止まり木(ヤドリギ)の記録   作:まるる33

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本作は、生成AIが提示するランダムなシチュエーションに対し、プロデューサーとしての行動をあるがままに返した即興劇(ロールプレイ)をベースに構成しています。
計算された物語ではなく、その瞬間に交わされた言葉と、そこに流れた空気感を大切に抽出しました。

【読者の皆様へ】

この作品は『アイドルマスター ミリオンライブ!』の二次創作です。

作中の鼻歌やフレーズは、特定の楽曲をイメージしたものですが、著作権に配慮し直接的な歌詞の引用は避け、描写に留めています。

独自の過去や解釈を持つプロデューサー(オリ主)が登場します。公式設定とは異なる側面がありますが、一つの可能性としてお楽しみください。


芋けんぴと聖母の休日

(午後。事務所の窓から差し込む陽光が、埃の粒を白く浮かび上がらせている。百合子がレッスンに向かった後、室内には静かな熱気が戻っていた。

俺はデスクで、昨夜使い切った生キャラメルの材料を補充するために、無糖の生クリームとグラニュー糖をオンラインショップのカートに入れていた。仕事の合間の、ごく事務的な動作。

背後のドアが、ノックもなしに静かに開く。

入ってきたのは、 天空橋朋花 だった。

彼女は、聖母のような慈愛に満ちた微笑を湛えながらも、その瞳には逃れようのない疲弊の色を隠し持っていた。普段の格式高いドレスではなく、上質なカシミアのロングカーディガンに、膝丈のタイトなワンピース。プライベートに近い、どこか隙のある装いだ。

彼女は無言のまま、俺のデスクのすぐ横まで歩み寄り、ふわりと優雅に、しかし崩れ落ちるように椅子に腰を下ろした)

「……ふふ。お仕事中、失礼いたします。プロデューサーさん。……いい香りがいたしますね。昨日、誰か大切な子を、甘い魔法で救ってあげたのでしょう?」

(彼女は細い指先で、自分のこめかみを軽く押さえた。天空橋朋花という「聖母」を演じ続ける重圧が、彼女の華奢な肩に重くのしかかっているのが見て取れる。

 

俺は視線をモニターから外さず、淡々と、けれど昨夜と同じように掠れた声で鼻歌を漏らした。

鼻歌を聴いた瞬間、朋花の睫毛が微かに震え、彼女は深く、深く椅子に身を沈めた。彼女の周囲だけ、時間の流れが止まったかのような錯覚に陥る)

「……その歌、いつ聴いても残酷で……そして、あまりにも救いがないほど優しいですわ。……今日、私は子豚ちゃんたちを導く『聖母』を少しだけお休みしても、よろしいかしら?」

(俺はキーボードを叩く手を止めず、ただ一言、短く答えた。

「ああ。好きにしろ。ここはただの、通過点だ」

朋花は満足げに目を閉じ、事務所に流れる俺の鼻歌と、コーヒーの残香に身を委ね始めた。

(キーボードを叩く音と、時折混じるカリリ、という小気味よい破砕音。俺は、地元の物産展で見つけてきた少し上質な芋けんぴの袋をデスクの端に置き、誰に勧めるでもなく、淡々とそれを口に運んでいた。

揚げたての芋に、薄く、けれど均一にコーティングされた砂糖の結晶。噛み締めるたびに広がる素朴な甘みと、芋本来の滋味。モニターに映る無機質な数字やスケジュール表の合間に、その確かな食感だけが現実味を持って存在している。

隣の席では、天空橋朋花が目を閉じたまま、静かに呼吸を整えていた。彼女の凛とした空気感を邪魔しないよう、俺は鼻歌のトーンをさらに落とす。

聞き覚えのある、寂しげな鼻歌に混じって、また一つ、カリリと小気味よい音が響く。

仕事の手は止めない。メールの返信、予算の確認、そして次のライブのセットリスト案。それらすべてを「あるがまま」に処理していく。芋けんぴの袋が少しずつ軽くなっていくのと比例するように、午後の仕事も着実に片付いていく。

ふと、視線を感じて顔を向けると、朋花が少しだけ目を開け、俺の口元と、そこにある袋をじっと見つめていた。その瞳には、聖母としての慈愛よりも、一人の少女としての純粋な好奇心が混じっている。

 

