ソシャゲの序盤で死ぬヒロインにTS転生したけど、とりあえず主人公くんをいじりたい   作:あまぐりムリーパー

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ちょい長め


主人公くんは暴走少女を救いたい

 チームが少しまとまったと思っていたら、いつの間にか明上さんと黒河さんの仲が少し変になっていた。

 ハイタッチまでしていたのに、どうしてしまったんだろう。

 

 具体的には黒河さんが、明上さんを避けている。……まあ、僕のことも避けているんだけど。

 

 と思っているうちに少しずつ酷くなっていた。黒河さんはいつの間にか一人で勝手に出撃したり、傷ついてる日を過ごしている。僕たちが何か話しても聞いてくれないことも多い。

 

 そんなことを考えているけど、今日も出撃の日だ。……黒河さんのことは心配になるけど、みんなと一緒なら下手な真似はしないだろう。

 

 僕の横には琴塚さんが立っている。遠距離で攻撃しながら僕を守る立ち位置らしい。……女の子に守ってもらって、戦えないのがもどかしくなる。

 

「コネクターくん、悩んでるねー」

 

 と、僕の顔を悩みの種の原因の黒河さんが覗き込んできた。少しだけやつれているような気がする。今日は少しぐらいは会話してくれそうだ。

 

 もう直接聞いてしまうか。

 

「黒河さんって、結局明上さんと何があったの?」

「……ストレートに来るね」

 

 予想外だったみたいで黒河さんも面食らっている。

 驚いた黒河さんを見るのははじめてだ。この人はいつも、ニコニコしてることが多いから。

 

「ずっと避けてるみたいだし」

「……別になんでもないよ」

 

 力が抜けたように黒河さんは笑う。いつもとは違う、陰りのあるような笑顔。

 

「……今回はコネクトリンクしてくれる?」

「それは遠慮しておこうかな」

「そろそろ、してくれない理由を聞いてもいいかな?」

「……どうでもいいでしょ。みんな、私と違うんだから」

 

 どこか投げやりで、消えてしまいそうだったから思わずその手を掴んだ。

 

「――触んないで」

 

 大袈裟にそれを振り払われる。

 

「深禍は私が全部倒すから、コネクターくんはユーリにずっと引っ付いて見てたらいいでしょ」

 

 今日の黒河さんは危うい。……でも、今の僕には何もできない。他のコネクターもみんな、同じような気持ちなんだろうか。

 

「あーあ、がっつきすぎだよ渚くん」

 

 悩みの種その2がやってきた。

 

「あんまり乙女の内心を暴こうとするとぷんすこなしちゃうからね」

 

 ぷんすこなんて言う可愛いものじゃないと思うけど。

 ……明上さんの表情も、いつもに比べて暗いような気がする。

 

「……私と希沙は、違うタイプだったってだけだよ。私は折り合いをつけてるのに、希沙はまだみたいだし」

「……どういうこと?」

「メンヘラ集団の本音を探るのは危険ってことだよ少年。なんとかしてって言ったけど、あんまりぐいぐい行くのもよくないってこと」

 

 聞いてもいまいちわからない。……明上さんはいつもよくわからないけど。

 

「明上さんはコネクトリンクする?」

「いや、今日はそういう気分じゃないかな」

「……気分で決めるものなの?」

「うーん、なんか……俺はまだおじさんだって意識が抜けない日もあるんだよ」

「おじさん……?」

「あー、待って。今のなし。ちょっとだけ気持ちを切り替えるね」

「ひぁっ!?」

 

 ふわり、と明上さんの髪から匂いがした。目の前に彼女の頭がある。

 急に僕の胸に飛び込んできて、背中に手を回される。

 

 バクバク、と心拍数が上がっていくのがわかる。……う、動けない。このまま、明上さんと一体化してしまいそうなぐらいに、感覚が曖昧になる。

 

「渚くん大好き、渚くん大好き……よし!」

 

 よくわからない呪文を吐いて、明上さんから解放された。えっ、なんか大好きとか言わなかった?……気のせいか。

 

 深く息を吸い込む。早くなっていた鼓動が元に戻っていく。

 ……心臓に悪い。戦いの前に倒れるかと思った。

 

「ベタベタしすぎよ」

「されてる方なんだけど!?」

 

 琴塚さんから冷たい目で見られた。……今日は明上さんがそういうことをしてくる雰囲気じゃなかったから油断してたかもしれないけど。

 

 ともかく、そろそろ戦いが始まる。気を引き締めていかないと。……あんまり僕ができることもないけど。

 

◇◇◇

 

 深禍の出現場所はランダムだけど、一度出た場所にはもう一度出てくることもよくあるらしい。

 

 今回も、前回蜘蛛のような深禍が出たときと同じ場所。

 

 瓦礫の山が見える。蜘蛛たちがわらわらと沸いてきてる。

 

「……《ソウルフレイム》――"爆裂拳"」

 

 直後、轟音が響いた。土煙で前が見えない。

 

 ――宙に舞い上がる黒河さんが見える。

 なんで!?

