救護騎士団本部 臨時病室
羽沼と話してから救護騎士団本部に戻ると玄関前に大量のテントが張ってあった。
集中治療室や救急病室は無事だけど、一般的な病室や診察室は壊れちまったもんな。
「大将!戻って、いやあああああああ!!」
外で掃除をしていた救護騎士団団員が俺を発見すると、悲鳴を上げて尻餅を付いた。あっ、右目抉り出されたから、止血だけしていたままだった。
右目が空洞状態だもん、そりゃ悲鳴上げられるわ、そして悲鳴が聞こえたのかテントから現れたのは、先生かよ!?
「大丈夫!?悲鳴が聞こえたけど、た、大将?それは、誰にやられたの?」
「トリカスです、とても厄介なトリカスに右目に指を突っ込まれて抉り出されました。」
そう言うと先生は悔しそうに拳を握り締めた。これくらいで済んで良かった方だぞ。だからそんなに悔しがらなくても。
「なんで、なんでそんないつも通りな感じでいられるの?」
ん?先生が何か怯えてる?何で?
「慣れてますから。とはいえ中々スプラッタな感じだと先生の反応で分かったので、すぐに治しますね。」
『マックスサーモン焼き』を食って右目を再生しようとしたけど、特に何も起こらなかった。
そういや朝に腕を再生したばっかだった。仕方ない、眼帯借りるか。
「っ!!」
「どうしました先生?悲痛な表情で近付いてきっ!」
先生が俺を抱き締めようとしたけど、それをバックステップで回避する。それはやっちゃ駄目だろ先生。
「どうして避けるの大将?」
「それは俺以外の生徒にやってください先生。じゃ!」
また先生が抱き締めようと近付いてきたからハナエやミネがいるであろうテントに入る。
先生ラブ勢に見付かったらどうすんだよ。俺殺されちまうぞ、まだ死ねないんだからさ。
「⋯⋯大将は私に弱音をほとんど吐かないよね。そんなに私は信用ないのかな。」
テントの中に入ると、ヒフミの治療が終わっていて一息付いてるミネがいた。
「大将、来ましたか。話はリエルさんから聞いています。」
ヒフミは、曲がった腕や足は元通りにはなったけど、顔や腕や足に痛々しい傷跡が残っている。
「眼帯はこちらになります。」
ミネから眼帯を渡されて着ける。これで出会った生徒に怯えられなくて済むぞ。
「これからの事を話し合う為にナギサさん達を呼んでいますので少々休憩しててください。」
「分かった、そこの椅子で休ませてもらうよ。」
テントの中にあった椅子に座る。俺もこれからの事を一旦整理しないとな。
まず、ヒフミと白洲の会話イベントはもう終わってるとモモカから聞いてる。時間は少々ズレたけど、あのクズトリカスを追い掛ける時に会ったんだろう。
となると、次は聖園がパテル派にフルボッコされるイベントか!忘れかけてた!下江が行ってるかも分からないし、下江を合わせてフルボッコされるかもしれない!
「ミネ!急遽行かないといけない所があったから行ってくる!」
「大将!?行ってしまわれました、あの焦り具合、また何か起きるのでは!?」
救護騎士団本部 特別病室
聖園がいるであろう病室前に辿り着いたけど、鍵が掛かってやがる!
下の階の病室も入れないから『トーレルーフ』で天井をすり抜ける事も出来ねぇ!狙ってやったのかトリカスは!?
「い、いじめはダメっ!どうして、こんなに大勢で寄ってたかって!」
この声は下江か!?どうやって入ったんだ!?いや、そんな事気にしてる場合じゃねぇ、俺も入らねぇと!
「こ、こんなの、私が許さないんだから!」
「どきなさい、今の状況が分からないの?」
「緊急の事態なのよ!?」
「で、でも、私は!」
そうだ、一つ上の階に行ってそこから飛び降りて入るか!『ムチ』を使って勢い良く入ればトリカスにも攻撃出来る!
そうと決まれば『トーレルーフ』で上の階に移動!
「どけっ!!」
「⋯⋯い、嫌っ!私はバカだから、何がどうなってるのか全然分からないけど。」
「でも、これは違う!こんなの絶対ダメ!!」
よし、移動出来たぞ。聖園がいる部屋の一つ上は、入ることが出来るな!
