ソシャゲの序盤で死ぬヒロインにTS転生したけど、とりあえず主人公くんをいじりたい   作:あまぐりムリーパー

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TS娘、お出掛けする

 ベッドで横になる。力が出ない。なんか、最近こんな日が増えてきた気がする。

 

 元々、私はあんまり寝ていないからそのせいかな。ねむねむモードの明上ユーリです。

 

 あー、ダメだ。なんか気分転換しよう。今日は休日だもの。

 

 寝癖とかだけ整えて、外に出る。渚くん成分は足りてないけど、まあ押し掛けるのもあれなので。

 

 またショッピングモールにでも行こう。前に来たのって、希沙と拗れた時だったなあ。デート失敗の思い出。

 

 そういえば、最近の希沙は怜菜とも結構仲がいいみたい。私の知らない間にみんなの仲が深まっていくんだけど、これは一体どういうこと?

 

 私も、精進しないとね!

 

 今日何をやると思う?

 じゃじゃーん、お花屋さんです!

 

 いやごめん、似合わないけども。そういう気分の時もあるのです。

 

 私、見た目儚げ美少女でやらせてもらっていますからね。私のテンションで忘れてるかもしれないけど。

 

 とりあえず、花束を買う。愛を込めて渡すって感じのやつじゃないけどね。鞄に入るかな。まあ、入るな。

 

 後は適当に、ご飯とか買って帰ろうかな。

 

 

 

 と、そんな風になんとなく外を眺めていたら一人の子を見つけた。男の子だ。

 

 迷子になっているのか、きょろきょろと辺りを見渡している。いつもなら、あんまり気にしない子に話しかけてみる。気まぐれだ。私は猫ちゃんみたいなものだからね。

 

 昔、野良猫みたいなやつって言われたなあ。誰が野良猫だ!ふしゃー!

 

 というのは置いておいてね、たまには小さい子にも優しくしないと。

 

 ショッピングモールの外にいる男の子のそばまでいく。なんか、ビックリされてるのでしゃがんで目線を合わせて、口角を上げてにこりと微笑んでみる。

 

「やあ、少年。迷子かな~」

「……」

 

 えっ、なんも喋ってくれないじゃん。私、怖かったかな。

 

「え、えーっと……」

「お姉ちゃん、誰」

 

 喋ってくれた。

 

 ぶっきらぼうで、こちらを警戒するようにぎろっと睨まれてるけど。

 

「通りすがりのお姉さんだよ」

「胡散臭い」

 

 口悪いな、このガキ。一瞬、ぴくりと表情が崩れそうになったのをなんとか堪えた。

 

「そういうのは初対面の人に言わない方がいいよ」

「いきなり話しかけてくる人は危ないってみんな言ってるし」

「そうだねー、だからこんなところで一人になってたら危ないよって言いに来たの」

「ふーん、うざっ」

「こいつ~!」

 

 不安そうに、瞳が揺れていた。ひとりぼっちで知らない人がやってきたから、不安だったんだろうね。瞳に恐れが滲んでる。失礼なやつ。

 

 だから、思わずこいつの頭をがしがしと撫でてやった。生意気なガキにはこれで十分だよ。 

 不思議と、私を見る瞳もなんか変わってるし。ちょろいな。

 

「……ママとはぐれちゃって」

「そっか、じゃあ探そう!どこら辺ではぐれたの?」

「えーっと、向こうの……あっ」

「ん?」

 

 ――ぞわり、背筋に悪寒が走った。

 

 ギュリギュリギュリ、何かを削るような音。

 

「お、お姉ちゃん……」

「深禍かよ、タイミング考えて欲しいなあ」

 

 私の背後に、急に大きなカマキリ型の深禍がそこにいた。私の出した光の壁を、手の刃で切り刻もうとしている。手というか、前足でいいのかな?

 

 スキル名言わずに咄嗟に使ったから、ちょっと強度が足りてないな。

 私のセイントアーツの中でもウォールはゲーム上だとオートで発動するから、使えてるところもあるんだけども。

 

 こいつらのサイズって大体私たちよりも大きいから気持ち悪いよね。すみません、140cmぐらいしかなくて。

 

 深禍は、大体群れでやってくる。特定のポイントに大量に出てくることが多い。

 

 でも、こうやってたまにそこら辺にポツンと単体でやってくるのがいる。

 逆に、私が気紛れにここに来てよかった。

 

「少年、ちょーっと離れないでね」

 

 にしてもめんどくさいな。この男の子を守りながらだと、ちょっとだるい。

 

「《セイントアーツ》――"ランス"」

 

 光の壁を突き破って、差し込まれた刃を光の槍で受け止める。力つっよ、膂力の勝負だと分が悪いかな。

 

 ぐっ、と力を込めてなんとかその刃を弾いてのけ反らせる。

 

