先生Side
「⋯⋯アツコが、連れて行かれた。」
雨が降る中、サオリちゃんが土下座して絞り出すように呟いた。アツコちゃん?確かガスマスクを着けてた子だよね。
「他の仲間もアリウスの襲撃、そしてトリニティのパテル派生徒からの襲撃に遭って散り散りに、生死も不明だ。」
またパテル派生徒!?そういえばエデン条約調印式前後でパテル派生徒が暴走してたけど、あれはほぼ三年生だった。
一年生は特に関与していないから、残ってる二年生か!
「エデン条約調印式襲撃の翌日に襲われ、あれから何日も逃げてきたが、私では彼女を止められなかった。」
「このままでは、アツコは、姫は、死んでしまう。」
「⋯⋯ベアトリーチェが何かするんだね?」
私の質問にサオリちゃんはこくりと頷いた。あいつ!どこまで生徒を弄ぶ気なの!
「明日の朝、夜明けと共に『彼女』に殺されてしまう。私の話など、信じられないかもしれないが、これ「信じるよ。」どうして?」
「あいつは前に似たような事をしているから。それに、サオリちゃんの言葉から嘘は感じないからね。」
「⋯⋯すまない。」
そう言ってサオリちゃんは更に頭を下げた。サオリちゃんが土下座して私が立ってるのは申し訳ないからしゃがみ込もう。
「アツコは、元よりそのように育てられた存在なんだ。幼い頃からそうやって『生贄』にされる運命にあったのだと。」
「『彼女』は、姫の運命を変えたいなら『彼女』の命令に従えと。そうすれば、姫だけでなく、他の仲間も助けてやると。」
⋯⋯絶対に助けないやつだよこれ。あいつの事だから『そんな事言った覚えはありませんね。貴方は道具との約束を一々覚えますか?』とか言うよ。
「エデン条約を強奪し、ユスティナ聖徒会の力をアリウスのものとし、トリニティとゲヘナを手中に収め。」
「そして、大将を殺すことが出来たら、アツコが『生贄』にならずに済む、と。」
「だが、私は失敗した。アリウススクワッドは、任務を遂行出来なかった。エデン条約の強奪に失敗した上、トリニティとゲヘナの自治区の征服も、大将を殺す事も、仲間を助ける事も、アツコも守る事さえも。」
「全て、私の力が及ばず、叶わなかった。」
サオリちゃんは途中涙声になりながら話していく。何も出来ない自分に腹が立って仕方が無いんだね。
これが前に大将が言ってた事、か。この世界は力こそが正義になっていると、力がなければ何も守れないと。
でも、だからこそ⋯⋯。
「今の私は落伍者だ。トリニティにも、ゲヘナにも、同じアリウスにだって助けを求める事が出来ない。勿論大将にも、だ。」
「だから、頼れるのはもう、先生しか⋯⋯。」
サオリちゃんは地面に頭を押し付けてお願いしてくる。
「頼む⋯⋯。私の命を掛けて約束する。どんな指示だろうと従う。『ヘイロー破壊爆弾』も預ける。私の命を握ってもらって構わない。」
「私を信用出来ないと判断したら、それを使ってくれ。だから、頼む。」
「⋯⋯どうか、アツコを。姫を、助けてくれ。」
「⋯⋯一つ、聞かせてくれる?大将に『恐怖』を注入したのは、サオリちゃんだね?」
「⋯⋯そうだ。私が大将を殺す為に『恐怖』を注入した。」
やっぱりか。大将を殺す為に、と言っていたからもしかしてと思ってたけど。
「先生が小鳥遊ホシノの救出の最中、大将はトリニティの朝顔ハナエとゲヘナの愛清フウカを助けていた。二人を救出後に不意打ちの形で、私が大将に『恐怖』が埋め込まれた弾丸を撃ち込んだ。」
「大将を苦しめたのは私だ。到底許される事ではないのは分かってる。私はどうなってもいい、だから!アツコを!」
「そっか⋯⋯。じゃあ、取り敢えず立ってくれないかなサオリちゃん?」
いつまでも生徒を土下座させたまま話を進める訳にはいかないからね。
「だ、だが。私は「サオリちゃんと対等に話がしたいの。」分かった。」
サオリちゃんはおずおずと立ち上がった。それと同時に私もしゃがみ込んだ状態から立ち上がる。
でも罪悪感を感じてるのか、サオリちゃんは私から視線を逸らしてる。
「サオリちゃんが言ってた『彼女』って、ベアトリーチェの事だよね?」