「聞かない奴だ、それなら!」
「ま、待って。この子、どこかで。」
「よく見ると、何だか見覚えが。」
「そんなものどうでもいい!逆らう奴は、教育よ!」
「ま、待って!コハルちゃんに「魔女は黙ってろ!」くっ!」
は?おいまさか、あのトリカス達。下江をリンチするつもりか!?
「わ、私は暴力になんか屈し「黙れ!」あがっ!」
「お前みたいな落ちこぼれなクズは、黙って従っていればいいのよ!」
「自分一人じゃ何も出来ない癖に!」
「魔女の味方をするなら、まずお前から再起不能にしてやる!」
「ミ、カ、様、逃げ、て⋯⋯。」
ふざけんなよトリカス、テメェらの道徳性はどこに置いて来やがった!?
『ムチ』を装備して、窓枠に引っ掛けてターザンのように聖園達がいる病室に侵入!窓は迫撃砲の爆撃で全て割れてるからブチ破る必要はない!
「これでトド「土足でお邪魔しま〜す!!」めぎょ!?」
仰向けに倒れていて動けない下江を蹴り飛ばそうとしたトリカスの顔面に思いっ切り飛び蹴りを放つ。
食らったトリカスは病室の扉ごと廊下に吹っ飛んで行った。鼻血を出して気絶したな。
「なっ、貴様は大将!?リーダーからの攻撃で動けない筈では!?」
「右目抉り出されたくらいで動けなくなる訳ねぇだろボケ共が。話は聞いてるぞ、抵抗しない聖園をいいようにボコボコにして、止めようとした下江もボコボコにしたそうじゃねえか?」
「くっ!まさか聞いていたとは!けど今は大将は度重なる襲撃と、家も燃やされてメンタル崩壊寸前!ここで再起不能にすれば私達の野望がかなり近付く!」
「一人でのこのこ来たのが運の尽きですわね!ヒーロー気取りですか?」
なんかトリカスがギャーギャー騒いでいるけど、無視して倒れている下江の手当てをする。
勝手にテントから救急箱をかっぱらって来たけど、バレたらどうしよ。
「大、将?」
「よく一人で立ち向かったな下江。流石エリートだ、尊敬するぜ。」
「当、然、よ。私は、エリート、なんだから。でも、大将も、助けに、来てくれた姿は、カッコよかった⋯⋯。」
下江は微笑みながら気絶した。怪我の手当ては完了したから近くにあるベットに寝かせてと。
そしてトリカス達の方を向くと、ボロボロになっている聖園の髪を掴み、銃口を顔と胸とお腹に押し付けていた。
「おいおい、人質か?お前らは聖園の部下だったんだろ?」
「部下?こんな魔女の部下になった覚えはありませんわ。」
「さあ大将?この魔女を助けたいのでしょう?でしたらその場から動かないことです。」
トリカスがニヤニヤ笑った後、聖園に銃口を当ててないトリカスが俺に近付いて来る。なるほど、俺もボコボコにして聖園の精神をへし折るのか。
「や、やめて。大将は、関係無い。」
「黙りなさいクソ魔女が!クソ魔女がいけないのですよ?折角ゲヘナを地図上から滅ぼせるチャンスなのに、それを命令しないから!」
「そうやってる間にクソ魔女の味方はどんどん傷付く、これがお前の罰だよ!」
「ほら、大将も怯えて「ほーん。」は、鼻くそほじってる!?」
いや、やり取り長いんだよ。口だけピーチクパーチク動かしやがって。
「後ろ盾があるからそんなに傲慢でいられるんだろ?惨め過ぎるだろお前ら。」
「なんて下品な!やはり再起不能にするしかありませんわ!」
「もう謝ったって許しませんわ!這いつくばりながら後悔なさい!」
「後悔するのはお前らだよ。俺は動かないでいてやるよ。俺はな!」
「どういう「ハアァ!」ギャッ!?」
俺を殴ろうとしたトリカスは後ろから迫っていたナギサに気付かずに刀の袈裟斬りを食らって倒れ込んだ。
突然の乱入者にトリカスはびっくりして動きが固まったけど、そんなんだとナギサの攻撃の的だぞ?
