Blue Legend〜一般男子の物語〜   作:宗也

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ここから一気に話が動きます。

キリが悪かったので少し長めになっており、ほぼ先生視点です。


気持ちの告白、そして火蓋は切られて

「いよいよ今日ですね大将。本当にやるのですか?」

 

「やらなきゃナギサのメンタルが完全に崩れるぞ。他に頼める人もいないし、俺がやるしかないんだ。」

 

「⋯⋯分かりました、では準備の方はこちらで進めておきます。ふふっ、メイクは私にお任せください。ついでに記念撮影もしましょう!ああでもこれっきりというのは勿体無いですね、色々片付いたらお出掛けしましょう!」

 

「お前意外と余裕あるじゃねえか⋯⋯。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先生Side

 

「うーん、2次試験はあんな妨害があったから明日の3次試験はどういう妨害で来るのかな。」

 

2次試験はゲヘナ学園で開催されたけど、試験会場に行くまでや試験会場で色々あって試験を受ける事が出来なかった。

 

これで次の3次試験に合格出来なければ皆は⋯⋯駄目駄目、皆頑張ってるのに私が弱気になったら駄目だね。

 

「にしても、ここまで妨害してくるなんて。」

 

本気でナギサは補習授業部の皆を退学にしたいんだね。でもあそこまでするのかな?そもそもナギサは本当に皆を騙してまで退学にさせたいのかな?

 

もしそうだとしたら大将が止めてくれてる筈、それなのに大将が止めてないとなると、もしかして別の人が何かしてる?

 

「⋯⋯アロナちゃん、トリニティ総合学園にある派閥って確か三つなんだよね?」

 

『はい!フィリウス派とパテル派とサンクトゥム派ですね、先生の指示で色々調べていたのですが、気になる事がありまして。』

 

気になる事?

 

『フィリウス派の生徒達がゲヘナ学園の生徒と交流している事が多いんです。トリニティの生徒はゲヘナ学園の生徒と仲が悪いのですが、フィリウス派の生徒はそうでもないみたいです。』

 

「確かに、ゲヘナ学園の自治区内に行くとトリニティの生徒を見掛ける事があったけど、あれはフィリウス派の生徒だったんだね。」

 

『ただ、その影響もあってかフィリウス派の生徒はパテル派とサンクトゥム派の生徒との仲は非常に悪いです。主にパテル派の生徒がフィリウス派の生徒を目の敵としているみたいですね。サンクトゥム派の生徒は、傍観してるみたいです。』

 

えぇ、同じ学園なんだから仲良くしようよ。お嬢様学校って色々あるんだね。通ってた高校は共学で良かったかも。

 

おっといけない、思考が逸れたね。パテル派の生徒はフィリウス派の生徒と非常に仲が悪い、確かパテル派の代表はミカちゃんでフィリウス派の代表はナギサだったよね。

 

「⋯⋯ねぇアロナちゃん?私の想像なんだけど、私に補習授業部の真相を教えてくれた生徒ってパテル派生徒の可能性ってあるかな?」

 

『少し待ってください、今調べますね⋯⋯⋯⋯、先生の予想通りパテル派の生徒でした。』

 

なるほど、少しずつ分かってきた。まんまと私はパテル派生徒に嵌められた訳か、ナギサちゃんは嘘を言っていなかったんだ。

 

でもヒフミちゃん達に言っても混乱するだけだから私だけで留めて置かないとね。

 

ん?扉をノックする音?

 

「先生、まだ起きていますか?」

 

「起きてるよヒフミちゃん。入って来ていいよ。」

 

声を掛けた後、ヒフミちゃんは扉を開けて部屋に入って来る。表情は若干緊張してる、眠れないのかな?

