【青学三次】青学スパイ達の徒然なる日々【短編集】 作:VISP
本家様や他の三次作家様とは異なる独自設定等が出る可能性がありますが、予めご了承ください
なお、BGMは青学スパイ(背景音楽部)によるキュウべぇの営業テーマでお送りしております
先生達一行が不思議なSFとオカルトの入り交じった通路を最奥まで進むと、上等な装飾の施された二組の大扉があった。
その扉は先生達がその前に立つと音もなくひとりでに開いていく。
モーター音などは一切聞こえず、完全に神秘、オカルト技術由来の代物だと分かった。
「ようこそ、先生。青資秘密学園地下生徒会室へ。」
まるで豪華ホテルのホールの様な装飾を施された広い一室。
キヴォトスで最も知られた美しい歌姫の挨拶と共に、そこには一つの円卓を囲む形で座る7人の生徒の姿があった。
「私達青資秘密学園生徒会は皆さんを歓迎します。」
時折バグの様に身体がブレて見える、水色の長髪の少女。
彼女は七武生の中立派の1人、神秘関連の委員会や研究会、部活動の纏め役だ。
人体実験や隔離区画の管理なども担当しており、七武の中ではその容赦の無さから最も恐れられている。
クソヤバいアーティファクト等のコレクターでも知られており、その保管庫は青学随一の危険度に指定されている。
「とは言え、各々スタンスは違うのでそのつもりで。」
吊り目に淡いライトグリーンのショートカット、狐耳の目立つクールさを感じさせる少女。
彼女は七武生の中立派の1人、医療関連の委員会や研究会、部活動の元締めだ。
前世はガチの医者、それも国境なき医師団や赤十字にも所属していたガチの名医である。
勿論、その頭は「救護!」の精神である。
「はぁ・・・聖典には無いイベントだけど、歓迎はさせてもらうよ。」
腰から生えた純白の鳥の翼、白と金の装飾の入った水色の長髪の小柄な少女。
彼女は七武生の保守過激派、この中で最も聖典を守る意識が強く、スパイ達の管理も彼女の仕事だ。
また、七武で胃薬の消費量が最も多い1人でもある。
こんな苦労人だが、実は七武生の中では火力、そして催眠担当として医療担当と並んで最も現場に出ている。
「まぁまぁ、固い事は言わずに。どーせもう穴あきチーズから粉チーズレベルなんだから良いじゃないw」
緩いウェーブの掛かった金の長髪の一部をテールにした恵体の少女。
彼女は七武生の革新過激派、この中で最も聖典を守る意思が薄く、青学の利益を優先としている。
カイバーの社長でもあり、関連企業との繋がりから財務及び工業系の元締めだ。
開発よりも量産化、生産効率向上などを得意とし、更に金勘定に強い事から青学内の健全な経済体制や財政の管理を事務方と共に担っている。
実は一番事務方から頼りにされてるが、業務改善してくれないから同じ位恨まれてもいる。
「そーそー。切り替えて切り替えて。」
先端だけが薄い水色のグラデーションのかかった紫の長髪という結構特徴的な髪型の少女。
彼女は七武生革新穏健派であり、天才的な発明家・技術者としてカイバーに所属している。
が、その人格はかなり破綻しており、聖典へのスタンスも実際は大分過激である。
普段相方のストッパーをしているのは、相方がやらかして研究費が減らないようにするため。
最近の主な研究は量産型アビ・エシェフや量産型アイアンマン計画のOS、特に姿勢制御関連のプログラミングだ。
「はいはい煽らない煽らない。お客さんが来てるんだからそっちに集中してねー。」
金の長髪を緩くツインテールにした、面倒くささを隠そうともしない一番発育の遅い少女。
彼女は七武生保守穏健派、普段は相方のストッパーをやっている。
普段は怠け者で七武一の引きこもりだが、同時に人形使い(ドールマスター)とも言われる程にオートマタやドローンの運用に長け、スパイ達と共に数々の工作を成功させてきた実績を持つ。
「ふふふ、直接顔を会わせるのは初めてですね。電子の歌姫、初音ミクです。」
そして七武生で最大の知名度を誇る中立派、電子の歌姫こと初音ミクである。
青学AI達の纏め役にして、音楽を始めとした文化・芸術関連の大御所として知られる。
七武同士が過剰に対立しないようにしている調整役であり、ミレニアムから最も狙われている可哀想な人でもある。
本気で歌うと超広範囲にバフを展開する人権サポーターである。
「君達が七武生?」
「その通り。連邦生徒会長と四文字の企みを知り、先生や生徒達を誘導し、色彩他キヴォトスの滅びへ対抗できるように誘導した青学の親玉だよ。」
「そんな露悪的に言わないでも良いと思うよ。少なくとも、君達に悪意や敵意は無かった事は分かる。」
「それでも、罰は受けるべきだもん。」
「まぁまぁ。滅びの種は分かってるだけでもまだまだあるんだし、キヴォトス全体の改革含めてまだ退陣する訳にもいかないんだからそこまで自罰せんでも。ね?」
「先生、私達に聞きたい事は山程あると思うけど・・・今会長が来るから、少し待ってね。」
パッと、部屋の奥に灯が点く。
そこには階段があり、更に奥には手前の円卓を見下ろす形で玉座が豪奢な玉座があった。
