ソシャゲの序盤で死ぬヒロインにTS転生したけど、とりあえず主人公くんをいじりたい 作:あまぐりムリーパー
本当にもう、マヒロは無茶苦茶なんだから。何があったら敵をコピーして大怪獣バトルしようと思ったの?
もう、後で話を聞いてやるんだからね。
どくん、鼓動が高鳴っていく。息が荒くなる。ちょっとだけ飛ばしすぎたかな。内から溢れる力が暴れそうになるのを抑えた。
帆花はすでに、混合型の方に行って攻撃してくれてる。
足を切り落として、ぐらついてる。チャンスだ。
真下に輪郭のぶれた巨大な体が見える。
渚くんと一緒に着地する。さっき、大技を使ったせいでくらくらするけど、そんな場合じゃない。無茶してでもやんないとね。
ぐらぐら、と揺れる。抵抗するようにマヒロが体を動かしてるのかな。
「蒼空さん」
目配せした渚くんに、こくりと頷いた。
「"コネクトリンク"」
渚くんが、輪郭のぶれたそれに手を触れた。手から、何かがマヒロに繋がっていく。
それと、同時に私も視界が歪んでいく。ぼやけていく意識の中で、なんとか渚くんと繋いでいる手をぎゅっ、と少し強く握った。
目を開くと、真っ黒な何かが蠢いている世界にいた。
ここは、悠里と会った場所と同じところだ。……なんで、こんなところに?
渚くんとコネクトリンクで繋がったままだったから、とか?
「そ、蒼空ちゃん……」
震える声が、聞こえてきた。黄色い瞳と目が合う。
マヒロが、そこにいた。
「マヒロ、おひさ」
「……そ、その。なんで来たの?」
恐る恐る、でもそれでも力強い言葉。マヒロはきっと、それなりの覚悟をしてこんなことをしたんだと思う。
でも、それでもきっと、私だからこそ言わないといけないことがある。
「だって、マヒロが勝手に突っ走るから」
「……ボクが、台無しにしちゃったから。代わりにやらないと」
「うーん、まあ気持ちはわからなくないよ?私だって、こう、色々あったからね」
「だったら――」
「――でも」
マヒロの言葉を遮ると、びくっとマヒロは肩を震わせる。
「だからってマヒロがこんな自分を犠牲にするようなことしなくてもいいでしょ」
そう、
自分を限界ギリギリまで犠牲にして、とんでもない力を得ている。
「言わなくてもわかるよ。この状態はアバドンと同じで、そのまま続けると死んじゃうようなもんだって。だって、この場所に来てるんだから」
この深禍の根源みたいなところ来てるんだもんね。
そりゃあ、自分のせいで原作がめちゃくちゃになったら嫌だからってのはわかるよ。
私だって、私のせいで家族と悠里がいなくなってしまったことに酷く落ち込んだから。
いや、これはちょっと違うかな?
「……だって、ボクのせいで飯島さんが怪我しちゃって、そのせいで誰かが傷ついたら嫌だから」
「そうだね。でも、そのためにマヒロが犠牲になるなんて、私は嫌だよ」
でもね。それで、自分を犠牲に……なんて通してあげない。渚くんが、無茶苦茶な理由で私を助けてくれたみたいに。
私も、マヒロを私のエゴで邪魔するよ。
「で、でも……ボクは今までずっと、全然ダメで。ずーっとうまくいかないから、せめてこういうときだけでもって」
「私も中学の時やらかしてたけど……だから、そんなことは気にしなくてもいいよ」
マヒロとの関わりはそんなに多くないけど、やっぱり目の前で消えるなんて嫌だもんね。
……過去の私も、大概だな。
「で、でもっ!そうしないと、誰かが」
「もう、いいのそういうの!頑張りすぎ!」
「あだっ、で、でも」
「でも禁止!」
「みぃ……っ」
デコピンと、頬を摘まんで、無理やりマヒロの言葉を止めた。
「私ってさ、君の推しなんでしょ?」
「うっ、ひゃい」
「その推しが君に生きろって言ってるの。どう?」
「うっ、それ、は……」
困ったように、マヒロは目を左右に揺らした。
……本当の推しじゃなくて悪いけどさ。
しょうがない、最後に出番をあげるか。
「渚くん」
背後に呼び掛けると、ようやくそこに渚くんの姿が見えた。
「……ごめん、僕だけ遅れた?」
「そうだね。だから、最後は君が決めてよ」
「……わかったよ、なんかついでみたいになっちゃうけど」
渚くんが歩きだすと、マヒロはびくりと後ずさる。でも、それを気にせずに渚くんはマヒロとの距離を詰めていく。
「僕は、傷ついてる女の子を放っておけなくてコネクターになったんだ」
「し、知ってる」
「だからさ、西園さんにも手を差しのべさせてもらえないかな?」
「……それは、ボクじゃなくても」
「今は、西園さんも僕のチームの一員でしょ」
スッ、と渚くんは手を差しのべた。
「僕たちと一緒に戦ってくれる?」
「……ぼ、ボクは」
まだ、マヒロは決めかねてる。手を伸ばしかけて、それでもまだ瞳を彷徨わせている。
「西園さん」
と、渚くんがもう一度呼びかけようとしたときに、歌が聞こえた。
軽快なリズムに乗って、流れてくる。
これは、もしかして。
「いっ、飯島さんっ!?」
そう、飯島夏音の歌なんじゃないか?
待って、待って待って。前に見たときに大怪我してたのに、なんで?
『おーい、マヒロちゃーん!』
よく響く声だ。
『勝手に大きくなりすぎー!あと、勝手に暴走するの禁止ー!』
その声を聞いてものの見事に、マヒロはあわあわと、慌てている。
「マヒロ、こんなところで閉じこもってる場合じゃないんじゃない?」
「う、そうだね。よ、よろしく……」
震える手で、なんとか渚くんの手を取った。
「こちらこそ、よろしく」
「うっ、ううごめん」
手を握りしめながら、えずくようにその場に踞る。……なんか、そういうのはよくないんじゃないかな!
そんなことしてる場合じゃないよ、とさりげなく手を離させる。
「マヒロ、一旦これ解除できないの?」
「や、やってみるね。《アンインストール》」
その言葉と共に、ずずず……と空間が歪み始めていく。
「……飯島さん怒ってるかな」
「怒ってないと思うから、私が代わりに怒ってあげるね。マヒロ、無茶しすぎ」
「あだっ」
軽く小突いて、笑う。うう、と頭を押さえながらも、マヒロも少し頬を緩めた。
にしても、あの時の悠里に助けられた時のことを私はできたのかな。
「どうしたの?蒼空さん」
「ううん、親友を思い出しただけ」
いつか、悠里のことも誰かに話してやろうかな。
そんなことを思いつつ、慌てながら崩れていく中のマヒロを眺めた。