「《セイントアーツ》――"アロー"」

 

 ここから動けないから、ちょっと遠距離で攻撃してみるか。光の矢をいくつも自分の周囲に生成して、一気にそれを放つ。崩れた体勢の深禍に命中するけど、体が一部崩れるぐらいで決定打にならない。

 意外と面倒だな。さーて、どうしようか。

 

 ちょっと、隙があればこの少年を危険に晒さずに一気に倒せそうではあるけど。

 

 深禍が、再びこちらに歩き出そうとする。二つの刃がこちらに向いた。切れ味はよさそうだから、当たったら真っ二つだろうな。

 

「――斬撃装填」

 

 ポトリ、とカマキリの刃が片方地面に落ちた。

 

 ……こんなタイミングでこいつと会うのマジか。茶髪サイドテールがよ。

 

「明上、何ちんたらしてんの?」

「うるさいよ、帆花」

 

 急に現れた刀を構えた帆花が、カマキリの前足の片方を切り落としていた。カマキリ野郎も、急に切断されて、体のバランスが変わったせいでよろっ、と倒れそうになっている。

 

「《セイントアーツ》――"ジャベリン"」

 

 手に持った槍を思いっきりぶん投げる。槍の光が増していって、勢いよく飛んでいったそれは、深禍の顔面に命中して、深禍は体が崩れていく。

 

「少年、大丈夫?」

「……うん。あっ、ママだ」

「よし、行ってこい!」

 

 どうやら、はぐれていた母親も見つかったらしい。こちらに手を振ってくれた後、「ありがとう!」と少しだけはにかんだ状態で走っていった。意外とかわいいじゃん、ガキ。

 よしよし、一件落着。

 

「で、何してんの明上」

「いや、別に買い物に来たら襲われただけだけど?」

「ふーん、そう。小さい子を誑かさないでよ」

「するわけないでしょ」

 

 なんか、こういう遭遇イベントって私じゃなくて渚くんに起こるべきでは。しかも、帆花かあ。めんどくさ。

 

 ちらり、と帆花の方を見る。ラフな格好をしている。

 この前のボサボサ頭も、よれよれだった服装もすぐに変わってしまった。変わった、というか元に戻ったか。

 

 私が吐き捨てたあれが、思ったよりも効いてしまったのかな。別に今、復帰しなくてもいいのに。

 

 帆花がこちらをじろじろと見てくる。なんなの?

 

「改めて思ったけど、あんたって昔からそうしてればモテてたわよね」

「いいってそういうの」

 

 なんか何人かの男に告白されて、うざかったの思いだして最悪。好きになるわけないじゃん。

 

 っていうか、帆花の方がモテてたし。こいつ、何かあるごとに呼び出されてた癖に。

 

 そういえば、用事があったんだった。……めっちゃ嫌だけどなんとなく一人で行くには億劫だけどこいつ連れていくか。

 

「ねえ、帆花。ちょっと一緒に来てくれない?」

「は?」

 

 やっぱ、こいつ腹立つな。

 

「いいから」

「はあ……わかったから」

 

 無理やり引っ張ると、大きなため息をつかれながらも了承してくれた。まあこれでいいや。

 

◇◇◇

 

「……あんた、行かないって言ってなかった?」

「別にいいでしょ」

 

 私たちの目の前に見えるのは、慰霊碑。大量に発生した深禍による犠牲者たち、第三深禍災害で死んだ人々のためのもの。

 

 そこに、私は買った花束を捧げる。

 

 まあ、墓参りみたいなもの。

 

 慰霊碑には犠牲になった人の名前が刻まれている。そこに刻まれている明上結愛の名前を見つけて、見ないように目を逸らした。

 

 死ぬ前に、一度ぐらいは来た方がいいし。

 

 第三深禍災害、一部の地域に集中して大量の深禍が発生したやつだ。ちょうど、その中心に私たちの中学校があるような状態じゃなかったら、未来は変わっていたかもしれないけど。

 

「……はあ、昔を思い出すからここって最悪なのよね。ってかさ、結局あんた何がしたいの?」

 

 しんみりした様子だったからか、いつもよりも力が籠ってないような声だった。

 

「秘密」

「あほらし」

 

 はんっ、と鼻を鳴らして帰ってしまった。

 

 私と帆花の距離なんて、これぐらいでいいかもね。

 


 

[アーカイブ]

 

 深禍が大量に発生することを、深禍災害と呼ぶ場合があります。

 第一、第二深禍災害は同時多発的に発生したものでしたが、第三深禍災害だけは一部の地域のみに集中して発生しました。

 

 現在は、第四深禍災害まで確認されており、近いうちに第五深禍災害が発生するとの見方もあります。




追いつかないので日曜日ぐらいにお休みになりそう予定です

曇りそうな人

  • 篠崎渚
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  • 黒河希沙
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