【青学三次】青学スパイ達の徒然なる日々【短編集】 作:VISP
「書いといてなんだが、マジでこれでいくつもりか?」
「マジもマジ。大マジよ。」
事の始まりは色彩撃退に成功して数ヶ月経とうという頃、現在キヴォトスの最高権力者と言っても過言ではないブルーアーカイブの原作主人公ことシャーレの先生が色々とあちらこちらで暗躍している青学へ公式に視察を要請した事だった。
悩みに悩んだ七武生、そして青学生達は考えた。
考えて考えて・・・これ以上は聖典に則る事が、原作に沿う状況構築が不可能であると判断せざるを得ないと答えを出した。
だが、キヴォトスには未だ滅びの種が尽きる事は無い。
雷帝派の残党にナラム・シンの玉座をハッキングする事で観測した地下生活者やデカグラマトンの鋼鉄大陸など、判明しているだけでも油断ならない者達、何より青学が組み込まれた原作とは異なるキヴォトスの存在。
それらに対応するためにはシャーレと各学園の生徒達だけでなく、青学の存続と発展による技術革新と戦力の確保が不可欠だった。
それらを実現するために、シャーレの先生とどう話し合うかが焦点となった。
「話は分かった。何とか書き上げるからお前らは準備を進めてくれ。」
「だが、今回の件が終わったらオレ達は全員休暇を取る。何があってもそれだけは邪魔するな。邪魔したらシャーレに亡命するからな。」
「前世で書き物が趣味だったり仕事だったばかりにこんな事に・・・オレらが何したってんだよもう・・・。」
やらかすスパイ共やガバる七武の尻拭い役ことシナリオライター達はげっそりとやつれながらも怒りと職業意識で心中を満たしながら、なるべく平静を装いながらそう告げた。
もう何度目か忘れてしまったデスマーチが始まった。
聖典の内容終わったのに唐突に訪れたデスマーチが終わったのは一週間後の事だった。
何故か途中で先生だけじゃなく外で他の学校の有志と組んで青学を攻めようと協議しているカヤピンクこと不知火新連邦生徒会長も参加する事になって修正する羽目になって発狂しかけたが、それでも何とか彼女らは職務を果たした。
勿論、脱稿して提出した後は全員ぶっ倒れて救護される羽目になった。
「よし、これならいける!」
「案内役はナゴミじゃなくてボクで良いんだね?」
「あぁ大丈夫だ。お前の声帯と前に担当したキャラの演技を合わせれば完璧だ。」
「勿論演劇部主導でギリギリまで指導はするから安心しろ。」
「ボク、声優は何度もやってるけど演技は初なんだけど!?」
「そんな君に神秘催眠!カールくんも今回ばかりは強制参加だから頑張ってね!」
「マジか・・・マジかー。」
「ロボ部長に感謝しなよー。そうじゃなきゃ単なる外道扱いでぶっ潰されちゃうだろうし。」
シャーレからの視察要請から10日後、遂に青学にシャーレの先生、そして不知火新会長が視察に訪れる事となった。
・・・・・・・・・・・・・・・
先生は青学内部の様々な事情を知り今後の判断を下すため、カヤは青学の接収のための理由を改めて得るため、信濃ナゴミを案内役として青学へとやってきた。
なお、先生は念のためにクロノスの生徒を連れて後日放送するか、案内の様子を生配信する事を提案したが、青学側は即座に「生配信でお願いします」と返答し、機材は全てミレニアムの誇る天才問題児共たるエンジニア部及びヴェリタスが部品単位で製作し、青学による工作が一切入る余地を無くしている。
更に、もしもの時は各校の先生を慕う精鋭選抜生徒達が突入して先生の身柄を保護する手筈になっている。
そうなればカヤが集めた各校の有志もまた青学に攻め入る予定になっており、現場の緊張感は凄まじい事となっていた。
「じゃぁナゴミ、案内よろしく。」
「よろしくお願いしますね、ナゴミさん。」
「任せて先生にカヤ会長。ただ驚く事が大量にあるだろうからその点は覚悟してねー。」
こうして、青学の準備したヘイローの浮いている自動運転の要人護送用装甲車に乗って、三人は青学の象徴とも言われる自治区を囲む巨大防壁の内側へと入るのだった。
「相変わらず静かで穏やかな街並みですね。」
「カヤは青学に来た事があったのかい?」
「えぇ、連邦生徒会長とリン代行と一緒に。あの時は不干渉条約の延長についての話し合いでした。」
その細目が向かう先はやや壊れ、未だ復興の中にある街並みか、それとも在りし日の過去か。
未だカヤをよく知らない先生にはそれを図る事は出来なかった。
「この辺は前にも来たから止まらずに先に行くね。」
「えー少し位は見ていっても良いと思うけどねぇ。」
音も、匂いも、空気の動きさえなく、誰も気付く事なく何時の間にかそこまで狭くはないが広くもない車内には4人の人影があった。
「な・・・!?誰ですか!」
「あぁ申し訳ない。挨拶が遅れたね。ボクは鳥養エミリ。ナゴミだと主観を交えた説明をしてしまうだろうからってカール理事から派遣された説明役さ。」
