ソシャゲの序盤で死ぬヒロインにTS転生したけど、とりあえず主人公くんをいじりたい 作:あまぐりムリーパー
第四深禍災害は、あの後すっかり収まってしまって、あれに占領されていた地域も解放された。
ボロボロだった私――明上蒼空も、無事回収されて、各地で戦ってた人たちも残っていた深禍を倒していったらしい。
みんな無事でよかったな、なんて思い浮かべながらベッドに寝かされてる。
なんか、この経験があるせいか、前みたいに急に凹んだりすることはなくなった気がする。
自分から、マヒロを助けようとしたからかな。
「蒼空さん、大丈夫?」
私と手を繋いだ渚くんが、心配そうにこちらを見た。あの時、力を使いすぎてまた体が張り裂けそうになっていたから、こうして入院に近い形で寝かされてる。
もちろん、治療が必要なのでコネクトリンクを繋いでる。
「な、なんかボクのせいで大事になっちゃった……」
横のベッドにはマヒロがいる。この子も、私ぐらい大きな影響を受けちゃったから、治療中らしい。
ただ、私みたいにコネクトリンクを繋いではないんだって。
「マヒロちゃん、あんまり突っ込んじゃ、めっ!ですよっ!」
その横に座ってるのは飯島夏音。聞いた話によると、出撃を停止する教師陣をはじめとした育成機関の人たちを脅すような形で、無理やり飛び出してきたんだって。やりすぎじゃない?
そもそも、体が治ってないのに。それだけ心配だったのかもしれないね。
「まっひーもだけど、夏音も相当だね」
「あなたたち二人がいたからこそ、倒せたとは思うけれど。ほどほどにしておかないと体が持たなくなってしまうわ」
怜菜と希沙も、お見舞いだと言って私たちのところに来てくれてる。みんな、よく頑張ってくれたな。
希沙は、すっかり本心から明るい表情を見せてくれてる気がする。原作と違って、あんまり渚くんにはアタックしてないな。
怜菜はカースシーカーになったきっかけの第四深禍災害がいなくなって、久しぶりに地元に戻ることができたんだって。
何もかも壊れてたけど、不思議と懐かしいって言ってた。
「本当に、振り回されるこっちの身にもなってほしいわ」
帆花も嫌味を言うようで、たぶん心配してくれてるんだろうな。ツンデレだし。
聞いた話だと、帆花は私たちのチームの一員になれてるのか不安だったんだって。言ってくれればいいのにね。
めちゃくちゃいじるけど。
と、そんな風にいい感じで終わっているわけですが、なんと私たちのチームは一旦休みになりました。
大きな戦いがあったのもあるんだけどね。それとは別に、渚くんに問題がある。
元々、コネクターはカースシーカー五人までを許容できるんだけど、例えば私がアバドンになってしまい、さらに今回はメガセリオン化したマヒロともコネクトリンクを繋いでたわけです。
そうなると、渚くんにかかる負荷が膨大になってしまうわけで、今回の渚くんは結構やばい状態になってた。
なので、それの治療とかもあり、当分は出撃できない。
その間も、私とのコネクトリンクは繋いでくれるらしいけどね。他の人とのコネクトリンクって手段もあるんだけど、やっぱ私の過去が流れてくるし……それと渚くんも自分がやるって言ってたから。
まあ、やってくれるのは嬉しいんだけどさ。無理はしないでほしいね。
それから、もう一つ。マヒロも特殊なカースシーカーの一人になった。マヒロのスキル特性上、取り込んだ深禍の力が残存しててすごい状態なので、どう扱うか悩んでるらしい。
なんなら、インストールしなくても獣の深禍の力を一部使ったりするんだって。どういう状態?
そんな感じなので、ややこしいから私とセットで扱うんだってさ。いいんだ、それ。
「にしても、マヒロちゃんとお別れで寂しいです」
「い、いやその……ボクなんかのせいでごめん」
「こら、卑下したら揉みくちゃにしますよっ!早くもふもふになってっ!」
「無茶言わないでぇ……」
飯島夏音に抱きつかれて、マヒロがワタワタしてる。なんか、この子だいぶおもちゃにされてないかな。
まあその。つまりはね、マヒロが新しいメンバーになりましたってこと。
うちのチーム、すごいことになっちゃった。本気出すと渚くんが大変だから、あんまり全力では戦えないんだけど。
まだ、これからもランヘリのストーリーはあるから、続いていくんだけど、大丈夫かな。
すっかり、原作から外れてぐちゃぐちゃになっちゃった気がしないこともないよね。
これから、どうなるんだろう。
そんなことを思っていると握っていた手から、渚くんの手がするりと抜けた。
ああ、もう今日は繋がなくても大丈夫か。
そう思っていると、頭に何かが触れる。これは、手かな。なんか、撫でられてる?