次々とトリカス達はナギサによって倒されていく。流石に全て峰打ちだな。
「くそがっ!こっちには人質が「なら引き剥がせばいいだけの事です。」ガッ!」
聖園の髪を掴んでトリカスはワープで現れたリエルによって、聖園から引き剥がされて地面に思いっ切り叩き付けられた。これでトリカスは全滅だな。
「ナギちゃん、リエルちゃん、どうして。」
「大将からメッセージが来たので急いで来たのです。ミカさん、まずは手当てしますね。」
「私はこのトリカス達を正義実現委員会本部へぶん投げて参ります。すぐに戻りますので。」
リエルはナギサと聖園に一礼した後、すぐに消えた。そして数十秒経過した後に戻って来た。
トリカスは全員消えてるから、数十秒で運んだのか。これワープじゃなくて時を止めてないリエル?
「手当ては、いいよナギちゃん。こんな魔女に、手当てなんて必要無い、こんなボロボロな姿がお似合いなの。」
「ミカさん⋯⋯。」
聖園は力無く笑った。ここで聖園のメンタルを回復させないとマズイな。エデン条約編の原作知識は大元以外もう信用出来ない。
「ごめんね、ごめんね大将。あの子、パテル派の2番目の子の本性に気付けなくて⋯⋯。」
聖園は俺に謝りながらポロポロと泣き始めた。ナギサ達が見抜けなかったって事は猫被りが相当上手かったんだろ。聖園だけのせいじゃない。
「大将の、大切な家を壊しちゃった。私が、あの子を止めなかったから!」
「⋯⋯気にすんな、とは言えない。けど聖園だけの責任じゃない、だからそんなに抱え込むな。」
「抱え込みたくもなるよ!私は、大将の家や、救護騎士団本部、正義実現委員会本部、大聖堂の爆撃は、する気は全く無かったのに。」
「私が、エデン条約を滅茶苦茶にしたから。あの子がつけ上がった。」
聖園の言葉を俺やナギサやリエルは黙って聞いている。変に慰めの言葉を掛けたら取り返しつかなさそうだから。
「ごめんね、私はいつもこんなんだよね。私みたいな問題児は、ナギちゃんや大将を何度も心配させる私は、傍にいられないこともよく分かってるの。」
「でも、私、私には、もう、帰る場所がない。部屋は燃やされて、持ち物は全部無くなっちゃった。そりゃ、そうだよね。」
「私は、トリニティの裏切り者で、皆の敵だから、何度もセイアちゃんやナギちゃんやリエルちゃん、そして大将を傷付けてしまった魔女だから。」
「学園から追い出されるんだろうね。そしたら、ナギちゃんにも、大将にも、大切な人達にも、二度と会えなくなる。」
「生徒じゃ無くなった私は、私みたいな問題児は、もう誰も会ってくれないよ⋯⋯。」
聖園は更に大粒の涙を流す。鼻水も出てるから本気で泣いている、思いを吐き出させよう、まずはそれからだ。
「私に、これ以上幸せな未来なんか訪れないって事も、よく分かってる。」
「私は、悪党だから、人殺しだから⋯⋯。」
「⋯⋯思いは吐き出せたか
一通り思いを吐き出したミカに近付き、頭を撫でようとすると、腕で振り払われる。
けどそれは予想していたから頭を撫でていない方の手で、腕を掴む。ミカはびっくりしてるな。
「今、私の事を名前で?や、やめて大将!私に優しくしないで!」
「いいや止めない。」
振り解こうと更にミカが暴れるけど、それはナギサとリエルが押さえてくれた。流石に俺一人じゃミカを押さえ込めないからな。
今は後ろからナギサがミカを抱き締めていて、リエルが左腕を押さえている。
「どうして、どうして私に優しく出来るの?私は色んな罪を犯したのに、私には、救われる資格なんてないのに!」
「確かにミカは色んな人を傷付けた問題児だ。けどな、俺にとってのミカは人の話を聞かないバカミカなんだよ。それだけで救うのを諦める理由にはならねぇよ。」
「またバカミカって言った!」
泣いててもそこの反応は早いのな。ナギサとリエルが呆れてるぞ?
