【青学三次】青学スパイ達の徒然なる日々【短編集】 作:VISP
本家様や他の三次作家様とは異なる独自設定等が出る可能性がありますが、予めご了承ください
なお、BGMは青学スパイ(背景音楽部)による前半The Church on the Hill、後半は別にあります
玉座と円卓を背後に祝福する様に両手を左右に広げ、歓迎と謝罪、今後の協力を宣言するカールに対し、先生の眼差しは厳しかった。
「カール。お前は彼女を、青学の生徒達をどうする気だ?」
「私自身からは何も。あくまで自治区の運営や普段の生活等は全て彼女らの自由意思に基づいている。無論、研究や各種工作に関しても。」
それは間違いなく事実だった。
先生が以前と今回、それ以前の一般区画での訪問でも、ここに暮らす人々の営みは極自然で平和なものだった。
彼女達はあくまで自らの自由意志によってキヴォトスの滅びに対応するために今日まで行動してきたに過ぎない。
研究への協力にはカールの意思から発展したものはあるだろうが、基本的に全て彼女達の選択の結果だった。
「青学の行動を悍ましく、唾棄すべきものと思うかね?それは違う。外の世界でも政府機関が平和のため、大衆のために非公式、違法な行動を取る事は日常的だ。ここキヴォトスでは生徒こそが神であり、最高権力者だ。ならばその行動もまた然り。今回は誠意を示し、青学の行いと青学の知る生徒の行いの一部を先生を始め、キヴォトスに開示したのみ。」
それは、よくある話だった。
一般人には知らされないだけで、国家や有力な勢力間などではよくある話だった。
そうした責任を担う者がここキヴォトスでは生徒であり、しかし生徒であるからこそ責任に潰されてしまう。
それが歯止めにもなっているが、同時に大きな枷となっている。
成程、四文字がスパッと漂白すべきと判断するのも無理は無い。
「真にキヴォトスを救うとなれば、この深過ぎる構造を知らねばならない。壊すのか、変えるのか、諦めるのか。ただ生徒に寄り添うだけではならない。その上で君自身の意思を示さねば、このキヴォトスもまた青春に溺れて滅び去る事となるだろう。」
「現在は勿論大事だが・・・先ずは過去を知り給え、先生。そうでなくば、何をすべきかも分からないまま呑み込まれるだろう。これは悪党、外道としての忠告だが・・・君に悪は合っていない。生徒と共に、君に合う方法を見つけ給え。」
「では、これにて本日の査察を終了します。お疲れ様でした。」
「待て!話はまだ・・・」
「先生・・・」
エミリの言葉と共に一方的に言いたい事を言って話を切り上げ、踵を返そうとしたカールとそれに食ってかかろうとした先生だったが・・・不意に響いた声に、その場が静止した。
小さな声だった。
それ自体の声量は誰の耳にも拾われない程度のものだった。
しかし、そこに秘められた圧倒的な神秘の圧が、その場の全員を鎮めた。
「・・・・・・・・・」
アイの視線が、先生に向けられていた。
未だ意志薄弱と言われた、まだ生まれて一年と経過していない彼女の視線は確かに先生へと向けられていた。
「君は・・・」
「先生・・・・・・」
何を言うべきか、多くの生徒達と接してきた先生でも分からなかった。
それでも何かを口にすべきだと思い、口を開こうとしたが、それよりも先にアイの方が口を開いた。
「貴方は生活習慣を見直さない場合、10年後にハゲます。」
「「「「「「「「「ブッフゥッッッ」」」」」」」」」
先生がピシリと硬直し、カールを除いたそれ以外の全員が噴いた。
「初コメがハゲ宣言wwwwヒィwwwwお腹痛いwwwwwww」
腹を抱えて爆笑する革新保守派の少女の他、残った面々も必死に笑いを堪えようとして、しかし堪え切れずにプルプルしている。
一瞬で先程までの険悪な雰囲気が吹き飛び、BGMもいつの間にか彼の名曲Unwelcome Schoolへと変更されていた。
「Orz」
膝から崩れ落ちた先生にカールは哀れみの視線を向けた。
分かるよ、ショックだよね・・・でもあんな不健康な生活してたら仕方ないと思うよ?