 

「ヒフミちゃんも眠れない感じかな?」

 

「そうですね、明日の事を考えると目が冴えてしまって。寝ないといけないのは分かっているんですけど。」

 

ヒフミちゃんは苦笑いを浮かべて頬を掻きながらそう言うのと同時にまた部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。

 

扉が開いて中に入って来たのは、ハナコちゃんとコハルちゃんだね。

 

「私も来ちゃいました♡」

 

「ハナコちゃん、それにコハルちゃんも。」

 

「皆何してるの、明日は試験なのに何してるのよ。休む事も大事だって言ったのはそっちでしょ!?」

 

コハルちゃんはプンプンと怒りながら私達に言ってくる。本当にコハルちゃんは良い子だよね、かなりむっつりだけど。

 

「まあ、そうなのですが⋯⋯。」

 

「なんかアズサも、どっか行っちゃったみたいだし。まあ、緊張する気持ちは凄く分かるけど⋯⋯。」

 

「⋯⋯実は先程、シスターフッドの方々に少し会ってきたんです。少し調べたい事があって。」

 

少し調べたいこと?ハナコちゃんも独自に補習授業部の真相について調べてたのかな?

 

「明日、私達が試験を受ける予定の第19分館についてなのですが。」

 

「まさか、また場所が変わったりとかですかハナコちゃん!?」

 

「いえ、そうではありません。ただそこはこの後、かなりの数の正義実現委員が派遣されて、建物全体を隔離するとの事です。」

 

建物全体を!?一体何の為に⋯⋯。

 

「『エデン条約に必要な重要書類を保護する』という名目でティーパーティーからの要請があり、建物全体を正義実現委員会として守る厳戒態勢に入ったとか。」

 

「それから、どうやら本館の方にも戒厳令が出ているようです。昨日から変に静かだったのは、このせいみたいですね。」

 

「か、戒厳令、そんなの聞いたの初めてです。」

 

私も初めて聞いたよ。戒厳令なんて普通は聞くことないからね。

 

「恐らく、誰一人あの建物への出入りは許されません。エデン条約が締結されるまで、ずっと。」

 

「ちょっ、ちょっと待って!?そしたら私達の試験はどうなるの!?」

 

コハルちゃんの言う通り試験会場が本当にそこだとしたら、試験を受ける事が出来ない!本当になりふり構わずだね!?

 

これもパテル派生徒が仕組んだ可能性が高い!人の心とか無いのかな!?

 

「つまり、こういう事です。試験を受けたいのであれば、正義実現委員会を敵に回せ、と。」

 

「それはいつもの事だから私は大丈夫ですけど⋯⋯。」

 

「そ、そんな!わ、私がハスミ先輩に事情を説明すれば!」

 

ヒフミちゃ〜ん?小さい声でボソッと聞こえないように言ったつもりだけど、先生は聞こえてるからね?コハルちゃんとの温度差が激しいなぁ。

 

「それは難しいと思いますよコハルちゃん。ハスミさんには裏側の事情は知らされていないでしょうし。」

 

「もしハスミちゃんが私達を助けたら、それはティーパーティーに対する明確な離反と同義。ハスミちゃんも正義実現委員会から追放されてしまうということだねハナコちゃん?」

 

「先生のおっしゃる通りです。」

 

「うっ、ううっ⋯⋯。」

 

打つ手が無いと分かったコハルちゃんはプルプルと体を震わせながら涙目になっちゃった、そりゃ泣きたくもなるよね。

 

「全く、どうやらナギサさんは本気で、私達を退学にさせようとしているようですね。」

 

「どうして、そこまで「私のせいだ。」アズサちゃん!?ど、何処に行ってたんですか?」

 

部屋の扉が音もなく開いて、アズサちゃんが中に入って来る。アズサちゃんは、何か知ってるみたいだね。

 

「皆、聞いて。話したいことがある。」

 

「⋯⋯アズサちゃん?」

 

アズサちゃんは口を開こうとするけど、すぐに閉じ、また開こうとして、閉じるを繰り返していた。あれは、何か責任を感じていて、口を開こうにも開けない状態だね。

 

「大丈夫、落ち着いて話して、ね?」

 