 

「はぁ!?」

 

 慌てたような明上さんの声を初めて聞いた。

 

 あの爆発するようなスキルで、跳び上がって敵に突っ込んでいったらしい。ちょっと、めちゃくちゃすぎ!

 

 そのまま、敵の群れに突っ込んでいく。着地と同時に大きな爆発が起こった。蜘蛛型の深禍たちが吹き飛んでいく。

 

 もしかして、黒河さんは一人で全部やろうとしてる?

 ……黒河さんは、ちょっと今日様子がおかしかったけど、本当に何があったの!?

 

「ちょ、ちょっと私も行ってくる!」

「待って、明上さん!」

「えっ」

 

 行こうとする明上さんの手を慌てて掴む。せめて、この人にはやらないと。

 びくり、と体を揺らした。

 

「"コネクトリンク"」

 

 手を通して、光のようなものが明上さんに流れていく。

 

「……もう、律儀だなあ。《セイントアーツ》――"アロー"」

 

 光の矢が、周囲に少しずつ形成されていき、それらが一斉に放たれた。

 

 爆発の影響で散らばった深禍たちに、矢が刺さって体がバラバラになって砕けていく。

 

 ……この人、遠距離攻撃も持ってるの?

 

「じゃあ行ってくるね!《セイントアーツ》――"ランス"」

 

 生み出した光の槍を掴んで、明上さんの体が大きく跳ねた。まだ遠くでは断続的に爆発しているのが見える。

 

「あははははっ」

 

 ――そして、大きく笑う黒河さんの声も。ガントレットから発する炎が、次々と爆発して、荒れ狂う獣のように暴れまわっている。

 

「コネクター、離れないで。私はここから援護しながらあなたを守るわ」

「わかった。でも……」

 

 黒河さんを放ってはおけない。明上さんに任せるしかないのか。何もできない自分が腹立たしい。

 

 爆発が止んだ。明上さんが接近する前に、黒河さんの周囲にいた深禍たちはいつの間にか倒されている。遠くに何体か散らばってはいるけど。

 

 ほとんど、黒河さんが倒してしまったらしい。

 

 遠くから見た、黒河さんの姿は煤にまみれていて、服装もボロくなってるように見える。きっと、無事ではないはず。

 

『君がなんとかしてよ』

 

 不意に、明上さんの言葉を思い出した。

 

 ――そうだ、僕がやることはひとつだ。

 

「琴塚さん、ちょっと援護してもらってもいい?」

「何をするの?」

「黒河さんのところに行く」

「……そう。それはなんでかしら」

「ちょっと思い出したんだ。傷ついてる女の子をそのままにしたくないから、コネクターになったんだって」

 

 思い出した。これが僕がコネクターになった理由。カースシーカーたちが戦っていくのを見て、なにかできないかとずっと思ってた。

 

 きっと、彼女たちも平気なふりをしてるだけで無事なわけがない。こういう気持ちも、余計なお世話かもしれない。

 

 でも、そんな女の子たちを放っておくなんて、できるわけがない。

 

「そう。意外とバカなのね、あなた」

「ははは、たまに言われるけど」

「でも、そういう真っ直ぐな気持ちは嫌いではないわ。このまま放っておいてもあの二人が全部倒してしまうでしょうけど、それを指咥えて見てるのも嫌ってことね?」

 

 ふっ、と琴塚さんが小さく笑った。その笑みに、大きく頷いて返す。

 

「行ってきなさい、コネクター」

「うん、助かる!」

 

 黒河さんの方に向けて走り出す。明上さんは、すでに散らばった深禍たちの駆除に向かってる。黒河さんも動こうとしてるけど、疲れているのか、ふらついてるように見えた。

 

「――ッ!」

 

 ――真横から不快な声が響いた。深禍がこんなところにいた、瓦礫に紛れて隠れていたのか。

 

「そのまま進んで大丈夫よ」

 

 直後、バチバチ――と稲妻が走る。僕に迫る蜘蛛の足が焼き払われた。

 

 ……琴塚さんのスキルって、氷だけじゃないの?電気もだせるんだ。

 

「渚くん!?なんでこっちに!」

「ごめん、黒河さんのとこに行く!」

「……あはは、最高だよ君!こっちは全部倒しておくから任せて!」

 

 残りは明上さんが倒してくれる。なら、僕は黒河さんに集中するだけでいい。

 

 カースシーカーは身体能力が高いけど、コネクターはそうでもない。だから、瓦礫の山を上るにも僕は時間がかかってしまう。

 

 もう目の前に見えていて、あちこち傷だらけになってる彼女のところまで早くいきたいのに。

 

 ふらり、と黒河さんの体が揺れる。歩こうとしているけど、足を痛めているみたいだ。

 

「黒河さん!」

 

 思わず声が出た。体が動く。無理矢理なんとか瓦礫の山を上る。

 

 黒河さんの虚ろな目がこちらを向いた。いつもの明るい彼女はどこにもいない。

 

「来ないで」

 