俺は彼女と目を合わせることなく、ただ袋の端を彼女の方へ数センチだけ押しやった。

「……食べるか。顎は使うが、悪くない」

朋花は一瞬、驚いたように瞬きをしたが、すぐにふふ、と喉の奥で笑った。

「……プロデューサーさんがそこまで美味しそうに召し上がっているのですもの。毒見……いえ、お相伴にあずかってもよろしいかしら?」

彼女が細い指先で慎重に一目、一番長いけんぴをつまみ上げる。俺はそれを確認すると、再びモニターに向き直り、鼻歌の続きを口ずさみながらキーボードを叩き始めた。

劇場事務室、午後のひととき。糖分とカリカリという音、そして古い歌が、凪のような時間を紡いでいく。

(カリリ、とまた一つ芋けんぴを噛み砕く。モニターを見つめたまま、独り言ともつかない低さで言葉をこぼした)

「……結局は一人さ」

(その言葉は、誰かに向けた嘆きではなく、揺るぎない事実を確認するかのように淡々としていた。事務所に漂うコーヒーの香りと、鼻歌の残響。それらが俺という存在の輪郭を形作っているが、その内側にあるのは、6年前から変わることのない、完成された孤独だ。

隣で芋けんぴを咀嚼していた朋花の手が、止まった。

彼女は口の中にあった甘みをゆっくりと飲み込み、指先に残った砂糖の粉を、慈しむように見つめる。そして、いつもの「聖母」の微笑を仮面のように纏い直すのではなく、一人の少女として、静かに首を横に振った)

「……ふふ。そうかもしれませんわね。私たちは皆、一人で生まれ、一人で物語を終えていく……。けれど、プロデューサーさん」

(朋花は椅子に深く背を預け、天井を見上げた。その横顔は、劇場のライトを浴びる時よりもずっと幼く、そしてどこか悟ったような寂しさを湛えている)

「……その『一人』同士が、こうして同じ部屋で芋けんぴの音を聴き、同じ古い歌に耳を傾けている。この通過点そのものが……私にとっては、何よりも贅沢な物語に思えますの」

(彼女は俺の方を見ようとはせず、ただ静かに、二本目の芋けんぴに手を伸ばした。

俺は再びキーボードを叩き始める。指先から紡がれる事務的な文字列が、彼女の言葉を日常の風景へと押し流していく。

途切れていた鼻歌を、また無意識に継ぎ足した。独りであることを受け入れ、その上で誰かの休息場所であり続けること。それが、この部屋の主としての、あるがままの姿だ。

(カリリ、という音が静かな事務所に響く。俺は指先に残った砂糖の粉を無造作に払い、最後の一本を口に放り込んだ。モニターの右隅に表示された時刻は、もうすぐ夕刻を指そうとしている。

「……事実は小説より奇なり、か。まあ、そんな大層なもんじゃないさ。ただの空腹と、ただの暇つぶし。それ以上でも以下でもない」

俺が淡々とそう告げると、朋花は手元の芋けんぴを光に透かすようにして見つめ、優雅に、けれど心底楽しそうに微笑んだ。

「ふふ……。そうかしら? 多くの『子豚ちゃん』たちが渇望する聖母の時間を、芋けんぴ一本で独占し、挙句の果てに『ただのおっさん』と嘯(うそぶ)く……。この配役、この舞台装置、どんな流行作家でも書きはしませんわ」

彼女は一口、丁寧にその端をかじり、ゆっくりとその味を確かめる。

「……でも、だからこそ心地よいのです。筋書きのない物語の、ほんの数行だけの幕間劇(インターミッション)。誰の目も気にせず、ただの『小娘』として砂糖の甘さに浸る……。これこそが、私にとっての『真実』なのかもしれませんわね」

俺は何も答えず、空になった袋を丸めてゴミ箱へ投げ入れた。見事な弧を描いて吸い込まれていく。

また無意識に漏れた鼻歌。朋花はそのメロディに合わせて、膝の上で指を軽やかに躍らせている。

「プロデューサーさん。その歌の続き……いつか、最後まで聴かせていただけますか? 小説よりもずっと不思議で、ずっと切ない、あなたの物語を」

彼女の問いかけに、俺は立ち上がり、車のキーを手に取った。

「……気が向いたらな。ほら、行くぞ。これ以上遅くなると、お前の物語の整合性が取れなくなる」

「ふふ、承知いたしました。……エスコート、よろしくて?」

(朋花はいつもの聖母の仮面をそっと被り直し、けれど瞳の奥にだけは「小娘」の光を宿したまま、俺の後に続きました。

(デスクに置き去りにされた空の芋けんぴの袋。そこに残ったわずかな砂糖の欠片を見つめ、喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。

