ブラッドボーン主人公憑依転生→本編クリア→フリーレン世界転移   作:啓蒙61

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3.狩人と旅の終点/ソリテールと旅の始点

 

 どうやら、ここはヤーナム外の世界ではない。

 

 あの後、俺は獣道を丸一日歩きつづけ、小さな集落にたどりついた。

 そこで現在地点がどこであるのかを把握した。

 大陸の北方に広がる北部高原。その南西に広がるピーア地方だという。

 

 どこだここ? 

 

 俺は村人に「ヤーナムという町は知っているのか?」と訪ねてまわった。

 しかし誰もが首を横に振り、狩人衣装の俺に不審な目を向ける者もいれば、一部の子供は「かっこいい魔法戦士様だ!」と言う者もいた。

 魔法戦士とはなんなんだ。

 

 そして俺は村の村長から近くに大きな街があると聞いた。

 とりあえず、そこへ向かい、この世界の情報を集めることにする。

 

 その大きな街とは、ノルム商会領という街である。

 半日ほど徒歩で歩けば、ノルム商会領に到着した。

 俺はそこで情報を集め、世界情勢を知った。

 

 この世界には、人間以外にも、魔物がいる。

 そして魔族という存在がいる。

 今から70年ほど前まで、魔族と人間の間で大きな戦争があったという。

 ところが、魔族を統率する魔王という存在が倒され、人類側の勝利に終わった。

 その魔王を倒したのが、勇者ヒンメル一行であった。

 

 ちなみに、その勇者ヒンメルはというと、22年前に死亡している。

 彼の葬式に出席した者の中には、勇者一行の魔法使いフリーレン、僧侶ハイター、戦士アイゼンの姿があったという。

 

 ────間違いない、違和感の正体はこれだ!

 

 俺は、彼らの名前に見覚えがある。

 

 疑惑が確信へと変わった瞬間だった。

 この世界はヤーナムの外ではない。

 俺は現代日本からブラッドボーンの主人公へ憑依転生した。

 そして同じように、憑依転生した肉体のまま、また違う作品世界に転移してしまったのだ。

 

「……どんな感じの作品だった?」

 

 ヤーナムの世界で擦り切れた、わずかに残された過去の記憶。その断片をひとつずつ思い返していく。

 だがしばらくすると、体に不調が現れるので、断念せざるを得なかった。

 

 

 ★

 

 

 この世界では、大陸の北側であるほど、強力な魔物や魔族が出没するらしい。

 さらに過酷な環境であるわけだから、生活が不便だし、そういった条件もあって治安が悪い。

 

「とりあえず、南へ下ろう」

 

 大陸で最も安全とされるのが、大陸の中央に位置する、中欧諸国である。

 とくに中欧諸国の聖都シュトラールの近郊は、めったに魔物が出没しないとされている。

 

 俺はもう狩人ではない。

 戦いを望んでいるわけではない。

 普通の人間として、安全な暮らしが送りたい。

 

 だから当面の目標としては、危険地域である北部から南に下り、中欧諸国へ向かう。

 そして聖都でつつましやかに暮らそうと思う。

 

 死とはいともたやすく訪れる。

 自分より格下の相手でも油断と慢心で命を落としたことなど、きりがない。

 犬一匹に殺されたり、うっかり落下死したこともあれば、発狂死したり、毒沼の中で力尽きたこともある。

 

 この世界はヤーナムの街とは違う。

 一度死ねば、終わり。それが恐ろしい。

 

 図書館で情報をひととおり集めたあと、俺は旅の支度をすることにする。

 まずは、金銭だ。

 

<真っ赤なブローチ>

<金のペンダント>

<連盟の杖>

 

 だいたいこれらのものは、今後の生活で必要ではなさそうだし、売りさばいておくことにする。

 

 そんなにたくさんの物品はどこに持っていたのかだって?