 熱気が頬を撫でた。ガントレットから、炎が出ている。僕の真横を炎が通りすぎていく。

 ガントレットから炎を放って、牽制してくる。

 

 それ、飛ばすこともできたのか。でも、止まるわけにはいかない。

 

 一歩進む。黒河さんが目を見開く。

 

「なんで、来るの」

「だって、黒河さんはもうボロボロでしょ」

「うるさい」

「僕にできるのはこれだけだから」

「来ないでって言ってるでしょ!」

 

 制止を無視して黒河さんの目の前に来た。やっぱり足を痛めててうまく動けないみたいだ。歩こうとして、すぐに止まってる。

 

 全身が煤で汚れていて、肩や頬、足元など様々なところが切れていて、傷だらけだ。

 

 彼女の手に、僕は手を伸ばす。振り払おうとするその手を無理矢理掴んだ。

 

「……っ!!」

 

 熱い。再びガントレットから火を吹く。でも、ほんの少しだけ。ただ拒絶するための火。僕を本気で傷つけるつもりはないってことだろう。

 

 手のひらが焼ける。熱い。でも、その手を離してなんてやらない。

 

「な、なんで……」

 

 黒河さんの瞳が揺れる。

 

「"コネクトリンク"」

 

 繋いだ手を通して、黒河さんへと光が流れ込んだ。

 コネクトリンクの治癒能力によって少しずつ、傷が癒えていく。汚れは落とせないけど、これでましになるはず。

 

 火が消える。がくん、と黒河さんが膝をついた。

 

「だ、大丈夫!?」

 

 なんとか抱き止めた。はらり、と黒河さんの髪がほどける。そのままなんとかその場に座らせた。

 

「そっちこそ、手のひら大丈夫?」

「うん、ちょっと火傷したぐらいだろうし」

「……バカでしょ、もう戦いほぼ終わってるのに」

「でも、黒河さんが傷ついてたから」

 

 黒河さんは黙り込んだ。そしてそのままうずくまる。

 

 さっきまでの、暴れてた黒河さんはもういなくなった。ここにいるのはただの傷ついた女の子だから。

 

「……ごめんね、痛かったでしょ」

「気にしなくていいよ」

「気にしてよ。私のせいだし」

「……でも、僕も黒河さんの様子が変だと思ってたのに放っておいたし」

「あーあ、気弱なだけの人だと思ってたけどお人好しだったかー。宛が外れたよ」

「どういう意味?」

 

 黒河さんが顔を上げた。じっとこちらを見つめる。

 そして、自嘲気味に笑った。

 

「私を死なせてくれなさそうだから」

 

 思わず、息を飲んだ。自暴自棄だとは思ったけどそこまでだとは。

 

「……そうだね。君が死んだら悲しいよ」

「……あはは、君みたいな人ばっかだったらよかったのに」

 

 力なく黒河さんは笑った。もう、戦う気持ちもないみたいだ。

 

「これで傷ついたままになっても、そのうち傷が悪化して死ぬかなって思ってたのに、そういえばコネクターは回復能力もあるんだったね」

「……目を離したら死のうとするとかはやめてね」

「しないって。君がまた無茶したら嫌だし」

 

 煤を払いながら黒河さんは立ち上がる。傷もだいぶ癒えてきたみたいで、歩けるようになったみたいだ。

 

「ユーリが君を気に入る理由もちょっとわかったかもね」

 

 そう笑う彼女は、少なくとも前を向いてくれそうだった。

 

「渚くーん!」

「コネクター、大丈夫?」

 

 遠くで明上さんと琴塚さんの声がする。戦いも終わったらしい。

 

「いこっか、コネクターくん」

「うん、黒河さん」

「……希沙でいいよ」

「えっ?」

「いつまでも、さん付けと名字じゃ他人行儀でしょ」

「いやその……」

「いいから!」

「……希沙さん」

 

 ムッ、と唇を尖らせる。だって、さん付けはちょっとやりにくくて。

 

「はあ、しょうがないなあ。――篠崎くん、ありがとうね」

 

 ぼそり、と呟く希沙さんは、乱暴に煤を払いながらすぐに顔を背向けた。その横顔は少し晴れやかだった。

 


 

[アーカイブ]

 

 黒河希沙:近接タイプのアタッカーです。

 

 好きなもの:わからない

 嫌いなもの:人間、深禍、この世界

 

 スキル:ソウルフレイム ガントレットから発する炎で相手を殴って爆発させる。

 

 性能

 ・パッシブスキル ヒートアップ:一定確率でノックバックを無効にする

 ・スキル1 爆裂拳 正面の敵に攻撃、大ダメージ

 ・スキル2 爆裂連打 周囲の敵に攻撃、中ダメージ

 ・スキル3 爆裂波動 正面の敵に遠距離攻撃、中ダメージ

 ・必殺技 爆裂龍撃 正面三列の敵に攻撃、大ダメージ




ランヘリは性能がふわっと書いていて、解析で倍率がバレるタイプのゲームです。

曇りそうな人

  • 篠崎渚
  • 明上ユーリ
  • 琴塚怜奈
  • 黒河希沙
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