「先生⋯⋯。」

 

アズサちゃんの近くに行って手を優しく握る。こういう時は人の温もりを感じると話しやすくなるから。

 

「皆にずっと、隠していた事があった。でも、ここまで来たらもうこれ以上隠しておけない。」

 

アズサちゃんはそこまで言った後、一度深呼吸をした。大丈夫だよ、アズサちゃんのペースでいいからね。

 

「⋯⋯ティーパーティーのナギサが探している『トリニティの裏切り者』は私だ。」

 

「「「「⋯⋯⋯⋯。」」」」

 

皆固まっちゃった!?私も言葉が出て来ないんだけど、アズサちゃんがトリニティの裏切り者?

 

「私は元々アリウス分校の出身。今は書類上の身分を偽って、トリニティに潜入している。」

 

「アリウス!?」

 

ヒフミちゃんはアリウスって言葉に反応したね、大将やナギサちゃんもアリウスというワードを前に出していた。

 

という事はアズサちゃんはベアトリーチェの部下ってこと?でも何でトリニティに潜入したのかな?

 

「えっと、何それ?アリウス?どういう事?ま、まさか昨日アズサにエッチな本を読まれたから頭がおかしくなった!?」

 

「多分違うと思うよコハルちゃん。それと後でコハルちゃんはお説教ね?」

 

「どうしてよっ!?」

 

エッチな本はまだ読むの早いから廃棄しなさいって言ったじゃん!本当にむっつりなんだから!諸々落ち着いたらその本何処で買えるか聞こうっと。

 

「アリウス分校、かつてトリニティの連合に反対した、分派の学園です。その反発のせいでトラブルとなり、その後はキヴォトスの何処かに身を潜めてひっそりと過ごしていると聞きましたが。」

 

「そう、私はここに来るまで、ずっとアリウスの自治区にいた。アリウスとしての任務を受けて、今はこうしてこの学園に潜入している。」

 

「アズサちゃん、任務内容って何かな?」

 

「⋯⋯ティーパーティーの桐藤ナギサ、彼女のヘイローを破壊すること。」

 

ヘイローの破壊、それってつまり!?

 

「嘘でしょ!?そ、それってつまり!?」

 

「⋯⋯アリウスはティーパーティーを消すためなら、何でもしようという覚悟でいる。それに、桐藤ナギサを消せば、大将を完全に始末出来る確率が上がるから。」

 

ベアトリーチェ!貴方はどこまで生徒を弄ぶ気なの!?

 

「アリウスはまずティーパーティーのメンバーであるミカを騙して、私をこの学園に入れた。詳細は知らないけれど、きっとトリニティと和解したいとか、そういう嘘を付いたんだろう。」

 

「なるほど、ミカさんを。確かに彼女は政治には向いていないと言われていましたが。おそらく全てが終わった後、その罪をミカさんに着せる、そういう流れを想定しているのでしょうか。」

 

「アリウスがトリニティを憎んでいる事は知っていましたが、なるほど。」

 

「ま、待って、急に何の話?いや、嘘だと思わないけど、別に今の私達とは関係ないじゃん。アリウスの事はよく分からないけど、それが私達の補習授業部とどういう関係があるわけ?アズサは何で急に、そんな話をしているの?」

 

これは、私から説明するべきかな?でもアズサちゃんは続きを話そうとしてるから様子見かな。

 

「明日の朝、アリウス分校の生徒達がナギサを狙ってトリニティに潜入する。私は、ナギサを守らなきゃいけない。いけない、のか?うん、守らなきゃいけない。」

 

「いや何で一瞬だけ疑問を感じたのよアズサ?」

 

ナギサちゃん強いからね。アズサちゃんが守る必要あるのか?という疑問を感じても無理ないよ。

 

「あ、明日!?」

 

「うん、私はそれをどうにか阻止しないと。」

 

「本館には戒厳令が出ている状態、最後の試験でのナギサさんの無茶もあって、正義実現委員会は本館にいないタイミング。なるほど、要人襲撃には最適な日ですね。アリウスも大分頭は回るようです。」

