原作でも謎に包まれたアイヌ呪術連からの転入生(転生者)   作:板前さん

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第9話

都立呪術高専の中庭に降り立った神遺カムイを待っていたのは、三人の一年生だった。

 

「紹介するよ! 北海道から来た超・特別転入生、神遺カムイ君だ!」

 

五条の軽い紹介とは裏腹に、カムイが踏み出した一歩ごとに、足元の芝生が黒ずみ、薄氷が張る。白濁した髪、そして熱を失った黄金の右目。

 

「……神遺カムイ。よろしく」

 

「おいおい、なんだよその威圧感。……伏黒、こいつマジで生徒か?」

「ああ……。呪力量だけなら五条先生に迫る異質さだ…」

 

伏黒恵は、カムイの右腕が微かに、しかし激しく震えているのを見逃さなかった。

 

「みんな、彼の術式には驚くよ。神遺家秘伝、『神霊契約(しんれいけいやく)』。……カムイ君、挨拶代わりに彼らに見せてあげなよ」

 

カムイは無言で術式を解放した。

 

「……来い、レタㇻ」

 

カムイの影が爆発的に広がり、そこから銀白の毛並みを持つ巨大な狼が這い出した。その動きに淀みはなく、10歳から積み上げてきた長年の修行を感じさせる練度だ。

 

「えっ、影から狼!? 」

驚く虎杖たちに、カムイは淡々と説明する。

 

「……俺の術式は、北の神霊(呪霊)と契約し、その権能を行使するものだ。影の狼『レタㇻ』は速度。右腕の羆『キムン』は破壊。右目の鷲『カパッチリ』は看破……。この三柱に関しては、修行で完全に御してある」

 

カムイが指を鳴らすと、レタㇻは影に戻り、右腕には羆の剛力が、右目には鷲の視覚が宿る。その一連の動作は熟練の術師そのものだった。だが――。

 

「(……カムイ、くるわよ。あの大物の呪力が、また膨れ上がったわ……!)」

カパッチリの警告と共に、カムイの顔から血の気が引く。

 

「……っ。そして、魂に宿る四柱目、大蛸の『アッコロ』。こいつが……あらゆる呪力を吸収・中和する」

 

瞬間、中庭に暴力的なまでの冷気が吹き荒れた。カムイの右目から一筋の血が伝う。

「三柱までは完璧だった。だが、最近契約したアッコロの……文字通り桁外れの呪力が、これまでの精密な同期を内側から食い破っている。今の俺は、出力の合わない巨大エンジンを強引に接続しているような状態だ」

 

「一人で四つのエンジンを回してるってことか……。凄まじいな、おい」

伏黒が息を呑む。完成されていたはずの「三柱の王」が、四柱目という巨大すぎる歯車を得たことで「不完全な怪物」へと変貌している。その危ういバランスを、

 

虎杖悠仁だけが「大変そうだな、お前」と真っ直ぐな瞳で受け止めた。

 

その夜、虎杖特製のちゃんこ鍋を囲む「歓迎会」が開かれた。

 

「ほらカムイ、食えよ! 旨いもん食えば元気出る、これ基本!」

「……。ああ、いただく」

 

賑やかな食卓。釘崎が虎杖と肉の奪い合いをし、伏黒が溜息をつく。カムイはアッコロの冷気が僅かに和らぐのを感じながら、転生前の知識にある「この先の地獄」を思い、誓いを新たにする。

 

しかし、翌朝。その平穏は補助監督・伊地知の報告によって破られる。

 

「神遺カムイさん。急遽、あなたには奥多摩の廃村調査へ向かっていただきます。上層部からの『特命』です」

 

(五条悟を遠ざけ、俺を引き離したか。……原作通りの、虎杖死亡の舞台整えだ)

 

「……いいですよ。行きましょう。……ただし、速攻で終わらせる」

 

奥多摩の掃討任務を「制御不能な暴力的な速度」で完遂したカムイは、全身の血管が焼き切れるような激痛に耐えながら、血に濡れた手で伊地知の車のドアを開けた。アッコロの力が同期を乱し、彼の左半身はすでに感覚を失いかけている。

 

「……少年院だ。急いでください。……」

 

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