ソシャゲの序盤で死ぬヒロインにTS転生したけど、とりあえず主人公くんをいじりたい   作:あまぐりムリーパー

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合流した少女はおどおどしがち

 廊下を出て、少し歩いていると強引に蒼空ちゃんに引っ張られた。

 

 な、なんでぇ……と、思ってたけど飯島さんに頼まれてボクのことを一時的にチームの一員にするんだって聞いた。

 なんか、ボーッとしてた気もするけど。

 

 蒼空ちゃんは、アバドン化してる。原作だとなかったルート。

 だからこそ、幸せになってほしい。

 

 そのためだったら、ボクも頑張りたい!

 

 と思って篠崎渚……主人公に説明してみたけど途中で気力が尽きてしまった。

 

 やっぱり、男の人とはあんまり長時間話したくないし。

 

 中学の頃に、ちょっと立ち回りを間違えてやらかしてしまったから。尻軽だとか嘲笑されて、体を押さえつけられるあの感覚はもう経験したくない。

 友達になりたかっただけなのに。

 

 ……ダメだ、根が暗いからボーッとしてると余計なことを考えてしまう。

 

 椎柴帆花と黒河希沙も、後からやってきた。訓練所にいってたんだって。

 やる気あるなあ……ボクはああいうの苦手。

 

「ふうん、このマヒロって子を連れて出撃するってことね。まあいいわ、この前の混合型の時は一緒に戦ったし」

「よろしくね、まっひー!」

「は、はひっ!」

 

 ……盛大に舌を噛んだ。

 

 改めて説明を受けた二人に返事しようとしただけなのに。

 

 うう、ボクってどうしてこうなの。

 

 改めて見返すと、部屋の中には蒼空ちゃん含めてみんないる。

 

 蒼空ちゃんはちょこん、と椅子に座っている。かわいい。

 篠崎渚は……逆に言うことないかも。琴塚怜菜と話してる。

 

 琴塚怜菜は、話を聞きながらメモ帳に何かを書いていた。別に視線を向けられたりしていないのに威圧感がある。……綺麗だから違う意味で憧れてる。ああいう風な人にも生まれてみたかった。

 

 黒河希沙は、机に頬杖をついてる。強引に連れていかれた記憶があるからちょっと怖い。

 椎柴帆花は座りながら足を組んでいる。覗かせる素足が綺麗。

 

 こんな中にボクが交じっていいのかな。本当なら飯島さんが入るべきなのに。

 

 椅子に座っても落ち着かない。毛先をいじってしまう。

 こんなことしてるせいか、髪がまっすぐにならないというか。

 

「あんた暑くないの?」

「ひゃいっえっ……その、暑いです」

 

 椎柴帆花がボクの隣にやってきた。急だからびっくりする。

 

 ボクの服装は夏なのに、長袖で隠しているから気になったのかな。

 

「脱いだら?」

「そ、その。肌があんま強くなくて、焼けると酷いことに」

 

 ……言い訳だけど。本当は、この長袖の下には包帯を巻いた手首があって、見せたくないだけ。跡が、なかなか消えてくれないから。

 

「ふうん、そう」

 

 よかった、あんまり興味がなさそうで。どうしても空気を壊す内容だし、うん。

 

「そういえば、飯島夏音ってどういうやつなの?」

 

 何かを思い出したように、椎柴帆花は続ける。どういうやつ、かあ……うーん。

 

「飯島さんは、元気で明るくて……なんかぐいぐい来てて、後はえーっと、よく見てる人?」

「よく見てる?」

「なんか、ボクが落ち込んでるとかそういうのを察知するのが早かったり、とか」

 

 そう。なんというか空気に対する嗅覚がすごいって感じ。

 ボクだけじゃなくて、他の人のちょっとした気持ちを読み取るのがうまい。

 

 そういうのがあるから、こんなボクでも話せてるんだと思う。

 

「……さっき明上が変だったのもなんかしてそうね」

 

 ぽつりと呟いた一言が気になった。

 

 え、飯島さんもしかして蒼空ちゃんに何かした、とか?