 

「ハナコちゃん⋯⋯。でもアリウス分校の生徒だけでここまで完璧に計画が立てれるのでしょうか?」

 

ヒフミちゃんの疑問は最もだね、トリニティの裏側の事情にも詳しくないと計画は立てれない。これはたまたまというには出来過ぎている。

 

「ま、待って!よく分かんないけどアズサはティーパーティーをやっつけに来たんでしょ!?なのに、守るってどういう事?話が合わないじゃん!」

 

「それは「アズサちゃん自身(・・)は、最初からその目的でトリニティに来た。そういうことですね?」!」

 

「最初からナギサさんを守る為に、ナギサさんを襲撃する任務に参加した、言わば二重スパイ。アリウス側には連絡係として、常に問題無いとずっと嘘の報告をしながら、本当は裏切る為の準備をしていた。」

 

アズサちゃん、誰にも言えずにずっと抱えていたんだね。

 

「どうして、ナギサさんを守ろうとするんですか?それは、誰の命令で?」

 

「これは誰かに命令された訳じゃない。私自身の判断だ。桐藤ナギサがいなければ、エデン条約は取り消しになってしまう。あの平和条約が無くなればこの先、キヴォトスの混乱は更に深まるだろう。」

 

「その時また、アリウスのような学園が生まれないとは思えない。」

 

「だから平和の為に、ということですか?とっても甘くて、夢のような話ですね。今回の条約の名前と同じくらい、虚しい響きです。」

 

ハナコちゃんの言葉にアズサちゃんはムスッとしたね。ハナコちゃんも色々と抱えているんだね、達観というか、諦めというか、虚しさというか。

 

ここで指摘しても状況が悪化するだけ、むず痒いなぁ。

 

「アズサちゃんは嘘つきで、裏切り者だった。トリニティでも本当の姿を隠し、アリウスでも本音を隠していた。アズサちゃんの周辺には、アズサちゃんに騙された人達しかいなかった。ずっと周りの全てを騙していた。」

 

「まるでどこかの男子生徒のように(・・・・・・・・・・・・)、そういう事で合ってますか?」

 

ハナコちゃん、だから大将とあんまり関わろうとしなかったんだね。

 

「⋯⋯いつか言った通りだ。私は皆の事も、皆の信頼も、皆の心も、裏切ってしまうことになる、と。」だから、ナギサが探している『トリニティの裏切り者』は私。私のせいで補習授業部は、こんな危機に陥っている。」

 

「本当にごめん。私の事を恨んでほしい。今のこの状況は全て、私がもたらした事だ「それは違いますアズサちゃん!」ひ、ヒフミ?」

 

「元々の原因はきっと『信じられなかったこと』の方なんです!ですよね先生?」

 

ヒフミちゃんの言う通りだね。

 

「もっとお互いがお互いを深く信じられていたら、こんな事にはならなかった。」

 

自分で言っておいてだけど、私も当てはまるんだよね。私も、もっとナギサを信じていれば⋯⋯。

 

「そうですね、そうかもしれません。今のナギサさんのように、誰も信じられなくなってしまった人を変えることは難しいです。誰かを信じるということは、元々難しいですし。」

 

「大将だけは信じているようですが、一体どうやってあの疑り深いナギサさんを攻略したのやら。」

 

ハナコちゃんが小声で何か言ってるね、ヒフミちゃんがボソッと呟いた声よりも小さい声だから聞こえなかったけど。

 

「⋯⋯ですがアズサちゃんは、私達にこうして本心を語ってくれました。黙り続ける事も出来た筈なのに、謝ってくれました。」

 

そこまでハナコちゃんは言った後、アズサちゃんに頭を下げた。さっきアズサちゃんに言ったことを気にしてるんだね。

 

