【青学三次】青学スパイ達の徒然なる日々【短編集】 作:VISP
本家様や他の三次作家様とは異なる独自設定等が出る可能性がありますが、予めご了承ください
「それじゃぁ査察の続きを開始するよ。行き先は青学の行政区画、その中枢たる本校だよ。」
こうして、昼休憩を挟んだ査察一行は移動を再開した。
目的地は青学本校、今まで誰も知らなかった青学の中枢である。
「青学の本校ってどんな所なの?」
「普通の学校だよ?確かにカリキュラムには神秘関連のものが含まれてるけど、それ以外はキヴォトス基準でも普通の学習内容しか教えてないよ。」
「ただ本人の選択科目の範囲が広いから、結構学力にはバラつきがあるね。他じゃない科目として神秘科があって、基礎は全員が必修科目だよ。神秘研究や保安部や防衛部所属、スパイ志望の子なんかは更に個別に本人の神秘の適性を見て追加訓練があったりする。」
ナゴミとエミリの解説に、神秘に詳しくない先生とカヤはほえーとなる。
まぁ二人共全く詳しくない分野なので仕方ないが、研究者の集まりであるミレニアムでは「如何にして神秘を科学的に分析するか」で持ちきりだった。
「行政区の仕事は文字通り青学自治区全体の行政に関する事務仕事だよ。司法・立法はまた別口の委員会が存在するね。」
「特に司法委員会は七武生でも違法と判断されたら逆らえないからな・・・覚悟決まり過ぎてて怖いよ。」
「アビドスのために片手片足吹っ飛ばした君がそれを言うのかい???・・・まぁ彼女達に前科付けられるよりは粛正受けた方がマシだけどね。」
「二人がそこまで言うんだ・・・。」
「うーん、青学の自治区法は余り詳しくはないんですが、そこまでのものでしたか。」
実際、司法委員会の世話になる生徒は稀も稀である。
大体の生徒は重大なやらかし、特にスパイ先や他校相手の場合は七武生の下で粛正等の罰則を受けるのが常だ。
ただし、相手が青学同士でどうしても本人同士の話し合いや上役の生徒の仲裁で収まらない場合は司法委員会に判断を委ねられる事もある。
こうなると前世弁護士だったりするガチ勢や神秘が法や審理に関する青学生による裁判が開始される。
彼女らは全員が自治区法と己の良心に従ってのみ判決を下すため、七武生でもその判決を覆す事は出来ない。
これは権力の暴走を抑えるための万が一の手段であり、立法を担当する法務委員会と併せて行政・司法・立法の三権分立を構成している。
「一番人数が多いのは自治行政委員会だけどね。何せ分校の仕事の一部も担当してるし。」
「マジで仕事多いから人海戦術でやるしか無いんだよな・・・。他の自治区みたく優秀な一部生徒だけじゃどうしようもない。」
「そうそう。広大となった自治区及び分校の一部の仕事までやる訳だから、業務を細分化して色んな委員会や部活に仕分けしたんだけど、事務方は人数も相まって本校で一元管理した方が連携もしやすくてね。その分専用の箱物も貰えたけど。」
「アレが事務方用の建物だよ。極普通のビル。部外秘の書類が多いから中までは勘弁してね。」
ナゴミとエミリの示す先、そこには一見して極普通の高層ビルがあった。
階層は30階建てほどだろうか?見える範囲でも生徒達が足早に移動している様子が窺える。
もし先生達が中に入れば、ブラック企業も斯くやという具合に只管に仕事を熟し続けている多数の生徒達の姿を目撃した事だろう。
しかし、先生達はここに入る事は無く、彼女らの業務が改善される事は無かった。
一応、毎日疲労困憊になるまで働いている彼女達が、先生と違って寝不足にも健康診断で引っかかる様な体調でもない。
足りない睡眠時間はタンクベッドによる圧縮睡眠、体調不良も総合医学部などによる青学式神秘治療によって完璧に治療され、病欠や寝過ごしからの遅刻など万が一にも有り得ない。
そもそも内部にある事務方専用宿泊施設(タンクベッドやカプセルホテル等)によって外に出る事は殆どない缶詰式なので、遅刻は勿論AIちゃん達の万全なスケジュール管理によって寝過ごす事も出来ない構造となっている。
ここで過ごす期間中、彼女達は日の光に当たる事もなく、生徒らしい青春の日常を過ごす事も出来ず、只管毎日書類仕事をこなし続けるだけとなる。
・・・・・・もしや矯正局よりも刑務所してませんか此処???