「大丈夫さミカ、お前は踏み止まれただろ?」
「それは!結果的にそうなっただけ!でも!それでも!私は裏切り者の魔女だ「なら謝ろう。」へ?」
「悪いことしたらまず何をすればいいか分かるか?謝るんだよ、ごめんなさいだよ。」
「そして、これ以上被害を出さないように尽力しよう。それがやらかした者が取る責任だ。」
俺は先生じゃない、だから責任は自分が取るなんて言えない。だからこんな方法しか思い付かない。
「ミカは魔女なんかじゃない、魔女になんかさせない。そうだろナギサ?リエル?」
「えぇ、ミカさんは人の話を聞かないバカミカですが、それで私は友達を辞めるつもりはありません。私にも責任があります、一緒に背負いますよミカさん。」
「大将様の言う通りです。ミカ様はバカミカ様ですが、魔女なんかじゃありません。今回の事件はミカ様だけの問題じゃございませんので、私も尽力致します。」
「もぅー!大将がバカミカって言うからナギちゃんやリエルちゃんもバカミカって言うようになったじゃん!」
頬を膨らませて怒るミカだけど、その後にクスッと笑った。よし、泣き止んだな!
「ズルいよ大将は、どうして私にそこまで手を差し伸べてくれるの?」
「⋯⋯困っている知り合いがいたら見捨てたくないんだよ。それにミカはまだやり直せる、だから手を伸ばしたんだ。自分が手を伸ばすことで救えるなら、俺は救うさ。」
「後はそうだな、何かを全てを失うという経験を誰にもしてほしくないんだ。」
俺はキヴォトスに来て全てを失った。そして、手を伸ばせば救えた筈のアリウス生徒なのに、手を伸ばさなかった事で救うことが出来なかった。
「もう、誰にも、大切な人を失うという苦しみを、味わってほしくないんだよ。」
「大将⋯⋯。」
ナイーブな気持ちになってると、突然ミカに抱き着かれた。え?何で?どうして?
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
「⋯⋯それはナギサや百合園にも言ってやれ。って力強っ!?引き剥がせないんだけど!?」
この後しばらくミカに泣きながら抱き着かれて謝罪の言葉を延々と言われた。力加減は出来てるから苦しくないけど、柔らかい二つの物がギュムギュムと押し付けられてんだよ!
ってナギサとリエルは左右から抱き着くな!心頭滅却、鋼の意思で耐えろ、耐えるんだァァァァァ!!
一般男子
先生との肉体的接触は極力避けるようにしている。先生ラブ勢に何されるか分からないため。
ミカのメンタルが思ってた以上にヤバかったのでケアをした。これでミカが暴走する事は無くなった。
その代わりミカは一般男子に惚れてしまったが。
先生
ヒナのメンタルケアは完了している。一般男子がまた怪我してきたのでとても心配。
でも抱き締めようとすると逃げられるから信用されてないのではと落ち込んでる。
蒼森ミネ
色々あって流石に疲れている。適切な処置がされていたから強制的な救護を一般男子にしていない。
下江コハル
原作通りミカの集団リンチ中に失礼した、でも原作と流れが異なっている影響でコハルもボコボコにされてしまった。
今は様子を見に来たハナエによって救護されている。ラヴァーズ入りはしない。
聖園ミカ
救護騎士団本部と正義実現委員会本部と大聖堂の爆撃、ヒフミの事についてはパテル派No.2から聞いていて、お前のせいと言われていた。
それでパテル派生徒にボコボコにされ、助けに来たコハルもボコボコにされ、病む寸前に一般男子がやって来た。
一般男子、ナギサ、リエルのお陰で立ち直れた。なので原作のようにアリウススクワッドに復讐することはない。
ナギサ、リエル
一般男子からメッセージを受け取り、急いでミカがいる病室に来ている。また勝手に突き進んだ一般男子のお仕置きの為、最後に抱き着いている。
Q.あれ?これじゃミカは第4章でアリウスに行かない?
A.ちゃんと行きますよ。復讐ではなく助けに行きます。