 

 それは俺にも分からない。

 ただ、ヤーナムにいた頃からそうだったが、手に入れた装備やアイテムは、謎の空間に収納される。

 そして使用したいときに念じれば、いつでも取り出すことができるのだ。

 

 そうして、それら金品を携え、ノルム商会に向かい、かなりの額の路銀に換金することができた。

 ひととおり旅支度を整えたあと俺は、すぐに南を下った。

 

 旅路は思ったよりも順調だった。

 北部高原は、寒さが厳しく、土地の貧しいところが多い。

 しかしある程度道のりは決まっており、村や街を経由していけば、迷うことなく単独で南へ下れる。

 

 もちろん、危険はある。

 道中、魔物に襲われることが数回あった。

 魔物の群れに囲まれながら、その中で戦闘しなければならないこともある。

 

 この世界では、基本的に敵と戦うリターンはほとんどない。

 魔物を倒しても、輸血液や水銀弾等の消費アイテムをドロップしない。

 さらには血の遺志も得ることはできない。

 もちろん、報酬目的で魔物を退治する場合は別だ。

 

 しかし一番の問題は、あまりのリスクの高さ。

 ここは何度死んでも復活できるヤーナムと違うので、血の遺志をロストするどころか、一度でも死ねば終わりなのだ。

 さらにはこの世界には『灯り』がないわけで、輸血液や水銀弾を、狩人の夢の倉庫から補充できない。

 

 カレル文字<拝領+5>、<姿なきオドン+5>で、輸血液と水銀弾はそれぞれ25個保持していた。

 

 だが現在は……。

 輸血液は23個。

 水銀弾は17発。

 

 ソリテールの戦いでいくつか消費してしまった。

 あれほどの相手を初見かつ、数発の被弾のみで勝利できたのは奇跡的だと言ってもいい。

 

 輸血液を切らせば、回復する手段を失う。

 水銀弾を使い切れば、銃撃もできず、秘儀の行使も不可能になる。

 もし物資を切らした状態で、あのような強敵と殺し合えば、俺は死ぬだろう。

 

 だから、いついかなる時も油断ならないのだ。

 

 時に一人で荒れ果てた道を歩き、魔物に警戒するために、気を張り続け日があった。

 だから、その日の夜は、ひどく疲れていた。

 

 ヤーナムにいた頃のように『灯り』の前に座り込んで、あの優しい紫の光に癒されれば、少しは安らぐだろうか。

 そう思っても、ここはヤーナムではない。

 安全地帯である『灯り』は存在しない。

 

 ふと、空を見上げると、そこには満月に照らされた星空があった。

 それはヤーナムの狂気に満ちた、赤い月の夜空とは違う。

 どこまで澄んでいて、美しい。

 

 ここはヤーナムとは別世界だ。あの夜空がそれを証明している。

 きっとこの世界では、この星空が『灯り』の代わりに、やすらぎを与えてくれる。

 

 そうして1年もの時間を費やして、北部高原を抜け出して、魔法都市オイサーストまでたどりついた。

 それからまた1年費やして、俺はようやく中央諸国へ踏み入れた。

 この世界に転移してから、2年の歳月が過ぎる頃だった。

 

 

 ★

 

 

 中央諸国。聖都シュトラール近郊。

 

<遠眼鏡>を覗き込みながら、俺は満足げにうなずいていた。

 拡大されたレンズから映された光景には、巨大な都市があった。

 あそこが聖都シュトラールだ。

 徒歩で半日もかからないだろう。

 

 目的地を高台から視認した俺は、はやる足で聖都へ続く道を歩く。

 その日の気分は過去最高潮だった。

 しかし上を見上げれば、雲行きは怪しくなる。

 この地域一帯が嵐に襲われるらしい。

 この日の天気は、過去最低だった。

 

 どこかで嵐をやりすごそうか、と考えた。

 その時、一軒家を発見する。

 

 俺は、家の玄関でノックした。

 

「すまない、誰かいるか?」 

 

 玄関のドアが開いた。

 そこから年老いたメガネをかけた老人が現れた。

 

 ……この世界に来て、何度目だろうか。

 初めて会ったはずなのに、この老人に見覚えがある。

 

「一晩泊めてくれないか。路銀をいくらか渡す」

 