 

 かなり前に、暗い気持ちを無理やり明るくさせられて気持ち悪くて大暴れしたことがあったんだけど……たまに人の気持ちを無視してくるから、何かやっててもおかしくない。

 

 ま、まあ……たぶん、大丈夫なはず。原作では飯島さんが参加するんだから。

 

「まあいいわ。何かあったら、そこの琴塚怜菜ってやつに相談しなさい」

「え、あ、はい……?」

「私たちの中で一番、話を聞いてくれると思うわよ」

 

 えっ、優しい。椎柴帆花は足を組み直して、なぜかそっぽを向いてる。

 

「えと、椎柴さんに聞いたらダメ?」

「なんで私?」

 

 こちらを向いたと思えば、困ったように眉を下げた。

 

「その、今話してくれたから?」

「まあ、いいけれど」

 

 小さく息を吐いて、再びそっぽ向いた。……もしかして、照れ隠し?

 

「何?」

「い、いや、なんでもないですぅ……」

 

 じーっと見てたら、じろっと見返されてちょっと怖い。

 いやその、目付きがちょっと鋭いだけの人なんだけどちょっと反射で。

 

 で、でも……相談していいんだ!

 琴塚怜菜は、威圧感あるからしにくくて……。

 

 うん、ちょっとだけこのチームでもやれそう、かも?

 

 ……がんばろ。

 

 

 

 という感じで、決意はしたけど。やることはないから、隅っこでじっとしてる。

 

 正直、こっちの方が楽で、場違いなボクでもなんか問題なさそうだもん。

 

 そもそも、出撃のときだけがんばればいいから、仲良くする必要はないんじゃない……?

 

 じゃ、じゃあボクは隅っこでじっとしよう。じーっと。

 

「西園さん」

「ひぅぁっ!?」

「だ、大丈夫?」

「ひゃいっ!」

 

 ぐう、急に声をかけられてしまったから変な反応しちゃった。

 

 ふと、顔を上げると篠崎渚の姿がそこにある。

 

「ごめんね、急に話しかけてしまって」

「い、いや大丈夫」

「それならよかったけど。これから、西園さんもチームの一人なんだから、よろしくね」

 

 スッと、手を差し出された。……えーっと。

 

 そっか、握手。飯島さんとかはもっと強引に心の壁を破壊してくるから、こういうことをしなかったし、そういうものを忘れてた。

 

 ……と、そのときに視線を感じた。

 右頬にちくちくと、視線が刺されてるような、そんな感覚。

 

 目だけチラッとそちらを向けると、蒼空ちゃんがじっと見てる。

 少しばかり頬を膨らませてちょっとだけ不満そうに。……なんだろう。

 

 目が合うと、ぷいっと顔を背けられた。な、なんなのぉ……このチームの人たち、態度で見せてくるみたいなタイプが多くてわかりにくいよ。

 ボクには難易度高すぎるって!

 

「西園さん?」

「ご、ごめぇん。よろしく……」

 

 恐る恐る、手を伸ばして篠崎渚の手を取る。

 ごつごつとした、男の子の手だ。でも、不思議と怖くない。

 

 ふん、この手でゲームでは何人かの女の子落としてたけど、ボクは騙されないし。

 

 ……ヒロインごっこだけして、触ってる間の意識をなんとか保った。やっぱり怖い、男の子との接触って。

 

 トラウマがフラッシュバックしたらどうしようかと思ったけどセーフ。

 

 手が離れただけで、重苦しい心が軽くなる。

 

 でも、蒼空ちゃんに見られてたのはなんだったんだろう。

 やっぱり、嫉妬みたいな?

 

 よくわかんない。

 

 ……第四深禍災害はちゃんと倒すけど、それまでこのチームにいるのがやっぱりちょっと苦しい。

 

 うう、飯島さんの代わりにがんばらないと。

 

 代用品のボクは、深く息を吸ってなんとか心を落ち着けた。

 


 

TIPS:西園マヒロのスキル、インストールで真似できるのはスキルだけではありません。

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