【青学三次】青学スパイ達の徒然なる日々【短編集】 作:VISP
本家様や他の三次作家様とは異なる独自設定等が出る可能性がありますが、予めご了承ください
なお、BGMは青学スパイ(背景音楽部)によるキュウべぇの営業テーマでお送りしております
「待ってください!時系列がおかしい!青学は15年前に出来たのでしょう!?なのに何故そこで会長が出てくるんですか!?」
不知火代表が必死に前会長の擁護を行う。
それは尊敬する上司のためか、自分の所属する組織のためかは分からない。
だが、彼女なりに必死に前会長を庇っているのは確かだった。
「先生はもう知っている筈だよね?あの空が赤くなった日に現れたアレの事を。」
「アトラハシースの箱船、だね。」
「その通り。」
部屋の画面が再び切り替わる。
そこは高度7万5000mというほぼ宇宙空間(空と宇宙のほぼ中間の中間圏)に浮かぶ巨大な要塞の姿が映し出された。
「無名の司祭達の作り出したオーパーツの一つ。サンクトゥムタワー、シッテムの箱、そして僕らもまだ見ぬシャーケードの杖。数々のキヴォトスの根幹を構成するオーパーツに並ぶあの箱船には多次元世界を観測し、今存在する時間とは異なる時間軸へと転移する機能があった。」
「況んや、彼らの技術を調月リオ以上に理解していた連邦生徒会長にとって、自分の生誕以前のキヴォトスへと干渉する事は限定的ながらも可能だった。」
「とは言え、過去への干渉は生半可な事じゃない。下手をするとタイムパラドックスで自分が消えてしまう。他にも多くのバタフライエフェクトが発生するかもしれない。だから、迂遠な方法で干渉する必要があった。」
「待って欲しい。」
滔々と語り続けるエミリを、今度は先生が待ったをかけた。
「そもそも、どうして彼女は外から君達を招いてきたんだ?何故このキヴォトス単体で事を完結させなかったんだ?」
それはある種当然の疑問だった。
連邦生徒会長。
キヴォトスの最高権力者にして、誰もがその非凡な優秀さを認める「超人」とまで言われた生徒。
そこまでの人物が何故、態々キヴォトスの外にまで救いを求めたのか。
普通に考えれば、自分を頂点としたキヴォトス全体で滅びへと対抗するのが常道だろう。
「確かに、その辺の説明が抜けてたね。失敬失敬。」
「彼女は確かに、超人と称えられる程に優秀な人物だった。しかし、彼女が持って生まれた神秘とその立場が故に、彼女はキヴォトスの生徒達全てを真の意味で纏め上げる事は不可能だった。」
「多くの滅びの要因を観測し、対抗しようとした彼女は連邦生徒会長への就任やSRTの発足を始め、自らが上に立つ形で対応しようとしたけど、そんな彼女に各自治区の対応はバラバラだった。」
「それもその筈。彼女の持つ神秘、それこそ正に生徒達をこの地へと追い遣った四文字、その要素をキヴォトスで尤も色濃く受け継いだものだったんだ。」
「極小の欠片とは言え四文字は四文字。全知全能を謳う唯一神の神秘は個人の能力に換算すれば、極めて強力なものだ。それこそ万能の天才、歴代最高の連邦生徒会長になれる程に。でも、それがいけなかった。」
「理性ではそれが正しくとも、魂の奥底にまで刻まれた四文字への恩讐や畏敬の念は消えず、生徒達の奥底に眠ったままだ。最悪は敵対、或いは過度な献身によって自滅すら有り得た。長い間親しくすればまた話は別だったけど、連邦生徒会長たる彼女には業務外の時間は殆ど無い。結果、滅びへと対抗するには自分自身の存在が足枷になってしまったんだ。」
「おまけに青春もの、学園もののテクストが更に彼女を阻んだ。彼女が直向きにキヴォトスを救おうと奔走すればする程に、キヴォトスという世界そのものが彼女の行動にデバフをかけてきたんだ。結果として、彼女はその能力で多くの滅亡の種に気付きながら、しかしそれらを解決する事が出来なかったんだ。」
