ソシャゲの序盤で死ぬヒロインにTS転生したけど、とりあえず主人公くんをいじりたい 作:あまぐりムリーパー
マヒロが変化していた、第四深禍災害を模した姿が崩れていく。
混乱していた戦線では、飯島夏音の力によって深禍と戦っていたカースシーカーやコネクターたちが、次々とこれらを撃破して中心に向かっていた。
そんな中、一人巨大な混合型を相手している帆花は頬につー、っと汗を垂らしながら攻撃をなんとか避けていた。
混合型の姿はいくつもの足や顔が不規則についていて、それらが次々と襲いかかる。
帆花は一点集中の影響で、保持している斬撃を使いきっていて、再び装填されても確実にダメージを与えるために、それらを迎撃に回すことも難しい。
「きっついわね!」
それでも、不敵に笑みを浮かべて襲いかかる足を避けて切り払い、噛みつく顔を切って牙を弾く。
奈落帰りとなったその力によって、なんとか相手をできているが、それでも少しずつ体力を削られていった。
攻撃の合間に、少しだけ刀を握る手が滑った。
「やっば……」
その帆花に巨大な足が迫る。
その時――数多の光の槍が混合型に降り注いでその動きを止めていく。
「帆花、大丈夫?」
「……明上、待たせすぎ」
崩れていくマヒロの変身した深禍の残骸の中から明上蒼空が顔を出した。
その隣から、居心地が悪そうに西園マヒロと篠崎渚が顔を出した。
少しだけ篠崎渚の顔色が悪い。
「ねえ、あんた。どうしたの?」
「……なんでもないよ」
「なんでもないことはないでしょ。明上、なんかあった?」
「……私にもわからないけど、もしかしてアバドンの力が強すぎて渚くんの負荷が強くなってるのかも」
その言葉に誤魔化すように篠崎渚は顔を伏せる。
「明上のサポートもここまでってことね。しょうがないわ。私がなんとか――」
「ぼ、ボクも頑張る!」
帆花の言葉を遮るように、マヒロが叫んだ。
その姿は、いつもと変わらないように見えて少し違う。体に所々獣のような体毛だとかそういったものが残っている。
でも、輪郭がぶれていてよくは見えない。
「……あんたどうなってんの?」
「そ、その。ボクのスキルで取り込んだものは、一定時間過ぎたりすると消えるんだけど、ちょっとだけゴミが残るの。今回、取り込んだものが多すぎて、ちゃんと排出できなかった、みたいな?」
ははは、と乾いた笑みを浮かべる。
「そう。もう散々、明上とかに言われた後だろうから私はなにも言わないけど、無茶しないように」
「ひゃいっ」
気合いをいれて、拳を握りしめるけど、マヒロは盛大に噛んだ。
また大きく、混合型が動こうとする。
「《サウンドウェーブ》――"クラッシュビート"」
突如、爆発でも起きたのかと思うほどの轟音が響き渡る。
それと同時に、混合型の体が大きく揺れた。
「あっ、マヒロちゃん発見!」
包帯だとかギプスだとか眼帯を付けたボロボロの少女が、にこやかに駆けつけてくる。
「い、飯島さん……っ」
「この、無茶するんじゃないですよっ!このこのっ!」
「ご、ごめんなさいぃ……」
「あっ、まっひーが戻ってる!」
「どうやら、解決したみたいね」
ボロボロの少女――飯島夏音がマヒロをもみくちゃにする中、後ろから希沙と怜菜も走ってくる。
「ちょうどいいわ。あれをなんとかするわよ」
帆花の掛け声に、みんな頷いた。
「《サウンドウェーブ》――"ネガティブビート"」
まず、夏音のスキルで混合型の動きを鈍らせる。
そこに、マヒロの体に残った深禍の残骸から、生み出された獣の顔が弾丸のように射出されて、少しずつ胴体を削っていく。
「《マジックワード》――"ストーム"」
「《ソウルフレイム》――"爆裂波動"」
そして、間髪いれずにスキルによって攻撃する。二つのスキルが混じって、炎が風によって旋回していき、直撃した足が少しずつ焼け落ちていく。
「斬撃装填」
そして、椎柴帆花は構える。刀身に再び光が宿っていく。
思いっきり踏み込むと、体が大きく跳ねた。
「《
振り抜いた刀が、深禍の体を大きく切り裂いた。
「最後に一発!《セイントアーツ》――"ジャベリン"」
上空に複数生成された、光の槍が一気に帆花の切り裂いた傷口に向けて突き刺さっていく。
「止めの一発!《サウンドウェーブ》――"クラッシュビート"」
凄まじい音によって発生される、圧力のようななにかを押す力が光の槍をさらに奥へと押していく。足が焼けて、切り裂かれた胴体の傷が少しずつ広がっていく。
やがて、体を保てなくなった混合型は、その場に崩れ落ちて、バラバラになって消えていった。
「なんか、呆気ない終わりだったね」
結局、傷つくこともなく戦いは終わっていく。
元々、マヒロとの一騎討ちのせいで混合型の体はかなり消耗していた。そこを一斉攻撃したことによって、体が保てなくなって消えた。
「……さすがに疲れました」
飯島夏音はへたり込んだ。そもそも、傷もろくに癒えていない状態で戦場を駆け回っていたせいで、彼女の体はすでに限界が近い。
「ボ、ボクも……」
同じく、無茶なスキルの使い方によって、マヒロの体も下手をすれば崩壊しかける寸前だった。渚とのコネクトリンクを繋いだことで、そこまで酷い結果にはならなかったが、それでも体をろくに動かせていない。
「……」
無言で、篠崎渚も膝をつく。明上蒼空から流れ込んでくる力の負荷が予想以上に大きかった。
「ごめんね、渚くん」
そんな渚に寄り添うように蒼空も座り込む。力を行使している時は気付いていないが、彼女も使いすぎで疲弊していて、気付かないうちに体が限界に近くなって、胸元が少し裂けていた。
他、三人はなんとか疲れているぐらいで済んだが、その場の面子はボロボロだった。
それでも、なんとか無事に過ごせたことに全員は軽く笑って顔を見合わせた。
第四深禍災害、長年脅威として君臨したそれは、その日に綺麗さっぱり消えた。
終盤なので頑張って毎日更新目指しています