「!!!」
私の発言にサオリちゃんは驚いたような表情をした。そりゃ私とホログラム越しだけど会っている、なんて話さないよね。
「そうだ。知ってると思うが、アリウス自治区の代表であり、アリウス分校の主人。私達は『彼女』と呼んでいるが、他の生徒からは『マダム』とも呼ばれている。」
「私も数回しか見たことはない。背が高く、赤い肌を持ち、白いドレスを纏った大人だ。私よりも姫が彼女とよく会っていた。」
大人、か。
「⋯⋯他のスクワッドは今どうしてるの?」
「姫を連れ去られてから、すぐに襲撃を受けて、その時に散り散りになったから消息は分からない。もしかしたら、まだアリウスとトリニティのパテル派生徒に追われてるかもしれないな。」
なら早く合流しないとね。追われてるって事だから怪我とかしてるかも。
幸いウエストポーチは持ってきるから、その中に必要最低限の応急処置道具と保存食があるから、分けてあげないと。
「連れ去られたアツコが何処にいるか分かる?」
「アリウス自治区にある、アリウス・バシリカ。その地下に彼女が用意した秘密の至聖所がある。おそらくそこだろう。」
「どうしてそこにアツコを?」
秘密の場所って事は、何か実験でもするつもりじゃ!
「そこまでは分からない。あそこも、以前から姫の為に準備された場所としか。ただ、姫は以前から、いつかそこで『生贄』に捧げられるのだと口にしていた。」
「彼女は、明日の夜明けと共に儀式を行うそうだ。大将の邪魔が入らない内に⋯⋯。」
「大将の邪魔?」
「ああ、本来彼女が行う儀式は数カ月前にやるものだった。だがいきなりアリウス自治区に現れた大将が儀式を滅茶苦茶にしたんだ。」
「結果、儀式は中止せざるを得ない状況になり。彼女も相当な痛手を負ったらしい。」
そうか、その時に大将はアリウス自治区の事情を知ったんだね。そしてベアトリーチェは邪魔された大将に復讐する為に。
「姫に残された時間は、もうないかもしれない。」
「⋯⋯分かった。状況は大体把握したよ。じゃあ、他のスクワッドメンバーと合流するために早速行動しよっか。」
「!?」
あれ?サオリちゃんがかなり動揺してる?
「本当、に?本当に、手を、貸してくれるのか?」
「生徒のお願いは無碍には出来ないからね。サオリちゃんのアツコちゃんを助けたいという強い想いは伝わったから。」
「それだけの、理由で?そんな、忘れたのか!?私は、先生を撃ち掛けたんだぞ!?それに大将を殺し掛けたのは私だ!生徒を殺し掛けた私だぞ!」
「どうしてそんな簡単に、理解出来ない、どうして。」
「あっ!爆弾は没収ね!起爆装置もあるだろうから全部没収だよ!」
サオリちゃんが唖然としている内に、サオリちゃんが履いてるズボンのポケットからはみ出ていた爆弾と手に持っている起爆装置を取り上げる。
こんなもの、ない方がいいからね。
「⋯⋯起爆装置無しでは爆弾は絶対に爆発しな、ちょっと待て、何故爆弾を遠い所の瓦礫の上に置いた?何故起爆装置のスイッチを押そうとしている!?何する気だ!?」
「はいポチッとな!」
起爆装置のスイッチを押した瞬間に瓦礫の上に置いた爆弾が爆発した。瓦礫の近くに人やロボットがいないことは確認済み。
こんな危険物、持っているより先に処理した方がいい。奪われて使われる可能性もあるから。
ついでに起爆装置を地面に置いて踏み潰して破壊した後、近くにあったゴミ箱に捨てる。
「これでヨシッ!さあ、時間が無いから急ぐよ!」
「な、何をしたいんだこの先生は?ってそうじゃない!先生、私はまだ理由を聞いていない!」
「理由か、簡単な理由だよ。助けを求めてきた生徒がいる。苦しんでる生徒がいる。それだけで助ける理由になるんだよ。」
大将も、きっとそうしていただろうね。
「私は大将を「じゃあ諸々片付いたら謝ろっか大将に。」そ、そんな簡単な話じゃ!」
「悪い事をしたらまずは謝る。それが大事なの。」
夜明けまで時間はあまり無い。急いでスクワッドメンバーと合流してベアトリーチェの企みを阻止して、アツコちゃんを助けないとね!