「それを解決するために、また滅亡の原因を探るため、彼女は幾度もの時間を移動、或いは観測を続けた。詳しい方法はまだ完全には判明していないけど、彼女だけは途方もない時間をかけてこの問題に取り組み続けた事だけは確かだ。主観時間にして実に百年以上は経過しているんじゃないかな?それをすればするだけ、世界から拒絶されると知りながら、彼女は絶対に止めなかった。例えそれで自分の居場所がキヴォトスから消失しようが構わない程の覚悟があったから。」
「自分では解決できない。それ所か世界から拒絶される。だから、自らの代理人を選んだ。生徒を支え、どんな立場にも中立で、決して諦めずにキヴォトスのために立ち、献身的に子供達を支えてくれる。それでいてキヴォトスには一切関係の無い大人を。」
「先生。貴方こそが連邦生徒会長の選んだ、このキヴォトスを存続させるための最大のキーパーソンだ。子供故に誤った方向へ行く生徒達へ正しい行き先を示す先導者にして教導者。」
「でも笑っちゃうよね。獅子の子仔獅子とも言うけど・・・やり口が嘗て救世主、神の子を地上に遣わした四文字の手法そのままなんて。」
「少し、黙ってほしい。」
無表情だった。
「幾ら生徒でも、彼女を笑う事だけは許さない。」
それはとても珍しい、生徒に対する先生の個人としての怒りの声だった。
「エミリ、正直に答えてほしい。彼女は、今、何処にいるんだ?」
「答えよう、先生。連邦生徒会長は今、何処にでもいて、何処にもいない。少なくとも、その肉体は完全にキヴォトスから消失している。」
先生の怒りを正面から受け止めながら、しかし鳥養エミリの表情は揺るがない。
寸分の狂いもなく、彼女は笑みのまま先生の疑問に答えた。
「実体の無い、魂のみの情報体とは言え、万を超えるソレを外の世界から持ってくるには生半可なエネルギーでは無理だ。気軽に注ぎ込めるリソースも限られているし、下手にキヴォトス内のソレを用いては何処に波及するか分からない。」
「だから、自分を使ったんだね?」
先生は確信を持って告げた。
今し方聞いた連邦生徒会長のキヴォトスへの見返りを求めない絶大な献身を聞いたが故に、彼は確信へと辿り着いていた。
「その通り。自らの肉体、自らの情報、自らの名前と救われたキヴォトスで生きるだろう未来すら犠牲にして、彼女は外の世界への通り道を作り出し、ボク達の魂をキヴォトスへと招き入れた。」
「は・・・?何ですか、それ?」
「不知火代表、君は連邦生徒会長の名前を思い出せるかい?顔は?趣味は?その実績や仕事ぶり以外で何か思い出す事は出来るかい?」
「え?そんな事・・・あれ?」
不知火カヤは思い出す事が出来なかった。
顔も、仕事ぶりも思い出す事は出来る。
あの天才ぶりに脳を焼かれ、しかしそれに成る事は出来ず、ならば自分の出来る範囲でキヴォトスを良くしていこうと思った原点。
なのに、今の自分は尊敬した彼女の事を殆ど思い出す事は出来なかった。
これが、自分の全てを犠牲にする事だとカヤは正しく理解した。
矮小だと自覚したカヤには理解できない、余りにも途方もない話だった。
たった一人で誰にも気付かれず、百年以上も孤独に戦い続けた果てが、自分自身を犠牲にして、先生と名前も知らない誰かへと託す事しか出来なかった。
それはとてもとても残酷な事だった。
万能の天才が自分では解決できないと絶望し、悲嘆し、憎悪し、それでも諦めずに進んだ先がそれだった。