「ごめんなさい、先程のは何と言いますか、どうしても意地悪したくなってしまったんです。アズサちゃんの真っ直ぐな顔を見ていると、何だか心が落ち着かなくなってしまって。」

 

「補習授業部はちょっと変わった意味で、ある種の舞台のように注目を浴びる存在として生まれました。本来なら、アズサちゃんのような『スパイ』は、こんな注目されるところに長くいてはいけないはずです。」

 

「誰にも気付かれないように消える、そういう手段やタイミングは、今までいくらでもあった筈。」

 

そうだね、ハナコちゃんの言う通り、いくらでもタイミングはあった。

 

「しかしアズサちゃんは、そうしませんでした。その理由を、私は知っています。」

 

「補習授業部での時間があまりにも楽しかったから、そうではありませんか?」

 

ハナコちゃんの指摘にアズサちゃんは考えを当てられたような表情になった。もうアズサちゃんの手は離してもいいね。

 

手を握って分かったけど、アズサちゃんちょっとガリガリだったから、色々片付いたらいっぱい食べさせてあげないといけないね。

 

「皆で一緒に勉強したり、ご飯を食べたり、お洗濯をしたり、お掃除をしたり、何をしても楽しいことばかりだったから。だから、この楽しい時間を壊したくなかった。」

 

「目標に向かって皆で努力すること、そしてヒフミちゃんとコハルちゃんと先生と、皆で知らなかった事を学んでいく事が楽しかったから。違いますか、アズサちゃん?」

 

「それは、私は。」

 

アズサちゃんは否定しようと言葉にしかけたけど、口と目を閉じた。補習授業部の日々を思い出してるのかな?

 

「⋯⋯いや、うん。そうかもしれないな。何かを学ぶということ、皆で何かをするということ。その楽しい時間を、私は手放せなかった。」

 

「まだまだ知りたい事がたくさんある。海とか、お祭りとか遊園地とか、行きたいところも、知りたい事もまだまだたくさんあって。」

 

「⋯⋯ハナコちゃん、もしかしてアズサちゃんの気持ちが分かるんですか?」

 

実際にそういう気持ちにならないとあそこまで言えないもんね。大将は、大丈夫なのかな⋯⋯。

 

一人で責任を背負って、自分を犠牲にして、とても辛いのに本音を誰にも言えなくて、本来ならハナコちゃんが言ったように楽しい学園生活を過ごしている筈なのに。

 

「はい、ヒフミちゃんの言う通り分かるんです、その気持ち。何せ、同じように思った人が、いたんです。」

 

「何故か要領が良くて、何をしても周りからおだてられてしまうようなタイプで。その人にとってトリニティ総合学園は、嘘と偽りで飾り付けられた、欺瞞に満ちた空間でした。」

 

「誰にも本心を話す事が出来ず、誰にも本当の姿を見せることが出来ないまま⋯⋯。」

 

ハナコちゃん、辛かったんだね⋯⋯。

 

「その人にとって、全ての事は無意味で、学校を、辞めようとしていたんです。何せそのままの生活を続ける事は、監獄にいるのと同じでしたから。ですが、その人とアズサちゃんは違いました。」

 

「話は一瞬変わりますが、アズサちゃんは実際に今回の事が終わったら、この学園での生活は終わってしまうんですよね?そもそも書類を偽装して入っていたわけですし、アリウスの事も最後には裏切るのだとしたら、最終的には帰る場所も戻る場所も無いという事ですよね?」

 

「⋯⋯最終手段はあった。」

 

大将の所に駆け込む気だったんだねアズサちゃん。

 

「それを知っていた筈なのにアズサちゃんは、補習授業部で、いつも一生懸命でした。その人は試験をわざと台無しにして、学園から逃げようとしていたのに、一方のアズサちゃんは、短い学園生活に全力でした。」

 

「どうしてそこまでするのでしょう、そこに何の意味があるのでしょう。アズサちゃんがたまに言っていたように、『全ては虚しいもの(vanitasvanitatum)』の筈なのに。」

 

「ですが同時に、アズサちゃんはその後ろに、いつも言葉を付け加えていました。」

 

確かに、アズサちゃんはポジティブな言葉を付け加えていたね。大将の姿を観察していたからなのかな?

