ソシャゲの序盤で死ぬヒロインにTS転生したけど、とりあえず主人公くんをいじりたい 作:あまぐりムリーパー
TS娘はメンタルを鍛えたい
私は
よし、ここまでは大丈夫だ。
明上ユーリだった頃と違って、私の心は取り繕わなくなってしまった。
そのせいで、一つ問題がある。
…………なんか、めっちゃ甘えたがりみたいになってしまった。
なんだよ、寂しいとか言って温もり求めてるやつ。メンヘラすぎる。
まあその、希沙に抱き締められて安心してるぐらいはいい。でも、帆花に求めてるとか、ちょっとあれだし。
……あと、渚くんの件とか。
あれは本当に何も思い出したくない。
このままだとダメだ。めちゃくちゃ人にメッセージ送りまくって、来ないからって病んで変なこと言い出すタイプのやつになってしまう。
だから、弱すぎる心をなんとかしたい。
「だから、運動をやろうと思って」
「……なんで、私がそれを聞かされてるのかしら?」
「一番まともに話してくれそうだから?」
なぜかいつも通り、怜菜が家事の手伝いをしていた。
ちょっと片付け忘れていたゴミをまとめていたり、タッパーに作った料理をまとめていたり。
「そもそも、なんで運動を?」
「やっぱりじっと閉じ籠ってるからよくないのかなと思って。だったら、動いた方がいいかなと」
「ふうん。そうね、じゃあちょうどいいわ」
「何が?」
と、言うと怜菜は軽く笑う。なぜだか、背筋にぞわっと悪寒がする。
少し嫌な予感がした。
「海に行きましょう」
なんで?
……いや、待って待って。海に行くタイプのイベントってあったような。
何事もなかったように、怜菜はキッチンの汚れを拭いている。
「別に、それ運動じゃなくない?」
「泳げばいいでしょう?」
「そういうんじゃなくて、継続的に運動したいみたいなことなんだけど」
「そう。それはそれとして、海には行くわよ」
「……それってもしかして、水着いるやつ?」
「そうね」
……水着イベントじゃん、それ!
◇◇◇
季節はいつの間にか夏に近づいていて、日差しが強い。
一章の話は春から初夏辺りの季節なので、自然と二章は夏の話だ。
アバドン化した私は、見た目が変わってしまった影響もあってそのまま学校には通えなくなってしまった。
ほら、アバドンって本来隠されている情報だからね。
なので、明上ユーリのそっくりさんである明上蒼空として保健室登校じみたことをしている。
……というドタバタした面もあって、少し慌ただしかった。
そのせいで、いきなり水着イベがある。すっかり忘れてた。
だって、本来は明上蒼空に水着とかないんだから。これさ、俺も着ないとダメ?
いやー、だってさ。まだ下着とかですらちょーっと抵抗あるんだぞ。それなのに水着?
無理無理無理無理!
「ふーん、似合うね蒼空ちゃん」
……なのに、なんで水着着せられてるの!?
希沙に買い物に付き合って、と言われてついていった結果、流されて水着の試着をしてる。
すごい際どいやつを着せられそうになって、それを急いで阻止した。
私の体はそんな、出るとこ出てる!みたいなタイプじゃないんだから意味ないだろ。怜菜に着せなよそれは。
その代わりに、海行くんだから別のやつを試着してるんだけどね。
そもそもなんで海に行くのか、というとちょっとした調査があるというか。
深禍の出現ポイントを探っていると、そのうちの一つが海付近になったみたい。
カースシーカーは服装でスペックが変わったりはしない。
どんな頑丈な装備をしてようと、カースシーカーの肌の方がよっぽど丈夫なので意味がない。なので、水着を着てようが防御力は変わらない。
どういう仕組み?
それなのに、肌は柔らかいままで不思議だよね。わかっていないだけで、エネルギーバリアみたいなものを戦闘時には纏っているのかもしれない。
そんなこともあり、水着で遊んでいいけどついでに調査いくやついる?みたいな感じで、募集があった。
我ら、チームブルースカイは私が知らない間に応募してたってこと。
余計なことを。いや、シナリオ上それが正しいんだけど。
……水着着てるだけなのに、なんかめっちゃ恥ずかしい。肌これだけ晒すの抵抗あるの当たり前じゃん。
「ねえ、希沙。もう着替えていい?」
「えー、もっと見たいのに」
「もう着替えるね?」
「ちぇっ」
希沙の方はもう既に選び終わってるらしくて、同じ目に合わせることができなかった。解せないよね。
急いで水着から着替えて、私服に戻る。ふー、あぶね。心が安全圏まで戻った。
私の心はあまり強い刺激を受けると、またおかしくなりかねないのです。
……このフリフリみたいな水着買うしかないのか?ラッシュガードみたいなのを着てやり過ごすか。
「蒼空ちゃーん、ちゃんと水着買ってね?」
「……わかったよ、もう」
仕方ないから、水着を購入する。学校用の水着しか他になかったし。
……はあ。マジで着ないといけない?
水着キャラ、明上蒼空実装!ってか?
性能どうなるんだろう、その場合。水着だとやっぱりちょっと盛られるじゃん?
アバドン状態だからほぼ盛られてるせいで、たぶんあんまり変わらないなそれ。
今の私って奈落帰りよりもひどくて、コネクトリンク中でもあんまりガンガンスキル使えないんだけど。
コネクターにすら負荷がかかるし。
「……これ本当に着ないとダメかな」
「まだ言ってるの」
「言うでしょ」
……自分で買った水着っていうのが、抵抗感があるんだよなあ。
「篠崎くんに見せるのが恥ずかしいの?」
「……は?」
思わず、低い声が出た。
希沙はけらけら、と笑いながらスマホのメッセージを確認している。
「なんでもない人に見られても恥ずかしくないでしょ?だから、篠崎くんに見せるのが恥ずかしいのかなーって」
「……そういうのじゃないし」
「そうかなー」
別に、そういうのではなくて。……まあ、そういうのがないか、と言われるとあるかもしれないけど。
そっちじゃなくて、前世が絡んだ話だから説明しづらいんだけどね。
まあいっか、渚くんに照れてるってことで。
さて、水着は買ったしそろそろ帰るかな……ってところで――不意に、背中に視線を感じた。
「あっれ……」
背後から聞こえてくる声は、聞き覚えのないものだった。
振り向くと……なんというか、ある意味印象的な女の子がいた。
手を半分ぐらいすっぽりと覆うぐらいには長袖で、チョーカーやイヤーカフをつけている。
長袖の割には下はショートパンツで、黒と灰が混じったような髪をくりくりといじっている。
怯えた小動物のように、少し距離は取っているものの、じーっと私の様子を見ていた。
怖いよ。なんか目元がちょっと赤いし。
「明上、さん?」
「えっと、どうも?」
「ひぅえ!?ご、ごめんなさい!」
なんか、こっちのことを知ってるみたいだから会釈すると、後退りしてそのまま走り去っていく。
なんだったの?
「……蒼空ちゃん知り合い?」
「いや、知らないけど」
「ふーん、メンヘラ仲間みたいな感じなのかと思ったけど」
ナチュラルに人をメンヘラの一人としてカウントしてない?
……いや、否定できないけどさ。
にしても、誰だったんだろう。あんなキャラ、ランヘリにいた記憶ないけど。
……関係ないといいなあ。
アーカイブ考えてると時間ないので省きながら投稿します
ストックとかないからたまに休むよ