救護騎士団本部 病室
⋯⋯あれ?痛くねぇ、苦しくない。
俺はいよいよ死ぬのか?これ多分本当に死にかけて痛みや苦しみが分からなくなってんだ俺。
そう言えば、さっきまで冷たかった体も、なんか暖かい気がする。
暖かい、これは人の温もり?誰かの温もりか。一体誰が。
目は開けれそうだ、じゃあ確認してみるか。リエルかナギサかな?でも本当に誰なんだろう⋯⋯。
「クックック、おはようございます大将。」
「ヴェアァァァァァァァァァァ!!!」
目を開けたら黒服の顔がドアップで写されてるんだが!?お前何やってんだよ!!
「クックック、素早い反応。良いですねぇ。」
「ち、近い!近いんだよテメェ!何でこんなガチ恋距離で見詰めてくんだよお前ェ!」
心臓止まるかと思ったわ!馬鹿じゃねぇの!?
「雪水リエルさん。大将が目を覚ましましたよ。」
「何で寝ている俺のベッドに潜り込んでんだよ!?気色悪いんだよ!出て行っけ!」
ニタニタしている黒服を放り投げる。それと同時に病室の扉が開いてリエルが入って来た。
「大将様!目を覚まされたのですね!気分はいかがでしょうか?」
「気分はあの黒服のせいで最悪だよコンチクショウ!」
「それは失礼しました。ですが、バッチリと目が覚めたでしょう?」
「お陰様でな!」
クソ、病室の壁に激突させる勢いで黒服を放り投げたのに、受身を取って着地しやがった。
「大将、あれは意味があっての行動ですよ。」
「どういう意味があ「私が来なかったら、大将はパテル派No.2の生徒に暗殺されてましたよ。」!?」
「大将が蘇生可能回数がもう無いことを知ったのでしょうね。」
⋯⋯俺を助けてくれたのは嬉しいけど、もっとこう、やりようは無かったのかよ!?
リエルは、誰かと電話してる。
「ハナエ様に監視カメラを確認して貰いましたが、あのクソカス生徒の姿は映っていなかったそうです。ですが、あのクソカスは監視カメラに細工をしていたようです。」
「自分が映らないようにしたのでしょうね。まあ、私の監視網からは逃れられてませんが。」
「礼は一応言っておく。それで、黒服は俺をクソカスから助ける為に来た訳じゃないんだろ?」
「えぇ。先生がアリウススクワッドのメンバーを率いてアリウス自治区に向かいました。」
ついに最終決戦突入か。俺も行きたいけど、蘇生可能回数0じゃ足を引っ張るだけ。でも行かないと!
「クックック、大将?ベアトリーチェをぶっ飛ばしに行くのでしょう?」
「ああ。」
誰かに止められようとも俺は行くぞ。
「でしたら大事な報告を。大将の蘇生可能回数を回復させる方法が一つあります。」
「アリウス自治区にある、大将の家にワープする場所、そこに眠っている武器を装備すれば、回復する可能性があります。」
「「!!!」」
眠っている武器、まさか、あれなのか!?
「あそこは大将が最初にアリウス自治区に訪れた際にアリウスに溜まっていた怨念や憎悪を浄化した場所です。」
「念のため観測していましたが、昨日急に台座に刺さっている武器が出現したのです。心当たりはありますか大将?」
「ある。多分あれしかないと思う。」
けど、俺にその武器を抜けるのか?でも、方法はそれしかないなら行くしかない!
今の俺のハートの最大値は15個になっているから何とかなるか?
