【青学三次】青学スパイ達の徒然なる日々【短編集】 作:VISP
本家様や他の三次作家様とは異なる独自設定等が出る可能性がありますが、予めご了承ください
「さて、次は現在保安部や防衛部向けに配備している最新兵器の生産ラインになるよ。」
ちょっと人類史上でも最上位の一つにランキングしちゃう様な発明の公開にキヴォトスが騒然とする中、青学内部の査察は続く。
なお、はえーすっごいと圧倒されている先生に対し、カヤは驚きと想定外の連続に冷静に脳内ソロバンを弾いていた。
(駄目ですね。どう考えても私の、連邦生徒会の手に余る。)
利益は莫大なものが見込めるだろう。
だが、莫大過ぎて身を滅ぼす類いのものだ、これは。
正しい持ち主か、相応しい持ち主でない限りは破滅を呼び込むだけだ。
前者は青学、後者はあの連邦生徒会長の様な超人レベルの者だけ。
そして、自分はそうではない。
ただあの人の輝きに脳を焼かれ、ここまで駆け抜けてきた多少出来る程度の凡人に過ぎないと客観的に自身を俯瞰しているカヤは当初のプランを完全に棄却し、集めた烏合の衆を納得させる材料をどう集めるかに思考を傾けていた。
このカヤの客観性と自己評価もまた、彼女の下に就いていた青学スパイとの交流の結果なのだから、やはり青学のやらかしは根深い。
(ここまで大っぴらに見せたという事は、これ以上の何かが絶対にある。)
切り札を切る時はそれ以上の切り札を持つ。
この手の交渉事での鉄則の一つだ。
そして、青学という底知れぬ連中は幾つ札を持っているのかカヤの常識では計り知れない。
(最低限元スパイ達の再派遣や留学さえ呑ませれば目的は達成できるんですけどねぇ。)
さーこっからどうっすかな・・・とカヤが頭を悩ませ続ける中、ロボ部の管轄する格納庫から少し移動すると、巨大な生産ラインが見え始めた。
「これは・・・多脚戦車、いえ戦闘車両ですか?」
「戦車という程の装甲は無いからそれで合ってるよ。主に防衛部や保安部向けの機体さ。」
「その割には搭乗用のスペースが見当たりませんが・・・?」
「これは基本無人機だからね。搭乗用のスペースはオプション装備なんだ。」
今も稼働中の巨大な工業生産ラインで製造され続ける多脚戦闘車両に、カヤは疑問を抱いた。
キヴォトスにおいて、戦車や戦闘車両の類いは出回っているが、開発は余り盛んではない。
一部の有力者や大企業、大自治区では運用されているが、主に歩兵の運搬や火力支援が目的であり、主力兵器とは成り得ない。
と言うのも、費用対効果という点で雑に頑丈でタフな生徒を運用した方が遙かに安いからだ。
キヴォトスでは生徒こそが主権者であり最高権力者という歪な社会構造も、その強さが故だ。
一般的な大人ではどんなに重武装した所で、それが例え重戦車や大型パワーローダーだろうが一定以上の数や質の生徒相手では蹂躙されてしまう。
だからカイザーやミレニアム、青学の様な技術力に定評のある勢力や雷帝の様な超人でもなくば、そういった装甲兵器を新規に開発したりはしない。
この辺の道理を覆す方法として、生徒を搭乗者として長期間運営する事で銃と同じように神秘を込めるか、製造の段階でオーパーツ等を多数組み込む等の手段があるが、やはり費用対効果の点で生徒を普通に運用する事に劣ってしまう。
そんなキヴォトスの常識の中で無人戦闘車両、それも比較的軽装甲となると違和感しかない。
しかし、その違和感から凄い嫌な予感をカヤは感じ取っていた。
『そこから先は私が説明させてもらいます。』
車内の画面が再び切り替わる。
映っているのは一人の少女だが、何処かおかしい。
「君は?会った事無いよね?」
『はい先生。私は数ある青学のAIの一体です。今この装甲車の運転を担当させて頂いています。』
「AI・・・ミレニアムのそれとは大きく先進していると聞きますが、ここまでの事が出来るのですか・・・やはり何か特別な事しているのですか?」
おかしさの原因、それは画面の少女が一度も瞬きをしていない事だ。
それも当然、彼女は生身を持たず、瞬きの必要が無い存在なのだから。
AI分野は純粋科学技術ではキヴォトス一を誇るミレニアムが青学に後塵を拝する数少ない分野の一つだ。
他には航空機のエンジン開発・製造や航空宇宙産業が該当する。
しかし、基本科学技術はややクラシカルな青学において、このAIもまたただの人工知能ではなかった。
『はい不知火代表。私達は通常のAIに青学の神秘共有術式を適応する事によってヘイローと一個の人格を発現した特別製となっています。』
「はい???」
ゆっくりと走行する装甲車の隣を多脚戦闘車両が同じ速度で随伴する。
まだ未武装のそれらは搭乗用のスペースが無い無人であるにも関わらずに頭上にヘイローを点していた。
『我々は青学生の隣人として彼女達を支援するために生み出されました。私達に肉体はありませんが、その分容量さえ確保出来ればあらゆる電子機器の中に入り、ヘイローを発現させた状態で動かす事が出来ます。それは勿論、この装甲車でも今併走しているロジコマ、量産型多脚戦闘車両も該当します。』
