「はぁぁ…」
エシュールは大いに悩んでいた。魔法学校の生徒は増えず、パンは食われ、家計は赤字の火の車。エルフィンに食われたパン代はしっかり教団から貰ってはいるが、それでも魔法学校を続けるにはあまりにもキツすぎる生活を送っていることには間違いなかった
「やっほ〜エシュール。今日もパン食べに来たぞ」
「教主様…」
「うわっ顔色悪くないか?何か体調でも悪いの?」
「いえ…はぁぁ……」
ため息…うーんこれは悩みを聞けって事だな?
「何を悩んでるのエシュール!いつも通りパ…魔法学校の校長として頑張ってやってるんじゃないのか?」
「教主様…生徒が居ないことには魔法学校もクソもないんですよ」
うーんそれはそう。だって私は今パン屋って言おうとしてたし。過去にブチギレられたから言い直す癖はついたけどね
「とは言っても前にも話してた通り、妖精は生まれつき魔法が使えて、魔法を知ってるけど使えない妖精なんて見たことないよ?」
「魔女もそうですし、エルフや竜族達にも恐らく使えません。精霊達は元々4大元素としての力があるので魔法は必要ないですし、幽霊はまた別の原理で動くみたいですし、獣人はそもそも覚えない!…もう、魔法学校辞めようかな…」
「そこまで悩んでるんだ…とは言っても私に出来ることもないしなぁ」
仮でいいなら私も習ってみるとか?もし魔法が使えたら凄く楽しそうじゃない?
「あ〜エシュール?」
「はい?」
「私、ちょっと魔法の勉強してみたいんだけど…」
「教主様がですか?うーん…まぁ、もし教主様が魔法の勉強をして使えるようになれば魔法学校としての功績になる…そして教主様が魔法学校の宣伝をすれば魔法が使えない他の種族が来てくれる…?なるほど、やってみましょう」
すごい打算的な事考えてたな。多分取らぬ狸の皮算用になるけど
「でもその前に魔法学校の入学金をこちらにお支払いくださいね」
「取るもんはちゃんと取るんだよなぁ…パン作りの時もそうだったけど」
「当たり前です!無料で知識を得られる訳がないんですよ!」
「はいはい。で、何ゴールド?」
「5万です」
「高っ!うーん…私の小遣いが…」
払うけどね。なんだかんだ言っても私は魔法が使いたいんだ
「ありがとうございます!では校長のエシュールによる授業を開始しますよ!」
ちょっと元気になったエシュールは、机と椅子を店の奥から取り出して、埃を被ってた黒板を前に出す
「いいですか教主様。まず、魔法はどんな物か分かりますか?」
「私が知ってる限りでは、物を浮かせたり、炎を出したり出来る便利な物?」
「それも出来ますが…理論的には元素や物体の構造を理解した時に、その現象を魔力で行使出来る物がおおよその魔法です。物が浮くのも炎が出るのも全て、魔力を使って風で浮かせたり炎を具現化しています」
「ん〜と…つまり、魔力がないと一切合切無駄な事になるよね?」
「まぁその通りですが。あれ?もしかしてこの授業意味ない?」
「まぁまぁ。普通にちょっと面白そうだから聞かせてよ。暇潰しにもなるし」
「まぁいいですけど…とにかく、妖精はこの魔法を本能的に使えるんですよ。でも、勉強をすれば色々な魔法が使えて生活は豊かになるはずなんですよ…でも、誰も来ません…うぅ…」
「まぁ…妖精って基本的には砂糖とかキャンディーの事しか考えてないもんな。ていうか、私の身近に居る妖精達みんな物理で殴ってないか?魔法の魔の字すらないけど」
思い返せば拳のエルフィン、斧のネル、爆弾のマリー、吹き矢のマヨ、交通事故のシュパン。そして人形で殴るクロエ…何で魔法使えるのに使ってないんだよ
「確かに魔法を積極的に使う妖精はあまり居ませんね…」
「でしょ?エルフィンとか頭が悪くなると強くなるとかいう意味が分からない性質だし…そうなると、魔法の勉強して賢いもエシュールって凄い?」
精霊を落ち着かせるみたいな魔法とか、シェイディのような異空間に対する既存の知識を使った思考とかも確かに凄かったよなぁ。知らないと出来ないだろうしな
「教主様…!私、今凄く感動しています!」
「え?」
「私が幾ら魔法を使っても、皆パンやケーキの事ばかり!私の魔法や知識に興味を持ってくれたのは教主様とサリーさんだけです…!」
サリー、とりあえず相槌のように褒めるしな…こんな所にも…
「いやでも、改めて妖精王国での暮らしを見てるとそうも思うよな。全員の関心は甘いパンとケーキだ。魔法を学ぶ気がないからそりゃ魔法学校に来ないわけだ」
「女王様も今の教主様くらい私の魔法に対して興味を持ってくれていたら、どれほどよかったでしょうか…」
「エルフィンがパンとケーキ以外に興味を持つとは思えないけどね…まぁ、なんだか辛気臭くなっちゃったな」
「はい…ですが、なんだか気分も良くなりました。一つお礼をしたいですね」
「え、いいの?じゃあ美味しいケーキが欲しいな!魔法の知識はちょっとだけだったけど面白い知識にはなったし。頭使ったら甘い物が欲しくなるよね」
「糖分は疲れに効きますからね。では、出来立てのチーズケーキとかはどうですか?作りますけど」
「ん〜…じゃあ、それにしようかな。エシュールも一緒に食べながらもう少し話しようよ」
「はい!」
おわり
魔法理論なんざパッションだよパッション!適当にいい感じの理由をねじ込んだだけで深い意味はないヨ