好きだった子が死んだ自分の墓の前で告白している件   作:MK60ff

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気づいたら評価増えてて嬉しい。
まだ拙い部分が目立つけど頑張っていきます!


招待状

 あの後、追ってから逃れるために突如喋り出したペロロ様のぬいぐるみの道案内に従い地下の廃棄された施設へと逃げ込んだ。

 人の手を離れてかなり経つのか所々ひび割れ苔が生えている。

 最初は従うべきか迷ったものの他に打開策がなく何より阿慈谷さんが興奮してここはペロロ様の導きに従いましょう!とノリノリだった。

 

 所々まだ電力が生きているのか暗い通路にライトの明滅が広がっている。足元が悪く転ばないようスマホのライトで道を照らして阿慈谷さんが後ろでペロロ様を抱いて歩いている。

 

「それで、アンタはなんなの?そのぬいぐるみ越しにこっちに話しかけてるんだろうけど。まさかぬいぐるみ自体が意思を持って喋ってるて言わないよね?」

 

「ええ!ペロロ様に意思が宿ったんじゃないんですか!」

 

 そんな訳あるかこのペロロ信者が。

 

「そう急くな、もう直ぐ目的地へ着く。そこできっちり全部話してやる」

 

 本当に訳がわからない事だらけだ、あそこまでして追ってきた以上ただのぬいぐるみじゃないと思っていたがまさか喋り出すとは思わなかった。

 そもそも喋れたのなら何故あのタイミングで声をかけてきたのか?初めから自分達の事を見ていたのか?

 聞きたい事が山積みだ。けれど聞いても素直に答えてくれるとは思えない。

 あの顔がいつもとは違う意味で不気味だ。

 

 まだ信用できない以上周囲をよく観察し逃走経路を確認する。

 こんな事ならもっと装備を整えてくるんだった。

 

 そうして歩いているうちにぬいぐるみが仰々しい扉の前で止まれと指示を出す。

 

「ここだ、ここでならゆっくりと話せる」

 

 そう言うと扉が勝手にゆっくりと開いていく。

 

「と、とんでもないところに来ちゃったみたいですね私達」

 

 やっぱりあの場でこのぬいぐるみは諦めてもらうのが正しかったのか彼女を危険に晒す選択をしてしまったのではないのだろうかと後悔した。

 

「立ち止まっていないで二人とも早く入れ」

 

「お、お邪魔しまーす」

 

「さて何が出てきますかねえ」

 

 促されるまま部屋へと入る。

 阿慈谷さんが怯えながら足を進めていく。

 仰々しい扉から威圧感のある空間を想像した。

 

 が。

 

「はい?」

 

「...天国ですかここは?」

 

 目に飛び込んできた光景に己の目を疑って阿慈谷さんは桃源郷を見つけたとでも言うように顔が緩みさっきまでの緊張が嘘のようにリラックスしている。

 部屋一面がペロロ様グッズに埋め尽くされていた。

 そして部屋の奥で黒髪ロングの赤いツノを2本生やした少女が待っていたと言わんばかりに椅子に座り腕を組んで構えていた。

 

 おそらくあの少女がペロロ様越しに話しかけていたのだろう。

 ペロロ様好きなのは察していた。

 けれどこの部屋の装飾は予想外すぎて何より突然のことに情報量が多すぎてフリーズした。

 頭に直接情報を叩き込まれるのはこんな感覚なのだろうか。

 

「いつまでそこで惚けている二人とも早く近くに来い、そこにいては話ができんだろう」

 

 彼女が手招きすると阿慈谷さんが抱き抱えていたペロロ様のぬいぐるみが彼女の膝へと飛んでいった。

 阿慈谷さんが残念そうに手を伸ばしていた。

 気付けば扉は閉まっていて逃げ場がない。いやそもそもその気は相手にないんだろう。

 

「さて、何処から話すか。まずは余計な緊張をほぐすとしようか何が飲みたい?来客用の菓子も一通り用意してあるぞ」

 