そこに誰が座るのか、言うまでもなく明らかだった。
その時、カツン、と先生達の背後から足音がした。
「会長のお成りです。」
先程までの道化、語り部として饒舌さは鳴りを潜め、一言だけ発したエミリは恭しく頭を下げ、壁際に下がる。
七武生達は皆立ち上がり、その胸に手を当てて頭を下げる。
カールもまた、円卓の傍らに立つと胸に手を当て頭を下げ、その人物への忠誠と尊敬を示した。
「・・・・・・・・・・・・。」
その少女は、実に奇妙だった。
美しい容姿にやや小柄な体躯、保守過激派の少女とはまた別にシスター服を制服の上から羽織っているのはまだ分かる。
しかし、それ以外の要素が余りにも人間離れしていた。
血が通っていないと思う程の白い肌、純白の長髪、赤い瞳。
何より肌の表面、謎の黒い罅割れから流れ続ける黒い滴は床に滴り落ちる事なく、宙に浮いては霞の様に消えていく。
ヘイローもまた異常だ。
中央に瞳の刻まれたピラミッド、それを囲む円と八方向へ延びる棘。
それだけなら細かいヘイローだなと思うが、それだけではない。
そのヘイローはリアルタイムで常時変色していた。
赤から青、青から紫、黄色から黒、白から緑と、全く規則性を見い出せない変色をランダムに繰り返していた。
他の生徒達のヘイローとは全く異質なソレに、先生は驚きを隠せなかった。
だが、それ以上に先生を驚かせたのは、彼女から放たれる存在感だった。
今まで先生は生徒達に例えどんな事を、それこそ銃口を突きつけられようが狼狽えや怯え、焦りはあったが、圧倒される事だけは無かった。
それが今、ただそこにいるだけの生徒に圧迫感を覚え、のけぞってしまった。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
最初とは異なり、音も無くその謎の少女は歩を進めていく。
円卓の外を回り、階段を上り・・・やがて、玉座の前に着いた。
極自然な、ここは己の居場所だと告げる様に違和感なく彼女は座った。
「紹介させてもらおう。彼女こそ青学の新たな生徒会長。七武生の上に立つ、青学全ての代表者だ。」
「き、みが、青学の生徒会長なのか・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
無言。
カール理事の紹介も、先生の問いかけも、彼女は答えない。
視線を向ける事すらせず、泰然自若に玉座に腰掛けたままだった。
「申し訳ないな、先生。今日は彼女のピントがこちらに合わない日の様だ。」
「カール・・・彼女は、何者だ?」
先生は、嫌な予感を抱いていた。
今まで出会ったゲマトリアの異形達は大なり小なり倫理観の欠如した連中だった。
方向性の違いこそあれど、正しく「悪い大人」だった。
では、嘗て多くの法を破り、青学を創立させ、現在も人体実験を行い続けるこの異形の行う「悪」とは何か?
「彼女の名前はアイ。彼女こそ青学の最新の研究成果だ。神秘共有術式の研究中、偶発的にも青学生の神秘そのものがこの世界のテクスチャに適用され、誕生した存在。肉体は全て最高位のオーパーツで構成され、錬金術におけるホムンクルスを始めとした人造生命の技術を取り入れ調整した、人造の生徒だ。」
目的のためには、一切を顧みない。
ベアトリーチュとは方向性が違うものの、限りなく同質のソレをこの異形は持っていた。
「お前は、彼女を作って、どうする気だ?」
「彼女の誕生は偶発的なもの。意図したものではない。しかし、あらゆる命は祝福と共に生まれ出ずるべきだ。例えそれが魂の無いガランドウに近いものであったとしても、この滅びばかりのキヴォトスに新たに懸命に生まれようとする命を私は祝福し、その孵化を手助けした。」
それは、まるで神に仕える聖職者が如き言葉だった。
堂々と語られる内容には一見して瑕疵は無い。
だが、実際にやった事は生命の、生徒への冒涜に近しい。
「先生、君はどうする?彼女は守るべき生徒か?排除すべき異物か?それとも、そもそも生物ですら無いかね?未だ意志薄弱だが、固有の自我に目覚めつつある彼女を否定するかね?」
その問いかけは、先生の在り方を問うものだった。
キヴォトスに来て周囲の環境に流されながらも、生徒を支える良き理解者であり、大人としての責任を果たす者であろうとしてきた先生にとって、余りにも重い問いだった。
「私、は・・・」
普通、常識で考えれば、否定すべきだった。
だが、だが、だが、
「彼女は、生徒だ。彼女が生徒として、子供として生まれたのなら、経緯は兎も角として、その誕生は祝福されて然るべきだ。」
「見事だ、先生。やはり君に賭けて良かった。」
先生には、彼には、茫洋とした瞳でこちらを見つめる子供を否定する事は、どうしても出来なかった。
「改めて言おう。先生、青資秘密学園にようこそ。これまでの暗躍を謝罪すると共に、我々は君を歓迎し、以後もキヴォトスの滅びに立ち向かうため、力を貸す事を約束しよう。」
なお、カールの声帯はCV中田譲治とする