【青学三次】青学スパイ達の徒然なる日々【短編集】 作:VISP
本家様や他の三次作家様とは異なる独自設定等が出る可能性がありますが、予めご了承ください
「隔離区画と一口に言っても、複数の区画に分けられてるんだ。」
キリエの解説と共に、装甲車がゆっくりと第一区画へと入っていく。
ここは隔離区画内でも戦闘狂のランカー達が住まう終わらぬ闘争の坩堝にして蠱毒の壺の底。
闘争を求めて止まぬ者達の天国にして、平和を希求する者達にとってのこの世の地獄。
「正式な名称は別にあるんだけど・・・内実は見ての通りさ。彼女達は戦績によって区分され、ランカーと呼ばれているよ。ランキング下位なら多少は社会性が残ってるんだけど、上であればある程箍が外れてるから注意してね。」
装甲車が通っている道は一般的な道路ではなく、隔離区画同士を区切る巨大な防壁上の道だった。
ここならば余程の事が無ければランカー達に絡まれる事は無い。
その道の下では今この瞬間も平和ではなく、闘争を求める戦闘狂達がその闘争本能の赴くままに終わらぬ戦いに耽溺していた。
「これでも以前よりはマシになったんだよ。以前は外に戦いを求めて、紛争中のアリウスやゲヘナなんかに殴り込もうとしていたんだから。」
「・・・彼女達は、自分から望んでこうなったのですか?」
「勿論。ボク達は彼女達に対し、必要な時以外はここにいるよう要請しているだけで、戦い続けろとは一度も言った事は無いよ。寧ろちょっと困っている位さ。」
「何故彼女達はああなってしまったんです?洗脳や催眠ですか?」
「キヴォトスへの過剰な適応かな。元々の素養があった事は確かだったけど、暴力さえあれば大体何でも叶うキヴォトスの性質に適応し過ぎた結果がこれさ。」
既に経験済みの先生はただ黙って修羅の巷を眺めるだけだが、平和な青学しか知らないカヤは顔を青くして具現化した修羅道の光景を見ていた。
一般的に知られる青学生の特徴など、ここで笑顔で戦い続ける彼女達には一切当て嵌まらない。
撃ち、殴り、斬り、噛みつき、その他あらゆる方法と道具で戦い、時に打ち倒される彼女達はAEDと賦活材さえ叩き込めば即座に復帰してまた闘争へと臨む。
身体が、心が、魂が闘争を求めるまま、戦い続ける喜びに溺れ続ける彼女達に、カヤは青い顔で絶句するしかなかった。
「青学生と一口に言っても個性の塊さ。平和に青春を謳歌する事を願う者、尽きぬ闘争を求める者、果てない叡智を探求する者。共通しているのはキヴォトスが滅亡しては困るって点だけ。」
そして装甲車が闘争の場、ランカー達の区域を通り過ぎた後、キリエが申し訳なさそうに口を開いた。
「先生、申し訳ないけどこの先は一旦生放送は止めるか、音声だけにしてもらうと助かるかな。」
「? どういう事だい?」
「流石にお茶の間に流すには問題があるんだ。グロじゃなくエロな意味で・・・。」
解説役のキリエの言葉に、ナゴミがげんなりとした顔をして捕捉する。
「ここも隔離区画なのさ。変態達の収容所という意味でね。」
そこには、退廃の坩堝とも言うべき状況が広がっていた。
描写するだけでも完全にR18に引っかかりそうな特殊プレイが区画のあちらこちらで繰り広げられ、モザイク必須の状態が其処彼処にあった。
遠目だけでも分かる余りにもヤバい光景に先生とカヤは流石に完全に絶句しつつも何とかカメラのレンズを手で覆い、それ以上のソドムとゴモラな光景がお茶の間に流れる事は無かった。
「ちょっとちょっとちょっと!?何なんですかアレは!?どういう事なんですか!?」
「暴力溢れるキヴォトスに適応できなかった結果の一つだね。外の世界でも戦場で死が間近な兵士達が人肌の温もりを求める事はよくある事さ。」
普段の細目をガン開きにして詰め寄るカヤにキリエは目を逸らしながらそう返す、がその米神に汗が流れ落ちるのを皆見逃さなかった。
「単純にこいつらの殆どが変態の性犯罪者ってだけだよ先生。放っておいたらその日の内に捕まるからここに閉じ込められてるんだ。」
「一部スパイ先で調教された後遺症とか性魔術や産婦人科の研究者もいるんだけどねぇ・・・。」
「大体の人体実験の被検体はここか、スパイ先でやらかした奴なんかで調達される。流石に命の危険とかは無い奴だけどな。」
「後は希望者が治験のバイトで来るね。砲弾運びと並んで青学では時間辺りの単価の高い人気のバイト先だよ。」
「いや、もう少し自分の身体を大事にしてくださいよ・・・。頑丈だからって何しても良いって訳じゃありませんからね???」