 俺は老人にそう言い放った。

 すると老人は人好きのしそうな笑みを浮かべた。

 

「構いませんよ。質素な食事しか振るまえるものはありませんがね」

 

「あんたの名前は?」

 

「ハイターといいます。ただの、しがいない司祭ですよ」

 

 

 

 

「なるほど、あなたは中央諸国を目指して、はるばる北部高原の方から……」

 

「いや、ただ南側の領土は北より安全だと聞いたから、移住しようと思ったんだ」

 

「そうですか、色々あったのでしょう。今日はゆっくりとお休みください」

 

 俺はすぐにハイターに迎え入れられ、屋敷の中に上がる。

 それから彼に案内されるがままに、リビングに中央にある四角形のテーブルに座った。

 俺は、慎重に言葉を発する。

 

「あんたは……かの有名な勇者ヒンメル一行の僧侶だったと聞く」

 

「はい、もうずいぶん昔の話ですがね。今では、しがない司教ですよ」

 

 どうやらこの老人は、本当にあの勇者一行の僧侶だったらしい。

 たしかにこの老人には見覚えがある。つまりそれは、この世界において重要人物であるという、証明だ。

 

「あんたに聞きたいことがある」

 

「どうぞ」

 

「よく、俺のような身寄りもない男を家に上げたな。野盗か人間に扮した魔族だと疑わなかったのか?」

 

 ハイターは、俺に対して、警戒心を抱いていないらしい。

 客観的に見れば、漆黒の狩人衣装に身を包んでいる俺は、どう見ても不審者だ。

 

「確かに、あなたはどこからどうみても怪しい」

 

「……そう思ったのなら、なおさらだ」

 

「だけど、あなたは決して悪人ではない」

 

「なぜわかる?」

 

 ハイターは優しげな表情を作った。

 

「悪人は、あなたのような瞳をしていない。あなたのそれは、まるで何かひどいことがあって心が病んでしまった人間がするような目です」

 

「……」

 

「私は神を信仰しています。なので神の教えに従い、迷えるものの手助けをしたいのです」

 

「神を信仰しているやつなんて、俺は信用しない」

 

 ヤーナムで出会う聖職者は獣となった者か、狂気に落ちた者か、悪に身をやつした者しかいない。

 歪んだものさしで、ついこの老人を疑ってしまう。

 何かを企んでいるのでないか、と。

 

「ええ、これは綺麗ごとですね。ただ、あえて言うなら……」

 

 ハイターは屈託のない笑みでこう答えた。

 

「────勇者ヒンメルならそうした、と」

 

 なぜだろう。

 初めて聞いたはずなのに、すごく聞き馴染みのあるフレーズだ。

 そしてその一言が、この世のどんなことよりも、説得力があるように思える。

 

「すまない……俺は、あんたを疑っていた。あんたは信じられないほど良いやつだ」

 

「はい、気にしてませんよ」

 

 この男は、まぎれもない善人なのだろう。

 俺は、ハイターを疑ってしまったことを悔いた。

 

 しばらく自己嫌悪に襲われていると、別室からトコトコと小さな人影が現れる。

 紫髪の幼い少女だ。

 ハイターは、その少女を紹介する。

 

「この子はフェルンと言います。私は父親代わりとして、この子を育てています」

 

 ハイターは「彼女は今年でちょうど8つです」と付け加える。

 フェルンは、きょとんとした顔でこうたずねてくる。

 

「はじめまして、フェルンです。あなたのおなまえは?」

 

 椅子から立ち上がった俺は、かがんで、フェルンと目を合わせた。

 ハイター以上に、この子に対して既視感を感じる。

 この子も、この世界では重要人物だということか。

 

「……狩人。俺は狩人だ。好きに呼べばいいさ」

 

「狩人様……」

 

俺の本当の名前は……■■■■■■。だめだ。どうしても思い出せない。

 

「変な響きだろう? もっとマシな名前を名乗りたいが、特に思いつかなくてな」

 

 フェルンは、首を横に振った。

 

「いいえ、素敵な名前だと思います。ちょっぴりヘンな感じですけど」

 

