ソシャゲの序盤で死ぬヒロインにTS転生したけど、とりあえず主人公くんをいじりたい 作:あまぐりムリーパー
ぼ、ボクはどうすれば。黒河希沙にずっと手首を掴まれてる。
ボク――西園マヒロはこの世界に来てしまった哀れな転生者だ。
ちょっとばかり、調子にのってから痛い目にあって、人と関わるのが怖くなってしまっただけの女の子。
ある日、ゲームキャラの飯島夏音と同じチームになって、はしゃいでいたら酷いやらかしをしてしまった。
それで、ワケわかんなくなってその時に明上蒼空を見つけて舞い上がって、そこからずっと変なことをしてしまってる。
その結果、伝えるはずだったやらかしとかも言えず、ただ変に逃げたりして、こうやって今黒河希沙に掴まってる。
何、暇だからって。強引すぎるよ。
引きずられないように、今は歩いてるので横目でちらりと見ると顔が見える。ボクよりちょっと身長が高いから、見にくいけど。
こうして見ると、かわいい。ランヘリのキャラだから当たり前だけど。
いいなあ、こんだけかわいくて。……ボクもかわいい方なのかもしれないけど、ここまでじゃないっていうか。蒼空ちゃんとか別格だし。
やっぱり蒼空ちゃんって、捕まえてみたくなるかわいさしてる。あと守ってあげたくなる儚さもあってずるい。
ダメだ、これは暴走しちゃう兆候だ。えーっと、なんか他のこと考えないと。
「どうしたの?」
「ふあうっ!?な、なんでもないぃ……」
「そう?」
急に声をかけないでほしい。心臓が地球三周半ぐらいした気がする。
なんか小首を傾げてる動作もかわいくて、いいなあ。
……にしても、どうしよう。これ、どこに連れていかれるの。
「ねえ、なんか悩んでるんでしょ」
ロビーみたいな場所にある椅子に座らされた。
目の前に、ゲームで見たキャラがいる。なんか不思議。
「ええと、いやその……」
なんか言わなきゃ。言葉がまとまらない。そんな、ボクの様子を黒河希沙はじっと眺めている。
あどけなさがまだ抜けてないような、まだ幼さが滲んでる顔つきなのに、ボクよりも大人びているように見える。
ボクが何か言うのを待ってるんだ。ちょっと、怖いよそういうの。
ランヘリだったら、タップするだけだったのにね。
ランヘリは、なんとなくやってたゲームだった。前世のボクもちょっと拗らせてて、ゲームで見たみんなの可愛さにもちょっと嫉妬してたように思う。
……普通に、おかしい人すぎる。だって、現実は見たくなかったから、こうやって空想に入り込んでいただけなんだけど。
そういう意味では、この世界にやってこれたのはほんのちょっぴり良かった。
たとえ、
それも、すぐに壊れちゃうものだったけど。
「おーい」
「ひゃいっ」
ボーッと考え込んでいると、鼻先をつつかれて跳び跳ねた。
「目の前の人を放っておいて、自分だけの世界に入らないでよ」
「そ、そのっそれを言うなら勝手に連れていくのも」
「えっ、ダメだった?」
「いっ、いや……大丈夫、です」
「あはは、なんで敬語?」
「く、癖で……」
ダメだ、強すぎる。こんな風に話せないよ。怖いもん、人と話すの。
「まっひーって、蒼空ちゃんと知り合いなの?」
「いやその、知り合いになったばかりというか……」
「ふーん、そうなんだ。なんで逃げたの?」
「うぐっ……ひ、人と話すの、苦手、で……」
「確かに、苦手そう」
と、だけ言ってボクの顔をじっと見つめてくる。うぅ、なんなの。
実は、蒼空ちゃんには話しにいかないといけないんだけど。……めちゃくちゃ胃が痛い。
だって、本来必要な原作キャラを、ボクが、傷つけちゃったから。
「やっぱり、何か悩んでるよね?」
いつもよりも冷たい声だった。思わず息を飲む。
「せっかくだから、話してみてよ」
ふわりと微笑んだ、その黒河希沙の顔を見て……少しだけ口が滑った。
「その、えーっと……ボクのチームに飯島夏音って人がいて」
「うん」
「第四深禍災害を、攻略できるかもしれないぐらい、強いスキルを……持ってて」
「へー、そうなんだ?じゃあいたら心強いね」
「で、でもっこの前の……第五の時に、ボクを庇って、大怪我しちゃって……」
「あらら、今回は参加できないってことか」
「だっ、だから……ボクの、せいで……次の戦いがきつくなっちゃうぅ……」
「えっ、マジで?」
……えっ?