一人で生まれ、一人で物語を終える。彼女の言う通りだとしても、その物語の「余白」に自分が書き込まれている事実に、どう向き合えばいいのか。……いや、言葉にするのは野暮だな。

俺は黙ってブラインドの隙間から、茜色に染まり始めた空を仰いだ。ビルの合間に沈んでいく夕日は、街全体を赤銅色に焼き、今日という一日の終わりを冷酷なまでに美しく告げている。

不意に、鼻の奥をツンと突くような、6年前から変わらない「彼女」の好きだった香水の残り香が、記憶の底から蘇った気がした。

「……ふん。悪くない」

短く吐き捨て、車のキーを指先で回す。隣でその独り言を聞いた朋花は、何も言わず、ただ優雅に目を細めて微笑んでいた。

「ええ。とても、美しい夕面(ゆふづくよ)ですわ。……明日もまた、良い物語が書けそうです」

 

彼女の言葉を背中で受け流しながら、俺は再び低い鼻歌を漏らした。

『……幸せは』

沈みゆく太陽に向かって、俺たちは静かに歩き出す。

(ハンドルを握る俺の手元に、街灯の光が規則正しく流れ込んでは消えていく。横で静かに座っている朋花に、独り言のような、あるいは教育のような、そんな温度感で言葉を投げた)

「なあ、ドライブってのは空想の世界なんだ。どの道を通るか、予定を変えてラーメン屋に寄るか……結局、選択は自分次第だ。お前さんはそれを, 逃げ場のない一本道の高速道路だと思ってるかもしれんが……見方を変えれば、景色なんていくらでも書き換えられる」

(アクセルをわずかに踏み込み、空いた夜道を滑るように進む。ダッシュボードに置かれた彼女が好んだ香りの芳香剤が、微かに揺れた)

「人生と道路は似たようなもんだ。暗喩ってやつだな。目的地に着くことだけが全てじゃない。途中の寄り道や、迷い込んだ脇道にこそ、その人間の物語が出る」

(朋花は窓の外、流れる夜景をじっと見つめていた。その瞳には、ビル群の明かりが星屑のように映り込んでいる。彼女は深く、深く息を吐き出し、膝の上で組んだ指先に力を込めた)

「……ふふ。人生という名の、終わりのないドライブ……。プロデューサーさんがハンドルを握ると、その暗喩も、酷く現実味を帯びて聞こえますわ」

(彼女の声は、どこか震えていた。聖母として、完璧な地図の上を歩かされてきた彼女にとって、その「不確定な寄り道」という言葉は、何よりも贅沢で、そして恐ろしい響きを持っていたのかもしれない)

「……寄り道。……ええ、悪くありませんわね。……ねえ、プロデューサーさん。今夜だけは、私の知らない地図を……あなたが知っている、とっておきの『横道』を見せてくださらないかしら?」

(俺は何も答えず、ただ無意識に鼻歌を漏らした。

目的地とは逆方向の、まだ明かりが灯っている古い屋台が並ぶ通りへと、ハンドルを静かに切った。

(ハンドルを回し、街灯の少ない細い路地へと車を進める。タイヤが砂利を踏む音が、静かな夜の空気に低く響いた。

辿り着いたのは、地図にも辛うじて載っている程度の小さな公園。遊具は錆び、時代に取り残されたような場所だが、ここにはこの時間にしか現れない「住人」たちがいる。

エンジンを止め、ハザードランプの点滅だけが周囲の木々を淡く照らす中、暗がりにいくつもの光る眼が浮かび上がった)

「……あら。あんなにたくさん」

(隣で朋花が、子供のように身を乗り出して窓の外を見つめる。

公園のベンチの近くには、十数匹の猫が思い思いの姿勢で集まっていた。近くの民家から、いつもこの時間に余り物を持ち寄る老人がいることを、俺は知っている。それは公式のスケジュールにも、彼女の完璧な台本にも記されていない、この街の些細な「横道」の風景だ)