 甘いのは嫌いか?と久々に来た孫にお菓子を出す祖父母のように優しく強者ゆえの余裕にやな汗がでる。

 そもそも外でヘルメットを脱ぎたくなかった。

 生きている事が露見するのを防ぐためでもあるが包帯だらけの顔を周りに見せたくない。

 

「お気遣いどうも、けどできれば手早く済ませたいのだけど」

 

「急くなと言っている。全く、がっつくヤツはモテんぞ」

 

「余計なお世話です」

 

 食えないやつ。

 バチバチと目に見えない火花が二人の間でスパークしている。

 

「あ、あの!貴方はペロロ様好きなんですか?いや好きですよね!好きじゃなきゃここまでの量のペロロ様グッズを集めたりしないですよね!」

 

 二人の間の空気を気にすることなくすごい勢いで阿慈谷さんは彼女に迫っていく。

 彼女の方もその勢いに気押される事なく喜んで会話を続ける。

 

「ああ、この隠れ家を作るのにここまで集めるのは苦労したぞ!そっちのヘルメット頭と違ってお前とは話が弾みそうだな!」

 

 このままほっとくとペロロ様談義に花が咲いてしまいそうな所を軌道修正をはかる。

 

「その話は後で好きなだけしていいんで、いい加減に色々教えて欲しいんだけど。まずアンタは何処の誰で、なんで俺たちをここに呼んだ。てかそのペロロ様越しに俺たちを見てたならなんであのタイミングで声をかけた?」

 

「まあ待て、キッチリ話してやるといったろう」

 

 まずは自己紹介からと少女は改めてと名前を告げた。

 

「私は情報屋タナトス、そっちのヘルメット頭に話しがあって呼んだ」

 

「...アンタだったんかい」

 

 もう並大抵のことじゃ驚かない。

 考えが甘かったらしい。

 探していた名前に深いため息が出た。

 けれど偶然とはいえ目的の人物にたどりついていたことは行幸でもある。

 

「ああ、だが話す前に阿慈谷ちゃんはいったん向こうに行っていてもらおうか、ペロロ様のグッズなら好きに手に取って見てもらっても構わない」

 

 お前もその方がいいだろうと目線を向けてくる。

 

 気遣いか人質のつもりか。

 疑い返答に迷っている事を察してタナトスが椅子から立ち上がり耳打ちしてきた。

 

「安心しろ、ヘイローを壊すつもりならわざわざここに呼んでいない。お前もそれは分かっているだろ」

 

「...わかった。阿慈谷さん、悪いけどちょっと離れててくれ」

 

「えっと、なんだかよくわかりませんけどお邪魔みたいですね。せっかくこんなにペロロ様グッズが並んでるならお言葉に甘えさせてもらいますね」

 

「すまんな、後でゆっくりペロロ様について語り合う」

 

 はい!っと元気よく返事をしてペロロ様へと向かう阿慈谷さん。

 こっちの心配をよそにはしゃぐ姿を見て少し肩の力が抜ける。

 

「さて、ではまずお前をここに呼んだ理由だが。例のお前達が追っている薬、お前やヴァルキューレがMと呼称していたものに繋がる情報。それをお前に渡すために読んだ。灰鴉」

 

 名前も知られていた事に心臓を握られる感覚になり思わず銃に手を伸ばす。

 タナトスは手を伸ばし落ち着けと言うように制止しながら話を続ける。

 

「名前も知ってるわけか、確かに俺はそれをずっと追ってる。なんでそれを知ってる?」

 

「情報屋だぞ。手段はいくらでもある。安心しろこの情報は売っていないしそのつもりもない」

 

「それを信用する事ができるとでも?」

 

 この女を信用できる証がない。

 俺が生きていることは先生と連邦生徒会、Mのことを追っている一部の生徒だけ。誰もそのことを無闇に話すとは思えない。

 

「お前がまだ生きている。もし私が漏らしていたらすでにヘイローを壊されている。お前をそうなる寸前まで追い込んだ連中によってな。そう考えることはないか?」

 