死んだ目で真実を告げるナゴミに捕捉を入れるキリエ、そして弱々しく突っ込みを入れるカヤ。
相反する内容に聞こえるが、二人共この隔離区画の住民が変態である事を一切否定しなかった。
なお、生放送の視聴者は「やっぱり青学はレズの聖地だった!」と公式に判明したため、各所でお祭り騒ぎになっていた。
違うんです、ノーマルとか恋愛に興味無い勢もいるんです。
でも大量のレズが本当にいるんだろう?それはまぁ・・・はい・・・。
カールはただ遠くの空を見て無言を貫いた。
何か言ったらセクハラになる可能性があるからね、仕方ないネ。
「次行きましょう次・・・。」
「次は多少のハッチャケはあるけど基本まともだよ。ミレニアムに近い感じ。」
「研究区画だね。科学技術に神秘技術に医療研究等が纏められている特に機密性の高い区画だよ。」
「もしかして、偶に事故とか起きる?」
「起きるね。」
「一週間に一度は何かしら起きるよ。」
「クソ、まともな所は無いんですか!?」
「それは第二城壁まで戻ってもらうしかないねぇ。」
先生の疑問への解答に、カヤは頭を抱えた。
なんつーかもう・・・なんだこれ???と当初のプランとかなり違う状況にカヤは混乱気味だった。
そうして城壁の上を伝っていた装甲車だが、今度は城壁に着いている物資搬入用大型エレベーターに乗り、地下へと降り始めた。
「ここの殆どは地下か室内だからね。時間も押してるし、細分化された研究室や部活が無数にあるから、装甲車で入れる場所だけ見せて殆どは飛ばしちゃうね。ゆっくりめの視察がしたいならまた後日という事で。」
「まぁ流石に全部は回りきれませんか・・・。」
「後、馬鹿騒ぎしてる連中絞めておかないと変なもん見せてくるから・・・。」
「あぁ・・・うん。」
ナゴミの言葉に、先生はさっきの変態達みたいなのがここにも多少はいるのかと察してしまった。
違うんです大体はまともなんです。
でも時々ネオアームスト○ングサイク○ンジェットアームスト○ング砲みてーな真似をする馬鹿が現れるのでちゃんとチェックしておかないと色々な意味で危ないんてす(白目)
ちゃんと事前チェックしておけ?
やってても唐突にやらかす奴らなんだよ察してくれ(懇願)
「ここは魔術研究部のコーナーだね。資材搬入の関係で通路が広いから装甲車でも楽々さ。」
「あれは何です?ボードゲームですか?」
「占星術や八卦、タロットカードにウィジャボードにこっくりさんなんかを用いた占いによる未来予測だね。一つ一つの精度は低いけど塵も積もれば何とやら。複数の方法で無数の試行錯誤を行う事である程度大まかな観測や予測を立てる事は出来るんだ。」
「組織的にそんな事をしているとは・・・青学は聖典という未来情報を持っていると聞きますし、成果は上がってるという事ですか。」
「その辺は後で詳しく解説させてもらうね。」
本日は比較的まともな事をしている魔術研究部だが、ここの部員の一人は古今東西の性魔術を専門に研究している。
つまり、時折だが先程の変態用隔離区画にも出入りしている変態の一人だったりする。
「他にも錬金術研究部や素材開発部みたいに神秘技術か純粋科学かで別れてたり、共同研究をしている部活もあるよ。」
「同じ分野でもアプローチが違う訳ですか。この辺はミレニアム辺りが見たがりそうですね。」
なお、実際にミレニアム生達は「機密が見たいわ!もっと見せて頂戴!」とどいつもこいつも当初の予定を忘れて大興奮していた。
「お次は先生も大好きなロボ部さ!」
『究極★ゲシュ○ンストキーーーーック!!』
『ぐわあああアアアア嗚呼ッ!?』
ロボ部のエリアに入ったと同時、スピーカーで増幅された掛け声と共に装甲車の真横をキヴォトスで最も知られる青学製パワーローダーことATー01スコープドッグが悲鳴と共に横方向にすっ飛んでいった。
直後、轟音と共にスコープドッグは爆発、内部から座席ごと射出されたパイロットは高々と飛び上がった後に車田落ちで地面に突き刺さった。
そのギャグ時空染みた光景に、ナゴミは激情のままに外部へのスピーカーをONにした。
「おいこらロボキチー!!今日は危険な実験禁止だって言っただろうがぁぁぁぁ!!」
『お、ナゴミじゃーん。言われた通り実験じゃなくて模擬戦してたぞ。』
「客にとって危険だから駄目なんだよ!オレらも危なかったんだからな今の!」
『スマンスマン。んじゃ予定通り案内するから着いてきてくれや。』