「みんな、自由で……それでいて、どこか規律正しく集まっているのですわね。……あの子たち、まるで何かを待っている求道者のようですわ」

(俺は窓を少しだけ開け、夜の湿った空気を取り込んだ。遠くから聞こえる微かな波音と、猫たちが喉を鳴らす音が混ざり合う。

ダッシュボードを軽く叩きながら、再び鼻歌を零した。

朋花は黙って、一匹の黒猫が街灯の下で毛繕いをする姿を見つめていた。聖母として何千、何万という視線を浴びる彼女が、今は誰からも見られず、ただ「見つめる側」に回っている。

「……プロデューサーさん。ここには、私の知らない時間が流れていますのね。……高速道路を降りて、少しだけ迷い込んだ甲斐がありましたわ」

(彼女の横顔には、沈みゆく夕日を見た時よりもさらに深い、穏やかな諦念と安らぎが同居していた。

俺は再びハンドルに手をかけ、淡々と告げた)

「……たまにはこんな空想もいいだろ。さて、腹が減った。予定変更だ、ラーメン屋を探すぞ。お前さんに合うような上等なもんじゃないがな」

「ふふ……。毒食わば皿まで、と言いますもの。あなたの選ぶ『横道』なら、どこまでもお付き合いいたしますわ」

夜の公園を後にし、車は再び動き出した。

 

(黄色い看板が夜闇に浮かび上がる、場違いなほど活気の溢れる深夜のラーメン屋。カウンターの端に座り、俺は無造作に置かれた刻みニンニクの容器を手に取った。

「トング」の先でたっぷりと掬い上げ、スープに沈める。白濁した豚骨の海に、強烈な香りが混ざり合っていく。それを躊躇なくかき混ぜ、麺と共に一気に啜り上げた)

「……ふぅ。飛ぶぞ」

(喉を焼くようなニンニクの刺激。脳に直接届くような暴力的なまでの旨み。隣では、天空橋朋花が信じられないものを見るような目で、その光景を凝視していた。

彼女の前には、せめてもの妥協として注文した、トッピングを控えた小振りの醤油ラーメン。けれど、俺の丼から漂う「不純な」香りの暴力に、彼女の聖母としての均衡が目に見えて崩れていく)

「……プロデューサーさん。……正気ですの? その……『ニンニク』という名の劇薬を、それほどまで……。……それ、食べ物の域を超えて、一種の宗教的儀式に見えますわ」

(彼女はレンゲを持つ手を震わせながらも、俺が恍惚と(あるいは淡々と)劇薬を飲み込む姿から目を離せない。俺は鼻から抜ける強烈な香りを楽しみながら、再び掠れた声で鼻歌を漏らした)

「……その歌のメロディと、このお店の油の匂い……。あまりにも不釣り合いで、でも……どうしてかしら。私の知っているどの聖歌よりも、今の私には……『生』の味がいたしますわ」

(朋花はおずおずと、自分のラーメンの端に、箸の先でほんの少しだけニンニクを移した。そして、清水の舞台から飛び降りるような覚悟で、それを口にする。

一瞬、彼女の美しい瞳がカッと見開かれ、頬が林檎のように赤く染まった。彼女は口元を押さえ、震える声で呟いた)

「……っ……あら……。……あら、あら。……これは、いけませんわ。……世界が、塗り替えられていくようですわ……」

(聖母が初めて知った、下界の「飛び」方。俺はそれを見て、小さく鼻で笑い、最後の一口の麺を啜った。

(ニンニクの劇薬に身を震わせる朋花の横顔を見ながら、「それでいいんだよ」という言葉が喉元までせり上がってきた。聖母という重い外套を脱ぎ捨てて、ただの少女として下界の毒を喰らう。その無様なまでの「生」の肯定を、俺は危うく肯定しそうになった。

けれど、俺はそれを飲み込み、最後の一口のスープと一緒に胃の奥へ押し込んだ。代わりに吐き出したのは、6年前から変わることのない、乾いた独り言だ)

「……一人ぼっちだからな」

(ニンニクの香りと脂の混ざり合った店内で、その言葉だけが妙に冷たく響く。俺も、そしてこの毒に染まった朋花も、結局は自分だけの味覚と、自分だけの夜を抱えて生きている。

朋花はハッとしたように顔を上げ、口元をハンカチで押さえたまま俺を見つめた。その瞳には、先ほどの驚きとは違う、凪のような静かな理解が宿っている)