 

「そして、ようやく、その人も気付いたんです。学園生活の、楽しさに。」

 

「下着姿でプール掃除したり、皆水着で夜の散歩をしたり、裸で色々な事を打ち明け合ったり、自分を曝け出せる人達と、そういったよくある事を全力でするという事が、こんなにも楽しかったんだと。」

 

いや良くある事じゃないよね!?何か存在しない記憶が混ざってない!?これツッコミ入れた方がいいかな!?

 

「うん、うん?いや、裸では無かったけど。」

「散歩も水着ではありませんでしたよ!?」

「え、やっぱりあれ下着だったの!?」

 

うん、怒涛のツッコミラッシュありがとね。ハナコちゃんは楽しそうに笑ってるし、わざと言ったね?

 

「アズサちゃんの言っていた通りです、虚しい事だとしても、最後まで抵抗を止めてはいけませんね。」

 

「ハナコ⋯⋯。」

 

「アズサちゃん、もっと学びたいんでしょう?もっと知りたいんでしょう?皆で色んな事をやってみたいって、あの時話したじゃないですか。海に遊びに行くとか、ドリンクバーで粘って夜更かしとか。」

 

「それを、諦めてしまうんですか?いいえ、何も諦める必要はありません。」

 

「桐藤ナギサさん、彼女を、アリウスの襲撃から守りましょう!そして、私達は私達で無事に試験を受け、合格するのです!」

 

うん!それしかないよね!

 

「それと、後からどんな文句も言えないように、かけておいた罠はそのままに。それでも試験会場に辿り着き、皆で90点以上取って、堂々と合格するんです!」

 

「それが今の私達に取って救いとなる、唯一の答えではありませんか?」

 

「⋯⋯でも、そんな事は物理的に不可能な筈。試験は9時から、アリウスの作戦開始時刻もまた、同じ時間に予定されている。」

 

「他の人に助けを求めるとかすればいいじゃない!」

 

コハルちゃんの言う通り、それもそうだけど、それだけじゃ足りないよね。

 

「私達がしっかりと試験を合格する為には、それだけでは足りません。まずは、私達の方から動きましょう。これまで様々な嘘や策略の中で弄ばれて来ましたが、今度は私達の方から仕掛ける番です。」

 

「何せ今ここには正義実現委員会のメンバーと、ゲリラ戦の達人と、ティーパーティーの偏愛を受ける自称行動範囲の広い平凡な人と、トリニティのほぼ全てに精通した人がいます。」

 

「へ、偏愛ですかね⋯⋯。」

 

アズサちゃんとコハルちゃんは首を傾げてるけど、ヒフミちゃんは苦笑いを浮かべてるね。

 

「その上、ちょっとしたマスターキーのような『シャーレ』の先生もいるんですよ?」

 

「ま、まぁそうだね⋯⋯。」

 

マスターキー、言い得て妙な感じだね。

 

「この組み合わせであれば、きっと、トリニティくらい半日で転覆させられますよ♡」

 

⋯⋯それはちょっと難しいと思うよ?ヒフミちゃんも否定の言葉が出かかったけど、無理矢理抑え込んでるみたいだし。

 

「えっ?どういう事!?何をする気!?」

 

「何をするも何も、試験を受けて合格するだけです♡作戦内容は一旦、私にお任せください。」

 

「さぁ!今こそ力を合わせる時です、行きましょう!」

 

「え、えっと、取り敢えず無理せず頑張ろうね!」

 

「あっ、ヒフミちゃんにはちょっとお願いしたい事がありますので♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人称Side

 

トリニティ ある屋根裏のセーフハウス

 

「⋯⋯ふぅ。」

 

月明かりのみ照らされる部屋で桐藤ナギサは一人静かに紅茶を飲んでいた。まるで気持ちを落ち着けるかのように。

 