「そうだったとしても信用できない。これから漏らさない保証は何処にある」

 

 知られたくない情報を知っている時点で信用できない。

 いつ裏切るとも知れない人間に簡単に命を預ける馬鹿はいない。

 

「それはそうだ、まあそうでなくては困る」

 

 タナトスはまるでそれでいいとその返事を待っていたと言うように頷いた。

 

「それはどうゆう」

 

「1次試験は合格だよ、ヒナちゃん」

 

 知人の名前が飛び出した。

 タナトスはポケットから携帯端末を取り出してテーブルに置いた。

 そこから見知ったコウモリのような羽を持った白髪の少女が立体映像で映し出される。

 

「その呼び方はやめてって言ったはずだけど」

 

「昔からの仲なんだ、固いこと言わないでくれ」

 

 旧知の仲なのか、軽口を叩き合う2人。

 初めから仕組まれたことを察して頭を抱えたくなる。

 ヒナ委員長にも後で問い詰めなければ。

 

「全く、灰鴉もごめんなさいね、はめるようなまねをして。でも安心してこの子は信用できるから。じゃなきゃ貴方のことを話したりなんてしないもの」

 

 ヒナ委員長が言うなら少なくとも自分の情報を売られる心配はないんだろう。出来れば最初から話して欲しかったが。

 

「まあいいよ、貴方は少なくとも悪意があってこんなことはしないだろうから大方この情報屋が言い出したことだろ」

 

「正解だ、ヘルメット頭。ヒナちゃんからお前の話は聞いていてね。Mのことは私自身でも追っていて裏方から立ち回ることのできる人材が欲しかったんだ。それでお前に目をつけて色々試させてもらった」

 

 人を試す態度に苛立ちを覚える。

 何よりも無関係な彼女を巻き込んだ事が。

 

「阿慈谷さんのことも巻き込んでまでか?」

 

「ヘイローが壊れることはないように配慮はしたさ」

 

 この女。

 怒りを覚え拳に力を込める。

 一発殴っても許されるだろうか?

 

「あまり過激なことはしない様に言ったのだけれど。また独房送りになりたいのかしら?そんなことだから貴方は友達がいないのよ」

 

「そんな事言わないでくれ、私達は友達だろ」

 

「一方的に余計な心労を増やすのは友達とは言わない、ただの腐れ縁よ貴方とは」

 

 冷たく突き放されて萎れていくタナトス。

 ざまあない。

 心で小さく笑った。

 

 目的を思い出し仕切り直すように咳払いをする。

 

「それでいい加減に情報について話して欲しいんだけど?」

 

「そうだな、けれどまだ試験は全て終わっていない。情報を渡すのはこれから出す最終試験に合格してからだ」

 

「最終試験?」

 

 ニヒルに笑うタナトス。

 彼女の薄ら笑いを見ていると鳥肌が立つ。

 またやな予感がする。

 どうせろくでもない内容なのだろう。

 情報は欲しい、けれどこの女は嫌いだ。

 

「言ったろ、一次試験は合格だと。本番はこれからさ」

 

「ごめんなさい、面倒でしょうけどもう少し彼女に付き合って」

 

 ヒナ委員長が申し訳なさそうに頭を下げる。最近は忙しいのか何処か彼女が萎れて見えた。

 タナトスは懐から赤い封筒をとり出した。

 彼女のニヒルな笑みと合わせてひどく不気味に見える。

 

「それは?」

 

「招待状さ、地獄への」

 

 不気味に笑う姿が彼女の容姿と合わさりその姿を死神に見せた。

 

 

***

 

 

 それから彼女から封筒を受け取り地上へと返された。

 帰る時に阿慈谷さんにお詫びの品として彼女が持って帰ろうとしたペロロ様のぬいぐるみをプレゼントしていたのは意外だった。

 彼女にもそう言った面があるんだと少しだけ感心する。

 阿慈谷さんはすごく喜んでタナトスもペロロ様仲間ができたと2人で楽しそうに会話を弾ませていた。

 