事務仕事メインで毎日激務続き、更に休みは生徒達に「先生お時間ありますか?」されて休めないし、唐突に発生するキヴォトス滅亡案件には何が何でも駆け付けねばならない。
そりゃ自分の健康になんて気を配る余裕なんてない。
対して、煙草しないし酒は嗜む程度で睡眠時間は多め、割と運動量自体は多めのカールの羽毛はふさふさだ。
毎日毛繕いしてるし、子供達にも人気であり、月に一度はメンズエステにもかかって維持してる自慢の羽毛だ。
「カール」
「ふむ?」
膝から崩れ落ちた先生を余所に、今度はアイの視線はカールに向けられた。
「甘い物を摂り過ぎです。子供達と一緒に食べていては糖尿病になりますよ。」
「Orz」
運動量自体は保育士の仕事で多いが、子供達の好きな甘味を共に食べる事が多いカールは自覚があったのか、こちらも崩れ落ちてしまった。
先生よりも年上の中高年のカールに、生活習慣病の宣告は余りにも刺さった。
「それと・・・ママ達。」
「「「「「「「違います。」」」」」」」
七武生に対してまさかのママ呼びに、全員が一斉に否定した。
「まだ矯正できてないじゃん!?なんで!?」
「いや、流石に子持ちになった覚えは前世含めて無いかなーって・・・。」
「アイドルなんで、子供はちょっと・・・。」
「う、うーん子供作った事も予定も無いなぁ・・・。」
「杏もちょっと・・・まだ良いかなって・・・。」
「確かに彼女の神秘には我々のものも含まれるが・・・。」
「ふふ、興味深いですね。どの程度私達へと感心を抱いているのか・・・少しテストしません?」
「「「「「「絶対止めろ。」」」」」」
何してんだコイツら、という顔でナゴミは片手で顔を覆い、溜息を吐いた。
エミリは穏やかな笑みのまま場を眺めるだけで、決して止める事は無い。
なお、アイの七武生ママ呼びは悪乗りした一般青学生達によるものである。
そんな彼女達もまたアイを娘や妹扱いしてお菓子を食べさせたり、一緒に遊んだり、散歩したりとすっかり身内として扱っている。
確かにその身に秘めた神秘は膨大で強力なものだが、しかしそれ以上に彼女は青学生同士の結束を強める効果があった。
それは彼女自身を構成する要素が散らばらないための無意識の防衛本能なのか、それとも単なる偶然なのか、それは分からない。
しかし、子は鎹とはよく言ったもので、聖典が意味を無くし、分裂すら危惧された青学を再び一つに纏め上げるにはアイは正しく最適な人材だった。
「ナゴミ、二つ目のASMRとアイドル衣装、新規イラストおめでとう。」
「グハァァァァァァァァァァアッ!?!?!?!」
そして蚊帳の外面していたナゴミに特大のダメージが入った所で、余りにも衝撃的で膨大な情報の明かされたシャーレ・連邦生徒会合同の青学査察は幕を閉じる事となった。
勿論、関係各所が頭を抱えた事は言うまでもない。
・・・・・・・・・・・・・・・
結論だけを言えば、キヴォトスを真っ二つにする大戦争の勃発は防がれた。
査察によって公開された青学の各種技術に加え、青学と連邦生徒会長の数々の暗躍が公開された事で、そもそも戦争なんてする正当性も暇も余裕も消えたからだ。
これは復興の遅れていた各自治区では再び帰還していた元スパイ達が神秘催眠による機密情報の流出の制限を課した上で再派遣された事で各自治区の反青学派が矛を収めた事が大きかった。
青学内部でも今後の各自治区との連携強化の必要性を考えて譲歩を選び、青学分校及び支援されている中小校も渋々ながら本校に従った。
但し、連邦生徒会及び三大自治区他大自治区の生徒会や有力者は滅びへと対抗するため、復興に加えてデスマーチが始まった。
過去キヴォトスで発生した大事件などの再調査が始まり、滅びの種を一つでも早く発見すべく過去の記録が掘り返された。
