ソシャゲの序盤で死ぬヒロインにTS転生したけど、とりあえず主人公くんをいじりたい 作:あまぐりムリーパー
ぴとっ、と肩にくっつく柔らかい感触がした。チームの部屋で、僕が座っていると、蒼空さんが横に座ってきて、そのままもたれ掛かってくる。
「どうしたの、蒼空さん」
「寒いから」
と、頬を僅かに紅潮させてから、プイッとそっぽ向いた。この小動物みたいにくっついてくるところが、蒼空さんらしくて可愛い。
だって、これはたぶん寂しくて人肌恋しいみたいなものだと思ってるから。
「じゃあ、抱き締めた方がいい?」
「もう、渚くんはすぐそういうこと言うよね。今日はそういうのじゃないでしょ」
唇を尖らせて、ぽすっと軽く小突いてくる。その小さな手をなんとなく、握った。
抵抗することもなく、するりと指が絡めてくる。……こういうとこしてくるのは、相変わらずだね。まるで、癖みたいにこんなことしてくるんだから。
「蒼空さん、そんなに手を握りたかったの?」
「……なんか、こうしてると渚くんの手って大きいね」
「蒼空さんの手が小さいんだよ。体もそうだし」
「誰がチビか」
絡められた指が、するりと指が抜けていく。少しだけ名残惜しい。
――がらがら、と扉が開く音がした。
「あんたら、まだやってんの?」
呆れたように、椎柴さんがため息をついた。
今日は、出撃の予定があるからみんなで集まるはずなんだけど。僕たちが早めに来てしまったから。
どうせ、蒼空さんとはコネクトリンクを繋がないといけないし。
「まだとかじゃないし。じゃあ、帆花とくっつく」
「何言ってんの??」
「寒いから」
「着込みなさいってば。ちょっと!」
のそのそ、と動き出したかと思えば蒼空さんはそのまま、椎柴さんにくっつき始めた。……別に、僕のところにいたままでよかったのに。
というか、どうせならそのまま引っ付いていてほしかった。
「ほら、あんたの愛しの篠崎渚から微妙な視線来てるから」
「しらなーい」
「この甘えん坊、誰彼構わず甘えるのやめなさいって」
「帆花は、渚くんと違って慣れてないから味する」
「あんたねえ……」
強引に蒼空さんを引き剥がしたと思えば、キッとこちらを睨み付けてきた。
「ちょっと、明上の面倒ちゃんと見ててくれない?」
「って言われても。普通はコネクターはカースシーカーを止められないけど」
「都合よく、非力キャラしないで」
「非力なのは本当なんだけど」
「そういうのいいから」
確かに、椎柴さんはよく反応してくれてるかもしれない。……最初の方の僕は、もっと反応してた気がするし、そういう風に見えてたのかもしれない。
「あら、もう来てるのね」
「あ、あの……遅れました?」
西園さんと琴塚さんも姿を見せた。
「僕たちが早かったみたいだね」
「あなた、いつも明上蒼空と一緒にいるのね?」
スッと、琴塚さんの瞳が細められる。……これ、責められてる?
「たまには、私も明上蒼空を堪能したいのだけれど」
そういう感じ?
確かに、琴塚さんは蒼空さんに世話を焼くのが好きだしね。
西園さんはそろり、と入ってきて端っこにちょこん、と座ってる。
まだ、ちょっとだけ距離がある。チームとして、もう少し仲良くなりたいんだけど。飯塚さんが言うには、強引に行けばいいらしいけど。さすがにそこまではいけないかな。
ある意味、蒼空さんよりも繊細そうだから。
「あとは、希沙さんだけかな?」
「もういるよー!」
「おわっ!?」
急に、耳元で声が聞こえてきて思わず飛び上がった。……心臓に悪い。
「いつの間にいたの?」
「ん?蒼空ちゃんと帆花がなんか、わちゃわちゃしてるときにこっそりと?」
「なんでそんなことを」
「んー、篠崎くんがびっくりするかなって」
「びっくりしたけど」
段々、みんながいたずらっぽくなってない?