「情報ありがとう黒服。リエル、付いてきてくれるか?」
「はい、大将様の為なら何処までも。」
「クックック、大将?アリウス自治区へはどうやって行くつもりですか?あそこは『カタコンベ』を経由しないと行け「お前も付いてくるんだろ?」バレましたか。」
観測したいって雰囲気が滲み出てるんだよ黒服。
「アリウス自治区の入口まではワープで連れて行きましょう。ですが、それ以上はベアトリーチェに気付かれる可能性があるので入口までですが。」
「充分だ。方針が決まれば早速行動「その前に、大将様はご飯をお召し上がりになってください。1週間眠っていたのですから。」あっ。」
ベッドを降りようとした時にリエルに止められ、鍋を渡して来た。蓋を開けるとビーフシチューが入っていた。
「その間にナギサ様達に連絡します。」
「分かった。」
鍋の取っ手を持ってビーフシチューを飲むように胃に流し込む。具材は飲めるように小さくカットされていた。うん、美味い!
「んぐんぐんぐんぐんぐんぐ。」
熱さも丁度いい。これならすぐに完食出来そうだ。
「⋯⋯プハッ!ご馳走様でした。」
「寝起きにそんなに食べるなんて、馬鹿ですか大将?」
ふと黒服とリエル以外の声が聞こえたからその方を向くと、病室の入口でドン引きしながら俺を見てくる梯がいた。
「胃は丈夫だから問題ねぇよ梯。って梯!?いつ来たんだ?」
「大将がビーフシチューを飲んでる最中に来ましたよ。」
「アリウス自治区に行くのでしょう大将。私も行きますよ、アリウス自治区に詳しい人がいた方が良いでしょうし。」
「助かるよ梯。けどいいのか?ベアトリーチェと戦闘になるぞ?」
「ふん、あのマダム、いやベアトリーチェに一発かましてやらないと気が済まないんですよ。保護されてる子達からも託されましたし、旅立って行ったあの子達の為にも。」
「それに、大将に借りを返すいい機会ですので。」
まあ、何にせよ梯が味方なら心強い。アリウス自治区に詳しくないからな。
「話は纏まりましたか?では早速向かいましょう。」
俺、黒服、リエル、梯という異質なメンバーでアリウス自治区に向かう。いや本当に異質だな!?
先生
原作通りサオリやアツコ、アリウススクワッドを助ける為に行動する。
ヘイロー破壊爆弾が危ないのは知ってるので即処分した。起爆装置だけ破壊しても爆弾が再利用される可能性があったので起爆した。
一般男子
目が覚めたらドアップの黒服と目が合って気絶しかけた。
蘇生可能回数が0になっており、回復する手段として伝説のあの武器を抜く為にアリウス自治区に向かっている。
黒服
眠っている一般男子を観測していたらパテル派No.2が救護騎士団本部に潜入してきたので、一般男子を守る為にベッドに潜り込んだ。
実際にそれを見たパテル派No.2は物音を立てて殺していた気配を漏らした為、いきなり現れたミネのシールドバッシュを食らって救護騎士団本部から追放されている。
雪水リエル
一般男子が目覚めたので泣きそうになっている。でも黒服がいたので涙は引っ込んだ。
一般男子から黒服の事は聞いていたので怪しむけど、害を加えないならスルーするつもり。
ビーフシチューはリエルが作った。
梯スバル
リエルから連絡を受けてすぐに来た。洗脳は完全に解けており、ベアトリーチェとの決着を付ける為にやる気マックスである。
最初の病室シーン
BLEACHの最序盤で主人公が大怪我から目覚めるシーンが元ネタ。あれは端から見れば爆笑だけど、やられた本人はトラウマ確定ものでしょう。
Q.あの武器ってまさか。
A.そうです、お馴染みのあの伝説の武器です。
Q.一般男子はどうやって儀式を邪魔したの?
A.以下の事をしてます。
①捕らわれていたアツコを救出した
②ベアトリーチェをボッコボコにした
③至聖所を爆弾矢で半壊にした
④アリウス自治区に溜め込まれていた怨念、憎悪を『いやしの歌』で浄化した
⑤死にそうな生徒を片っ端から助けた