ソシャゲの序盤で死ぬヒロインにTS転生したけど、とりあえず主人公くんをいじりたい   作:あまぐりムリーパー

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西園マヒロは償いたい

「《インストール》――"深禍(ディープカース)"」

 

 心の中にどろどろと、気持ちの悪いものが広がってくる。

 

 存在のインストールは、体に負荷がかかってくる。

 

 気持ち悪い、気持ち悪いけど……ボクがやらないと。

 

「西園さん!」

 

 コネクター、篠崎渚の声がする。

 

 目が合った。いいなあ、蒼空ちゃんと手を繋げて。

 

 そんな思考も、一気に飲まれる。

 

 大雑把に対象を指定した場合、目の前のやつが選ばれる。

 

 この場にいる深禍は獣の深禍のみ。

 

 手が、足が、輪郭のぼやけた黒ずんだものが体を覆っていく。

 

 手足を覆ったそれに、爪が生える。

 それ以外の肩とか足とかには毛が生えていく。

 耳も生えてるのかな。

 

 そんなことをぼんやり考えながら、目の前の混合型を眺めた。

 

 足に力を込めて、跳ねた。混合型に一気に迫る。自分の体じゃないみたい。

 

 こっちを払おうと振るう足をジャンプして越えていく。体が軽い。

 

 近づいて胴体に爪を振るった。

 

 爪で裂いていくと、少しずつ混合型にヒビが入る。大きな顔がこちらを向いた。

 

「砕けろ」

 

 手が、膨れた。力が籠る。目の前に大きな顔が噛みつこうとして迫る。口を大きく開いた。

 

 だったら、こっちも同じことをしてやる。

 

 膨れた手が、同じような大きな顔になって、ぐねぐねとそれが伸びていく。

 

 相手の首に食いついた。そして、それを噛み砕く。

 

 それと同時に、ボクを覆った何かが、バキバキと割れて、崩れていく。

 

 ……インストールの効力が切れた。

 

 でも、混合型を一体倒した。少しは役に立ててる。

 

「まっひー、大丈夫?」

「だっ、大丈夫……まだ、ボクがやるから」

「ちょっと、あんた。そこまでしなくても」

「椎柴さんの力を使うのはここじゃないから」

 

 心配してくる椎柴帆花と、黒河希沙を振り払って、まだいる混合型に目を向けた。

 

 二人とも、前からボクを心配してくれたいい人だ。ゲームで知ってたけど。

 

 よかった、一緒に戦うのがそういう人で。

 

 周囲には、光の槍が降っている。それと、氷や電気も同じように放出されていく。

 

 琴塚怜菜も蒼空ちゃんと一緒に戦っているみたいだ。

 

 ゲームのキャラと一緒に戦ってるって思うと、ちょっと嬉しい。

 

 自分も特別になれたみたいだから。

 

「《インストール》――"明上蒼空"」

 

 髪と目に違和感がある。何かぐねぐねと変わっているような。

 

 どくん、鼓動が跳ねた。内側から力が止めどなく溢れてくる。

 

 あはっ、これがアバドンの力の一部。

 ……ダメだ、飲み込まれないようにしないと。

 

 インストールは完全に取り込むことはできない。だからたぶんこれはその力の一部。

 

「《セイントアーツ》――"ラースオブゴッド"」

 

 手を上に向けると、天井から光が溢れてそれが収束して放たれる。落下地点にいる混合型を焼き払う。

 

 抵抗する間もなく、混合型を消滅させた。

 すごい力。

 

 でも、すぐに力が抜けていった。一瞬だけしかつかえないぐらいに強かった。

 

「けほっ、けほっ……」

「ちょっと、まっひー!無理しないで!」

「大丈夫、だから。だから黒河さんも力を貸して?」

「何を?」

 

 ボクを支えて、助けようとしてくれる黒河さんに触れた。

 

 触った方が、取り込みやすいから。

 

「《インストール》――"黒河――"」

「やめなさい」

 

 椎柴さんに手を掴まれる。

 

「なっ、なんで」

「えっ、なにこの状況。大丈夫?」

 

 困ったように蒼空ちゃんがこっちにきた。

 

「西園マヒロ、あなためちゃくちゃよ」

「西園さん、一人で行かないで」

「そうよ、落ち着きなさい」

 

 というか、みんなに囲まれてる。な、なんで。

 

 だ、だって。ボクがやらないと。

 

 飯島夏音がいない分、ボクが頑張らないと。

 

 ……って、思ってたけど焦ってたかも。今、目の前に敵がいないし。

 

 呆れたように椎柴さんはため息をついて手を離してくれた。

 