 そうしてお互いに帰路につき自分も拠点へと帰ってきた。

 

「例の問題児達といい、ゲヘナの生徒はどうしてこんな癖の強い人ばかりなのやら」

 

 前に一度、ゲヘナの温泉開発部が起こした事件に関わった事があるが酷い目に遭わされた。出来ればもう会いたくない。

 あれから温泉が少しトラウマになった。

 明らかに頭のネジが外れている行動にカンナ先輩も引いていた。

 

 そんなことを考えているとインターホンがなった。

 

「はいはい、一体誰ですか」

 

 ここを知っているのはごく僅かな人だけ。

 警戒しながらドアスコープを除く。

 そこにはよく知っている白髪のゲヘナ生が立っていた。

 珍しい客人だなとドアを開けて来客を歓迎する。

 

「直接会うのは久しぶりだね。最近はどう疲れてない?」

 

「まあ、相変わらずね。問題児達は騒がしいのは変わらないし」

 

 遠い目をしながら乾いた笑いをこぼすヒナ委員長。

 相当疲れているのかシナシナに萎れて見える。

 

「それはまた、お疲れ様。お茶とジュースあるけどどっちがいい?」

 

「大丈夫よ気を使わなくても。今日きたのは謝罪とお礼。タナトスのこと迷惑かけてごめんなさい。それと彼女の我儘に付き合ってくれてありがとう」

 

 そう言うと彼女は頭を下げた。

 別段ヒナ委員長に怒りを覚えてはいない。

 何より情報を欲して話に乗ったのは自分だ。

 1番の責任は話に乗った自分にあるだろう。

 

「情報を得るためだしね。それに貴方が信じて彼女に情報を渡したなら俺はそれを、貴方のことを信じるよ」

 

 何より、彼女のことを信じて行動したことに後悔はない。

 その言葉を聞いてヒナ委員長が少しそっぽを向いた。

 

「本当にありがとうね、人を試すのは彼女の昔からの悪い癖なの。あの子臆病だから」

 

「よく知ってるんだね」

 

「言ったけど、私達は友達じゃない。なんてことないただ同じクラスだっただけの腐れ縁よ」

 

 そう言うヒナ委員長の表情は呆れつつも何処か思うところがあるようだった。

 

「それより貴方は最近どう?体はちゃんと休めてる?」

 

「もう大丈夫さ、むしろ体動かさないと鈍っちゃって仕方ないよ」

 

 安心させるように大袈裟に片腕を回して見せる。

 ヒナ委員長はよかったと軽く笑みをこぼす。

 

「ほんと元気そうで何よりよ。ねえ、よかったらまたギター弾いてみてくれない」

 

 壁にかけてあるギターに目線を向けながらダメ?と可愛げにリクエストをするヒナ委員長。

 知り合ってからたまにこうしてヒナ委員長は自分のギターの演奏を聴きに来る。

 聞いていると普段のゲヘナの喧騒を忘れることが出来るようで癒しになるならと引き受けている。

 

「いいけど俺のでいいの、趣味の域を出ない素人の演奏じゃあまり楽しめないと思うけど」

 

 あくまで遊びで昔から続けてるだけのアマチュアのギター、本職に比べればまだまだアラが目立つ。

 けれど。

 

「私は貴方の演奏好きよ」

 

 それは卑怯だろ。そう言われる事がまだギターを続けるモチベーションだった。

 

 そうして小さな部屋で小さな演奏会が始まった。

 ヒナ委員長は柔らかい笑みを浮かべて時間を忘れて聴き入っていた。

 

 

 

「ヒナ委員長何処行ったんでしょう?今夜久しぶりに一緒に食事でもと誘おうと思ったのに」

 

「委員長なら友達に会いにいくって言ってたけど」

 

 その頃ゲヘナでヒナ委員長との時間を取られたことに不満を漏らす行政官の姿が目撃さたとかなんとか。

 

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