また、今まで不採算だったり何かしらの理由で手付かずだった事業や僻地の調査も見直される事となり、各校の生徒会は上から下まで仕事が山積みとなった。
何せ存続の可能性は僅か3%と青学に言われたキヴォトスである。
何処に滅びの種が眠っているか分からないし、新たに発生したり、突如襲来したりする可能性も高い。
そう考えれば、とてもではないが手を抜く事は出来ない。
逆に、一般生徒や市民は普段通りの生活をする事が尊ばれた。
力の無い者であっても、そうして普通に生活する事でこの世界のテクストを維持し、人死にを減らす事に貢献する事が出来る。
勿論、真面目かつ深刻に考えて動けば動くだけデバフがかかる青春・学園ものテクストだが、そのテクストが今より強固ならば、そもそも滅びの種にすらその効力を発揮する事も出来る。
要は平和な日常学園ものアニメに殺人犯は出てこれず、宇宙からのインベーダーやエイリアンもギャグ描写でしか出る事は出来なくなるのだ。
こうした動きの中、シャーレは勿論酷使無双されている。
全学園に中立の権力者なんて、仲介や調停、調整の場に持ってこいなのでそうもなろう。
況んや先生自身が各校の滅びに向けた対策に積極的に協力しているのだから当然だった。
先生もまた、あの査察で思う事があったのか、キヴォトスの過去の陰惨な事件についての再調査に参加している。
キヴォトスの問題を解決するには、過去を知らねばならない。
カール理事の言葉に上手く返す事が出来なかったのが辛かったのか、先生も精力的に働いていた。
働き過ぎて救護の対象となる事も度々あるが、それは仕方ない。
連邦生徒会もまた、新たな体制構築を目指して改革が始まった。
先ず、不知火カヤは一連の事件の責任を取って連邦生徒会長を辞任した。
その後、復帰した七神リン代行と相談の末、急遽設置された自治区特別監察官の役職と共に青学へと赴任、その動きを監視する役割に就いた。
なお、七武生と文官達と共に主にアホな事ばっかする変態や狂人、スパイ達の尻拭いや後始末に奔走させられ、胃薬片手にいつもキレる事となる。
とは言え、そのカヤの隣には常に相方の副官がいるため、口で言ってる程その怒りは激しいものではなかったりする。
七神リン代行は情報室長と共に連邦生徒会の組織改革を決定、旧SRTをヴァルキューレ内部の特殊部隊として改めて組織化する事を宣言し、現在他の室長らと共にサンクトゥムタワーの再建と合わせて忙しく働いている。
経緯は兎も角として・・・何とか色彩の襲来を乗り越えたキヴォトスは漸く復興と新たな体制構築に向けて歩み出したのだった。
妄想メインストーリーIF 青学編第一部後編 完
「良かったのですかカール?あそこまで公開してしまって。」
「構わない。何れは必要なプロセスだ。それに・・・この程度で出てきてくれれば安いものだ。」
「ふむ・・・確かに彼女達がこれで尻尾を出してくれれば安いものですね。」
「出なくとも、それはそれで証明のための要素が増える事となる。」
「四文字は直接的な干渉はしない、出来ない。そして連邦生徒会長もまたそれが出来る状態ではない、という事ですか。」
「故にこそ新たな連邦生徒会長が、新たな人造神が必要なのだ。嘗て四文字がそうであったように。」
「機械仕掛けの神ですか。実際、偶発的とは言えそのテクストを持った生徒が生まれるとは・・・クックックッ、やはりキヴォトスは飽きませんね。」
「とは言え、未だ産まれたばかりの赤子だ。教育と調整を施さねばとてもとても。」
「ふむ、滅びが芽吹くか彼女が咲き誇るのが先か・・・それともまだ見ぬ可能性が見られるか、今後も目が離せませんね。」
以上を持ちまして、青学編メインストーリーIFは終了します
短い期間に長々とお付き合い頂きありがとうございました。
このルートは以後続く予定はございませんので予めご了承ください