「途方もない絶望を抱きながら、しかし、彼女は折れなかった。その裡にどんな感情を抱いていたか、推測でしか語れないけど・・・敢えて名付けよう。」
両手を広げ、観客に告げる様に、否、正しくこの中継を見ている全てのキヴォトスの人々に向け、堂々と告げた。
「自らの一切を顧みない献身。これこそが人間の感情の極み。希望よりも熱く、絶望よりも深いもの…愛だよ。」
青学内掲示板及び青学発アニメのまどマギ視聴者全員から同じ様な突っ込みが入った。
「ほむほむ乙」「こいつコレ言いたかっただけだろ」「CV.きゅうベェで言う事じゃねぇ」「胡散臭さEX」「やはりインキュベーターは実在した」「まどマギ乙乙」「こいつホンマ・・・」
なお、本人は神秘催眠で表に出ないが、マジギレした先生相手に心臓バクバクである。
「四文字はその難易度から当初キヴォトスの漂白を提示したものの、連邦生徒会長は断った。どうか青春の日々のまま滅亡を防いでほしいと嘆願する彼女の献身に敬意を表し、廃棄物のリサイクルとしてボク達の魂をキヴォトスに送り出す事にした。」
「これは両者の契約によって成された。そして、人外の存在の絡む契約は通常の書面のものよりも遙かに意味が重い。死んだ所で来世にすら絡む程の力がこの手に契約にはある。況んや全知全能の四文字が絡むとなれば、それは時間や死すら何の妨げにもならない。」
「ボク達青学生はキヴォトスに滅びの種が存在し続ける限り、永劫の時をキヴォトスに縛られ続ける。脱出するにはキヴォトスのあらゆる滅びを回避し続け、存続させなければならない。」
「だが、滅びなんて生徒が一人絶望してテラー化すれば簡単に訪れる。何処かでミスをすれば、リソースが足りずに色彩戦で敗れる。結局、ボク達がキヴォトスを出る事は叶わない。」
「聖典が何なのかか聞いた事があったね、先生。聖典とは、キヴォトス存続の叶った世界線の観測結果だよ。奇跡的な綱渡りを幾度も幾度も行い、辛うじて未来へと繋げた世界線。ボク達はそれを敬意を持って「遍く奇跡の始発点」と呼んでいる。そこに至れる確率は僅か3%だったけど・・・それ以外に道が無いのなら、強引にでもその道へ到達する必要があった。」
「多くの学園や勢力にスパイを放ち、観測と干渉の準備を整えたのはそのためだよ。たった3%の成功に至るため、ボク達はあらゆる道理を無視して工作を続けた。アビドスを復興寸前まで立て直して起きながら、聖典にあった通り生徒数僅か5人にまで追い詰めたのはそのためだよ。」
「ミレニアム、トリニティ、アリウス。百鬼夜行にレッドウィンター、それから勿論連邦生徒会にブラックマーケットでも、ボク達の手と目が無い場所は無い。」
「それでも、とてもとても苦労したよ。そもそも、このキヴォトスは他の平行世界のキヴォトスよりも遙かに滅びの種が多かった。それ故に連邦生徒会長は勿論、先生だけでも滅びを覆す事は出来なかった。だからボク達が投げ捨てられたのだけど。」
「だから、ボク達は漸く安堵しているんだ。未だ滅びの種は尽きないけれど、最も対応の難しい色彩と無名の司祭達の襲来を撃退できた事を。ボク達だけではどう足掻いても時間が足りなかったから。」
「本当にありがとう、先生と多くの生徒達。心より感謝し、敬意を示すよ。」
「でも、このまま永劫に縛られるのはボク達はご免だ。」
「だから、そう遠くない内にお暇させてもらう事にしたんだ。」
キヴォトスの人々の注目は、未だ青学の生中継から離れる事は出来なかった。
それだけの力が、中継されるエミリの言葉にあったが故に。
衝撃の真実が立て続けに告げられてもなお、査察はまだ終わっていない。
説明回面倒・・・!!
いや必要だとは思ってたけどさ!長い!!!
次々回で一度閉めて、掲示板やって終わりかな?