そうしてカップをソーサラーに置いた後、扉がノックされる音が部屋内に響き渡った。

 

「紅茶でしたらもう結構です。」

 

ナギサは給仕係が訪ねてきたと思い、紅茶のおかわりは不要と伝える。だがその後、扉が開く音が聞こえ、ナギサは首を傾げる。

 

「可哀想に、眠れないのですね。」

 

「っ!?」

 

謎の声が聞こえたと同時にナギサは椅子に座ったまま、声の方向へ体を向ける。

 

するとそこにいたのは寝ている筈であろう浦和ハナコがニコニコとした表情を浮かべながら部屋の入り口に立っていた。

 

「それもそうですよね、正義実現委員会がほとんど傍にいない状態、不安にもなりますよね、ナギサさん?」

 

「う、浦和ハナコさん!?貴方がどうして、ここに!?」

 

「それはこのセーフハウスをどうやって知ったのか、という意味ですか?それは勿論、全て把握しているからですよ。合計87個のセーフハウス、そしてそのローテーションまで、ふふっ♡」

 

ハナコはニコニコと笑みを絶やさずに答えていく。その様子を見たナギサは冷や汗が流れるのを感じていた。

 

「変則的な運用もおおよそ把握しています。例えば、今のように心から不安な時は、ここの秘密の屋根裏部屋に隠れるということも♡」

 

「なっ⋯⋯!」

 

全て見透かされたナギサは思わず立ち上がろうとするが、後頭部に銃口を当てられ、動きを止めた。

 

「動くな。」

 

「!!?」

 

ナギサの後ろに居たのは、ガスマスクを着けている白洲アズサだった。

 

「ああ、勿論ここまでの間に警備の方々は全員片付けさせていただきました。だからこそ、こうやって堂々と来たわけですが。」

 

「白洲アズサさん、浦和ハナコさん、まさか!『裏切り者』は一人ではなく、二人!?」

 

「ふふっ、単純な思考回路ですねぇ♡私もアズサちゃんも、ただの駒に過ぎませんよ。指揮官は別にいます。」

 

「⋯⋯!!それは誰ですか!?」

 

ナギサは声を荒げながらハナコに質問するが、ハナコは浮かべていた笑みを消して真顔になった。

 

「そのお話の前にナギサさん、ここまでやる必要、ありましたか?」

 

「⋯⋯。」

 

ハナコから質問を返され、ナギサはだんまりを決め込む。それを見てもハナコは想定内と言わんばかりに言葉を続けていく。

 

「補習授業部の事です。ナギサさんの心労は、よく分かります。ですがこうして『シャーレ』まで動員して、何もここまでやる必要は無かったのではありませんか?」

 

「それは⋯⋯。」

 

ハナコからの問にナギサは言葉を詰まらせた。

 

「最初から怪しかった私や、アズサちゃんは仕方ありません。ですが、ヒフミちゃんとコハルちゃんに対しては、あんまりだと思いませんか?」

 

「特にヒフミちゃんは、ナギサさんと、仲が良かったじゃないですか。どうしてこんな事をしてしまったのですか?ヒフミちゃんがどれだけ傷付いてしまうのか、考えなかったのですか?」

 

次々とハナコからぶつけられる問を聞いたナギサは一度目を閉じて考え込む。

 

「そう、ですね。ヒフミさんには悪い事をしたかもしれません。ですが、後悔はしていません。全ては大義の為、確かに彼女との間柄だけは、守れればと思っていましたが、私は⋯⋯。」

 

「⋯⋯ふふっ♡」

 

ナギサの答えを聞いたハナコは怪しく笑い始め、制服のポケットからボイスレコーダーを取り出した。

 

「では改めて私達の指揮官がナギサさんへ、メッセージを残してくれたのでそれを再生しますね♡」

 

そう言ってハナコはボイスレコーダーの再生ボタンを押して⋯⋯。

 