「やっぱり変か……」

 

 まぁ、素敵といってくれたし、気にすることないさ。

 

 それから、俺はハイターとフェルンと共に、夕食を取った。

 献立は、味付けのされていない、少し硬い焼きパンと、薄味のクリームシチューだった。

 

 誰かと食卓を囲むのは、いつ以来だろう。

 夕食は、あまり良い味ではなかった。だが一人で食べる飯より美味いと思った。

 

 

 ★

 

 

 日の出前。

 朝早くに起床した俺は、さっさと支度を終えて、玄関口へ向かう。

 その際、少し多めに路銀をテーブルへ置いておく。

 もう十分だ。俺のような得体のしれない奴を一晩とめてくれるどころか、温かい夕食を提供してくれたのだ。

 だから、これはささやかな感謝の気持ちだった。

 

「待ちなさい」

 

 玄関口を出たところで、背後から声がかかる。

 ハイターだった。

 もう少し早くに出るべきだったな。そうすれば、気づかれることはなかったのに。

 

「止めるな。俺はあんたたちと関わるつもりはない。もう顔を合わせることもないだろう。放っておけ」

 

「あなたは、行く場所がないとおっしゃいましたよね?」

 

「ああ」

 

「もしよければ、ここで当分の間、滞在しませんか?」

 

「……正気か?」

 

 ハイターは至って真面目な表情で答えた。

 

「あなたは、相当な手練れだ。並の魔物や魔族では相手にならない」

 

「どうしてわかる?」

 

「まず平時であるにも関わらず、体の動きに何一つ無駄がない。あなたからは戦士としてのオーラは感じません。しかしそれは、あなたが戦士ではなく獲物を狩る『狩人』だからだ」

 

「ご明察だ」

 

 年老いたとはいえ、歴戦の僧侶である。力量を見抜く目は優れているのだろう。

 

「だからええ……つまるところ、あなたを護衛として雇い入れたい」

 

「理由を聞いても?」

 

「私は年老いている。かつてのような戦える力もない。もし強力な魔物や魔族が襲ってくれば、私はフェルンを守ることができない」

 

 ……嘘くさい。

 ここは聖都の近郊だ。魔物など滅多に出没しない。

 

「くだらない、俺にとってはどうでもいいことだ」

 

 俺がそう笑い飛ばせば、ハイターは穏やかな表情を作る。

 それは、若者を見守るような年長者の顔だった。

 

「嘘をつくのが下手ですね。あなたは今、動揺している」

 

「……」

 

 動揺している……?

 ああ、そうかもしれない。

 このハイターという男は、どうしてこうもズケズケと俺に踏み込んでくるのか。

 きっとそのせいだ。

 

 ……いや、そうではない。

 きっと慣れていないからだ。

 こうやって、純粋に誰かに必要とされるのは、いつ以来だろうか。

 

 俺が黙り込んでいると、ハイターはいきなりこう叫んだ。

 

「ああ! 私のような哀れな老人は心が弱いのです。あなたに断られたショックで寿命が縮んでしまうかもしれない」

 

 どこかふざけた態度。本当にこの男は聖都の司教なのだろうか? 

 なんだか、張りつめていた自分がバカらしくなってきた。

 

 俺は踵を返して、家の玄関口に入る。

 

「……わかった。さっそく中で雇用条件について話し合おう」

 

 ハイターはにこりと笑った。

 

 

 それから、俺とハイターはテーブルにつき、契約内容について擦り合わせをおこなった。

 まず、契約の報酬について。月給は銀貨10枚。

 正直、護衛らしい仕事などあまりない。それを鑑みれば、これは破格の待遇だ。

 分かりやすく言えば、詰所の衛兵の同等の給与だといえばいいだろうか。

 

 この世界で生きていくならば、やはりお金は欠かせない。

 冷静に判断すれば、断る理由などなかった。

 

 そして、契約期間についてだった。

 

「雇用主である私が死ぬまでで、よろしくお願いします」

 

「……もし明日にあんたが死ねば、それで契約は終了というわけか」

 