勿論そうなれば脱走しようとしたり発狂したりする者も出てくるのだが、前者は周囲を警備する自治行政委員会の実働戦力である執行部により捕縛され、後者は待機している総合医学部により「救護!」される。
うん、やっぱり下手な刑務所より刑務所してるわ。
「元スパイの事務方やってた子達なんかもあそこにいるよ。先日、エデン条約前に緊急離脱してきた烏丸ヤハタなんかもここで働いてるよ。殆ど休み無しだけど。」
「え、何でそんな事になってるの?」
「彼女、カール理事の指示も無視してテストぶっちからの補習授業部入りとかなりやらかしたからね。故意じゃないけどミスはミスだから、粛正はせずに離脱にかかった費用を此処でのバイトで返済中さ。」
烏丸ヤハタはエデン条約やそれ以後のキヴォトスで重要な立ち位置となる補習授業部に故意ではないとは言え入部した事で、七武生(主に保守派)からどえらい雷を落とされ、ここへぶち込まれた。
やらかしの余波がどれだけになるか予測が付かないため一度は返されたものの、色彩戦における神秘共有術式の汚染対策を契機に他スパイ共々トリニティから撤退している。
現在は離脱に掛かった経費を返済すべく、行政委員会を始めとした事務方でみっっっっちりバイト漬けの日々である。
「一部で誤解があったから言うけど、外から急遽戻ってきた青学生は申請すれば生活補助金が貰えるし、足りなかったら髪の毛や羽根の一部、血液なんかを問題無い範囲で採取して魔術研究会や錬金術研究会なんかに素材として売ったり、軽度人体実験である治験や砲弾運びのバイトをすればお金は簡単に工面できるんだ。ただ、この補助金申請を青学内ではゲーム用語から取ってゴミ箱漁りと呼んだり、身体の一部を売る事を身体を売るなんて言い方するもんだから誤解が生じてしまってね。離脱しようとするスパイを守らなきゃってこっちに戦闘を仕掛けてくる事件もあったんだ。」
「具体的にはこれ位になるよ。」
「うっわぁ・・・これ学生が返せるの?」
「ちゃんと真面目にみっちりバイトすればね。」
なお、お値段はトリニティの生徒ならまぁギリ即現金で返せる程度のお値段である。
試作のステルスヘリの運用費とパイロット、そして何よりキヴォトス最強格に比肩すると言われる七武生と試験中の護衛として雇われた二名の人件費と考えればこれ位の値段にはなろう。
このまま事務方のバイトを続ければ半年以内で返せる範囲なので、是非このまま頑張ってもらいたい。
そんなこんな解説を交えながら、装甲車はゆっくりと行政区画を進んでいき、遂に青学の中央部へと到着した。
「お、話の途中だけど見えてきたね。アレが青学本校舎だよ。」
「アレが・・・。」
そして見えてきたのは第一区画の中央に位置する本校舎、文字通りの青学の中枢だ。
だが、その校舎は他の三大自治区とは大分趣が違っていた。
「何というか、その・・・。」
「素直に言って良いよ。地味だって。」
「実際僕らもそう思うけど、人に余り見せない校舎を派手にする趣味は僕らには無くてね。」
屋上に設置された様々な高性能であろう通信設備や周辺に配置された隠れ武装ビルを除き、その校舎はごく一般的な飾り気のない箱形の建物が4つあるだった。
サイズこそちょっとしたビルやマンション並に大きいものの、派手さは一切存在しない。
極普通の、当たり前にある学校だった。
「校舎自体は少し大きいだけの箱物さ。」
「緊急時向けの指揮中枢は地下部分にあるから、上はマジで生徒達の学業向けのスペースでしかない。」
「通常のBD学習だけじゃ上手く進められないって事で教員も出入りしてるけど、それ以外は大きさ以外は本当に極普通の学校だよ。」
「そっか・・・青学の皆もちゃんと青春しているんだね。」
良かった良かった、と先生は頷く。
「部活や研究会なんかはここの周辺か研究用の区画にあるよ。部活をしてない生徒は青学で出してる各種短期バイトの他に第一城壁の方の一般解放区でのバイトなんかをしてるね。」
「ホントーに凄い数の委員会と200を超える部活動があるから、全体を把握してるのは七武生や極一部だけだ。だからミレニアム程じゃないけど偶にやらかす生徒が出るんだわ・・・。」
エミリの解説を溜息をつきながら補足するナゴミ。
うんざりする程やらかす隔離区画の狂人共を相手にしていると、マジで外の生徒達の方がまだ矯正の余地がある分気が休まるのだ。
「中も見ていく?特に面白いものは無いけど。」
「勿論。お願いできるかな。」
「外部の人を本校舎内に招くのは先代の連邦生徒会長達以来だね。皆ビックリしちゃうかもね。」
「私は前回も入りましたけど・・・以前より校舎増えてません?」
「長期のスパイから戻ってきた子達の分だね。迂闊に生徒数を開示したり推測できる証拠を置いておくと何人のスパイがいるかバレないにしても推測されちゃうからね。」
「なんでそんな所だけガチなんですか・・・。」
こうして、先生達は青学本校舎内部へと入っていった。
丁度休み時間なのか、生徒達の多くがのんびりと寛ぐか次の授業の準備等、それぞれ様々に動いていた。
楽しげにお喋りする生徒、難しい顔をして教科書を睨む生徒、次の授業の予習をしておく生徒、課題の存在を忘れて慌てる生徒と、その様子は様々だ。
また、そんな彼女達と話しているスーツやジャージを着た教員達の姿もあった。
彼女らもまた生徒同様の特徴を備えた美人揃いであり、頭部の上に点るヘイローも相まってその姿は年の差のある友人か或いは姉妹にしか見えない。
そう、生徒ではないのにヘイローを持ったキヴォトス人がいるのだ。
「は?」
「ひ?」
「ふ?」
「へ?って何言わせるんですか先生。」
「いや、でも、え???」
先生の疑問は尤もだった。
何故、ヘイローを持った大人がいるのか?
キヴォトスの市民達、大人は全て獣人かロボットであり、人の姿をした者は一人もいない。
例外は外の世界から来た先生であり、異形のゲマトリア達だ。
しかし、ここ青学の本校舎には教員として働くヘイローを持った女性達がいる。
先生とカヤは勿論、生中継先のキヴォトスの人々も頭上に疑問符を浮かばせている。
「彼女達は既に全てのカリキュラムを終えた、本来なら卒業している筈の青学生だよ。」
その疑問に、エミリはあっさりと答えた。
「先生、ボク達青学生はね、卒業できないんだよ。創立から今日まで、誰一人としてね。」
その衝撃の事実が、キヴォトス中へと伝わった。
明かされる衝撃の事実ゥ!
本家の設定如何では筆折る原因ですが、IFルートなのでヨシ!