ちらり、と横を見ると渚くんが私の頭を撫でてる。えっ、何?
そのまま、髪を梳かすように私の髪を指の間に通していく。
「な、渚くん?」
「……ああ、ごめんつい」
「ついって何……?」
「蒼空さんの髪ってさらさらしてるなって」
いやその。髪の手入れとかは頑張り始めたっていうか、怜菜のせいでやらされてるところはありますが。
……言うても、元々さらさらだったかも。
いやいや、そんなことよりもこれは何?
しかも、やめないし。なんか、くすぐったい。
恥ずかしくなって、少しだけ鼓動が早まった。
ぺたり。今度は頬に触れた。そのまま、ほっぺをなぞられる。
「な、渚くんっ!?」
思わず少し跳ねた。
渚くんを見る。なんだか、楽しそうにこっちを見ていた。
「蒼空さんって結構、すべすべだね」
「あ、ありがとう……じゃなくて、急にどうしたの?」
頬が熱い。顔が耳まで赤くなってる気がする。
「なんとなく、触りたくなって」
言葉を失った。なんとなく、触りたくなった?
なんで?
疑問が頭の中でぐるぐると回る。頭の奥の方で熱いものが駆け巡ってるような気がする。
「……あんたら、何してるの?」
ナイス、帆花!助けて!
「ちょっと、蒼空さんに触れたくなったから」
「ほ、帆花助けて……」
視線で救助を求めてると、帆花がため息を吐いてこちらに来る。
「触りたくなったって何?」
「えっ、そのままの意味だけど。……そっか、確かになんで触りたくなったんだろう」
「知らないわよ。好きなんじゃない?」
投げやりに言う帆花の言葉に、渚くんは少し目を見開く。
「ああ、そうか。僕って蒼空さんが好きなのかな」
「みぃっ!?」
思わず、変な声が出る。ようやく触っていた手を離してくれるけど、心臓がバクバクしてそれどころじゃない。
「……あっそ、お幸せに」
「ほ、帆花!見捨てないで!」
私の呼び掛けも空しく、帆花は離れていってしまった。
「あれ、蒼空ちゃん真っ赤だけどどうしたの?」
「大方、篠崎渚のせいでしょう」
「さっき、サウンドウェーブで音を拾ってきたけど、告白紛いなことしてましたよっ!」
「こっ、告白!?蒼空ちゃんと主人公カプ……?」
みんなが騒いでる様子も、うまく耳に入らない。
渚くんの顔を、うまく見れない。
「蒼空さんは、付き合うのは半分本気って言ってたっけ?」
顔を上げると、いたずらっぽく笑う渚くんが見える。
「えと、その……本気?」
「どうだと思う?」
ずるい、と思う。
まだ、男と女が混じりあってて、ちゃんと一つになれてないような私なのに。こんなに鼓動が早くなるんだ。
「……勝手に触ってくるのはえっちだと思う」
どう答えたらいいかわからないので、とりあえず、見上げるような形で睨み付けた。なんだか、恥ずかしかったから、涙ぐんでいるような状態になってるかも。
「じゃあ、触ってもいい?」
「………………まあ、いいけど」
ぎゅっ、と抱きしめられる。渚くんの胸の中にすっぽりと収まるように。
触れあってる部分が、心地いいぐらいに暖かい。
こうしてると安心する。たぶん、渚くん以外ではこうはならないんじゃないかな。
なら、それはそういうことなのか。
みんなが騒いでる声も聞こえるけど、もう今はそんなことは気にならなかった。
伝わる鼓動の音だけに、耳を傾けた。
ご愛読ありがとうございました!
本編はいったんここまでとして、おまけを何個か出す形になると思います。
本来は一章で終わる予定だったので、ちょっと強引な話になってしまった気がしなくはないですが……
長編をちゃんと書くのは初めてだったので、完結するまでできてよかったです。今まで、感想評価の方、ありがとうございました。
では……