「あは、あははは、あっはははは!!楽しかったですよぉぉぉ!!ナギサ様との友情ごっこォォォォォォ!!」

 

「「⋯⋯は?」」

 

「ブフッ!プクク、は、腹痛い、ヒフミの奴はっちゃけ過ぎだろ!」

 

ヒフミの声がボイスレコーダーから流れたが、再生されたのは頑張って声をボーイッシュな感じにしながら大声で叫ぶヒフミの声だった。

 

予想していない声が流れたのかハナコとアズサは思考が停止したが、ナギサ?は腹を押さえて笑っていた。

 

「⋯⋯はっ!貴方はナギサさんでは、ない?誰ですか!?」

 

「待て待てって、今変装解除するから。」

 

ナギサ?は上着で隠していたチョーカーのスイッチを押して頭に着けていたウィッグを取る。すると頭の上にあった筈のヘイローと背中の羽根が消え、髪は茶色の短髪になった。

 

「「た、大将!?」」

 

ハナコとアズサがナギサだと思っていた人物は、実はナギサの制服を着て、靴や黒のストッキングを履いてナギサの髪色のウィッグを着けて女装していた大将だった。




先生
優しいトリニティ生徒がパテル派生徒だとようやく気付き、嵌められた事にもようやく気付いた。

真相について話す暇が無く、ヒフミ以外の補習授業部メンバーのやる気を削ぐわけにもいかないから真相は伝えていない。


阿慈谷ヒフミ
パテル派生徒が補習授業部のルールを変えていることには気付いている。でも先生と同じように他メンバーのやる気を無くさない為に黙っていた。

ハナコから例の台詞の録音を頼まれた時はどうしようと焦ったが、一般男子かナギサがなんとかしてくれるだろうと考え、ネタに走った。

録音時は恥ずかしいから一人にしてほしいと頼んで皆がいない所で録音した。

ちなみにヒフミがセーフハウスに着いていった場合は一瞬で一般男子の変装を見抜いていた。


浦和ハナコ
原作通りの展開で進み、ナギサを動揺させる為に例の台詞の録音をヒフミにお願いした。

ヒフミからボイスレコーダーを受け取った後、確認しなかったので、実際に聞いた瞬間に宇宙猫状態になった。

一般男子がナギサに変装していたのは最後まで気付かなかった。


白洲アズサ
原作通りの展開で進み、ハナコと同じくヒフミのボイスレコーダーの台詞を聞いた瞬間に宇宙猫状態になった。

ハナコと同じく一般男子がナギサに変装していたのは最後まで気付かなかった。もしガスマスクを着けていなかったら気付いていた可能性がある。


下江コハル
ほぼ原作通り。


一般男子
ナギサに『あはは』の台詞を聞かせない為に変装して囮になった。ちなみにセーフハウスでの台詞は原作知識があったから答えられている。

変装がバレないようにするため、リオに協力してもらい、ナギサのヘイローを頭の上に、羽根を背中に表示するようなモードと、ボイスチェンジャーの機能をチョーカーに付けてもらった。

制服はナギサが着ていた物を渡されており、ウィッグはナギサが作り、一般男子への化粧もナギサがしている。

なので一般男子はナギサの香りに包まれていた状態の為、興奮しないよう必死に耐えていた。


桐藤ナギサ
一般男子の女装姿に興奮した、その姿でお出掛けしたいなぁとも考えている。記念撮影はしており、ヒフミを混ぜたスリーショットも撮りたいと考えている。

今は一般男子の家で待機中。


ヒフミの録音台詞
原作台詞ではなく、遊戯王の有名なミーム台詞。中々特徴的な台詞、友人に実際に言われたらかなりへこむと思う。


女装
ブレワイで実際にある機能、原作では男子禁制の街に入るために女装して入っている。

一般男子は服を変えるだけではすぐバレるので色々調整している。ナギサの制服姿なのでまだ耐えられたし、バレなかった。
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