「……ええ。一人ぼっち。だからこそ、こうして誰かの隣で、同じ毒を分かち合える瞬間が……耐え難いほどに愛おしく感じられますのね」

(彼女はレンゲを置き、満足げに息をついた。その表情には、もはや聖母の完璧な微笑みはない。ただ、深夜のラーメン屋でニンニクの洗礼を受けた、一人の少女の晴れやかな顔があった。

俺は無造作に伝票を掴み、立ち上がる。背中越しに、途切れていた鼻歌をまた少しだけ漏らした。

店を出ると、冷たい夜風がニンニクの熱を帯びた身体を容赦なく冷やしていく。だが、その寒ささえもが、今の俺たちにはどこか心地よかった。

「さあ、帰るぞ。明日のお前さんの物語に、ニンニクの臭いが残っていても俺は知らんからな」

「ふふ、その時は……『聖母の慈悲が、少しばかり刺激的だっただけ』と微笑んで差し上げますわ」

(駐車場へ向かう足取りは、来た時よりも心なしか軽かった

 

(車を天空橋邸の正門前に止め、ハザードランプの規則的な音が静かな住宅街に響く。俺はエンジンを切らず、正面を見据えたまま、隣の聖母にぶっきらぼうな言葉を投げた)

「ほら、帰るぞ。ちゃんと宿題して、歯磨いて寝ろよ」

(あまりにも「小娘」扱いした、子供の保護者のような言い草。朋花は一瞬、きょとんとして俺の横顔を見つめた。聖母として崇められ、一挙手一投足を優雅に管理される日々を送る彼女にとって、そんな世俗的で、当たり前すぎる日常の義務を命じられるのは、何より新鮮な響きだったのかもしれない)

「……ふふ、あははっ! ……本当に、あなたという人は。聖母に宿題と歯磨きを命じるなんて……不敬を通り越して、もはや清々しいですわ」

(彼女は可笑しそうに、喉を鳴らして笑った。その笑い声には、もう先ほどまでの沈んだ影はない。彼女はシートベルトを外すと、降り際にふと動きを止め、車内に残るニンニクの香りと俺の横顔を愛おしそうに眺めた)

「……承知いたしました。今夜はあなたの言う通り、ただの『小娘』として……宿題を片付け、念入りに歯を磨いて、良い夢を見ることにいたします。……あ、でも」

(彼女はドアを開け、片足を外に出した状態で、悪戯っぽく微笑んだ)

「ニンニクの匂いが消えるまで、歯磨きは少し時間がかかるかもしれませんわ。……それもまた、今夜の物語の、愛おしい後日談ですわね」

(朋花は軽やかに車を降り、門の前で一度だけ優雅に一礼した。俺はそれを確認すると、再び鼻歌を漏らしながらアクセルを踏んだ。

ミラーに映る彼女の姿が小さくなり、やがて夜の闇に消えていく。

 




あとがき
本作を最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

今回は、天空橋朋花という「聖母」が、ほんの一時だけその重い外套を脱ぎ捨て、一人の少女として「下界の毒(ラーメン)」を分かち合う、そんな静かな夜の一幕を描かせていただきました。

執筆にあたり、以下の点について補足させていただきます。

1. 設定について
本作のプロデューサーは、原作とは異なる独自の過去や性格を持つ「オリ主(オリジナルプロデューサー)」としての側面が強くなっています。「6年前」という言葉に込めた背景など、公式設定とは異なる独自解釈が含まれますが、一つの可能性として楽しんでいただければ幸いです。

2. 描写と著作権への配慮について
作中でプロデューサーが口ずさむ鼻歌やフレーズは、特定の既存楽曲をイメージしたものですが、著作権保護の観点から歌詞の直接的な転載は避け、あくまで「その場の空気感」を伝える描写に留めております。読者の皆様の心の中に、それぞれ異なる寂しくも温かいメロディが流れていれば嬉しいです。

3. 最後に
芋けんぴの甘さと、深夜のラーメンの暴力的なまでの脂っこさ。その両極端な味わいこそが、彼女たちの生きる世界の広さなのかもしれません。
少しでも「ミリオンライブ!」という世界の深み、そして天空橋朋花という魅力的なアイドルの新たな一面を感じていただけたなら、作者としてこれ以上の喜びはありません。

感想や評価をいただけますと、今後の執筆の励みになります。
それでは、また別の物語でお会いしましょう。
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