右肩だけを赤く塗った専用のスコープドッグがロボ部の部室の更に奥の昇降機へと誘導していく。
『こっから先はガチで機密中の機密だったが、先日二度目のお披露目したからな。特別に限定公開してあげようじゃないか。』
AT一機と装甲車を載せた昇降機がゆっくりと下がっていく。
10秒もすると、彼ら彼女らの視界の先には巨大な格納庫が広がった。
広大な地下空間に巨大格納庫。
これだけで先生(とカール)の脇腹の浪漫回路がギュンギュン回り始めるが、それ以上にそこに格納された複数の機体の方へと目が釘付けになった。
「あの機体は・・・!」
「量産試作型のミステリーバトラーだよ。一機だけではどう考えても足りないからと漸く七武が頷いてくれてね。」
『全くだ。何が起こるか全部は分からないってのに、変に予算ケチるんだもんよアイツら。』
なお、七武生はこの件に関して「Fー22に匹敵かそれ以上の金食い虫を量産なんて出来るかぁ!!」「無い袖は振れないんだよぉ!!」「今期の予算使い切ってもまだ足りないって言うの!?」等の悲鳴を上げ、胃薬のお世話になっている。
「おおお・・・凄い、格好いい!!」
『と言っても肝心要のエンジンが一番高価な上に殆ど一品ものでね。正式な量産化はまだまだ先さ。』
「エンジンですか。あの規格外のロボの動力って一体何なんです?」
『ミステリー・コンバーター、神秘増幅器。つまりは増幅した神秘を動力にして稼働してるんだ。』
門外漢のカヤのある意味で当然の質問に、ATのパイロットはあっけらかんとトンデモ情報で返した。
『以前は増幅率0.01%未満の上にクソデカい代物だったがな。ブレイクスルーにより大幅な小型化に加えて投入した神秘を倍以上に増幅可能となった!それを動力にして駆動するのがこいつ、ミステリーバトラーなのさ。』
通常の発電方法では出力、何よりサイズが足りないし、バッテリーも論外。
そうなれば何であんな機体が動いているのか?
門外漢の専門外なりに連邦生徒会の軍事担当として相応の知見を持っているカヤは何とか今言われた言葉を脳内でゆっくりと噛み砕いて咀嚼し・・・そのトンデモなさに顔を青ざめさせた。
「あの、それって色々とヤバい代物だと思うんですが・・・。もしかしなくても永久機関って奴では・・・?」
『そだね。投入されたエネルギーを元の量より増加して吐き出す訳だから、熱力学第二法則ことエントロピー増大の法則に思いっきり違反してるぞ。』
「ついでに言えば、一度増幅した神秘を何回でも繰り返し増幅する事も出来るから、見方によっては熱力学第一法則ことエネルギー保存の法則にも違反するね。」
熱力学第一法則(エネルギー保存の法則)・・・何もないところから無尽蔵にエネルギーを作り出す事は出来ない。
熱力学第二法則(エントロピー増大の法則)・・・熱を仕事に変える際は必ず一部が別の熱として失われてしまい、吸収した熱の全てを変換する事は出来ない。
ミスティック・コンバーターは投入された神秘を数倍に増加させるため、第二法則を完全に逸脱している。
基本的にキヴォトスでは空気を含む万物に多寡はあれど宿る神秘をエネルギー源にしている点を見れば、ここキヴォトスに限れば第一法則にも抵触していると言える。
「これぞ神秘技術と科学技術を合わせた果てに結実した青学最大の発明の一つ。第二種永久機関たるミステリー・コンバーター。生徒の持つ神秘を無尽蔵に増幅し、強化していく事が出来る。」
『現在は量産化に向けたコストダウンや安定化、生産性の向上が主眼だが、将来的には自治区全域の発電なんかにも応用する予定だぜ。』
「ねぇこれ見せちゃいけなかった奴なんじゃないですか!?ねぇ!?ちょっと!?!?」
カールとロボキチの解説を聞いたカヤの叫び声と突然お出しされた余りにも驚異的な情報に、キヴォトス中が困惑と驚愕に包まれる事となった。
予想の遥か彼方イスカンダルまでぶっ飛んだ代物の初公開にミレニアムを始めとした技術者勢、そして先生の生映像を注視していたゲマトリアは驚愕と歓喜によって爆発的に沸いた。
なおこの後、電力やエネルギー関連株は青学関連企業が暴騰、それ以外が奈落の底まで急落するという異常事態となり、エネルギー産業関係者と連邦生徒会含む各自治区の財務関係者の胃が死ぬ事態となった。
Q、見せて良かったの?
A、本家様や余所様とは関係ないIFルートだからへーきへーき
Q、攻め込まれない?
A、今でもキヴォトス全部返り討ちできるプランあるからダイジョーブダイジョーブ
Q、これ何時終わるの?
A、もう3~4話の予定