「はい、もっとも私はしぶとい人間ですよ。もうあと数年は生きると思います」

 

「なら、もしあんたがあと30年生きれば、俺はあんたたちを30年間守っていくわけだ」

 

「はは、おっしゃる通りだ」

 

「よろしく頼む」

 

 ハイターは、俺に手を差し出してきた。

 俺は、わずかに躊躇ったあと、その手を握った。

 

 ヤーナムにはけっしてない、人間のぬくもりが、その手から伝わってきた。

 

 

 ★

 

 

 北部高原の海岸。

 そこには造船所があった。

 数十年前までそこは地元の漁師が使用していた場所であり、今は無人の空き家となっている。

 ただ、人間が使用していないだけで、別の存在がそこを拠点にしている。

 

天井には、シャチの骨格標本が吊るされている。

それは、ここの主が嗜好によるものだ。

 家の中で、ソファに座り、魔導書に目を通している、魔族の女がいた。

 無名の大魔族ソリテールは、魔導書から目を離して、どこかぼんやりとした目つきで天井にある、骨格標本を見上げる。

 

「分からない、分からない、いったいどうして?」

 

 ソリテールは、そうつぶやいた。

 

「なんで魔族である私を生かしたの? どうして?」

 

 魔導書を、本棚に戻して、ソリテールは息をついた。

 もうここ最近は、ずっとこの調子だ。

 おかげで人間の魔法の研究も、自分の日課である探求にも、まったく手が付かない。

 あの日から、自分はどこかおかしくなってしまった。

 

 ソリテールは、あの日のことを思い返す。

 気まぐれに外を散歩しているときに、人間と出会ったのだ。

 その人間は、狩人と名乗り、異常なまでに強かった。

 あの時、自分は敗れて、殺されるはずだった。

 だが、狩人は自分を見逃したのだ。

 

 ソリテールには、分からない。

 なぜ、あの人間は自分を見逃した? どうして自分を殺さなかったのか?

 

「私が取るに足らない存在だったから? 殺す価値もないと思ったから? いや、それはありえない。人間にとって魔族は害をなす存在だもの」

 

 直前まで、あの男は自分に殺意を放っていた。

 自分を獣だと、駆除すべき害獣だと、そう言って自分に刃を向けてきた。

 

 だからますます理解できない。

 まるで人格が変わったように殺意を消し、まるで興味がないと言わんばかりに、瀕死の自分に背を向けて立ち去った。

 

「分からない。もう何百年も人間を探求してきたけど、いくら考えても答えが出ないわ」

 

 ソリテールは、魔族という種において、異端の存在である。

 大抵、魔族は人類を食料か殺戮の対象としか見ていない。

 ところが、このソリテールという大魔族は、人間の文化や生態や感情に興味を持ち、研究している。

 

 魔族は、生涯に渡って自分の魔法を研鑽し続け、探求する。

 しかしソリテールにとって、探求の対象は魔法ではなく、人間。

 それゆえ彼女は、人間の魔法を学び、それを扱う。

 

 だが、その探求も、この2年間まったく進捗していない。

 あの狩人という男のことで、他のことがまったく手つかずなのだから。

 

「知りたい、理解したい。あの人間のことが。あの時、あの人間はどう感じていたのか。なぜああしたのか」

 

 ソリテールの頭の中を埋め尽くすのは、彼女が持つ最も強い感情。

 すなわち好奇心だ。

 

 あの人間のことが知りたい。

 あの人間が何を考えていたのかを知りたい。

 

 だから、ソリテールが感情に突き動かされて、行動するのは当然だった。

 

「探さなきゃ。あの人間を見つけて、会いにいって、尋ねないと」

 

 ソリテールには、確信があった。

 あの狩人という男は、自分には理解できない存在だ。

 だからこそ、狩人と対話し、そのすべてを明らかにすれば、自分は人間という存在を真に理解できるのではないか?

 

 それからソリテールは、自分の拠点を出て、歩き出す。

 狩人という人間を探しだす、彼女の旅が始まった。

 

 

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