「よりにもよってお前かよ・・・。」
「君は甘過ぎるし、変に擁護しそうだからね。自分には厳しいのにねぇ。」
「余計なお世話だ。ったく、来たんなら仕事しろよ。」
先端が桃色に染まった白い長髪のツインテールと金色の髪留め、病的に色白な肌、そして真っ赤な瞳孔。
背丈や体型は特に特徴の無い平均的なそれで、服装も青学の一般制服という髪色以外はキヴォトスではそこまで目立つようなものではない。
しかし、その独特の雰囲気が先生の心をざわつかせていた。
今見せた車内への痕跡無き侵入もニンジャやセリナワープの存在から経験済みの先生だったが、それだけでは説明のつかないものを感じていた。
一方のカヤはこんな事が出来る人材を複数抱えていると聞く青学の層の厚さに改めて内心で舌を巻いていた。
「やぁ先生、初めまして。」
「初めまして、エミリ。私がシャーレの先生だよ。今日はよろしく頼むね。」
「任せてよ。ボクはまぁ色んな所にお遣いに行くのが仕事だけど、こういう事も偶にあるからね。」
にこにこと、穏やかに挨拶を交わす。
なのに、何故か先生の心が鎮まる事は無かった。
「ここは普段から外部の人にも解放してる第一城壁の中だけど、今日は最深部まで行くよ。普段は誰も入れないんだけど、今回は特別に案内するよ。でもその前に第二城壁の内側で、ちょっとだけ寄り道させてもらうね。」
「寄り道?」
「あー山海経の梅花園みたいな所だよ。カールくんは普段そこにいるんだ。」
「え?」
「青学の理事で、ゲマトリアなる怪しい組織の一員でしたか。」
「そう、青学の創始者にして理事。ボク達青学生にとっての親代わりさ。」
新幹線や電車の様に、自動運転の行き先が車内に設置された画面に「青学付属幼稚園」と表示され、移動する。
やがてボロボロだった他の区画と違い、殆ど損傷の無い区画へと入っていった。
「この辺は幼稚園や小等部があるエリアでね。特に守りが手厚い場所なんだ。だから街並みも他と違って無事なものが殆どだ。」
「まだ戦えない小さい子達が多いからな。普段は戦わない奴らも踏ん張ったんだ。」
「流石だね。」
「青学生の連帯感の強さが分かりますね。」
そうして車両が止まったのは青学付属幼稚園のプレートが貼られた、至極普通の幼稚園の前だった。
中からは幼い子供達の笑い声が漏れ聞こえてくる。
「この先にカール理事がいるよ。一旦降りるかい?」
「降りるよ。」
「一応言っておくけど、この辺で発砲は青学内でも特に厳しく禁じられてるから気をつけてね。」
「流石にこんな場所で撃ったりはしませんよ・・・。」
ナゴミ、エミリ、先生、カヤの順に装甲車を降り、幼稚園の敷地内へと入る。
そこで、先生は思いがけない光景を見る事となった。
「せんせー!かーるせんせー!」
「かたぐるましてよかーる!」
「かーるせんせーってほんとはおしゃべりインコマンなんでしょー?もっとおしゃべりしようよー。」
「すまない、今日はこの後用事が入っているんだ。遊ぶのはまた今度だ。」
「「「えーもっとあそぼうよー」」」
そこには黄色のスモックと青い園児服の幼児達が無邪気に戯れていた。
しかし、その相手が余りにも異常だった。
というか、カールだった。
筋骨隆々の肉体と何故か頭部だけインコの異形という、獣人が大人の市民として存在するキヴォトスでも際だって異常なゲマトリアらしい存在がそこにいた。
ただし、筋骨隆々の2m近い体躯をその辺の安物の長袖Tシャツとジーンズ、エプロンに包み、子供達に無邪気に懐かれている様子はその異形に比して余りにも穏やかで、平和で、尊いものがあった。
「む、来てしまったか。生身で会うのは初になるな、先生に不知火会長。申し訳ないが着替えてくるので少し待っていてほしい。」
「あ、うん、分かった。」
「え、えぇ、分かりました。」
先生とカヤ、思わず素直に返す。
異形と平和な日常との余りのギャップに少しフリーズしたらしい。
「まぁ初めてじゃ仕方ないよ。」
「2人とも、良いリアクションだね。中には泣いちゃう子達もいるから大したもんだよ。」
苦笑いするナゴミとエミリを余所に、先生とカヤは思いがけない光景に当惑するのだった。
○鳥養エミリ
名字の読みはとりかい。
本作オリキャラ青学生。
こいつが案内役として起用された理由はCV:加藤英美里だから
青学で大人気アニメの某キャラの声優役としても人気を博している。
その容姿と声帯から「TS人型キュウべぇ」と言われている。
保有する神秘は「不思議の国のアリス」に登場する「チェシャ猫」
青学スパイのよく言う「何処にでもいて、何処にでもいない」を体現するワープ能力を持つ
が、戦闘はからっきしで一般青学生並
何処にでも現れるので七武等から機密度の高い物品の運び役やメッセンジャーとして働いているが、メインは声優
案内役をするにあたり、インさんの催眠でキュウべぇっぽく振る舞うよう暗示が施されている