「まっひー、あんまり突っ込まないでね」

 

 いつもは笑顔な黒河さんは心配そうに覗き込んでくる。

 その後ろで琴塚さんも呆れと心配が混ざったような表情で見ている。

 

「ご、ごめん。混合型はやっつけたから行こう」

 

 獣の深禍たちは、知らないうちに蒼空ちゃんが倒してたみたいでいない。

 

 混合型も、ボクが倒した。これで安全に進める。

 

 ボク、取り乱してたんだ。飯島の代わりは、別にそんなずっと暴れてなくてもいいんだ。

 

「そうだね、みんな行こう」

 

 ――そう篠崎渚が言った時に再び、大きな影が見えた。

 

 なんで、なんでなんで。

 

 ずっと、邪魔するの。

 

 混合型がこんなにいたら、安全に進めない。

 

 ボクを庇って、飯島さんは怪我した。

 

 そのせいで、飯島さんが出撃できなくて、あの中心まで安全に進めなくなった。

 

 だったら、ボクのせいで、誰かが死んじゃう。

 

 そんなのは嫌だ。

 

 ムカつく。ずっと、邪魔ばっかりして。

 

「……蒼空さん、あれなんとかできる?」

「うへえ、きついかな。そろそろ渚くん吹っ飛んじゃうよ」

 

 三体、新しく出現した混合型に、蒼空ちゃんが顔をしかめている。

 

 ……ダメだ、蒼空ちゃんに負担させたら。今度こそ、アバドン化がひどくなって死んでしまう。

 

「今度こそ、私がやるわ」

「一人じゃ無理だよ、帆花」

「そうね。私たちも付き合うわ」

 

 みんな、突っ込んでいく気だ。

 

 ……他のチームの人たちとは、バラバラに進んでいる。混合型が出てきた辺りで、別れてしまった。

 

 だから、この場にはボクたちしかいない。

 

 あの三人でも、複数の混合型を相手に無事で済むかわからない。

 

 ……ボクが、やらないと。

 

 第一深禍災害(ファースト)第二深禍災害(セカンド)は、多数の場所を破壊した。

 第三深禍災害(サード)は、蒼空ちゃんたちを襲った。

 

 原作のフレーバーで、ボクたちじゃ関われなかった部分だ。

 

 ――でも、第五深禍災害(フィフス)は蒼空ちゃんたちと、他の人たちが頑張って原作の悲劇を乗り越えてた。

 

 じゃあ、第四深禍災害(フォース)は?

 原作より酷い悲劇を生み出していいはずがない。

 

「《インストール》――"第四深禍災害(フォース)"」

 

 だから、この流れをボクが変える。せめて、犠牲はボクだけで終わるように。

 

 どくどく、と熱い。体がまるで割れていくような、そんな感覚がある。

 

 どろっと、嫌なものが溢れていくような気持ちがした。

 

「あはは」

 

 高揚感が身を包む。気持ちいい。全部踏み潰してしまえそうな、そんな気持ち。

 

 インストールした膨大な情報に押し潰されそうになる。当然だ。こんなとてつもない存在の情報を、一人のカースシーカーが背負えるもんじゃないから。

 

 手足から、何かが吹き出てそれが肥大化する。

 

 次第に大きく形を作っていき、ボクを包んで巨大な体になった。

 ボクの体が変わっていく。

 

 埋め込まれたボクを中心として、巨大な深禍の集合体が形成されていく。

 

 一人のカースシーカーに許容できる内容じゃない。

 ボクは深禍と同化して、新しい存在になろうとしてるのがなんとなくわかった。

 

 呪いを追うもの(カースシーカー)は、やがて呪いに転じる。

 カースシーカーの最終形態。いずれ、たどり着く結末の一つ。

 

 奈落のような力の根源から、圧倒的な力を振るうことができるのが奈落の王(アバドン)なら。

 

 今のボクはきっと、新しい深禍になりそうになっているボクが名を冠するなら、そう。

 

 滅びの獣(メガセリオン)辺りが、ぴったりなんじゃないかな。

 

 なんて、ふざけたことを考えながら、ボクはこの巨大な体を動かし始めた。

 


 

TIPS:メガセリオン

命名:西園マヒロ

 

ランヘリ本編には存在しない、限界を超えた状態のカースシーカーの形態です。

アバドンとは違い、一部のスキルを持つ存在が深禍と一体化することで未知の存在になることで、カースシーカーとしての限界を超えた場合を指します。

この状態に至ったカースシーカーは、やがて新しい深禍災害に匹敵する力を持つことがあります。




明日はおやすみの可能性
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