の過去や解釈を持つプロデューサー(オリ主)が登場します。公式設定とは異なる側面がありますが、一つの可能性としてお楽しみください。


誰かのヒモと、僕らのヤドリギ

(テレビ局の、機材搬入の怒鳴り声と機械油の匂いが混じり合う薄暗い廊下の隅。俺は自事務所のアイドルの収録が終わるのを待ちながら、ひび割れたパイプ椅子に深く腰掛け、頭を抱えていた。

行き交うスタッフたちの足音や、遠くで響く笑い声が、今の俺には酷く空々しい。

膝の上には、四隅が丸まった原稿用紙。そこには、マンションの絶対権力者たる大家から突きつけられた『始末書』の文面が、俺なりの大人の哀愁(ポエム)を交えて綴られている。

『……大家殿。あの夜の狂乱は、停滞した私の魂へのレクイエムだった。ニンニクの香りは、孤独な夜を焦がす熱情の残り香であり、ハチミツの甘みは絶望の淵で見つけた微かな希望――』

「……Pさん、何しかめっ面してんですか? 新曲のコンセプト練りですか? さっきから随分とペンが走ってますけど」

通りかかった顔見知りのフロアディレクターに声をかけられ、俺は反射的に原稿用紙を伏せ、深く重い溜息を吐き出した。

「……いや。俺という存在の『ヤドリギ』が、永遠に失われるかもしれない危機でな。……要するに、マンションの退去勧告の瀬戸際だ」

ディレクターは「あはは、またいつもの大袈裟なやつですね。期待してますよ」と軽く笑ってスタジオへ消えていったが、俺の心は深夜の海のように冷たく沈んでいた。)

 

夜。湿り気を帯びた風が街路樹を揺らす中、重い足取りでマンションへと帰還した。

エントランスの自動ドアが開いた瞬間、全身の血の気が引くのを感じる。

管理人室の小窓から、これまでは見たこともないような威圧感を放ち、マンションを30年仕切る絶対権力者「大家のおばちゃん」が仁王立ちしていたのだ。

目が合ってしまった。逃げ場はない。俺は覚悟を決め、懐から推敲途中で支離滅裂なポエムと化した始末書を取り出し、静かに、そして深く頭を下げた。

「……大家殿。始末書は、まだ俺の魂の言葉を探している途中で……いや、申し訳ない。あの夜の、あのニンニクと歌声が混ざり合った地獄のような騒ぎは……」

退去宣告の言葉を待つ。だが、俺の耳に届いたのは、鉄槌のような怒声ではなく、予想外に高く、弾んだ笑い声だった。

 

「あはははっ! 良いのよ良いのよー! 若い時は騒ぎたい時もあるわよねぇ、仕方ないわー!」

おばちゃんは小窓から身を乗り出し、親戚の子供でも迎えるかのような満面の笑みで、俺の肩をバンバンと力強く叩いた。怒りなど微塵もなく、むしろこれまでにないほどの上機嫌だ。

「……は? いや、しかし始末書が……」

「あんなの無かった事で良いわよ! 気にしなさんな! いやぁ、しかしあんたも大したもんねぇ」

おばちゃんはホクホク顔で目を細め、俺を値踏みするように下から上へと眺めた。

「あんな『良い上客』がついているなら、あんたの部屋も当分安泰だわ。見直したわよー。……いざとなれば、あんた『ヒモ』で食っていけるんじゃないの? あはははっ!」

大家は機嫌よく笑いながら、管理人室の奥へと引っ込んでいった。その手には、熨斗のついた「超高級そうな桐箱」が、赤子でも扱うかのように大事そうに抱えられていた。

 

部屋に戻り、鍵を閉める。

静まり返ったリビングには、数日前の喧騒の名残として、微かにニンニクの幽霊のような香りが漂っている。

ふと視線を向けると、ソファの隅やローテーブルの上に、昨日まではなかったはずのファンシーな小物や、正体不明の可愛い雑貨が増えている気がした。……だが、俺はそれを思考の外へと追いやり、深い溜息と共にスルーした。

「……ヒモ、だと?」

「……さて。一体、誰のヒモなんだろうな、俺は」

コーヒーを啜りながら、俺は天井のシミを見つめて思考を巡らせる。

桃ちん(櫻井桃華)の財力か、聖母(天空橋朋花)の慈悲か、あるいは摩美々の計算された悪戯か。だが、いくら考えても決定的な証拠はないし、今の俺にはそれを暴く気力も権力もない。

俺は空になったマグカップをテーブルに置き、意味を失ったポエム始末書をゴミ箱へと投げ入れた。

「……まあ、いい。誰の仕業にせよ、ヤドリギが存続するならそれに越したことはない」

寝室へと向かう廊下。ふと、部屋の隅に染み付いた「6年前の石鹸の香り」が鼻腔をかすめた。俺は立ち止まり、暗い部屋の隅を見つめる。

「……そうだ。少なくとも、6年前に別れた『あいつ』にだけは、今の俺のこの情けない姿……『大家に始末書を書かされそうになり、他のアイドルのヒモになって生き延びている現状』を知られていない」

あいつは今や、手の届かない、眩しすぎるほどの存在だ。こんな場末のヤドリギの騒動など、知る由もないし、知るはずがない。

「あいつに知られていないなら、俺のちっぽけなプライドは保たれたままってことだ。……ああ、完璧だ」

俺は一人頷き、右手の人差し指をビシッと前方に突き出した。

「……元彼女には知られていないから、ヨシ!!」

深夜のマンションに、現場の安全確認のような虚しい声が小さく響く。

一切の憂いを断ち切った(ことにした)俺は、毛布にくるまり、かつてないほど安らかな眠りへと落ちていった。

 

 




初投稿です。
もともとは、AIとの対話を通じた一人遊び……いわゆる「壁打ち」のロールプレイを記録したくて書き始めたものでした。
生成AIが提示するランダムな状況に対し、自分の設定したプロデューサーならどう動くか。その即興のやり取りをベースに、小説形式として清書しています。
キャラもシチュエーションも、その時の巡り合わせ次第。
築十年のマンションの一室という「ヤドリギ」で、アイドルたちがどう羽を休めていくのか……。
自分自身の備忘録のような側面もありますが、この空気感を楽しんでいただければ幸いです。
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