カヤはゆっくりと今青学AIを名乗る少女の言葉を咀嚼した。
そして、ザァッと顔色を青ざめさせた。
「待って、ください。貴方達、今AIと言いましたね?」
『はい。私達は青学のお友達を支えるAIです。』
「貴方『達』。つまり複数いて・・・量産可能ですか?」
『はい。私達は演算リソースさえ確保できれば、電子上で上限なく株分けが可能です。』
カヤは天を仰いだ。
先程の第二種永久機関ミステリーコンバーターを搭載した戦略級ロボット兵器ミステリーバトラー所の話じゃない。
もっともっと分かりやすい、物量の話だ。
青学は資源と時間さえあれば、文字通り無尽蔵の兵力を用意する事が出来る。
三大自治区も連邦生徒会も、その国力は生徒の数に大きく影響される。
先程も言った様に下手な装甲兵器を作るよりも費用対効果の点で生徒を一人でも多く確保した方が強いのがキヴォトスの軍事の常識だ。
戦闘能力の高い生徒であれば尚更に。
近年はミレニアムや青学、雷帝時代のゲヘナの様な技術力の高い学園の台頭によってその論理は崩れつつあったが・・・ここに来て、それは完全に崩壊した。
一体辺りの戦力換算は不明であるものの、こうも巨大な生産ラインまで敷設して製造しているからには単体でも相応の戦力なのだろう。
これでカヤのプランである複数の自治区から有志を募って数の暴力で青学を脅迫して譲歩を引き出すプランは完全に潰える事となった。
まだ十分に生産してないかもしれない?
じゃぁお前その可能性に賭けて突けば藪から蛇所かランカー共とかミステリーバトラー部隊が出てくる青学に攻め込む訳?
自殺志願なら頼むから一人でやってくれ。
おまけだが、ミステリーコンバーターを神秘共有術式と直結すると術式で共有している神秘の総量までもが劇的に上昇し続けるため、幾らAIや無人兵器を増やした所で個々人の神秘が薄まる事なく、寧ろ強化されていくので、カヤの予想は正鵠を射ていた。
『量産型多脚戦闘車両コマシリーズの防衛部仕様ロジコマは青学式戦力換算において平均的な生徒5人分に相当します。現在は既に約100両が配備完了し、現在も量産中です。』
「あぁ、はい・・・ありがとうございます。」
うーん、これはもう詰みですね(白目)
細目で分かりにくいが、カヤは白目を剥いて自身の政治生命がどう考えても終わった事を悟った。
この後、青学に制圧されても詰みだし、ここを無事に出たとしても烏合の衆からヤバすぎる青学に喧嘩売った責任を追及されて人身御供、スケープゴートとして失脚するだろう。
クーデターで追い遣った七神リン代行らも全力でそれに乗っかるだろう。
うん、どう考えても詰みだわ(白目)
『そう言えば、不知火代表は青学の神秘共有術式の技術提供を要請との事でしたね。』
「あ、はい。そうでしたね。」
仕方ねぇ、プランBに移行するか・・・とカヤが内心で算段を立てていた所、AIの方が話を進めてきた。
今思い返せば余りにも命知らずな要求に、過去に自分に「止めとけ。その先は地獄だぞ・・・!」と言いたくなってくる。
が、覆水盆に返らず、後悔先に立たずとはよく言ったもので、最早事態はカヤの意思で止められない所までとっくに進んでいた。
『現行の青学の神秘共有術式では、一般的なキヴォトスの生徒さん達に適用する事は残念ながら幾つかの技術上・安全保障上での問題から不可能となっております。ご了承ください。』
「ん?そうなんですか?」
『はい。申し訳ありません。』
神秘共有・並列術式。
青学生を青学生たらしめる術式であり、身体強化や洗脳効果を持つと真しやかに囁かれてきたソレ。
しかし、どうやら思ったよりも都合の良いものでもないらしい。
「したくないからじゃなく、出来ないという事かな?」
『はい先生。詳しくはキリエさんがこの後ご説明してくださる予定です。』
「分かった。ありがとう。所で君達って名前はあるのかい?」
『ある子もいますが、無い子もいます。大体は一番仲の良いお友達がシリアルナンバーなんかを捩って名付けてくれますけど、時々シリアルナンバーで呼んでほしいって子もいますね。』
「そっか。じゃぁ君の名前を聞いて良いかな?」
『はい。私の事はSTAR-15とお呼びください。』
「うーんそっちだったかー。」
まさか自分の乗っている装甲車両を運転してくれる青学AIがシリアルナンバー呼び勢だった。
完全に生徒達とは異なる、しかし決して悪性ではないキヴォトスの新たな住人に先生は目を白黒させた。
『それでは次は医療区画に参ります。そちらではキヴォトス最新の医療及び関連施設のある区画のため、お静かにお願い致します。』
こうして、青学AIの操縦する装甲車は青学の隔離区画の更なる奥地へと進んでいくのだった。
便利なものや技術なんでものはなぁ!活用してなんぼなんだよぉぉぉ!!という私の思想からこのお話は出来てます。
基本的に本家よりも青学が技術が先進していたら?というIFと他作者さん達の設定をコネコネして構成してるので、もう暫くカヤと先生にはびっくりし続けてもらいます