聞き覚えのある声が耳に入った。
さらさらとした銀髪が視界の端で揺れた。
そちらを向くと、青い瞳と目が合う。
「あっ、明上蒼空ぁ……?」
「蒼空ちゃん、起きたんだ」
「おはよ。ってか、マヒロ――」
「ごめんなひゃいっ!!!」
「おわぁっ!?」
気持ちがわかんなくなって、気付いたら蒼空ちゃんに飛び込んでた。
だって、謝らないといけなくて。いや、そうじゃなくて。伝えないといけない。
いや、さっきの聞かれてたからいいのかな?
わからない。
ふわり、といい匂いが鼻腔をくすぐった。
「お前さあ、犬じゃないんだから」
呆れた蒼空ちゃんの声が聞こえてくる。……口調が、なんか違う?
あっ、そっか。前世と混じってるタイプだからそうだよね。同じボクがおかしいのかな。
「お前、聞いてる?」
「あっ、えと……ごめんなさいぃ」
「いいから、退いてくれない?」
「あはは、蒼空ちゃんに抱き心地いいから抱きつきたくなるのはわかるよ」
「希沙、変なこと言わないで!」
無理やりひっぺがされた。うう、なんか蒼空ちゃんの力強いな。あっ、アバドンしてたんだった。
「んで、私も交ぜてくれない?その話」
蒼空ちゃんも、スッと椅子に座った。えっ、さっきのは聞いてなかったのかな。
「飯島夏音が怪我して出撃できないってガチ?」
きっ、聞いてる!?やっぱ、聞いてるじゃん!
おっ、怒られるぅ……!
「ねえ、蒼空ちゃん。まっひー、フリーズしてるよ?」
「まっひー……?あっ、マヒロのことか。おーい、マヒロ?」
「ひゃいっ」
蒼空ちゃんの顔が覗き込んでくる。やっぱり、この人かわいい。持ち帰りたくなる。……落ち着いて、ボク。
ちゃんと、話そう。ちゃんと話すぞ……深呼吸、深呼吸だ。
スー、ハー……頑張ろ。
「そっ、そのね。飯島さんはボクを庇って怪我しちゃったの」
「……マジかあ。まあ、それは仕方ないか」
えっ、怒られてない。なんで。
「別にそれしか攻略法がない、とかそんなことじゃないかもしれないしね」
「そうだね。そもそもどのチームが出撃するとかもわからないし」
わからないって、ゲームで知ってるでしょそれは。
……ここがゲームじゃないってのはわかるよ。でも、そこであった勝ち筋が消えたのに。
もしかして、これを悩んでるボクがおかしいのかな。
「私たちが出撃したとすると、いけるかな?」
「それは、ちょっときついんじゃない?第四って結構でかいんでしょ。それを倒せるスキルがいるよね」
「蒼空ちゃんのこの前のやつとかは?」
「ああ、"ラースオブゴッド"か。あれはね、コネクトリンク前提だしあんまりやると渚くんがおかしくなっちゃうから」
……そのまま、話し合い始めちゃった。
うう、悩んでたボクがバカなの?飯島さんから直に気にしないでって言われても、そんなの気にするじゃんって思ってたのに。
よくわからないよ。
――ぞわり、と背筋を嫌な感覚が走る。
深禍だ。
「やば。希沙、他のみんな呼んで」
「うん、わかった!」
蒼空ちゃんたちは行くみたいだ。
そっか、イベントストーリーだもんね。主人公チームが戦うのも自然か。
「どうせだから、マヒロも来なよ」
「えっ」
「カースシーカーなんでしょ」
「うっ、うん……」
「どうせだから、スキル見せてよ」
手を引っ張られる。
ちょっと、強引だ。黒河希沙とは違う、人懐っこいクラスのムードメーカーみたいな断りづらさ。
口元を緩めて見せたその微笑は、やっぱり可愛かった。
話があんま進んでなくてすまないをずっとしています。
夏イベって雰囲気にしようとするとどうしても、キャラの話をゆるゆるとしてしまいがち
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