ソシャゲの序盤で死ぬヒロインにTS転生したけど、とりあえず主人公くんをいじりたい 作:あまぐりムリーパー
順調に進んでいるかと思ったのに、突然混合型が出現してしまって、大きく予定を変更しなければいけない。
そもそも、混合型は簡単に倒せる相手じゃない。
私たちは、混合型ぐらいなら倒すことはできる。
でも、あんなにぽこぽこ出てこられて倒せるわけがない。
そんな時だった。
「《インストール》――"
西園マヒロのスキルは、深禍をコピーした。手足が、獣の深禍のようになって、混合型に向かっていく。混合型の巨大な体を爪で切り裂いて、最後には手から生成された獣の頭部で噛み砕いて倒していた。
奇妙な力だ。それと同時に、あれはやめさせないといけない、そう思った。
その後にコピーした明上蒼空の力よりも、あれは駄目だ。
……いや、あの髪色や目の色が変わったのは衝撃的だったか。
あの子は、自暴自棄になって力を使おうとしてる。それは、させてはいけない。まるで、あのときの明上蒼空みたいに。
だから、止めようとしたのに混合型がまた出た。何体も。
「《インストール》――"
だから、あの子を止めることができなかった。
……元々、止めようとしたのは私じゃなくて椎柴帆花や黒河希沙だ。
私が、そんなことを言える立場じゃない。けれど、私も止めたかった。
出撃前に、あの大きな影を見たときに、私はまだ自分の心に恐怖があるのを感じた。
私が、カースシーカーになった日。その時に現れた怪物。
私の日常を変えた存在。
別に、カースシーカーになったのと引っ越しをしたのと、その時に持ってたものをほとんど失ったぐらいだ。大したことじゃない。
それでも、僅かに残ったあの時の気持ち悪さは消えてくれなかった。
私は、それを越えたかった。今回の出撃前にずっとそれを考えていた。
けれど、そういう問題じゃない。
目の前の傷ついた女の子を放ってはおけない。今なら、篠崎渚の気持ちがよくわかる。
西園マヒロは、周りに集まった輪郭のぶれたものが肥大化して、まるで巨大な混合型深禍と同じような存在へと変貌した。
「ちょっと待って、そんなのあり?」
明上蒼空の声には誰も答えない。全員が絶句していて、何も言えなかった。
数メートルはある。全貌がよく見えないが、大きな四足の獣のようで、その体の所々から顔や足が生えている歪な存在だった。
それでいて、現れた混合型へと歩きだしていった。きっと、私たちの敵を倒してくれるだろう。
でも、放っておけばきっとあの子はダメになってしまう。そういう確信があった。
私たちは、明上蒼空を助けられた。だったら、今度は西園マヒロだって助けてみせる。
肥大化した深禍もどきになった西園マヒロは、その巨大な体で周囲にいる混合型を捻り潰していく。
そして、そのまま中心へと向かっていく。
一歩動くだけで、地響きが鳴る。
「――マヒロを止めるよ」
明上蒼空の言葉に、私たちはハッと我に返った。
呆気に取られてる場合じゃない。
「そうだね、僕たちで止めるよ。あのままだと――」
「明上蒼空の二の舞ってことね」
篠崎渚の言葉に続く。
「あはは。言うね、怜菜」
「あの時と違って、今回はあなたも頑張ってくれるんでしょう?」
「もちろん!」
明上蒼空のアバドン状態、諸刃の剣であるそれはリスクはあれど強力な力であることに変わりはない。
彼女と篠崎渚は先に進ませる必要がある。
それと、椎柴帆花もこのチーム内では混合型に通じる火力を持っている。彼女も消耗させるわけには行かない。
だから。
「まだ、敵が出てくるだろうからその露払いは私がするわ」
私が支える。発生する獣の深禍は私がなんとかして、先に進ませる。
全員が黙り込んだ。心配だけど、反論はできないからだろうか。
「第五の時も、同じことをしたもの。問題ないわ」
「その時は私が途中で助けたわよ。だから、今回も私が――」
「ダメだよ帆花。帆花は混合型倒さないといけないでしょ。だから、代わりに私がやるよ」
「黒河希沙、あなた……」
「怜菜とタッグなんて、珍しいよね」
えへ、と軽く黒河希沙は笑った。最初に比べたら、自然に振る舞えるようになったものだ。
「……ごめん、二人とも。僕たちはいくよ」
「いってらっしゃい。今は、西園マヒロも私たちのチームの一員よ。得意分野でしょう?仲間を助けるのは」
「……期待が重いけど、頑張るよ」
発破をかけるように投げ掛けると、困ったように篠崎渚は笑った。
「みんな、後でね!」
「絶対、西園さんをなんとかしてくるから!」
「あんたたち、無事じゃなかったら承知しないわよ!」
ぞわりとずっと背筋の嫌な感覚が止まらない。混合型がまた湧いてくる。
「ねえ、怜菜。これやばいかな?」
「そうでしょうね。でも、前もこれぐらいやばそうだった気がするわ」
「そうかなあ」
もう、篠崎渚たちは行ったみたいだ。
「《ソウルフレイム》――"爆裂龍撃"」
黒河希沙のガントレットから激しく炎が吹き出て、それを握り込んでから勢いよく深禍に放出していく。
「《マジックワード》――"
だから、それに続いて私も攻撃する。
水、氷、風、炎、電気が周囲に一気に生成されて、それが一斉に放たれていく。
三つの首がある、ケルベロス染みた深禍の一つの頭部に黒河希沙の炎が直撃して激しく爆発する。
それから、私の攻撃が全身を絶え間なく追撃した。
少しずつ削られていく。
二人の全力で、なんとか一体の混合型なら倒せるかもしれない。
……ただ、一つ問題がある。
「ぐっ……敵が多すぎる」
「なんで、こんなに混合型がいんのよ!」
「な、なんか向こうにでかいのが二体いない?」
いつの間にか近くに来ていたカースシーカーやコネクターたちが、敵を引き連れてここまで来ている。
少しずつ下がりながら、篠崎渚たちにちょっかいをかけてくる深禍を倒していこうと思ったのに。
苦しそうにしてる彼女らを見捨てては行けない。
「……黒河希沙、先に行っててくれるかしら?」
「怜菜、さすがに一人であの人たちを助けるのは無理だよ。二人で助けてから、みんなの後を追った方が早いよ?」
「でも、それだと……」
確かに、一人で加勢するのは厳しい。でも、そんなことをしてる暇は――
そうやって悩んでるときに、戦場に一つの旋律が響いた。
[アーカイブ]
混合型深禍は基本、3~5体までの集合体です。
ただ、深禍災害ではそれを大幅に超える場合があります。
今までの混合型で、第四深禍災害を超えるものはいません。
隔日更新になるかもしれません