最初に比べると、だいぶ打ち解けてる感じはするけどね。
本当に、みんなとこうして過ごせててよかった。
「渚くん、そんなたそがれてる場合じゃないよ」
じーっと、蒼空さんがこっちを見る。たまに、僕が他の人と話してると、こういう風に見つめてくることがあるんだけど……嫉妬してくれてるのかな。自惚れじゃなければ、蒼空さんともそこそこそういう仲になってる気がするし。
でも確かに、こんな風に思考に没頭してる場合でもないか。
「そっか、今日は出撃なんだっけ?」
パッと、僕の後ろから希沙さんが離れてみんなの方に混じっていく。
「なんでも、少し特殊な深禍らしいわよ」
「なにそれ、また混合型とか深禍災害じゃないでしょうね?」
「た、たぶん違うと思うけど……」
おろおろしながらも、琴塚さんと椎柴さんの話に反応してるから、西園さんも慣れてきてるのかな。
「とりあえず、そろそろ時間だから出撃しない?」
という蒼空さんの声にみんな軽く頷いて、準備を始めた。
◇◇◇
――ぞわり、背筋に悪寒が走った。
瓦礫の山にチーム全員で来ていたところ、急に気持ち悪い感覚と共に、何かが落ちてくる。
これは――
「ミイラ男?」
そう、包帯でぐるぐるに巻いている。どう見てもミイラ男。
「うわ、出たよソシャゲの悪いノリ」
思わず、蒼空さんも素が出てる。
そういえば、ゲームの世界なんだっけこの世界。……ハロウィンに合わせたイベントってことだったりしないよね?
「《ソウルフレイム》――"爆裂波動"」
ゆらり、と動き出したミイラ男に――まっすぐと炎の玉が飛んでいく。
ごうごう、と燃え上がってバタバタと暴れている。……なんか、見ててあんまり気持ちよくはないかな。
「思わず攻撃しちゃったけどいいよね?」
「いいよ」
反射的に攻撃したくなる気持ちもわかるし。
「にしても、ミイラ男って変な敵だねー」
「……確かに、深禍はこの世界にあるものの形を取るって聞くけれど。こういう、モンスター的なものもありなの?」
刀を持ったまま、椎柴さんは困惑してるし。わからなくもないけどね。
にしても、本当にそういう敵かな?と空を見上げる。
すると、急にカボチャが降ってきた。当然、顔のように穴を空けられているものが。
そのカボチャの下から体が生えてきて、体になる。やっぱり気持ち悪いな。
「渚くん」
「"コネクトリンク"」
蒼空さんと手を繋ぐ。ぐっ、と何かが流れてくる感覚がした。
「《セイントアーツ》――"アロー"」
ばっ、と蒼空さんが手を上げると――空から一斉に光の矢が降り注ぐ。
のそのそと動き始めたカボチャたち……というかジャック・オー・ランタン?目掛けて放たれて、正確にその頭を撃ち抜いた。……頭でいいのかな?
それを合図に、一斉にみんなが動き始める。
「イーヒッヒッ!」
空を飛び回る魔女が笑い声を上げる。
「《マジックワード》――"ストーム"」
でも、すぐに琴塚さんの生み出した旋風に巻き込まれて、そのまま地面に追突した。……おかしいな、こんなに敵が弱かった時はあんまりないんだけど。
いやまあ、僕たちも結構強く放ってるかもしれないんだけど。それにしても、簡単すぎるというか。
「《インストール》――"
「《
ゾンビや吸血鬼のような深禍が、椎柴さんの斬撃にバラバラに切り裂かれていく。
そして、そこから漏れて近づいてきた敵を、西園さんが手を獣のように変化させて切り裂いた。
意外と、するっと戦闘が終わってしまったな。
「渚くん、イベントの敵なんかこんなものだから」
こっそりと近づいてきた蒼空さんが耳打ちしてくる。
「やっぱり、そういうやつだったの?」
「ハロウィンイベントの敵だよ。これを倒して落としたアイテムで、素材と交換するの」
よくありそうなシステム、なのかな?やったことがないからわからないけど。
「でも、こういうタイプのでよかった。敵も弱いし」
「こういうの?」
「イベントで、戦闘するだけのやつ。アイドルものだったら、絶対に私が歌って踊ることになってたから」
蒼空さんが、歌って踊る?
軽快に動きながら華やかな衣装で歌う蒼空さんか……結構ありだと思う。というか、見たい。
「アイドル系のイベントってないの?」
「ねえ、渚くん。なんで私にアイドルさせようとするの?」
「見たいから、かな」
「……大勢に見られるのはやだ」
それって、僕だけならいいってこと?
……危ない、あまりの可愛さに抱き締めそうになった。
「そうなんだ。じゃあ、その機会があったら僕にだけ見せてくれる?」
「アホ。見せねーよ」
あ、男の部分の蒼空さんが出てる。男の部分とか言ってるけど、どっちも可愛いだけなんだよね。
「お前、変なこと想像してる?」
「してないよ」
「ばーか」
ぺち、と額を弾かれた。
そのまま、蒼空さんはみんなの方へと走っていく。
これぐらい、緩い日々が続いてくれると楽なのに。
そんなことを思いながら、蒼空さんの背中を追いかけた。
早めのハロウィンです
またキリが悪い話数になってしまった
好きなキャラ
-
明上蒼空
-
篠崎渚
-
黒河希沙
-
琴塚怜奈
-
椎柴帆花
-
西園マヒロ
-
飯島夏音